メールやチャットなど、オンラインでのやりとりは、自分の考えが相手にきちんと伝わるか、不安がつきもの。相手の状況が読めないからこそ、慎重になります。

今回お話を伺ったのは、『書くのがしんどい』の著者で、編集者の竹村俊助さん。

多数のビジネス本のほか、有名経営者の発信を専属で編集している竹村さんに、「伝わる文章」って、どうやったら書けるんですか⁉ と、率直な疑問をぶつけてみました。

伝わるビジネス文章の「型」

──在宅勤務で、「文章だけで伝える力」が今まで以上に求められている気がします。竹村さんにとって「いい文章」とはどんなものでしょうか。

竹村俊助さん(以下、竹村)理解の速度と読む速度が一致する文章ですね。小説や評論などは別ですが、ビジネスで文章をやり取りするなら、わかりやすさが大事。難しい文章だと、理解する速度が追いつかなくて何度も読まなきゃいけない。

──なるほど! いち会社員として、わかりやすい文章を書くコツってありますか? 

竹村

  • まず結論を伝える
  • 理由を簡潔に添える
  • 相手を気遣う言葉で締める

の三段階で書く、ですね。

──結論から伝えるのが大事なんですね。

竹村たとえばメールなら、開いた瞬間から「相手が何を思うか」を逆算しながら書くといいですよ。

ネガティブなことを伝えなきゃいけない時、ダメな文章って、結論の後に長ーい理由がくるんです。読む側からすると、詰められてる感じが出てしまうんですよね。

読後感を良くするために、相手を気遣う言葉を入れると印象が変わります。

──なるほど。頼まれた仕事をやむなく断る場合など、相手がどんな気持ちになるか心配になるので、意識してみます。

竹村そういうふうに「気をつけなきゃ」って思う人は、正直もう既に気遣いができてると思うんですよね(笑)。逆に「自分はできている」と思う人ほど危ないので、ぜひ意識してほしいです。

そして、本当に言いにくいことは直接伝えたほうがいいです、空気感も伝わるし。

竹村俊助(たけむら・しゅんすけ)。『メモの魔力』(前田裕二)、『段取りの教科書』(水野学)などベストセラービジネス書籍の編集・執筆を担当。現在は経営者の発信をサポートする顧問編集者として活動中。

──そうですよね。怒っている相手にメールしなくちゃいけないときの文面なんて、本当に難しいです。

竹村トラブルに発展するケースって、「なんでこっちのことをわかってくれないんだろう」っていう、怒りの感情が源泉なんですよ。

だからこそ、「ご事情はわかります」「お怒りはごもっともです」と、相手の状況を想定して寄り添い、理解と共感を示すことが大事です。自分の考えを伝えるのはその後。

──まず想定できることを提示して心を配る、と。

竹村そうですね。相手を思いやることが大切です。とくに仕事だと、みんな「自分がいちばん大変なんだ」って考えがちですから

わかりやすい文章を書くためのトレーニングって?

──「しっかり伝えなきゃ」と思うと文章が長くなってしまうんですが、どうしたらいいでしょうか。

竹村まずは他人のメールを添削してみるといいですよ。僕もそうなんですけど、自分の文章でどこが大事なポイントかって、わからないじゃないですか?

──編集者の竹村さんでも、そうなんですか?

竹村今回出した本も、最初は200ページくらいにおさめる予定だったんです。けど、自分で書いてると「あれも書かなきゃ」「これも伝えたい」、って考えるうちに350ページくらいになっちゃいました(笑)。でも、他の人の文章ならバサバサ削れるんですよ。

「こんなに長くなるとは思ってなかったんだけど…」

──他人の文章を添削しているうちに、わかりやすい文章を書けるようになりますか?

竹村変わると思いますよ。自分の文章も、家族に30秒で伝えるならどうするかな? と考えてみるのもおすすめです。多くの人に、わかりやすく伝えるのが大事です。

──なるほど。

竹村いったんその文章を忘れて次の日に見てみたり、他の人に見てもらって感想を聞いたりするといいです。業界の違う友達に軽くしゃべってみる訓練もいいですね。

社内チャットも、もっと気楽に発信していい

──チャットだと、対面では話せていたちょっとした相談事や質問を飲み込んでしまうことが多いと思います。どうしたらもっと気軽にチャットできるようになると思いますか?

竹村「書く」んじゃなく、「会話」をしようとすればいいんじゃないでしょうか。Twitterは、会話に似てますよね。発言は、してもしなくてもいい。しゃべりたい人が自由にしゃべっている状況。それと一緒で、「会話しよう」と思った時にすればいいんです。

──チャットに長文投稿してしまうこともあるのですが、考えていることを簡潔に伝えるためには、どうしたらいいでしょうか。

竹村メールの「お世話になっております」文化とチャットは、少し違いますもんね。文章的なテクニックより先に、マインドを変えたほうがいい気がします。

「完璧主義をやめること」が大事なんじゃないかな。

──完璧主義をやめる?

竹村メールだと、完璧な文章にとらわれ過ぎてしまうんですよね。でも、チャットなら少し間違って送っちゃっても「あっ違った」「今のナシで」と訂正すればいい。

溜め込んでレスが遅くなったり、わかりにくい文章になったりするより、もっと軽やかに言葉にしていいと思います。

軽い気持ちでパッと返しちゃったほうが、意外と後々楽だったりします。

チャットでもわかりやすく自分の意図を伝えるには?

──オンラインでも効率良く、わかりやすく自分の意図を伝えるためには、どうしたらいいでしょう?

竹村まずは「相手は今移動中かも?」とか「イライラしているかも?」とか、いろんな想像をして送ること、かな。

──オンラインだと相手の環境が見えないので、連絡のタイミングも迷うんですよね。

竹村そうですよね。でも、レスは早いほうがいい。

返事って、借金みたいなものなんです。「どうやって返そうか?」と悩んでいるうちに時間が経って利子が膨れ上がって、一行で返せなくなっちゃいます。

返事は借金のようなもの。プライベートのやりとりでも同じことが言えそうです。

──たしかに、サクッと送っちゃったほうが気楽かもしれません。でも、上司から長文が送られてくると「こっちも丁寧に返さなきゃ」とプレッシャーで……。

竹村わかります。僕も「これは長文で返したほうがいいのかな…?」って億劫になることはありますよ(笑)。

でも、まずはすぐに返信すること。そのうえで、「またゆっくりお話聞かせてください!」と添えればいいんじゃないかな。

一般人も、発信しないともったいない

──SNSでの発信についても伺います。インフルエンサーを目指しているわけではない一般人の発信って、そもそもやるべきなの? と迷いがちなんですが……。

竹村今って、発言数が多い人が圧倒的に得な社会だと思うんです。

昔の日本人って「黙々と仕事をするのが美徳」って空気がありましたよね。会社員でSNSしているのはちょっと微妙な人で、本当にデキる人は何もやらない。それがかっこいい、みたいなイメージ。

──確かに、「SNSより手を動かしなよ」って印象もあるかもしれません。

竹村でも、やっぱり、発信しないと何も起こらない。コロナ時代になって、オンラインがメインになってくると、せっかくいい仕事をしていても、発信しないといないことになっちゃう。「自信がない」「なんだか恥ずかしい」っていう理由で発信を控えている人、もったいないですよ。

──竹村さんは、会社員時代、SNSで発信してよかったことってありますか?

竹村ぼくの場合、会社の外に発信し続けたことによって、出版業界だけじゃなくてウェブ業界、広告業界の人にも認知してもらえるようになりました。これが独立後すごく役に立った。「こういう仕事やってみませんか?」と声をかけてもらえるようになったんです。

──なるほど! たしかにそれは、発信し続けたからこそ起こったことですね。

竹村独立を目指していなくても、別の会社に知られていると、転職のときに有利なはずです。「ああ、SNS見てますよ」と面接がスムーズに進んだりするかもしれません。キャリアアップにもつながるし、こういう先の見えない時代の「セーフティーネット」にもなるはずです。

──書くのが苦手な人は、まず何を意識したらいいですか?

「書かなきゃ、でも書くことがない」から脱する方法は?

竹村「誰に対して書くのか」を考えるのが大事です。そして、書こうとするのではなく、伝えようとしてください。「書くこと」を自己目的化してしまうと、書けないですね。伝えようと思えば、「なにを、だれに、なんのために伝えたいのか」が見えてきます。

もちろん、伝えたいことがなければ無理にやらなくていいんですよ。「書かなきゃ、発信しなきゃ」と思うのは、本末転倒

──なるほど。広く読まれたらうれしいけれど、炎上リスクも。竹村さんは、発信で気をつけていることはありますか?

竹村なるべく断言しないで、「かもしれない」を使うように心がけてます。「こうしなきゃいけない」みたいな書き方をすると「そうじゃない人もいる」っていう反論がでてくる。

──たしかに、どこからどんな意見が出てくるかわからないですものね。

竹村「個人的な意見ですよ」感を出すことも心がけてます。ずるいなって思うんですけど、人に聞いた話っぽくするとか(笑)。

「僕の周りの〇〇は〇〇が多い」とかなら、嫌な感じもせず、炎上しない。

──後輩との接し方にも活かせそうです。

竹村僕が次に本出すなら「ものの言い方」をテーマをしたいなと思っているんです。「~してください」は強く聞こえるけど、「してもらえますか?」なら優しく伝わる。

好感度が高い人は、いつも語尾に気をつけてるんですよね。

竹村俊助(たけむら・しゅんすけ)

株式会社WORDS代表取締役。経営者の発信をサポートする顧問編集者。中経出版、星海社、ダイヤモンド社等を経て独立。『メモの魔力』(前田裕二)、『福岡市を経営する』(高島宗一郎)、『段取りの教科書』(水野学)など書籍の編集・執筆を担当。

Twitter:@tshun423

note:竹村俊助/編集者|note

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/飯本貴子(@tako_i