会議や商談の場でわかりやすく話したつもりでも、相手の反応を見て自分の伝え方に不安を覚えたことはありませんか。

今回お話を伺ったのは、チャンネル登録者数100万人超を誇る、教育YouTuberの葉一さん。圧倒的に「わかりやすい」授業動画で、勉強嫌いな学生を夢中にさせました。

社内外でのプレゼンや会議、部下の指導など、ビジネスパーソンが悩みがちなシーンで実践できる、伝え方の技術を教えていただきました。

伝えたいことの7割は削ったほうがいい

葉一(はいち)。教育Youtuber。1985年生まれ。営業職、個別指導塾の塾講師を経て独立。チャンネル登録者数は100万人を超える(2020年7月時点)。

──早速ですが、葉一さんが考える「わかりやすく伝えるために最も大切なこと」を教えてください。

葉一さん(以下、葉一):まずは伝え過ぎないことです。むしろ、言いたいことを削っていく作業が重要。あれもこれも話そうとすると、結局何を伝えたいのか相手がわからなくなってしまいます。

──話す内容を削って絞り込むということですか?

葉一:僕も営業マン時代、お客さまに伝えたいことが溢れて、つい早口でベラベラと話してしまったことがあります。きっと焦っているようにも受け取られてしまったことでしょう。だけど後から考えてみたら、7割近くは不要な話だったんですよね……。

──7割も⁉ でも、いざ伝えるとなるとどれも大事に思えてきて。どうやって削ればいいんでしょうか。

葉一:頭の中で考えているだけじゃ体系的に話すことは難しいので、思考を見える化する「マインドマップ」をつくってみましょう。

葉一さんがつくったマインドマップ。

葉一:最初に、伝えたいことをすべて書き出してください。書き出すことで不要な部分が見えてくるので、それを排除します。次に、残った要素にそれぞれ派生することを細かく書き出してみましょう。

──それだと、減らしてもまた増えてしまうのでは?

葉一派生した内容から不要なものをさらに削るんです。削った後は、削りすぎて説明に支障が出ないかを確認する。そうすることで、話の内容が洗練されていきます。

【伝え方のコツ①】話す順番は絶対に変えない

──伝えたいことをシンプルにしたら、次はそれをどう伝えるかですね。

葉一:伝え方のコツは全部で4つあります。まずひとつめが、一度決めた「話し方のフォーマット」を崩さないこと。特にしゃべり慣れていない人は、これを徹底してください。

──話し方のフォーマットとは?

葉一:どんな話をどの順番で伝えるのか、大体の流れを事前に決めている人が多いと思います。その流れを絶対に崩さないことです。

──それでどんな効果があるんでしょうか?

葉一:たとえば、相手の反応が良いと、つい調子に乗って思いつくままに話をしてしまうこともありますよね。そうすると、うまくいかなかった時、失敗の原因が分析できなくなってしまうんです。

──そうか! 話し方を決めていればPDCAを回せますね。

葉一:はい。相手の反応が良くても悪くても、話し方をアレンジしないでください。フォーマットを守ってPDCAを回すことが大事です。そうやって場数を踏むことでフリースタイルの話し方ができるようになりますし、「伝わる話し方」もわかってくるんです。

【伝え方のコツ②】自分ごととして話せば、相手を引き込める

葉一:ふたつめは、「自分ごと化して話すこと」。相手を自分の話に引き込むために欠かせないポイントです。営業マン時代、僕は当事者意識を持つことを大事にしていました。

──自分ごと化ですか?

葉一:商談の場ではよく「相手目線に立って提案しろ」と言われるんですが、結局それって「こういうのを求めているんでしょ?」という押し売りになってしまうんですよ。売り込みたいのが透けて見えて、話に引き込めないどころか距離ができてしまいます。

──なるほど。でも、どんなふうに話せばいいんでしょう。

葉一:たとえば、仮にボールペンが商材だった場合、自分が使っていてストレスに感じる瞬間がないか考えてみましょう。「インクが擦れるのが嫌だ」と感じていて、自社のボールペンがその点をクリアしているなら、素直にそこをセールスポイントにできますよね。

──それなら説得力のある話ができそうですね。

葉一:「相手のために」と考えて伝えるより、自分ごととして伝えることができれば、ぐっと相手を引き込むことができると思いますよ。

【伝え方のコツ③】感情の表し方に強弱をつける

葉一:3つめは、「感情の表し方に強弱をつける」ことです。ただ淡々と話すのではなく、重要な部分で話すペースを変えたり、声のボリュームにメリハリをつけて伝えたりすることで、相手を飽きさせないようにしましょう。

──それってWeb会議でも有効ですか? オンラインだとリアルで話すより巻き込むのが難しいと感じます。

葉一:わかります。YouTubeも同じ画面越しで、しかもタイムリーにコミュニケーションが取れないので、よりシビアです。僕のチャンネルでは、いじめなどセンシティブな話題を話すこともあるので、強い言葉を使う時はあえて穏やかな表情で伝えています

──感情の表し方で、相手が受け取る印象をコントロールしているんですね。

葉一:ただし、メリハリをつけることを忘れないでください。参加者全員が自分に対して真正面を向いているWeb会議では、ずっと感情を込めて話していると威圧感を与えてしまうことがあります。なので、核となる話以外は、基本的に自然な表情で話すのが一番だと思いますよ。

──リアクションを大きくすることばかり意識してました……。逆に相手のリアクションが薄い場合はどうすればいいですか?

葉一:Web会議で“ただの傍観者”を生まないためには、相手に想像力を働かしてもらうことが重要なんです。そのためには、質問を投げかけてみるのがオススメですよ。

──質問されれば嫌でも注意を向けないといけないですもんね。

葉一:ただし、参加者が多い会議の場合、YESかNOで答えるクローズドクエスチョンに絞ってください。オープンクエスチョンは少人数ならいいのですが、大人数だと間が生まれるので避けるべきですね。

──興味を示してくれているか、画面越しでもわかる方法はありますか?

葉一相手の目線がひとつの判断材料になると思います。人は興味を持つと、話をしている人の顔を見ます。ですから、画面越しにしっかりと目を向けてくれていれば反応している証拠です。相手の反応を見つつ、感情の表し方に強弱をつけて伝えてみてください。

【伝え方のコツ④】常にフラットな目線を持つ

葉一:最後のコツになりますが、「常にフラットな目線を持つ」ことを心がけてください。

──伝える時に偏った見方をしないということでしょうか?

葉一:そうですね。フラットな状態で伝えないと、いくら主張したところで信用してもらえないですし、伝えたいことを受け取ってもらえません。特に、部下や後輩のマネジメントにおいては、相手に信頼されていないと何を言ってもまったく伝わりません

──フラットな目線を持つことが信頼につながるんですか?

葉一:まずは部下に対して偏った印象を持たないこと。ひとつができないからといって、仕事全部ができないわけではありません。その人の得意・不得意の両面を見て、フラットな目線で評価してください。そうすることで信頼を得られますし、伝えたいことも伝わると思います。

──それなら素直に聞き入れてくれそうですね。仕事を教えたり、アドバイスしたりする時のコツはありますか?

葉一「僕の場合、こういう風にやってみたらこういう結果がついてきたよ」という言い方で、ベターな選択肢を伝えます。

──なぜベストではなくベターなんですか?

葉一:自分の経験則でベストだと思っている解決策でも、部下にとってベストだとは限りません。その人に合った解決方法があるので、よほどの緊急時でなければ「この曲、すごく良かったから聴いてみて」とオススメするぐらいの押し具合がちょうどいいと思います。

──「こうしろ」と押し付けないんですね。

葉一:ただし、部下を気にかける姿勢は絶えず見せておきましょう。投げっぱなしにしないで、後で確認の時間を取るなど、「ちゃんと見ているよ」という姿勢を行動で伝えることが重要です。

──ありがとうございます。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

葉一:伝え方のスキルを磨くには、「真似ぶ」こともひとつの手だと思います。真似ぶとは、「“真似”をする+学“ぶ”」の造語。「この人は話し方がうまい、自分もこうなりたい」と思う人を、ぜひ見つけてみてください

真似したいと思うと、どうしてその人の話し方に惹きつけられるのか、自然と分析し始めます。僕も営業を始めたばかりの頃に、落語家の三遊亭鬼丸さんのラジオを聞いて、よく真似をしていました。それが今の授業動画にもいきていますから。

葉一(はいち)

教育Youtuber。1985年生まれ。東京学芸大学を卒業後、営業職、個別指導塾の塾講師を経て独立。2012年より、YouTubeにて小学3年生から高校3年生を対象にとした算数・す学の授業動画の配信を開始。チャンネル登録者数は100万人を超える(2020年7月時点)。著書に『一生の武器になる勉強法』(KADOKAWA)など。

YouTube:とある男が授業をしてみた

Twitter:@haichi_toaru

取材・文/文希紀 (@gigi_kikifumi )