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質問は2択にしておくと相手の好みを引き出せる

今日は待ちに待った金曜日。憧れのまさみちゃんと初めてのデートだ。お店は、結局、恵比寿にあるカジュアルな和食屋さんにした。

店選びは本当に悩んだけれど、ナオヤさんからもらった「質問は2択にしておくと相手の好みやリクエストを引き出せる」というアドバイス通り、「金曜のお店、和食がいい? イタリアンがいい?」と聞いたら、まさみちゃんから「和食!」と即レスがきた。

やっぱり、女子の「何でもいい」は、まったく何でもよくなんかないのだ。ちゃんと確認しておいてよかった……と胸をなでおろしながら、「にぎやかな居酒屋っぽいところと、落ち着いた和食屋さんならどっち?」と店のタイプを確認する。

「和食屋さん」というまさみちゃんの答えに合わせて、いくつか店をピックアップしてナオヤさんに「こういう店でいいでしょうか?」とLINEで聞いてみた。すると、ナオヤさんの似顔絵イラストが手でバッテンを作っているスタンプが3連続で送られてきた。

「初デート&忙しい女子にアクセスの悪い店は迷惑だし、面倒くさがられてドタキャンされる可能性が高くなる」

「高級すぎる店は、相手が警戒するのでNG。初デートはカジュアルだけど雰囲気のいい店で」

「半個室なら、相手に警戒されずにちゃんと会話が楽しめる」

「オープンしたて、日本で初めて〇〇した店など、話題がある店だと、話の取っ掛かりになるし、思い出に残りやすい」

などなど、数々のダメ出しのあと、ナオヤさんから店選びの極意と具体的なお店を数軒教えてもらい、悩み抜いた末に選んだのが駅から3分と近いのに、路地裏にある隠れ家風のこの店だった。今年に入ってからオープンした店だし、和モダンな店内は帰国子女であるまさみちゃんのウケもよさそうだ。もちろん席は半個室を予約した。

  • 相手の好みやリクエストを引き出すには、「何がいい?」ではなく「AとBどちらがいい?」と2択の質問をするのが効果的
  • A、Bの選択肢が相手の要望と合わなかった場合には、相手から「Cがいい」といった具体的なリクエストを引き出せる可能性が高い

最初のデートは“少し話し足りない”ぐらいがいい

つい気がはやって、予約は19時からなのに、30分も前に店に着いてしまった。しかたなく店の前をうろうろしていると、スマホの画面が光った。まさみちゃんからだ。「ごめん! 10分くらい遅れそう」。こうやってちゃんと連絡をくれる律儀なところもまさみちゃんのいいところだ。

「待たせてごめん!」

先に店に入って待っていると、まさみちゃんは、きっかり10分遅れてやってきた。

今日のまさみちゃんの服装は、オフホワイトのブラウスに、黒っぽいセットアップスーツ。これまでバイト先では、ほとんどデニムだったこともあり、大人っぽい姿は新鮮だった。

「そのブラウス可愛いね! すごく似合ってる」

ホストクラブの接客と同じ調子で、思わず褒め言葉が出てしまった。調子のいいヤツだと、引かれてしまうだろうか。そんな僕の心配をよそに、まさみちゃんは「ありがとう~。今日は研修だったから特別だよ。いつもは家でジャージだし」と笑っている。

この店の予約は2時間制。時間がきたら店を出なければいけない。これも「席を立つきっかけに悩むこともないし、最初のデートは“少し話し足りない”ぐらいが次につなげやすくていいんだよ」というナオヤさんのアドバイスを受けての選択だ。

注文したビールで乾杯すると、僕はキャバ嬢のナナさんや杏さん、ナオヤさんたち先輩ホストに教わったモテるためのテクニックを、この2時間にすべて投入していくことを心に決めた。

  • 「少し物足りない」くらいの時間で会話やデートを切り上げることで、相手を「もっと話したい」「また会いたい」という気持ちにさせることができる 

会話が間違いなく盛り上がる「うなずき」と「相づち」の極意

特にNo.1キャバ嬢のナナさんに繰り返し何度も叩き込まれたのが、「うなずき」と「相づち」のテクニックだった。

「これを覚えておけば、会話が間違いなく盛り上がる!」とナナさんは言う。うなずきは、ゆっくり、オーバーめに話の切れ目で行うのがベストらしい。

「ケンに限らず、男の人ってリアクションが薄いのがデフォルトなの。つまり、人の話を聞いていても、うなずきもしないし笑顔もないって人が多くて、話を聞いているかどうか全然わからないの。よく女性が『ねえ、聞いてる!?』って怒るのはそのせい。相手を楽しませたいなら、ホストやキャバ嬢みたいに大げさにうなずくくらいがちょうどいいの!」

さらに、相づちには5つもの種類があって、それをミックスしながら使っていくとよいそうだ。

①ベーシック相づち

別名「はへほの法則」。すごい話を聞いた時は「はぁー」とため息をつくように、興味があるというニュアンスを伝えたい時は「へぇ~」、感心や驚きを伝えたい時は「ほぉ~」とリアクションする。

②促す相づち

「それで?」「それから?」「もっとないの?」と、「もっと話を聞かせてほしい」と促す。

③質問相づち

「中目黒で菅田将暉に会っちゃった」と言われたら、「中目黒のどのへんで会ったの?」と相手の話の中から具体的な内容を促す質問をすると、より会話が盛り上がる。質問の中身は5W2H(Why=なぜ・What=なにが・いつ=When・どこで=Where・誰が=Who・どうやって=How・どれくらい=How much)が基本。

④リピート相づち(オウム返し)

「昨日はすごい嫌なことがあって」「すごい嫌なことがあったんだ」などと相手の語尾やポイントになる言葉を繰り返し、共感や同調を示す。

⑤好転相づち

「この服、せっかく買ったのに似合わなかった」など、相手が自分のことについてネガティブな発言をした時は同調せず、「そんなことないよ。まだ見慣れないだけじゃない?」と肯定的な褒め言葉に変換する。

ホストクラブの接客でもこれらにトライしてはいるものの、まだまだ不自然でナナさんからダメ出しを食らうことも少なくない。でも、今日こそ練習の成果を見せる時だ。

  • 会話を盛り上げるためには、「相づち」「うなずき」のテクニックが有効
  • 「相づち」「うなずき」は、話の切れ目でおおげさにするのが効果的
  • うまい「相づち」「うなずき」ができれば、相手に「自分の話に興味を持ってくれている」と思わせて、好感を持ってもらうことができる

自分から先に弱みを打ち明けると距離が縮まる

大きなうなずきをまじえつつ、テレビ局のバイトで一緒だった仲間の就活状況を話しているうちに、ふとまさみちゃんが真面目な顔で聞いてきた。

「この前の飲み会でみんなが言ってたけど、海藤くんって、今ホストクラブで働いてるの?」

「……そうなんだよね」

「卒業しても続けるの?」

「そのつもり。正直、普通の就活だとFラン大卒の自分は勝ち目ないから。ホストでやれるところまで挑戦してみようかと思って」

「そうか。ちゃんと考えて選んだ仕事なんだね。海藤君のことだからそうだとは思ってたけど」

「とはいっても、ダメダメホストで本当に苦労してるんだけどね。源氏名は“袋小路ケン”だし」

「指名客ゼロでもう後がない、行き場がない。だから袋小路ケン」という源氏名のいわれを話すと、まさみちゃんは椅子から転げ落ちそうになりながらお腹を抱えて笑ってくれた。

以前、ナナさんに教わった「自分から先に弱みを打ち明けると距離が縮まる」っていうのはこういうことなのかもしれない。お店でも源氏名はネタになっているけれど、まさみちゃんが相手だと距離が近づいたのを実感できるのがこれほどうれしいとは。

でも、こんなふうに自分のことばかりしゃべっていてはダメだ。まさみちゃんに好きになってもらうには、「まさみちゃんの感情=話を聞いてほしい」を満たしていかなくては。基本的に人は「自分の話を聞いてもらいたい生き物」なんだそうだから。

  • 自分から「弱み」をさらけ出すことで、親しみやすさを感じてもらい、相手との距離を縮めることができる
  • 人は「自分の話を聞いてもらいたい」という欲求を持っている。そのため、自分の話に興味を持って聞いてくれる相手には好感を抱きやすい

「次の約束」はアンカリングで取り付ける

「まさみちゃんは、仕事どう? 今日も研修だったんでしょ?」

そう質問した瞬間、まさみちゃんの表情が曇る。

「私に比べたら、海藤くんのほうがぜんぜん順調かも」

「そうなの? 何かあったの?」

「私、帰国子女だから漢字に弱くて。今日、研修で渡された原稿で、いくつも読めない漢字があったんだよね」

「帰国子女ってどれくらいアメリカにいたの?」

「中学1年から高2まで。大学入試も帰国子女枠だったから、漢字はそれほど勉強してなくて」

「そうなんだ。でもさ、帰国子女って逆に強みもたくさんあるよね。英語はできるし、アメリカの文化に詳しいし」

「それはそうなんだけど……。入社前でこれじゃあ、先が思いやられて憂うつで」

いつも明るく元気なまさみちゃんが凹んでいる姿に胸が痛んだ。

「じゃあ、一緒に漢字検定でも受ける?」

しまった……。会話が弾んだことで気が緩んで、とんでもないことを口にしてしまった。ただでさえ漢字が苦手なのに……。焦る僕をよそに、まさみちゃんが「本当? 一緒に勉強してくれるの?」と笑いかけてくる。

「レベルはかなり低いけど、それでよければ」

「いや、私もかなりダメダメだから」

そんなふうに2人で言い合っていると、お店のスタッフが「そろそろお家計を」と言いにきた。もう2時間経ったのか。本当は2軒目に行きたいけれど、前もって明日は朝が早いからと言われてしまっている。ここで勝負に出るのは早すぎるだろう。

次の約束をしておかなきゃ……。頭をフルスロットルで働かせて僕が導き出したのは、次のひと言だった。

「漢検、何級受けるか決めたいから、来週また会って相談しようよ」

「いいね! 今度は私がお店予約するね。海藤くんは何が好き?」

あれ? 拍子抜けするほど簡単に次の約束ができてしまった。別に会わなくても、LINEでやりとりすればいい話なのに、ナオヤさんから教わった「事実」+「誘導」の「アンカリング」のパワーはハンパじゃない!

  • 相手を誘導するには、「事実」+「誘導」の「アンカリング」が効果的
  • 「何級を受けるか決めたい(事実)から、また会おう(誘導)」「給料が入った(事実)ら、デートしよう(誘導)」と、誘導したい事柄の前に事実を提示すると、相手は「NO」を言いづらくなる

<構成/伊藤彩子>

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この記事を書いた人

斉藤恵一

斉藤恵一(さいとう・けいいち)

セルフマネジメントプロデューサー。日本心理学協会 認定心理士。大学時代に歌舞伎町のホストの世界に飛び込むも半年間売り上げゼロ。そこからセルフブランディングに取り組み、約6年間売上げNO.1となる。現在は美容業界、アパレル業界などでメンタリングやコミュニケーションスキルなどセルフマネジメントのプロデュース、人材育成に取り組む。

Twitter:@keiichisaito