春が近づいて、そろそろ新入社員の受け入れが気になるシーズン。育ってきた環境も年齢もそれぞれ違う後輩への接し方に、迷う人も多いはず。

今回は、モーニング娘。’20のメンバーとして、積極的に若手を育成している石田亜佑美さんに、後輩とどう接して行くべきか聞きました。

先輩にしてもらって嬉しかったことを全部やる

石田亜佑美(いしだ・あゆみ)。1997年1月生まれ。2011年9月に10期メンバーとしてモーニング娘。に加入、ダンススキルの高さで注目を集める。18年12月にサブリーダーに就任する。

──石田さんは、レッスンでも「大丈夫?」と声をかけるだけでなく、後輩が何を課題に感じているか具体的に拾っているそうですね。相手が相談しやすいように、コミュニケーションで意識していることは?

石田亜佑美さん(以下、石田):基本的には、「自分が新人時代に先輩にしてもらって嬉しかったことを全部やろう」という気持ちで動いています。たとえば、注意された時って怒られた事実は受け止められるけど、「じゃあどうしたらいいの?」って迷ってしまうと思うんです。ダメなところを伝えるだけじゃなくて、解決策もセットで教えます。

──心強いですね。真面目ゆえに人を頼れず、助けを求められずにいるメンバーもいるのではないかと思います。SOSを汲み取るために、石田さんはどういう風に後輩を見ていますか?

石田:私は鈍感で、人の変化に気づくのが苦手だったんです。ずっと後輩全員を見ているのは難しいから、「今日の練習はこの子をサポートしよう」と決めて、一人ひとりを見るよう意識しています。中には運動神経が鈍い子や、加入して初めてダンスレッスンを受ける子もいる。ダンス練習も、専門用語を使わずに、わかりやすく説明するよう心がけています。

石田さんが後輩に注意する時には、ダメな点だけでなく解決策までセットで伝えるという。

誰かが言わなきゃいけないことは遠慮しないで言う

──「後輩から怖がられるんじゃないか?」と、なかなか課題点を指摘できない人もいます。石田さんも、悩むことありませんか?

石田:私自身は「怖がられてもいいや」と思ってますね。モーニング娘。として良いパフォーマンスを届けるには、厳しい指導も必要でしょ? って。

──潔いですね。

石田:グループ内でも仲が良いメンバー同士だったら、私のことを愚痴ることもあると思うんです(笑)。でも、いちいち考えていちゃ何も伝わらない。誰かが言わなくちゃいけないことは、遠慮しないで口にします。

後輩に怖がられることを気にしていたら、伝えるべきことが何も伝わらないと語る石田さん。

──率先して動いているんですね。

石田:でも、素の私でいくと後輩がビビるから(笑)、やわらかく伝えるようにしてます。特に、15期(2019年加入の新メンバー)に対しては、年齢も活動歴もまったく違うし、かなり気をつけるようになりました。

──後輩に威圧感を与えないためにどんなことを意識してますか?

石田:道重さんから教わった「笑顔で挨拶する」「思ったことはすぐ、その場で言う」ですね。「実はあの時、こう思ってたんだ」って後から言われても、ずっと怒ってたんだ……ってなるじゃないですか。コンサートのリハーサルは時間もかかるし、その場で動きを直していかないといけないっていうのもあるんですけどね。

言うべきことは遠慮せずに言うけれど、伝え方はやわらかく。特に新メンバーにはかなり気をつけているという。

伸びる後輩の共通点は?

──石田さんは、これまで累計11人の後輩を受け入れてきました。後輩それぞれの性格によって、接し方は変えていますか?

石田:変えてますね。13期の加賀楓ちゃんが加入した時は、新人とはいえ、ハロプロ研修生歴が長かったので、人よりはできる子だったんです。だからこそ、「注意した時にどう思うタイプの子なんだろう?」と、反応を探るところからはじめました。

──優等生にも、慎重になるんですね。

石田:注意された時に「私、できてるし」と反抗しちゃうタイプなのか、素直に受け取る子なのか。きちんと見極めるようにしていますね。加賀ちゃんは、ダンスがかっこいいし、こだわりもあるはずだけど、私の話を聞き入れてくれる子だったんです。だから、こっちもどんどんアドバイスしたくなる。

──石田さんが考える、成長する後輩の共通点は?

石田:素直で柔軟なこと。自分のこだわりを捨てなかったら、その先には絶対に行けないですから。私も加入当初は、怒られるのが本当に嫌だったんですよ。自分のダンスにせっかく先輩がアドバイスをくれた時も、なかなか受け入れられなかったんです。とにかく負けず嫌いなので。

注意した時に素直に受け取ることができる後輩にはどんどんアドバイスしたくなるそう。

──変われたきっかけはなんだったんですか?

石田:自分だけに目を向けるのではなくて、他のメンバーを見るようになったことです。「鞘師さんのダンスと私のダンスはどう違うんだろう?」という視点を持つことで、成長できました。うらやましく思うこともあったけど、周囲のことを認めることによって、逆に自分のダンスの良さがわかるようになりました。

──「自分よりできるかも」と感じる後輩に遭遇した時は、どう接していましたか?

石田:そわそわしちゃう(笑)。きっと、歴代の先輩も悩んできたと思うんですよ。「この子に意見するほど、自分はできてるのか?」って。

──石田さんでもビビることあるんですね。

石田:ありますあります。でも、誰かが言わなきゃいけないから、迷った時は潔く人を頼るようにしました。たとえば歌のことだったら、まず歌が得意な小田さくらちゃん(11期)に相談します。ハモるパートの時、合わないのは私のせいなのか、相手が調整するべきなのか、判断がつかないことがあるんです。そんな時は小田ちゃんに聴いてもらって、彼女から伝えてもらいますね。

「この子に意見できるほど、自分はできているのか? 歴代の先輩も悩んできたと思います」

どうすれば後輩のやる気を引き出せるかを考えるしかない

──石田さんは、年齢を重ねていくうちに「グループの中でどういう役回りを担うべきか?」を考えるようになったそうですね。

石田:本当に、立場が人をつくるんですよね。後輩が増えていくと、私が前へ前へ出るのも良くないなって。グループとして、若手が育たないですから。基本的に、コンサートやファンイベントでは新メンバーに話を振ります。地上波などでは、小田さくらちゃんにパスしますね。確実に返してくれる安心感があるので。

──新メンバーへの愛と、バランスをとった判断力がすごいです。

石田:毎日ずっと一緒に過ごしているから、みんな良い子で全員面白いって、私はわかってるんですよ。けど、新メンバーはイベントなどでは緊張してしゃべれません。だから、その良さが全然伝わらないんです。「先輩の私がパスを出さなきゃいけないんだ」という意識は強くなりました。私自身が発言したいってのもありますけど(笑)。

グループとして若手を育てなければいけないからイベントなどでは新メンバーに積極的に話を振るのだとか。

──世代でくくるのはよくないですが、今の若手について思うことはありますか?

石田:やっぱり、世代間ギャップはあります。特に今は、あんまり強く怒っちゃいけない空気になっていますね。私たちはバチバチ競うようにして育てられてきたけど、それを今の子に求めちゃいけないのは自覚してます。

──「自分たちはこうだった」を、押し付けないように気をつけてるんですね。

石田:若い子だって、ちゃんと野心はあるんですよ。こちらとしては「どうすれば彼女たちのスイッチが入るんだろう?」って、探るようになりましたね。好きなことなら、何でも頑張れるし、うまくいく。先輩の立場としては「どうすればその気持ちを引き出せるか?」を考えるしかないんです。

自分たちが育ててもらったのと同じやり方で、後輩に接しなくてもよいと考えているそう。

その子が初めてやったことを全力で褒める

──石田さん流「後輩のやる気スイッチ」の押し方、教えてください。

石田:「その子が初めてやったことを、全力で褒めてあげること」です。私、初めてミュージカルをやった時に、演出の方が演技を褒めてくださったんです。「初めてなのに褒められるなんて、私、できちゃう子なんじゃない?」って、調子に乗ったことで得たものが大きかった。実際に、舞台の仕事が大好きになりました。

──いい話。その後、石田さんは主演にも抜擢されましたものね。最後に、「自分は管理職より、まだまだプレイヤーでいたい」という気持ちは?

石田:もちろんあります。私も変わらず、もっと前へ前へ出たいです。全体バランスを考えた結果、少し引くようになっただけなんです。私のファンの方でも、「亜佑美ちゃん、丸くなったね」「昔みたいにバチバチした亜佑美ちゃんが見たい」って言う方もいます。でも、実は全然変わってないから安心してほしいですね。

──今は、後輩育成を優先しているんですね。後輩と接していてどんな時に、よろこびを感じますか?

石田:私がダンスの振り付けを教えたり、褒めたりした時に、素直に喜んでくれる後輩を見るのが、何よりうれしいですね。「もっと頑張ろうと思いました」なんてLINEくれて、ブログにも書いてくれて、後日お手紙までくれたんですよ。「そんなに!?」って、びっくりするけど、自分とのやりとりを特別な出来事にしてくれる後輩たちが宝物ですね。

石田亜佑美(いしだ・あゆみ)

1997年1月生まれ。2011年9月に10期メンバーとしてモーニング娘。に加入、ダンススキルの高さで注目を集める。18年12月、サブリーダーに就任。

Instagram:@ayumi_ishida.official

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/飯本貴子(@tako_i