突然ですが、質問です。

“心穏やかに”仕事をするうえで、大事なことは何でしょう。

「安定した収入」「時間に追われない仕事内容」。そんなワードが頭に浮かんだ方も多いと思いますが、“即実践できるアクション”という視点で考えると……?

私はズバリ、相手に怒られ(「怒られ」が発生し)ないコミュニケーションを心がけることだと思うのです。なぜか。怒られまくって心がザワつき、仕事どころじゃなくなったら元も子もないからです。

近年、ビジネスコミュニケーションの主戦場は、会話からメール(チャット)に移りました。日本でもここ最近、リモートワークが劇的に浸透したため、文章を書く機会が増えた方も多いでしょう。

つまり今、怒られないコミュニケーションを実践するなら、「怒られない文章」を書くことが必要なのです。

ただ、文章のみでは伝えられる情報量が少ないだけに、行き違いも多い。相手(読み手)主導のコミュニケーションなので、相手が最高にご機嫌斜めなタイミングであなたのメールを読むかもしれません。

そんな「怒りの地雷原」も、2つのルールを理解しておけば安全に歩くことは可能です。それが、本当に伝えたいことを素早く伝える文章構成と、相手をイラつかせない文章表現。

今回は、「怒られ」の可能性を減らすために必要な2つの文章ルールについて、具体的な事例を交えながら考えていきましょう。

構成で「怒られ」を回避する

  • 伝えづらい結論も、最初に書こう

まずはじめに、文章構成のメソッドを解説していきます。ビジネスメールの範疇なら、「怒られ」を防ぐうえで大事なのは「結論」の見せ方や配置でしょう。

一般的に、結論から先に伝えると話の内容がわかりやすい、と言われます。じゃあ、「結論を最後に書く人はそのルールを知らないのか」というと、そんなことはなさそうです。事実、売上目標の達成を報告する時は、多くの人が、いの一番に「売上目標を達成しました」と書くはず。

要は、伝えたら怒られそうなことがわかっているから、言い訳が先にきてしまい、無駄に前置きが長くなった。その結果、結論がずいぶんと後ろに来てしまったというだけのこと。

たとえば、以下のメールを読んでみてください。

「言いづらい」という心の声がにじみ出て、結論をぼやかしてしまっています。読み手が忙しい場合、「支払い漏れ」という問題点を見過ごすことも考えられますし、読み手がご機嫌斜めの場合は、「話がわかりにくい!」と結論以前に雷が落ちそうです。伝えたいことを正確に伝えるため、以下のように修正してみました。

これなら、「わかりにくい!」とか「言い訳するな!」といった、支払い漏れという本来のミス以外に起因する「怒られ」は回避できそうです。「伝えたくないなぁ…でも伝えなきゃ…でも…」という心理は相手にあっさり見透かされてしまうもの。文章を丁寧にする前に、ミスの素早いリカバリー方法を考えたほうがよさそうです。

  • 結論を書く時は、「根拠」を示そう

しかし、とにかく先に結論を伝えればいいか、というとそういう話でもありません。たとえば、以下のメールを読んで違和感を覚えませんか?

……結局何もしないということなの? と思ったあなたは正解。まさに「結論ありき」の文章の典型例です。結論を伝えた後、どんなに言葉を重ねたところで、「何もしない」という結論を導き出すための方便ではないか、という疑念を払拭することは難しいでしょう。

「結論ありき」の印象を少しでも和らげるには、その結論の根拠をわかりやすく示しておくことが大事です。

このように書けば、「調査や議論を尽くしたこと」や「今後のto do」がなんとなく伝わり、違和感を持たれる可能性は低くなりそうです。

  • 「相手にしてほしいこと」はわかりやすく示そう

「結論は先に書く」という原則に従うなら、相手に対する頼みごとは真っ先に書くのがマナー。しかし、そのマナーが守られていないメールは案外多いもの。たとえば、こんなメールを見たことがありませんか。

「マウス購入の承認がほしい」という頼みごとが最後に書かれているため、伝えたいことがわかりづらくなってしまっています。以下のように直せば、グッとわかりやすくなります。

相手にしてもらいたいことは、冒頭で「明確に」伝えましょう。「少額の決裁で済む」など相手の心理的なハードルを下げるアピールポイントがあれば、タイトルで伝えてしまってもよいでしょう。価格を明示することで、「結局いくらかかるの?」と相手に返信させるコスト、それにあなたが返信するコストを合わせて減らせるのです。ほら、なるべくメール書きたくないでしょ。

表現で「怒られ」を回避する

  • 数字はくどいほど「定義」を書こう

続いて文章表現の話に移りましょう。ビジネスメールで「怒られ」を生みやすい表現は、相手に解釈の負担を強いる、あいまいなもの。

あいまいな表現は、事実誤認や誤読を誘発します。誤読は相手に非があるとも言えますが、怒られた後、「誤読してゴメン」と謝られて、感情のジェットコースターを味わいたくなければ、やはり誤読されない努力をしたほうが精神衛生上よいでしょう。

誤読を避けるうえで気をつけなければならないのが数字。とりわけ、会社のビジネスに直結する数字は、月額なのか、年額なのか、1回あたりの値段なのか、定義(これはどんな数字なのか)を明確に説明する必要があります。

なぜなら、数字の定義が不明瞭な場合、解釈の余地を生んでしまうからです。

たとえば、数字の定義があいまいなまま顧客に見積もりを出した時のことを考えてみましょう。顧客が解釈を誤ったために「高いな」と思われると印象が悪くなりますし、逆に「安いな」と思われると、解釈を訂正した後に必要以上に「高くなったな」と印象付けてしまいます。

具体例で考えてみましょう。

初期コスト:50万円

ランニングコスト:10万円

:170万円

この場合、50万と10万の合計が170万となっているように読め、読み手を混乱させてしまいます。そして、ランニングコストが月額なのか年額なのか明記していないために、10万円という数字だけを見て「安い」と印象付けてしまうかもしれません。ですが、年額で120万円ということが後から伝わると、先ほど申し上げた通り、訂正後の「がっかり感」、それとともに刻みこまれた「けっこう高い」という印象を払拭するのは簡単ではありません。

余計な説明コストをかけないためにも、

初期コスト:50万円(機材代金、設置工事費、初期レクチャー費含む)

ランニングコスト:10万円/月

初年度合計:170万円(2年目以降は120万円/年)

などと補足しておくべきでしょう。不当に高い(もしくは安い)と思われないように、数字の定義はくどいほど明示しておくのが吉です。

  • あいまいな修飾表現を避けよう

数字とともに誤読されやすいのが、「しっかりと進めていきます」「慎重に進めてまいります」といった修飾表現。結局何をするのか具体的なことが何も伝わらないので、その言葉の意味とは裏腹に「しっかりしていない」「慎重さに欠ける」という印象しか相手に与えないのが皮肉です。

ニュース番組を観ていると、「しっかりと進めてまいります」と政治家が語るシーンによく出くわしますが、それに対し「具体的に何をするんだ?」といった批判が上がることもあります。ただ、政治家にしたって、われわれの見ていないところで、「パーティーに○人集客せよ」など具体的な指示を出しているかもしれません。なぜなら、「しっかり」といった曖昧な表現で人は動かないからです。

たとえば、メールを読んでいて、こんな表現を見かけたことはありませんか。

今後はミスのないようにしっかり進めていきます。

具体的に何を、どうするのか、その理由は、これだけではまったくわかりません。上司から、「で、どうするの?」と追及されかねない表現と言えるでしょう。それを防ぐためにも、曖昧な修飾表現はできるだけ数字に入れ替えましょう。

今後は、観点を増やすためチェック担当を2人にし、ミスを検出できるように進めていきます。

こうすれば、文章の説得力も増しますし、仮にその数字の根拠が乏しい場合は、相手が具体的な代案を出してくれるかもしれません。

そもそも定量化できないのであれば、文章よりも施策の中身を見直したほうがよいかもしれません…。

  • 「YES/NO」だけを聞こう

誤読とは少し違いますが、同じく相手に負担を強いているのが「どうすればよいでしょうか」という表現。お伺いを立てるメールによく見かけますね。その表現だけで怒られが発生するかどうかはさておき、「印象がよろしくない」ことは間違いありません。なぜなら、返事を書く側に「ゼロから考えてください」と言っているようなものだからです。

たとえば……

文体こそ丁寧ですが、レスポンスはとても面倒。そのため、返事が遅れる可能性も少なくないでしょう。

もし、可能なら、以下のように調整すると印象がガラッと変わるはずです。

心の底から途方に暮れているのであれば話は別ですが、「どうすればよいでしょうか」と書いてしまう人も、頭の中が真っ白なわけではないはず。おそらく、頭に浮かんだ案を却下して書かなかっただけでしょう。でも、パッとしない案しか浮かばなくても、ないよりはマシ。そして、それが名案だったりするものです。

提案さえしていれば、仮にダメな中身でも、なぜダメか、どうすればよくなるかをアドバイスしてもらえるかもしれません。

表現を工夫すれば、良い印象を残せる可能性もあるお伺いメール。相手の立場で考えながら、とにかくYES/NOで答えられるようなお伺いの立て方を意識してみましょう。

***

以上、6つの文章術を解説してきました。

怒られを回避するビジネス文章とは、「自分がしていることを、相手が聞きたいと思うフォーマットに落として、相手の気持ちを想像しながら伝える文章」のこと。

6つのメソッドは、対上司や対顧客だけでなく、対家族や対友人にも有効です。「こいつデキるな……」と思われやすいので、ぜひ実行してみてください。

この記事を書いた人

ココロ社

ココロ社(こころしゃ)

大阪生まれ。東大文学部卒業後、テレビゲーム製作を経て平凡な窓際サラリーマンとなる。傍らで珍妙なブログ「ココロ社」を運営。書籍の執筆もしており、著書に『マイナス思考法講座』(阪急コミュニケーションズ)『モテる小説』(CCCメディアハウス)『忍耐力養成ドリル』(技術評論社)など。好きな犬はヨークシャテリア。

ブログ:ココロ社

Twitter:@kokorosha