ピンク、水色、黄緑……。カラフルな“うんこ”を全面に押し出した「うんこミュージアム YOKOHAMA」が話題となりました。来場者数はオープンから6カ月で30万人を突破し、お台場(※)や上海にも進出しています。

“うんこ”は子ども向けなイメージがありますが、うんこミュージアムの来場者は10代から20代の女性がほとんど。あえて女性をターゲットに定め、ヒットコンテンツに成長させた戦略とは? 企画・開発を担当した、面白法人カヤック プロデューサーの香田遼平さんにお話を伺いました。

※お台場は新型コロナウイルス感染拡大を受けて休館していましたが、衛生対策を強化し、6月18日より再開しました。

1.ターゲットを変えて新しい価値観を生み出す

香田遼平(こうだ・りょうへい)。2014年、面白法人カヤックに入社。企画部のプロデューサーを務める。「うんこミュージアム」のほかにも、おじさんを題材にしたエンタメ施設「おじさんの森」や、交換日記形式の婚活プロジェクト「結日記」などを手掛けている。

──“うんこ”を押し出すこと自体、勇気がいりそうです。そもそもどうしてこの題材を選んだのでしょうか。

香田遼平さん(以下、香田):カヤックには、もともとうんこをコンテンツとして扱う土壌があったんです。『うんこ漢字ドリル』が流行する前、2011年に「うんこ演算」という小学生向けの算数アプリを出すくらい。残念ながらそのアプリはヒットしなかったんですけど、ずっとうんこの可能性を信じ続けてきました。

──可能性?

香田:子どもって「うんこ」って言っただけで、笑うじゃないですか。体に染みついているというか、DNA的におもしろいものなんだろうなって。

──でも「うんこミュージアム」のターゲットは子どもではなく女性ですよね?  なぜ、あえて女性を狙ったんですか?

香田:最初は子ども向けのものを提案していたんですよ。でも、うんこで子どもを笑わせるのは、だれもが考えられること。だから、ある程度のヒットしか見込めないんです。ターゲットを違うところにして新しい価値観を生み出さないと、爆発的にはヒットしないと思ったんですよね。

うんこミュージアムのポスター中央には、巨大なピンクのうんこが鎮座している。

【ヒットの裏側】

  • ずっと“うんこ”の可能性を信じ続けていた
  • 子ども向けだった“うんこ”のターゲットを女性に変えた
  • ターゲットをズラして新しい価値観を生み出した

2.Instagramのボリューム層を狙って拡散

──ヒットを狙うからこその策だったんですね。

香田:なかでも、特に女子高生と女子大生を狙いました。当時はフォトジェニックな施設が流行っていたので、Instagramのボリューム層をターゲットにしようと。Instagramで写真をシェアしてもらえたら、それを見た人たちに「行ってみたい」と思ってもらえる効果を期待できると考えたんです。

──そうは言っても、うんこで女性を惹きつけるのはなかなかチャレンジングな気がしていて……。不安はなかったんですか?

香田:なかったですね。昔から日本ではアニメ「ドクタースランプ」などでうんこがかわいくポップに描かれていたじゃないですか。パステル調で、しっかりと「カワイイ」を作り込めば刺さる自信はありました。

Instagramで「#うんこミュージアム」と検索すると、4万9000件もの投稿がある。

【ヒットの裏側】

  • 日本ではアニメ「ドクタースランプ」のポップなうんこが下地にあった
  • Instagramのボリューム層をターゲットにして拡散

3.ヒットしているものを分析して取り入れる

──ターゲットを女性に設定した後、どのようにして構想を練っていったんですか?

香田:まず、エンタテインメントの聖地・ロサンゼルスに視察に行きました。ロサンゼルスにはポップアップミュージアムと呼ばれる期間限定の展示型施設がたくさんあるんですよ。実際足を運んでみなきゃ、なぜ流行しているのか、何が楽しいのかはわからないなと思って。

ロサンゼルス視察中のお写真。映えまくっている。

──実際に体験してみることから始めたんですね。どんな学びがあったのでしょうか。

香田:いっぱいあるんですけど、「最初に気持ちを上げてもらうのが大事」なのは学びでしたね。クリスマスの展示をしている施設で、入り口にいるおじいさんが、「サンタの誕生日はいつだ?」とか「サンタの好物は何だと思う?」とかめちゃくちゃ話しかけてくるところがあったんです。あまり期待していなかった施設なのに、「めっちゃ楽しい!」ってなっちゃって。入る前からテンションが上がっているので、中に入ってからもずっと楽しかったんですよね。「うんこミュージアム」で、入場してすぐに「うんこ!」って叫ばせるのは、この経験から生まれました。

──「うんこ!」と叫ぶのは、サンタのおじいさんが理由とは……。

香田:フォトスポットは「ここで写真撮ってください」とわかりやすくしなきゃいけないとも感じました。それも、壁紙だけじゃなくて立体のフォトスポットのほうが写真を撮ってもらいやすい。平面だと、どういうポーズをすればいいのかわからないので、盛り上がりづらいんですよ。

──うんこミュージアム内のフォトスポットはどれも立体的で、どこに入り込めばいいのかわかりやすいものばかりですよね。

「うんこミュージアム YOKOHAMA」内のフォトスポット。どこに座ればいいのかは一目瞭然。

香田:あとは、音楽にこだわるのも大事だと感じましたね。「29Rooms」っていうフォトブースになっている部屋が29個もある施設では、常にクラブミュージックとかテンションの上がる音楽が爆音で流れているんですね。そのおかげで、何もない空間さえも楽しい気分になっちゃうんです。

──ただ体感するだけではなく、なぜ楽しかったかを分析して、ミュージアムに取り入れたんですね。

香田:そうです。ヒットしている理由を分析して、エッセンスとして取り入れるのが大切だと思います。ヒットコンテンツを生み出すには、ただ単におもしろいネタに目をつけるだけじゃだめなんです。時代の流れから外れたものは絶対にウケないので、ヒットしているものをリサーチするのはめちゃくちゃ大事ですよ。

──香田さんはどのようにしてヒットコンテンツをリサーチしているんですか?

香田:実際に体験してみるのが一番だと思うんですけど、TwitterやInstagram を使うことも多いです。タイムラインに流れているものを見て「なんで、こんなウケてんだろうな」ってすごく考えてますね。「Netflixでついつい見ちゃう作品って何でおもしろいのかな」、「推理ドラマが人気なのは、謎を解いたあとに明かされるトリックがおもしろいから。だから謎解きゲームも流行ってるんだろうな」とか。

──ただコンテンツに触れるだけじゃなくて、それがウケている理由まできちんと考えていくのが大切なんですね。

【ヒットの裏側】

  • ロサンゼルスのポップアップミュージアムを自分の目で見て体験
  • 入場してすぐ「うんこ!」と叫ばせるなど視察での学びを取り入れた
  • 常にヒットしているものをリサーチしてウケる理由を分析する

4.爆発的なヒットを生むには「情熱」が不可欠

──今、振り返って「うんこミュージアム」のヒットの要因はどこにあると思いますか?

香田:時代の流れを汲んで、うまく題材・要素・ターゲットを掛け合わせられたのがよかったんじゃないかと。でも、なんだかんだで情熱の力が大きかったと思います。「うんこミュージアム」は、株式会社アカツキライブエンターテインメントとの共同事業ですが、双方ともに「絶対ヒットさせる」って想いで進めてましたから。

──ここまで戦略やノウハウを教えていただいたので、一番大事なのが情熱というのは、少し意外でした。

想いの強さから、ミュージアムの構想を練る「うんこ合宿」を2度も開催したそう。

香田:60%くらいの熱量だったら、相手から何か言われた時に、流されちゃうこともあるかもしれません。でも、コンテンツを100%好きだったら、真剣に考えて「いや、違うんだよ」って相手を納得させられますから。うんこミュージアムでは、「そもそも“カワイイ”って何か」から徹底的に話し合いました。

もちろん、ノウハウも大切ですけどね。でも、最後の最後まで詰めていって、爆発的なヒットを生み出すのに必要なのは情熱かなって。関わる人たちを巻き込んで、何かを作り上げるのなら、こちらの伝えたい思いを伝播させていく熱量がなくちゃダメですから。

【ヒットの裏側】

  • 時代の流れを汲んで題材・要素・ターゲットを掛け合わせる
  • 戦略を考え抜くのは当然、爆発的なヒットを生むにはそれに加えて情熱の力が必要

香田遼平(こうだ・りょうへい)

2014年、面白法人カヤックに入社。企画部のプロデューサーを務める。「うんこミュージアム」のほかにも、おじさんを題材にしたエンタメ施設「おじさんの森」や、交換日記形式の婚活プロジェクト「結日記」などを手掛けている。何よりも盆栽が好き。

取材・文/於ありさ(@okiarichan27