自分の意見、きちんと発言できていますか?

今回お話を伺ったのは、お笑いジャーナリストのたかまつななさん。芸能人の政治的発言に対し批判の声も少なくない中、ジャーナリスト的な視点から、政治や社会問題に関する発信を果敢に続けています。

かつては自分の考えを人に伝えることが苦手だったというたかまつさんに、「意見が言えない」状態から脱却するための方法について教えていただきました。

意見を言わないのはデメリットでしかない

たかまつなな。フェリス女学院出身のお笑い芸人としてテレビや舞台で活躍する傍ら、お笑いジャーナリストとして社会問題を発信。

──たかまつさんのように、自分の意見を堂々と伝えられるようになりたいです。

たかまつななさん(以下、たかまつ):自分の意見が言えない人の多くは、意見を言うことで敵をつくることになったり、相手の機嫌を損ねたりすると思っていますが、実は意見を言わないほうがデメリットが多いんです。

──それは嫌われたり、敵をつくったりする以上のデメリットですか?

たかまつ:そもそも自分の意見を主張しないと、敵どころか賛同してくれる味方も現れないし、やりたい仕事も任せてもらえません。しかも、意見を言わずにあいまいな態度をとっていると、いいように使われて終わってしまう。自分で自分の首を絞めているようなものです。

──とはいえ、年次も下なので生意気だとか思われないでしょうか。

たかまつ“自分の意見を主張するヤツ”だと周囲に思わせることで、ハードルが低くなると思いますよ。毎日定時に帰る人は、普段残業している人に比べて、定時に帰っても何も言われないどころか帰らないと不思議がられるじゃないですか。それと同じです。

SDGsの講演にて。聴衆を巻き込む力強いスピーチが印象的。

たかまつ:私も以前は、自分の意見をなかなか言えないタイプだったのですが、はっきり意見を主張するパブリックイメージをつくることで、発言しやすくなりました。普段から意見するキャラ設定にすることで、発言するのが当たり前の土壌がつくられるんです。

──“発言するキャラ”になれれば、ハードルも下がりますね。

たかまつ:“発言するキャラ”認定されるには “前準備”が大切。つい小手先のテクニックに目が行きがちですが、実は足りていないのは圧倒的に“前準備”なんですよ。

“発言するキャラ”化するためにやるべき4つのこと

──前準備というのは、意見を言う前に自分の考えをまとめておくといったことでしょうか?

たかまつ:そうですね。発言しやすい空気をつくるための準備と考えましょう。以下の4つを試してみてください。

たかまつ:普通、会議で話し合うことは事前に決まっていますよね。上司や同僚に何を聞かれるか、ある程度は想定できるので、①のKJ法(※1)であらかじめ自分の意見をまとめておきましょう

(※1)文化人類学者の川喜田二郎がデータをまとめるために考案した手法。データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめていく。

──ケ、ケージェイ法ですか?

たかまつ:話の要点を付箋に書き出して、どの順番で伝えるとわかりやすいのか、付箋を入れ替えて考えてみてください。

たかまつさんが実際にKJ法を試した付箋。

──これなら体系的に話の順番を組み立てることができそうですね。プレゼンの時などにも役立ちそうです。

たかまつ:あとは、②のリアクションをしっかりとることが大切です。人は誰しも、自分の話をちゃんと聞いてくれた人の意見には、ちゃんと耳を傾けてくれるはずですから。

──リアクションで、話を聞いてもらいやすい状況を作れるんですね。

たかまつ:はい、その通りです。あとは③にある通り、会議の場では率先して議事録をとることもひとつの手だと思いますよ。会議中に話が混戦してきたら、論点をまとめて交通整理してみましょう。「つまり、これはこういうことですよね」みたいに、話を要約したり補足したりしてみる。

──それで意見を言うキャラになれるんでしょうか?

たかまつ:そうやってフォローに回ることで信頼を勝ち取っていけるので、自分の意見が言いやすくなるはずですよ。

──そういうことですか! ブレストの場合はどうでしょう? 事前準備だけでは対応しきれないと思うので……。

たかまつ:その場でとっさに発言するとなると緊張してしまって出る意見も出なくなりますよね。そういう時は反射的に答えず、まずは“質問返し”をしてみてください。

──質問返し?

たかまつ:たとえば、「○○さんが進めている案件についてどう思う?」と話を振られた場合、「この前の会議では、ここまで進んでいるとお聞きしたんですけど、あれから何か進展はありますか?」などと聞き返して、最新の状況を確認する。

──そうすると?

たかまつ:ひと呼吸置いてから発言することができますし、きちんと現状を把握した上で意見を考えることができます。

発言に説得力を持たせる3つのポイント

出張授業の1シーン。資料を用いて話を進めるため、より相手に話が伝わりやすい。

──発言しても意見が説得力を持たせるにはどうしたらいいですか?

たかまつ:次の3つを試してみてください。

たかまつ:まず大事なのは、その場にいる全員がわかる単語や言葉を使うことですね。たとえば、「たかまつなな」といっても、「お嬢様芸人」や「お笑いジャーナリスト」など、人によって思い浮かべるイメージはさまざまだと思います。

──全員が同じイメージを持つ言葉を選ぶということですか?

たかまつ:人によって解釈や受けるイメージが異なる言葉を使ってしまうと、言いたいことが正しく伝わらないばかりか、説得力に欠いた発言と受け取られてしまいます

──知識があるからと難解な専門用語を使ったりするのは逆効果ということですね。

たかまつ:また、口で言える意見がすべてではありません。②にあるように、資料に写真や図を用いて自分の意見を補足してもいいですし、直接相手に伝えづらい場合は、メールを活用するのもアリだと思います。

──口ではうまく伝えられないけれど、文章にすると自分の考えや想いを言葉にできるという人もいますよね。

たかまつ:そうですね。あと必要なのは③の質問で相手を巻き込むこと。どんな話をしても、相手に真剣に聞いてもらえなければ、当然、説得力のある意見として受け止めてもらうことはできません。そのためには、質問を投げかけ相手を巻き込みましょう

──ここでも質問が役に立つんですね。

たかまつ:たとえば、「たかまつななはどういうイメージですか?」と質問をして、相手と一緒にそのイメージについて考えてみる。共通認識をすり合わせることで、自分の意見に対しての相手の理解も深まり、スムーズに話を進めることができるはずです。

人格否定にならない、上手な反対意見の伝え方

企業向けSDGsの出張授業の様子。笑いが発言しやすい空気づくりにもひと役買っている。

──相手と反対意見を持っていた場合、上手に伝える方法はありますか?

たかまつ:「反対意見=相手の人格否定」と受け取られないために、まずは相手や相手の意見を持ち上げてみてください。

──持ち上げる? 反対しているのにですか?

たかまつ:たとえば、案件をひとりで抱え込む人が原因で業務が滞ってしまっていた場合、「〇〇さんのチェックが遅く、業務が円滑に進みません」と言うと、否定的に感じてしまいますよね。

──でも、それが事実なら指摘されてもしかたないのでは……?

たかまつ:反対に「〇〇さんは責任感も強いし、後輩の面倒見も良くて助かっています。でも最近すごく大変そうなので、私にも手伝わせてもらえませんか」と言えば角が立たないし、後から伝える自分の意見にも耳を傾けてくれると思います。

言い方ひとつで相手を否定せずに反対意見を伝えることもできる。

──言い方ひとつで印象がまったく違いますね。

たかまつ:相手が上司だと萎縮してしまう人もいると思いますが、ありのままの気持ちやその時の状況を伝えればよいと思います。

──ありのままに伝えちゃっていいんですか?

たかまつ:考えをまとめきれていないなら「まだアイデアベースですが」「なかなか答えが出なくて……」と、素直に発言の意図を伝えれば、上司も状況をわかった上で聞いてくれます。それを変に取り繕おうと、まとまりのない意見をダラダラ言うほうがよっぽど信頼に欠けます。

──その場の空気に押されて、つい意見を引っ込めてしまいそうな時はどうすればよいでしょうか。

たかまつ:その場の空気に合わせることは簡単ですが、それで本当にいいのか考えてみてください。その場の空気に逆らって意見するのは不安かもしれませんが、発言することで得られるメリットもあります。

──というと?

たかまつ:たとえば、自分の意見に10人中10人が賛成した場合、全員に対して特別な感情は湧かないけれど、10人中8人が反対意見だった場合、賛成してくれた2人には好印象を抱きますよね。少数派同士は信頼関係を育みやすく、それが次の仕事や今後の人間関係にいきてくると思います。

──そう聞くと、少数派も悪くないなと思えますね。

たかまつ:そうですよね。ですから、「あの時、何で言わなかったのだろう」と後悔しないようにしてください。強い意見で相手を論破する必要なんてありません。意見を伝えればフィードバックをもらって自分の考えをアップデートすることができます。発言することではじめて賛同者や味方も現れますし、チャンスも回ってくる

私自身も意見を主張することで、お笑いジャーナリストとして自分にしかできない仕事が増えていきました。まずは自分の幸せのために、あなたの考えを声に出しましょう

たかまつなな

1993年生まれ。フェリス女学院出身のお笑い芸人としてテレビや舞台で活躍する傍ら、お笑いジャーナリストとして、お笑いを通して社会問題を発信。慶応義塾大学院と東京大学大学院情報学環教育部在学中に、株式会社笑下村塾を設立。教育、進路講演会、ジンポジウム、ワークショップ、企業のビジネス研修の講師として活躍している。

Twitter:@nanatakamatsu

YouTube:たかまつななチャンネル

取材・文/文希紀 (@gigi_kikifumi )