自分が心から好きなことだけをやって生きていけたら、すばらしそうです。好きなことでがっつりと稼いで生きていけたら、それ以上のことはないように思えます。

インターネットでは「好きを仕事にして食っていこう」「好きなことだけやって生きていこう」という言説があふれています。そして、それを実現しているように見える人たちがいます。

「見える」というのがポイントで、多くの場合は見えないところで“好きではないけどやらなくてはいけないこと”をきちんとやっているし、好きなことで食べていくために尋常でない熱量を注いでいます。やっぱり並大抵では達成できません。ダラダラしてる人は見たことないもん(笑)。

好きなことそのものを仕事にするのは、ハードルが非常に高いことなのです。

「好き」から学んだことを仕事に活かせないか

でも、ちょっと視点を変えて、好きなことそのものを仕事にするのではなく、「好き」から学んだことを仕事に活かせないか考えてみたらどうでしょう。その「好き」は、イラストを描くことやボルダリングすること、飲み会をやること、スキンケアアイテムを追求すること、なんだって良いと思います。

一見、関係のないようなものでも、突き進めていくと何にでも活かせる共通点のようなものが存在します。何かに詳しくなった人は、ある対象がまったく別の対象と同じ真実でつながってることに気づいたことが少なくないはずです。

唐突ですが、私は社会人1〜2年目の頃、合コンに行きまくっていました。当時の私は、仕事ができないくせに女の子が好きで好きでしょうがなかったのです。クソ人間だったのです。

当時、よく思っていたのは「合コンならけっこう輝けるのに、なんで肝心の業務ではイケてないんだ」ということでした。合コンならばコミュ力を発揮できて、影響力を示せるのに、仕事では発言が通らない。思ったように物事が運ばない。うまくいく道筋もみえない。

言うまでもなく、合コンで磨かれたコミュニケーション術は仕事に応用できます。ただ、そのスキルを仕事で活かせずにいたのです。

それが変わったきっかけは、ある飲み会で先輩から「その気遣いでお客さんが考えていることを想像してみろ」と言われたことでした。そこから、無関係だと思っていた合コンと仕事が紐づいていったのです。

せっかくのスキルがなぜ殺されてしまうのか

合コンでは、参加女性の中でいちばん影響力を持っているメンバーを最初に察知しておくと、コミュニケーションが楽になります。それと同じように、顧客企業の担当者でいちばん偉い人は誰なのか、どのような影響力を持っているのかを見極められれば、交渉をスムーズに進めることができます。これは対顧客だけでなく、社内での立ち振る舞いにも応用できるはずです。

また、場を盛り上げてくれる女性に話を振ることも大切です。同様に、顧客企業で業務推進力を持っていて、商談に前向きな人と積極的に関係構築をしていけば自動的に話が進んでいきます。

合コンだけではありません。ボルダリングにおけるルートファインディングは、プロジェクトをゴールから逆算していく思考につながりますし、イラストは特定の概念をシンプル化・デフォルメ化して他人に直感的に伝えやすくすることを可能とします。

どんなジャンルのことでも、仕事に活かせるスキルになりえます。ただ、「自分の“好き”と仕事はまったく関係ない」という固定観念が、せっかくのスキルを死蔵させてしまっているのです。

もちろん、本来持っているはずのスキルを転用させるにはコツ(あるいは気づき)が必要です。ですが、何かを好きになって自然と身についた思考プロセスは、間違いなくあなたの財産といえるでしょう。

では、「自分には好きなことがない」「何が好きなことかわからない」と言う人はどうしたらいいのでしょうか。

ここで私が言いたいのは、好きなことがない人なんていないということです。誰にでも、なんとなくやってること、自分では意識せずに時間を費やしていることがあるはず。きっと、それがあなたの好きなことなんです。

何かを好きという気持ちには理由はありません。たとえ自覚がなくても、自分が時間を費やしていること、それを仕事に活かせないか考えてみましょう。時間をかけてやってきたことは、それだけで天賦の才能なんです

「なんとなく時間をかけてきたこと」に注目してみよう

TEDでジョシュ・カウフマンさんが語った「最初の20時間 — あらゆることをサクッと学ぶ方法」をご存知でしょうか。

簡単に説明すると、「何か新しいことを学ぶために長い時間を費やす必要はないし、そもそもエキスパートになる必要もない。”そこそこのレベル”になるのであれば、20時間で十分だ」というものです。

言われてみると、仕事で使うExcelやPowerPointの基本操作を覚えるまでに20時間もかからなかったのではないでしょうか。ギターやダーツだって、20時間も練習すれば基本的なことはできるようになるはず。それに興味のないことや、やる必要がないと思っていることは、たとえ取り組んだとしても何時間もかけないうちにやめてしまうでしょう。

ここで提案があります。

20時間で「そこそこのレベル」に到達できるのであれば、そうですね、たとえば今までに100時間くらい時間を費やしてみた対象ってないでしょうか? 「なんとなく」くらいの意識の低さで良いので。

すぐに思い当たらない人はカレンダーアプリに自分の行動をログっていってください。1週間続けるだけでも傾向が見えてくるはず。

時間は究極の投資です。それほどまでに”時間を費やす”と言うのは簡単なことではなく、100時間も費やしたものは、きっとあなたの武器になります。しかも、あなたは”なんとなく”それをクリアしていた。そのギャップに活路を見出してみてほしいのです。

誰にだって「宝物」は眠っている

私は大学時代、本当になんとなくブログを始めたのですが、続けているうちにこうしてコラムを寄稿できるようになっていました。

我流のブラインドタッチしかできなかったのに、親指シフト入力というマニアックなタイピング技術になんとなく興味を持って時間を費やすことで、ほとんどの人に負けないタイピングスピードを得ることが出来ました。

「女の子ってわかんねーな!」と嬉しい悲鳴をあげながら、相手が考えていることを想像したり、うまくいかなかった原因を考えているうちに、仕事でも「スタンド能力だ」と言われるくらいに、相手のキャラクターと行動特性が把握できるようになりました。

これらは「こういうスキルを身につけよう!」と目標を置いて、行動をしたわけではありません。ただただ、なんとなく興味があることに(結果的に)時間を費やしていただけです。

私自身、仕事のために研鑽を重ねる、ということが苦手でした。でも、プライベートですでに身につけているスキルを仕事に転用できるようになった瞬間、飛躍的に仕事ができるようになった記憶があります。そして、誰もがそういった“宝物”を持っているはずなんです。

この文章がなんらかのヒントになってくれたら、嬉しいと思っています。

この記事を書いた人

桐谷ヨウ

桐谷ヨウ(きりたに・よう)

ブロガー・コラムニスト。よく書かせてもらうのはお仕事と恋愛のコラム。国内メーカーグループ、外資ITコンサルを経て、理想のライフスタイルを目指して週4会社員へ。仕事は「自分の意思」と「人との接点」を大事にしています。

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