オンライン会議が増え、「発言しない人がいる」「沈黙が続く」「話がまとまらない」など、やりにくさを感じている方は多いのではないでしょうか。

そこでお話を伺ったのが、リーダーシップ育成のプロ・伊藤羊一さんです。2012年頃にオンライン会議を本格導入し、日々リーダーを相手に議論を重ねている伊藤さんに、オンライン会議をうまく動かす6つのポイントを伝授していただきました!

1.会議のはじめの一言で「発言しない人」をゼロにする

伊藤羊一(いとう・よういち)。Yahoo!アカデミア学長、グロービス経営大学院客員教授などを務める。2021年4月には、武蔵野大学新学部の学部長に就任予定。2012年から本格的にオンライン会議を導入しており、1000名以上の規模で開催した経験も持つ。(※取材はオンラインで実施しました。記事中の写真は、過去に取材した際のものを掲載しています。)

──オンライン会議をうまく進められません。発言しない人がいたり、沈黙が続いたりしてしまいます。

伊藤:まずは、会議の冒頭で「チェックイン」をしましょう。会議前に参加者全員が発言する時間を作って、はじめの一言を発してもらうんです。

──えっ、全員が話すんですか?

伊藤:それぞれが別の場所からアクセスするオンライン会議では、全員が参加する状況を意図的に作る必要があるんです。一言発するだけで、「話を聞くだけじゃなくて、自分も発言しなきゃ」と思えるようになります。反対に言うと、口を開くまでは傍観者の気持ちで過ごしてしまうんですよ。

たった一言発してもらうだけで参加意識が変わるそう。

──はじめに発言するだけで、そんなにも意識が変わるんですね。具体的には何を話せばいいんでしょうか。

伊藤:近況や雑談など、何でも構いません。会議を仕切るリーダーが、「最近はどう?」と、順番に話を振っていくので十分ですよ。

2.ファシリテーターは「進行役」に徹する

──沈黙が続いてしまったり、発言がかぶってしまったりするのは、どう対処すればいいでしょうか。

伊藤:進行役のファシリテーターをしっかりつけるのがいいですよ。「○○さん意見ありますか?」「○○さんはどう思いますか?」と話を振っていくんです。誰が話すのかを明確にすれば、発言しやすい状況は作れます。

──発言者を明確にするのが大事なんですね。

伊藤:本来ファシリテーターには、会議進行の「場をさばく」役割と、議題を確認して、話を広げて、議論をまとめる「会議を整理する」役割があります。でも、オンライン会議は、「場をさばく」をオフラインの会議より手厚く行う必要があるので、進行役に徹する方を1人つけたほうがいいですね。

3.「以上です」「次いいですか?」など発言の受け渡しルールを作る

──発言しやすい会議にするために、ファシリテーター以外の参加者ができることはありますか?

伊藤:発言の受け渡しをしっかりするといいですよ。「発言をする前には『次いいですか?』、話が終わったら『以上です』と言うようにしましょう」と事前にルールを決めておくと、意識的に行えます。

──オンライン会議だと発言の切れ目がわかりにくいので、そこがハッキリすると話しやすくなりそうです。

シンプルなルールが、オンライン会議の沈黙を防ぐ。

伊藤:ファシリテーターが進行をしっかり行い、発言者側が「これから発言します」「発言が終わりました」と明示する。この2つが揃うことで、より会議がスムーズに進みます。「この会議は話しやすい」と感じてもらえれば、参加者の意識も変わりますよ。

4.画面共有機能をホワイトボード代わりに

──話があちこち飛んでしまって、「何の話をしていたんだっけ?」となるのを解決する方法はありますか?

伊藤:書記役をつけて、メモを画面共有しながら会議をすると、話が飛ぶのを防げます。メモ帳やパワーポイントなどに、箇条書きで記録していくんです。ホワイトボードの代わりですね。目に見える形で会議の内容を共有できるので、話が飛んでしまっても、本来の流れに引き戻しやすくなります。

メモは、シンプルな箇条書きでかまわないそう。

伊藤:オンライン会議は、オフライン会議よりも話がまとまりづらいので、「今日はここまで進めばOK」と会議のゴールを事前に決めておくのも大切です。メモの一行目にゴールを書いておくだけで、会議の目的を達成しやすくなります。

5.ツールを活用して集中力を保つ

──特に難しいのが、多くのやり取りが必要なブレストです。

伊藤:ブレストには、オンラインのツールを活用するといいですよ。私がよく使っているのは、「miro」というオンラインホワイトボードサービスで、「ボード」というスペースに、付箋メモや図を追加できるものです。

実際に伊藤さんが使用しているmiroの画面。付箋を貼ったりペンで囲ったりと、ホワイトボードと同じように活用できる。

──それぞれが同じボードにアクセスして会議に参加するんですね。

伊藤:オンラインだと集中力が乱されやすいので、同じものを見ながら話すのが大切なんです。書記のメモに似ていますが、付箋やイラストも使えるので、よりホワイトボードに近い感覚で使えます。他にもいろいろなツールがあるので、自分たちに合ったものを取り入れてみるといいですよ。

6.オンラインだからこそ、チャットを活用

伊藤:ここまではオンライン会議のデメリットを解消する方法をお話ししてきましたが、オンラインだからこそできることもあるんです。

──オンラインだからこそできること? ぜひ教えてください!

伊藤:チャット機能の活用です。会議が始まる前に「会議中は自由にチャット欄に書き込みをしてください」と参加者に伝えておいて、雑談や感想、質問などを何でも書いてもらうんです。

たとえば、「なるほど」と書かれたら「ちゃんと話が伝わっているな」とわかりますし、「うーん?」と書かれたら「今のところはもう一度説明したほがいいな」とわかります。質問を書いておいてもらえば、話がひと段落した段階でまとめて答えることもできます。

簡単な内容でも、参加者のリアクションがわかれば会議を進めやすくなるそう。

──他の人の発言を止めなくてもコミュニケーションが取れて、便利ですね!

伊藤:ファシリテーター役の人は、常にチャット欄を開いておくといいです。会議を進めながらチャット欄での参加者の反応を見て、進め方を調整するんです。オンラインだと前後の雑談もできないので、「○○さんの背景画像いいですね」なんて話も気分転換になります。

チャットは、オンライン会議ならではの便利な機能なので、ぜひうまく活用してみてください。

オンライン会議スキルは欠かせないものになる

──人数が増えるほど会議が難しくなるのですが、今回教えていただいた6つのポイントは、大人数でも有効でしょうか。

伊藤:私はかれこれ8年ほどオンライン会議を活用していますが、大人数の会議であればあるほど有効度合いは増していくと感じますね。30人くらいまでなら問題ないはずです。

──新型コロナウイルス流行の影響で、オンライン会議はかなり普及しました。スキルを高めておくと、今後も役立ちそうです。

伊藤:今の状況が落ち着いたら、オンライン会議とオフライン会議のハイブリッド化が進むと考えています。これまでは、直接会うのが何よりも大事で、オンラインは代替手段でしかないと考えられていました。しかし、どちらも同じくらい価値があって、強みが違うだけなんです。

今後もオンライン会議は無くならない。

──使い分けるのが大切になるんですね。それぞれの強みを教えてください。

伊藤:オフライン会議の強みは、物理的に空間を共有することで、メンバーの一体感を感じられる点です。一致団結して頑張ろう! と士気を高めるようなやり取りが必要な場合は、オフラインで直接対面するのがいいでしょう。

──やっぱり、オフラインのほうが一体感は得やすいんですね。オンラインの強みは何ですか?

伊藤:オンライン会議の強みは、自分の思考を深めやすい点です。オフライン会議の場では、無意識のうちに空気を読んで周りに意見を合わせてしまうケースもありますが、オンライン会議は実際の空間にいるのは自分一人です。じっくりと自分の思考を深めることができます。

──空気の読みにくさが、逆手に取れるんですね。

伊藤:もちろん、移動無しですぐに集まれるのも、オンライン会議の強みです。普段の会議はオンラインで行い、ここぞという時にオフラインで集まるのがいいんじゃないかと思います。

オンライン・オフラインそれぞれの強みを活かしながら、効率的なワークスタイルを模索していってほしいですね。

伊藤羊一(いとう・よういち)

ヤフー株式会社の企業内大学「Yahoo!アカデミア」学長として、次世代リーダー育成を行う。グロービス経営大学院客員教授としてリーダーシップ系科目の教壇に立つほか、多くの大手企業やスタートアップ育成プログラムでメンター・アドバイザーを務める。2021年4月には、武蔵野大学新学部の学部長に就任予定。2012年から本格的にオンライン会議を導入しており、1000名以上の規模で開催した経験も持つ。著書に『1分で話せ』『0秒で動け』『やりたいことなんて、なくていい。』など。

Twitter:@youichi_itou

取材&文/中村英里(@2erire7 )
撮影/金子山