チームはそれぞれ役割があって成り立つもの。でも、目立つポジションやキャラの強いメンバーばかりが注目されてしまう……。そんなモヤモヤ、感じたことありませんか?

お話を伺ったのは、昨年の『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝、大ブレークした女性芸人トリオ「3時のヒロイン」の福田麻貴さん

ゆめっちさん(左)、かなでさん(右)とトリオを組む福田さん(中)。

3人の中で最も芸歴が長い福田さんは、ネタ作りを担当するトリオの頭脳的存在。でも、以前は、キャラの強い2人に挟まれて「自分だけ“おもろない”と思われてる?」と感じていたそう。

福田さんはそんなモヤモヤにどう向き合ったのでしょう。現在のリアルな心境とアイドルを経て芸人に転身するという厳しい道を選んだキャリアについても聞きました。

一度は「お笑い」をあきらめてアイドルの道へ

福田麻貴(ふくだ・まき)。お笑いトリオ「3時のヒロイン」のツッコミ担当。2019年に『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝、一気にブレーク。

——福田さんは芸人になる前、「つぼみ」という大阪を拠点とするアイドルユニットで活動されてました。もともとアイドル志望だったんですか?

福田麻貴さん(以下、福田):ずっとテレビに出る仕事をしたいって思ってて。「芸能界に入りたいなら、お金がかかってもちゃんとしたところで学んだほうがいい」という母親のすすめもあってNSC(吉本総合芸能学院)大阪校に入りました。

——NSCといえばお笑いを連想する人が多いと思いますが、なぜアイドルに?

福田:私が入ったのは女性タレントコースだったんです。子どもの頃からお笑いは大好きでした。でもネタとか書かれへんし、プロのお笑いの土俵に立つのは無理かなと思って。

子どもの頃から「面白いってかっこいい」と感じていた。

——あえてお笑いを選ばなかった、と。

福田:私は5期生だったんですが、ある時「5期生が丸ごと『つぼみ』っていう名前になります」って言われて。

モーニング娘。が好きだったので「アイドルできるやん。歌って踊れるってラッキー」みたいな感じで、関西のローカルアイドルとしてノリノリで頑張ってました。

——アイドルとしての活動は楽しかったんですね。

福田:めっちゃ楽しかったです。それに、女性タレントコースでもネタを書く授業があって、試しに『M-1』に出たりしてたんですよ。ここにいたらお笑いもできるし、アイドルもできるなと思っていました。

モーニング娘。 最高ですよね。

「アイドルがお笑いすんな」と言われて反発心に火がついた

——充実していたアイドル活動を卒業されたのはどうしてですか?

福田:当時、つぼみをやりながらお笑いコンビを組んでたんですけど、お笑いで売れたいっていう気持ちが芽生えてきたんです。けっこう風当たりが強かったこともあって。

——風当たりが強かったとは?

福田「アイドルが生半可な気持ちでお笑いすんなよ」って言われたり。そこに対する反発心もあって、「絶対にあいつらを見返す! お笑いで売れる!」みたいな気持ちがどんどん強くなっていきました。

福田さんにもそんな尖っていた時代が……。

——アイドルをやっていた人が芸人に転身すると、ますます風当たりが強くなりそうですよね。

福田:それがあるから、つぼみを卒業してすぐに東京に出ることにしたんです。大阪で芸人をやってたら絶対に「アイドルのくせに」って見られ方をするだろうなってわかってたから。

——思い切った決断ですね。

福田:東京なら誰もつぼみを知らんから「元アイドルです」って言い切れるし、「どの顔でアイドルやっとんねん」「なんやその知らんアイドル」みたいな感じでいじってもらえるかなと思ったんですよね。

逆境を武器にしてしまう発想がすごい。

放送作家になろうと思ったこともある

——3時のヒロインを組む前は、東京でどんな活動をしていたんですか?

福田:当時組んでいたコンビでヨシモト∞ホール(渋谷にある吉本興業の劇場)に出たり、つぼみのワンマンライブの台本を書いたり。放送作家とかの裏方を目指そうかと思ったこともありました。

——でも裏方にはならず、3時のヒロインを結成したんですね。

福田:やっぱり私はもともとテレビに出たくてNSCに入ったっていうのがあったので。そのために、お笑いに対する考え方を自分の中で一回壊してみようと思ったんですよね。

ピン芸人として劇場に立ったこともあるという。

「テレビに出るための笑い」を考えて「3時のヒロイン」を結成

——テレビに出るためのお笑いというのを強く意識したということですか?

福田:そうです。テレビっていうものを思い浮かべて「ここに出るのはどんな人なんやろう?」と思った時に、やっぱり手放しで笑える人がいいのかなっていうのがあったんです。

——「何も考えなくても笑える」みたいなことでしょうか?

福田:以前は練りこんだネタや話術で笑わせる芸人さんが好きで、ずっと憧れてたんです。

——そういう芸人さんってかっこいいですよね。

福田:ただ、テレビに早く出るために、ちっちゃい子でも笑えるような明るくてわかりやすいキャラクターの人と組めたらいいのかなと思って。ゆめっちとかなでちゃんの2人を誘って、3時のヒロインを組みました。

3時のヒロインを組んだのは、「テレビのためのお笑い」を考えた結果だった。

「私だけ“おもろない”って思われてる」と被害妄想を持ったことも…

——相方おふたりの芸人としての魅力はどういうところですか?

福田:2人とも明るくて表現力がめっちゃ高くて、本当に何も考えなくても笑える、笑いが伝染するっていう感じの魅力があると思います。なんか、上から目線であれですけど。

——いえいえ、大丈夫です。ただ、ゆめっちさんとかなでさんが見た目もポップなキャラなので、どうしてもそちらに注目が集まるところはありますよね。

福田:テレビに出始めた最初の頃は、私だけ「こいつおもろないな」って思われてるやろうな、っていう被害妄想がありました。どこに行っても面白いのは相方の2人っていうイメージがついちゃったので。

福田:それがめっちゃ悔しくて。「いや、私、お笑いめっちゃ好きやねん!」っていう反発心をずっと抱えてました。でも、3人でやっていくには、やっぱり自分の心のプライドをへし折る必要があったんですよ。

——つらかったのでは?

福田:受け入れられるまで結構時間はかかりましたけどね。「待っていたらお前が出る時代は絶対来るから」って言ってくれる人もいたので、何とかやっていけました。

そこから落ち着いてきたというか、視野が広くなってきて。お笑いはもちろん頑張りたいし、もっとうまくなりたいけど、テレビの中で柔らかいタレントでいたいって思うようにもなりました。

——「アイドルのくせに」という声への反発もそうですが、福田さんの中の尖った部分が柔軟になってきたということですね。

福田:そうです。今も尖ってる部分と柔らかい部分とが半分半分ですね。

取材中、福田さんは終始とても柔らかい印象でした。

自分の才能は他人に指摘されて気づくもの

——むしろそれが良かったのかもしれないですよね。尖ってるばかりだと世に出るのが大変だったりするじゃないですか。

福田:本当に私、小学生の時から何でも1番になることがなくて、どんなことでも“人よりちょっとできる”みたいな感じだったんです。運動も勉強も部活もだいたい2番手か3番手ぐらいで、全部合計したら結構すごい、みたいな感じでした。

——秀才タイプですね。

福田:だから、今も1番にはなれないけど、その分だけコメンテーターとか文章を書くとか、最近ではドラマのお仕事もいただいたり。とりあえず来たものを全力で頑張って、流れるままにいこうかなって最近思い始めました。

——受け身のスタンスでもいい、と。

福田周りが私をどこに落ち着かせるのか決めてくれるのかな、っていう感じですね。

すごく素敵な言葉をいただきました。

——Dybe!世代の中には「1番になりたい」とか「もっと上に行きたい」と、もがいている人も多いんです。

福田自分の得意じゃないところで1番になりたいって思ってる人が多いのかなって思います。周りの人に聞いてみたりして、自分にどういう才能や得意なことがあるのかを気づけたらいいのかもしれないですね。

——確かに。自分には当たり前でも、人から見たらすごいことってありますよね。

福田:私も最近コラムを書くお仕事をいただいた時に、担当者の方からすごく褒めていただいたんですよ。「小説家でもここまで構成をきれいにまとめられないですよ」って言われて、「え、そうなんや」って思ったり。

——すごい、絶賛ですね。

福田:そういうのに気づき始めたら、じゃあそっち伸ばそうかな、ってなってきたんです。自分の才能に気づいたらそれを磨けばいい。そこじゃないところで無理に1番にならなくてもいいのかな、と思いますね。

福田さんがなりたかった芸人像についても話してくれました

——自分の才能は他人が見つけてくれるものなんですね。

福田:私もなりたい芸人像と自分が流れていってる芸人像が違いますから。私、もともとはフジモン(藤本敏史)さんみたいな芸人さんになりたかったんですよ。みんなにいじられて、ずっとバーッてしゃべっているみたいな。

でも、性格違うから無理やん、ってどこかで気づいたんです。なりたいものと自分ができるものは全然違うなって思いますね。

「デブいじりがNG」なんて、むしろ時代に逆行してる

——時代の変化に伴って、求められるお笑いの種類が変わってますよね。たとえば、太ってる女性芸人の体型をいじるのは良くないという風潮になっています。

福田:3時のヒロインを組んだ時から、かなでちゃんには「憧れられるぽっちゃり」でいてほしいっていうのがあったんですよね。

「憧れられるぽっちゃり」とは?

福田:かなでちゃんが自虐的なことを言ったり、私がその体型をイジったりしても、かなでちゃん自身がそれを武器にしてるっていう状態だから、それは時代と合ってなくはないと思うんです。

——なるほど。

福田:一部の人にはセンシティブに受け取られるかもしれないですけど、この子は体型をネタにしてお笑いをすることで自信を持てているんだよ、っていうのが伝われば大丈夫かなと思います。

——デブネタがすべてダメだというわけではないということですね。

福田:デブいじりは絶対NGだとしたら、それって逆に腫れ物に触るように扱ってるってことで、むしろ時代に逆行していると思うんですよね。大切なのは、本人が自分を好きでいられるかどうかだと思うんです。

「このままでいいと思うなよ」って自分に対して思ってます

——『女芸人No.1決定戦 THE W』での優勝から一気にブレークしましたが、勝つためにどんな戦略を考えていたんでしょうか?

福田:私たちは第3回で優勝できたんですけど、第1回と第2回は自分の中でやり切ってなかったっていうのがあったんですよね。だから、第2回が終わった後に単独ライブを月1回やるようにして、ネタをたくさん作りました。

——決勝で演じた2本のネタはどうやって選んだんですか?

福田:1本目は漫才で着実に笑いを重ねて、2本目のコントは爆発力でいけたらいいなっていう気持ちでやりました。「アッハーン」っていうコントは、優勝できなくてもこれで売れたいっていうのがあって、絶対やろうと決めてましたね。

お笑いに対してどこまでもストイックな福田さん。

——フレーズが印象に残るネタですよね。優勝した後の福田さんがまったく浮かれてなくて「ここからが勝負ですから」と冷静におっしゃっていたのが印象的でした。

福田:目標がテレビに出ることだったんで、優勝したから売れるわけではないと思っていて。スタートラインにやっと立ったなっていう感じでした。

——テレビ出演がかなり増えましたが、ご自分の中で手応えはありましたか?

福田:全然ネガティブな意味ではないんですけど、「またここからやな」って思ってます。今までは「とりあえず1回売れたい」みたいな感じで、1回売れたら気がすむと思ってんたんですけど、全然気がすまなくて。

——貪欲ですね。

福田:やっぱり周りの芸能人の皆さんはみんな努力してはると思うんで、このままではダメだろうなっていうか、このままでいいと思うなよ、って自分に対して思ってます。

【連続ドラマに初レギュラー出演!】

ベストセラー作家・東野圭吾さん原作の“危険な”ラブサスペンス。
日曜劇場『危険なビーナス』(2020年10月11日スタート)に福田麻貴さんがレギュラー出演します!

  • 番組名:日曜劇場『危険なビーナス』(TBS)
  • 放送開始:2020年10月11日(日)スタート
  • 放送日時:毎週日曜よる9:00〜9:54(初回25分拡大)

福田麻貴(ふくだ・まき)

1988年大阪出身。お笑いトリオ「3時のヒロイン」のツッコミ担当。2019年の『女芸人No.1決定戦 THE W』で優勝し、一気にブレーク。

Twitter:@fukudamaki

Instagram:@fukuda_maki

取材・文/ラリー遠田(@owawriter
撮影/佐野円香(@madoka_sa