【今回解説する心理テクニック】

  • 相手に拒否されずに好意を伝えるテクニック
  • オープン・ポジションで相手の警戒心を解く
  • 威圧感を与えないアイコンタクトの方法は?
  • 自分から視線をそらして相手の注意を引く
  • 好意を匂わせて相手の気持ちを確かめるには?

僕は袋小路ケン、歌舞伎町のホストクラブ「ペガサス」で働く駆け出しホストだ。

まったく指名の取れない僕を見捨てずにアドバイスをくれるNo.1ホストのナオヤさんのおかげで、少しずつだけど成長している……はずだ。

今日はナオヤさんが駆け出しだった頃からの太客、エミリさんがペガサスにやってきた。ナオヤさんが僕の相談に乗ってほしいと頼んでくれたのだ。

エミリさんのアドバイスによると、僕は相手に「好意を伝える」ことができていないらしい。相手に好意を伝えるからこそ、相手もこちらを意識してくれるようになるのだという。

そんな基本的なことさえできていな自分が情けないが、エミリさんのアドバイスをしっかり聞かなければ。

相手に拒否されずに好意を伝えるテクニック

相手に好意を伝えるには、伝え方が大事。一方的な押し付けになってはいけないし、関係性ができていない相手に突然、「愛してる」なんて言っても受け入れてもらえるわけもない。

つまり、「相手に拒否されない範囲」で「相手が嬉しいと思ってくれるやり方」で好意を伝えなければならないのだ。エミリさんに教わった「拒否されない好意の伝え方」は5つ。

<相手に拒否されずに好意を伝えるテクニック>

  1. 褒める、親切にする
  2. ミラーリング
  3. タッチング
  4. ボディ開示・アイコンタクト
  5. 思わせぶりな言葉

「①褒める、親切にする」は実践中、「②ミラーリング」は相手のしぐさや表情を真似して相手に親近感を持ってもらう心理テクニックだ。「③タッチング」はセクハラにならないやり方をエミリさんにアドバイスしてもらった(前回記事を参照)。

残すは「④ボディ開示・アイコンタクト」「⑤思わせぶりな言葉」の2つだ。

オープン・ポジションで相手の警戒心を解く

ボディ開示ってなんですか?」

僕の質問にエミリさんが答える前に、黒服がクマのぬいぐるみを運んできた。ぬいぐるみの正体は、エミリさんがボトルキープしていた「テディ」という飾りボトルのブランデーだった。テディベアをモチーフにした可愛らしいボトルだが、値段は30万円と可愛くない。

ホストクラブでは、卓を華やかに飾る目的で派手なデザインで高額の飾りボトルがたくさんメニューに載っている。でも、これまで僕のお客さんで飾りボトルを入れてくれたことがあるのは、No.1キャバ嬢で僕を初めて指名してくれたナナさんだけだ。いったいエミリさんは何者なのだろうか……。

ブランデーをストレートでチビチビと味わいながら、エミリさんは僕の手もとをじっと見つめている。

「どうかしました?」

「ボディ開示が何か知りたいんだろ? ほら、自分の手を見てみな。握りこぶしを作ってるよね。それは心を開いてない証拠

「え? そんなつもりは……」

「顔も体も私のほうを向いてない。何よりもつま先が出口のほうに向いていて、『あなたといると緊張しちゃうから、今すぐ逃げ出したいです』って言ってるみたいだよ」

まったく意識していなかった。ナオヤさんの大事なお客さまであるエミリさんを前に、緊張が自然と表れてしまったのかもしれない。驚いて返す言葉が見つからなかった。

「握りこぶしを作ったり、顔や体を相手に向けなかったりするのがクローズド・ポジション警戒や緊張、拒絶の気持ちがしぐさに出てしまっているんだ。自分が警戒しているんだから、当然、相手も緊張や警戒を解いてくれないよね」

「たしかに……」

「相手の警戒心を解きたいなら、自分からボディ開示してオープン・ポジションをとらないと。手のひらを見せるとか、顔・デコルテ・つま先を相手に向けるとか

「クローズド・ポジションでしたっけ? それと逆のことをすればいいんですね。……でも、デコルテってなんですか?」

「胸の上のほうから首筋のあたりのことだよ。リラックスして、相手を受け入れてる状態だと自然とオープン・ポジションをとるはずなんだ。つまり、心を開いているサインなんだよ」

威圧感を与えないアイコンタクトの方法は?

なるほど。意識してオープン・ポジションを取るようにすれば、言葉にしなくても相手に好意が伝わるということか……。考えたみたら、お客さまやまさみちゃんと話すときは常に緊張状態だから、無意識のうちにクローズド・ポジションを取ってしまっていたかもしれない。それじゃ逆効果だ。

「あと、ボディ開示とセットでやらないといけないのがアイコンタクト。好意を伝えるには目を見なくちゃ」

それはそうなのだが、僕はそもそも自分に自信がないし、「ガン飛ばすな」と地元のヤンキーに絡まれたこともあって人の目を見るのが苦手。そう素直にエミリさんに伝えると、「ずーっと目を合わせ続けてる必要はないんだよ。それじゃ怖いだろ」と微笑みながら続けた。

上半身全体をぼんやり見て、上下にゆっくり目を動かすこと。そして、自分が話したり、あいづちを打ったりするときに目を合わせるんだよ」

そう言って、エミリさんは目を動かして実際に見本を見せてくれた。

「あと、店でお客さんと距離を縮めるには、2人の間にある灰皿やグラス、荷物なんかをさりげなくどかすこと」

「どうしてですか?」

「誰でも好きな人とはくっついて座りたいと思うし、反対に苦手な人とはあいだにバッグを置いたりして距離をとろうとするだろ? その意識を逆手にとって、自然と距離が近づくように自分から仕掛けていくんだ」

自分から視線をそらして相手の注意を引く

それと、もうひとつ僕にもできそうなテクニックを教えてくれた。相手の気を引きたいなら、先に目をそらすのも効果的だという。先に目をそらされると、相手は「何か気にさわること言ったかな」「良く思われてないのかもしれない」と気になって受け身になるので、こちらのペースで物事が進みやすいというのだ。

「それを悪用して、女の子から必要以上にお金をむしり取るホストもいるけど、ケンはそんな心配なさそうだね」

笑っているエミリさんとは対照的に、僕は教わったことを頭の中にメモするのに懸命だった。

まずは好意を伝えるための基本のテクニック。

【好意を伝えるには】

  • 基本は、オープン・ポジション+アイコンタクト
  • 親密になりたいなら、相手とのあいだにあるグラスなどをずらす、片づける
  • 会話の主導権を握りたいなら、先に目をそらす

オープン・ポジションやアイコンタクトについてもメモしておかないと……。

【オープン・ポジション】

  • 手のひらを見せる
  • 腕を広げる
  • 顔・デコルテ・つま先を相手に向ける

【クローズド・ポジション】

  • 手のひらを隠す
  • こぶしを握る
  • 腕や脚を組む

【アイコンタクト】

  • 顔だけを凝視しない
  • 上半身全体をぼんやり見て、上下にゆっくり目を動かす
  • 自分が話す、あいづちを打つときに目を合わせる 

好意を匂わせて相手の気持ちを確かめるには?

最後はいよいよ「⑤思わせぶりな言葉」だ。これが一番ハードルが高い。どこからどこまでが思わせぶりなのか、本気なのか、まったく判断がつかないからだ。

「いかにも『そんなの無理』って顔してるね。でも、お客さんに恋愛相手になる可能性を感じさせないと、いくら色恋で売ってるイケメンホストじゃなくても売上げアップは無理だし、好きな女の子にも男として見てもらえないよ」

「でも、どんなことを言えばいいんですか? 気の利いたことは言えそうにないんですけど……」

「特別なことじゃなくていいんだ。『あれ? もしかしたら私のこと好きなのかな?』って匂わせるだけでいい。たとえばこんな感じかな」

  • 〇〇ちゃんが、彼女だったらいいのに
  • 〇〇ちゃんと一緒にいると、本当に楽しい
  • 〇〇ちゃんといると、安心できて何でも話せる

あえて遠回しに好意を伝えることで、「もしかして告白されることもあり得る!?」と相手に自分との恋愛をイメージさせることが大事だという。

恋愛経験のほとんどない僕にとっては、ダイレクトに告白しているのと変わらない言葉にも感じられるけど、「この言葉は相手の気持ちを確かめるリトマス試験紙」のようなものだとエミリさんは言う。

友達から先に進めない理由は簡単だった

「思わせぶりな言葉に反応してくれるなら脈アリだし、反応がいまひとつなら脈ナシ。思わせぶりな言葉でジャブを打っておけば、相手も心の準備ができるだろ?」

ジャブを打つ……。今までの僕は「告白するかしないか」「YESかNOか」の発想しかなかった。

「相手の気持ちを確かめることをせず、ただ自分の都合でボトル入れろとか、好きだとかっていうのは非モテのすることだね」

何年間もずっと片思いしていたまさみちゃんと2回のデートを経ても、距離がまったく縮まらない理由がようやくわかった。

店ではともかく、まさみちゃんには「いい友だち」を演じ、好きという気持ちをなるべく悟られないようにしてきた僕の努力はまったく逆効果だったわけだ。今度こそ、まさみちゃんにジャブを放ち、好意を伝えてみよう。うまくできるかわからないけど、もう前に進むしかない。

空になったエミリさんのグラスにブランデーを注ぎながら、僕はそう決心した。

<構成/伊藤彩子>

▶︎第21回は8月20日(木)の公開予定です。

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この記事を書いた人

斉藤恵一

斉藤恵一(さいとう・けいいち)

セルフマネジメントプロデューサー。日本心理学協会 認定心理士。大学時代に歌舞伎町のホストの世界に飛び込むも半年間売り上げゼロ。そこからセルフブランディングに取り組み、約6年間売上げNO.1となる。現在は美容業界、アパレル業界などでメンタリングやコミュニケーションスキルなどセルフマネジメントのプロデュース、人材育成に取り組む。

Twitter:@keiichisaito