突然ですが、あなたはオタクですか?

おしごとメディアなのに一体何を……と思うかもしれません。「たしかにアイドルが好きだけど、それなんか関係ある?」と、身構えた人もいるでしょう。「オタクだけど、最近はコロナウイルスのせいで推しに会える現場がなくなっちゃって、生きる気力を失ってるよ〜」という人も多いかもしれません。

今日はそんな、現場がなくて落ち込んでるオタクを励ましたくて、「オタクとしてやっていたことを振り返ると、仕事に役立つことがたくさんあるよ」という話をしたいと思います。「私、オタクじゃないんだけど……」という人にも、きっと仕事に役立つヒントがあると思うので、このまま読んでくれたら嬉しいです。

オタクとしての人生が仕事に役立つ瞬間がある

さて、改めて自己紹介をしますが、兼業ライターのひらりさと申します。現在31歳。根っからのBL好きオタクであり、IT系企業で働きながら、個人でのライター活動を行い、オタク友人たちと「劇団雌猫」というユニットでの出版活動もしています。

ライター、劇団雌猫としては、趣味で培ってきたオタク文化についての知識をそのまま生かした書き物などをしているので、「好きを仕事に」していると言えるかもしれません。

一方で、実は「(オタク産業と関係ない企業の)会社員」という身分においても、よくよく考えると、自分がオタクとして重ねてきた経験が役に立っている瞬間が多々あります。「好きを仕事に」している人だけでなく、「たしかに私もあるかも……」と心当たりのあるオタクのみなさんも、結構いるのではないでしょうか。

実際、昨年夏に『本業はオタクです。 シュミも楽しむあの人の仕事術』という本を出したときにも、大変な反響がありました。

この本の中では、オタクとして趣味をめいっぱい謳歌している一般女性の皆さんに、「仕事と趣味、どうやって両立してますか?」をインタビューしているのですが、「趣味と仕事は切り分けているけれど、全然関係ない仕事についていても、オタクとして培っていた能力が結構あります」という声がたくさんあったのです。

ということで、Twitterでの調査や『本業はオタクです。』での知見も交えつつ、ご紹介していきましょう。

【1】パソコン操作に抵抗がない

はい。単純なようでめっちゃ大事なスキルです。インターネットもSNSも、今はとっても広く普及していますよね。シニアの方でもGmailやFacebookをプライベートで使いますし、物心ついてからiPadがおもちゃというミレニアルチルドレンの話も聞きます。

しかし、「パソコンと長時間向き合うのが苦じゃない」というのは80〜90年代生まれのオタクの特徴ではないでしょうか。

好きなジャンルの情報や二次創作を追いかけるうちにタイピングが上達して行った日々、そして自作小説をアップしたくてhtmlタグと格闘しながら“ホムペ”を構築した思い出。スマホでなんでも事足りてしまう時代となった今、パソコンと向き合う時間を10代のうちに自然と持てていたのって、なかなか貴重なことだったんだな!? と骨身に染みています。

特に私の場合、IT企業で働いているため、仕事に関わる仕様書の内容を理解しないといけない場面もあり、いにしえのhtml知識をもとに「完全には意味わからないけど、大体こういう意味だな」という当たりをつけられるのもとても助かっています。

Twitterのフォロワーさんの中にも、こんな人がいました。

「私はWebデザインの仕事をしています。好きなものを推すために作っていたWebサイトをちょっとでも可愛く綺麗にしたい思いでHTMLやCSSを必死に学んでいた10代の頃の趣味がそのまま仕事になりました。フォントのひとつにもこだわるあたりは、若かりし頃、推しの一挙手一投足を見逃すまいとしていたあの頃に培ったものだな〜と、今振り返っていて思いました。」

サイト作りへの思い入れを持ち続けて、デザイナーさんになっている! 「愛」を持って、パソコンやウェブサイトに向き合えるのも、オタクならではですね。

【2】他人とコミュニケーションするのが苦じゃない

「(任意のネットサービス名)で知らない人と会ったせいで危険な目に!」という論調のニュースを見るたび、「それはそのサービスのせいじゃなくて、まずその大人が悪いんだろ!」とイラッとすることがあります。

なぜならば私は、学校のクラスにあまり馴染めなかった分、mixiオフ会やTwtitterで出会ったさまざまな「オタ友」によって、人生を支えられてきたから……。

オタクだからこそ、趣味という共通項を通じて、老若男女さまざまな人と交流し、初対面の人とコミュニケーションすることに慣れているという人は意外といるのではないでしょうか。

私の仕事でも、新規のクライアントさんにたくさんアポを取る必要があるときがあり、「SNSで好きな絵師さんに話しかけたときの勇気」や「初めてのオフ会で自己紹介をした勇気」を思い出しながら、臨んでいます。

【3】議事録やメモを取るのが尋常じゃなく速い

これはオタク以外の人は、あまりピンとこないスキルかもしれません。私の場合は「Twitterめちゃくちゃやってるから」なのですが(笑)、オタク、デジタルでもアナログでもめっちゃ「記録」をする機会があるのです。

「テレビ番組見て実況するから」「アニメを一時停止しては好きなセリフをいちいちメモっているから」「後でレポートブログを書くために、推しの萌えたポイントを現場でメモっているから」など、オタクジャンルによってさまざまな背景があります。

特に、長年コンサート参加・観劇をメインフィールドとしているタイプのオタクはやっぱりすごい。こうした友人と現場に行くと、推しをじっくりと眺めているので顔は前を向いているのに、膝上では暗闇のなか猛然と手を動かしているのです。

これらのオタ活の結果として、「会議で議事録を取るのが早い」と重宝されている人はかなりいるようです。

【4】相手に合わせたプレゼンができる

これは、オタクのフォロワーさんから教えてもらって「たしかに〜!」と思ったスキルです。

「広報業務を担当しているのですが、オタ友を自分の沼にハメるときに『Aちゃんは長髪で気が強いキャラが好きだから、それを中心にすすめよう』『Bちゃんは正反対の男のクソデカ感情が好きだから……』と布教してきたことを応用して、仕事で関わる企業や媒体編集者のSNSや記事、プロフィールを調べまくり、好みに寄せた視点から話を展開することで、仕事をうまく運ぼうとしています

よくよく考えたら、自分の会社やサービス=推しのようなもの。推しの魅力を最大限の言葉で伝えることと、それをハマってほしい相手に合わせて言語化すること。どっちもオタクの得意分野ではありませんか。

ちなみに私の友人の中には過去、「むしろ仕事で培った資料作成スキルを生かして、ものすごく仕事デキる感のある推しキャラ布教スライドをつくっている女」もいました。プレゼンスキルは相互に役立つ

【5】「深掘り」「考察」を楽しめる

最後に、どんな仕事にも応用できる性質があります。それが「興味を持ったことを徹底的に深掘りできる」こと

どんな仕事でも、「知る」ことは重要になりますよね。そしてオタクほど、「知る」ことに貪欲な属性の人間もいないと思います。だって、好きな推しやハマったジャンルについて調べること、それらについて深く掘り下げることなどは、あらゆるオタクの大好物だからです。

同じアニメを何度も見て感想ブログを書いたり、少年漫画の行間を読んで二次創作小説を書いたり、好きなアイドルの自撮りからお気に入りブランドを推測したり……。オタクの日常は「深堀り」「考察」と切っても切り離せないのです。

実際、Twitterでも「オタクとしての考察スキルが生きてます」という意見が集まりました。

「ハロオタとジャニオタを10年ほどやっています。運営とアイドルを観察&深読みし続けた結果、人材育成や組織開発の似非経験が積まれ、人事コンサルの仕事に役立っています。」

「土地を安く買ってできるだけ高く売ることをしているのですが、好きな芸能人の言動に執着する癖がついているので土地の持ち主の言動をいっこいっことらえ、執着して厄介な売り主か、売る気がないのにあると言っちゃう人か、本当はお金がいますぐ必要なのに必要でないふりをしているのか……を見分けるのに役立っている気がします。」

『本業はオタクです。』でも、戦略コンサルタントとして働いている女性のインタビューで、こんなコメントがありました。

コンサルの思考回路って、深読みオタクの思考回路に近いんですよ。

――えっ?

コンサルティングファームに入社すると、仮説思考とロジカルシンキングを死ぬほど叩き込まれるんです。初期仮説を立てて、それを検証して、うまくいかなかったら新しい仮説を立て直して……というサイクルの繰り返しですね。

深読みオタクって、まず「えっ、この二人って付き合ってるんじゃない?」って仮説を立てて、それを確認するために原作をもう一度読むじゃないですか。これは仮説を検証する作業ですよね。ここがメタファーになってるんじゃないかと推測したり、「……ということは? こいつはあいつのことが、好き?」とかって、二人が付き合ってる証拠を取りに行ったりする。その一連の流れは仮説思考なんですよ。深読みオタクや考察オタクの行動は、コンサルとやってることが一緒です。

(『本業はオタクです。』49ページより)

オタクには、コンサルが訓練で身につける能力が備わっている……!? 思わずコンサルファームの求人を探したくなるような考察です(考察オタク、なだけに……)。

現場がない今こそ、スキルを棚卸ししよう

「オタクが生きているビジネススキル」、あげ出したらめちゃくちゃあるじゃん! と自分でも驚いてしまいました。引き続き、この記事を機に「こういうスキルもオタクなおかげで身についたよ!」情報をもっと知りたいところです。

また、オタクという自認がない方でも「趣味や生活で自然とやってることで、仕事に生きているスキル」が結構あるんじゃないかなと思いました。逆に、今からオタクの世界に足を突っ込んでみることで、上のスキルを身につけるというのもアリかもしれません。

現場を生きがいにしていたタイプのオタクの方ほど、今はつらい時期だと思います。だからこそ、今は「オタクとしての人生が、オタク以外の生活にもたらしてくれていること」を棚卸しする良いタイミングでは?とも思います。

また推しに心置きなく会える日を祈って、お互いお仕事頑張りましょう〜!

この記事を書いた人

ひらりさ

ひらりさ

平成生まれのアラサー腐女子。BLと酒を主食に、会社員のかたわらライター活動をしている。同人サークル「劇団雌猫」としての企画・編集・執筆も行っており、近著に『一生楽しく浪費するためのお金の話』がある。

Twitter:@sarirahira