「部下や後輩にダメなところは見せられない」「自分がしっかりしなきゃ!」……。そんなプレッシャー、感じてませんか?

でも、「実は、メンバーに甘えたほうがチームはうまくまわるんですよ」と教えてくれたのは、おくりバント代表・高山洋平さん

高山さんのホームタウン・中野にて。

高山さんはIT業界大手アドウェイズの中国支社で営業統括本部長を経て、株式会社おくりバントを設立したマネジメント経験豊富な人。……と思いきや、管理業務が苦手過ぎて、メンバーにやってもらっていたとか?!

高山さん流の「人に甘えるリーダー論」とは?

人に甘えないでもやっていける? そんなのただの過信です

高山洋平(たかやま・ようへい)。クリエイティブカンパニー、おくりバント代表。「プロ営業師」「プロ飲み師」を自認するコミュニケーションのスペシャリスト。

——「しっかりしなきゃ」「ダメなところを見せられない」という気持ちが強くて。苦手なこともひとりで抱え込んでしまいがちなんです。

高山:いやいや、もっと周りに甘えましょうよ。そもそも、世の中のほとんどの人は誰かに甘えざるを得ないんです。まずはそこを理解して、「甘える=よくないこと」というマインドを変えたほうがいいですね。

——え? 甘えてもいいんですか……?

高山:もちろんです。ソフトバンクの孫社長やファーストリテイリングの柳井社長のような本物の超一流であれば、誰にも甘えずに生きていけるのかもしれない。

でも、そうじゃない人のほうが圧倒的に多いでしょ? あなた、孫社長じゃないでしょ?

——もちろん、違います(笑)。

高山:俺ももちろん、孫社長じゃない。一流の社長たちと仕事をする機会もあるけど、「同じ社長でも自分とは全然違うな」って思いますよ。でも、苦手なことがある人は社長になっちゃいけない、なんて決まりはないじゃないですか。

——たしかにそうですね。

高山:大事なのは、お客さんに満足してもらえる仕事をすること。その過程で、苦手なことを誰かにお願いするのは、何も悪いことじゃないですよ。

むしろ、誰にも甘えずにやっていけるなんて思うのは、自分の力を過信してるだけです。

自分ができないことでメンバーを叱っていいの?

——部下や後輩を注意しないといけない時、「自分ができてないのに、言いにくいな」と思うこともあって。高山さんはどうですか?

高山:基本的には、自分ができていない分野に関してはうるさく言いません

——え、でも上司とか先輩の立場なら……。

部下や後輩を注意しないとダメですよね?

高山:たとえば自分は、営業は得意ですが細かい作業が苦手で。アドウェイズ時代に営業チームのマネージャーを任されたんですが、アポ件数の管理業務やチームの数字を資料にまとめる作業がまったくできなかったんです。

——それ、マネージャーの仕事ですよね……? どうしてたんですか。

高山:しっかり者で管理が得意なチームメンバーにお願いしてました。でも、営業のやり方については指導してましたよ。マネージャー業務の中で、苦手な部分だけをメンバーにお願いしていた感じです。

「苦手だよ」と笑顔で言い切る高山さん。

——マネージャー業務の一部をチーム内にアウトソースしてたんですね。新しい……。

高山:苦手なことを無理に頑張っても、得意な人にはかなわない。それなら、自分が得意なことを頑張ってしっかり貢献できたほうがいい。チームメンバーに対しても同じように考えています。

——ちなみに、勤怠や売上報告など、会社のルールとして最低限やらないといけないことができていない場合はどうするんですか?

高山:そこは、注意せざるを得ないですよね。でも、「やれよ!」と強制するんじゃなくて、「おいおい、俺に対する嫌がらせか?(笑)」とか「やってください。この通りです。やってくれたら何でもします!」みたいに冗談も交えて、深刻にならない言い方を心がけています。

苦手を任せて得意を伸ばせば、ラクをして勝てる

高山:自分は、「ラクをして勝つ」ことをいつも意識しているんです。『銀河英雄伝』っていう漫画、知ってます?

——たしか、未来の話でしたよね? 銀河を舞台に人類が2大陣営に分かれて戦う、みたいな。

高山:そうです。「ラクをして勝つ」は、『銀河英雄伝』に登場するヤン・ウェンリーの指針なんです。

苦手なことより、得意なことを頑張るほうが楽じゃないですか。得意なことで最大限パフォーマンスを発揮して、苦手なことはそれが得意な人にお願いする。これが「ラクをして勝つ」です。

——「苦手より得意を頑張ろう」と考えるようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

高山:アドウェイズに転職したばかりの頃、一斉送信メールの送り方がわからなくてテンパったことがあるんです。それまでは不動産の営業でテレアポしかやってこなかったから、パソコンスキルがまったくなくて。

あの時は、「メールすら送れないなんて、この先どうしよう……」と本気で悩みましたね。

——そうなんですね……。

高山:えぇ。10秒くらい、しっかり悩みました。それで、「パソコンスキルはあきめて、得意な営業を頑張ろう」と気持ちを切り替えたんです。

みんながパソコンスキルを磨いていた間、自分は営業をずっとやってきた。俺には営業がある! って。

テレアポの様子を再現する高山さん。

——(笑)。切り替え早いですね。

高山:もちろん、楽して勝つためには、特技を伸ばすための勉強や、協力してくれるメンバーとの関係づくりなど、いろいろな努力が必要です。「楽をする=努力しなくていい」というわけではないので、そこは注意ですね。

甘えるには、まず信頼関係を築くことが大事

——高山さんがチームメンバーに甘える時には、どんなことに気をつけていますか?

高山:まず前提として、相手と信頼関係が築けていないと、甘えられませんよね。信頼関係を築くには、相手をよく知ることが大事です。

大切なのは「信頼関係」。

高山:何が得意で何が苦手なのか、どんなものに興味があるのか……。時間をかけて相手を理解する。同時に自分のことも知ってもらう。そうやって信頼を得た上で甘えるんです。

——まずは信頼関係を築くのが大事なんですね。甘え方のコツってありますか?

高山:ちょっとおふざけを入れることですね。たとえば、車好きのメンバーに資料作成を頼んだ時に、「この案件取れたら何でも好きな車買ってやるよ! だから資料お願いね」とか。

部下に作ってもらった書類を褒める(再現です)。

——(笑)。「しょーがないな」と思いつつも引き受けちゃいそうですね。

高山:おふざけを入れつつ褒める場合もありますよ。ミスの尻拭いをしてもらったら、「このミスがよくわかったな。ありがとう……そしておめでとう。ついに上司である俺を抜いたな」とか。

甘えていい相手かどうか、どう見極める?

——でも、おふざけばかりだと、部下にナメられません?

高山ナメられていいんですよ。表面上ナメられるのは、じゃれてるみたいなものだから。自分の得意な分野でちゃんと結果を出せていれば、根幹の部分でナメられることはありません。

部下に甘えるためには結果を出す姿も見せる。

——相手によっては、冗談が通じなかったり、甘えても受け入れてもらえなかったりするケースもありますよね。甘えてOKな人かどうかの見極めはどうやっているんですか?

高山「自分はこれができない」と言った時に相手が引くかどうかですね。

そういう人とは、急いで距離を縮めようとしないこと。旅行のお土産を買っていったり、来ないだろうと思っても飲み会に声を掛けたりして、じわじわ打ち解けていくんです。

来ないと思っても飲み会に誘うのが高山流。

——じわじわ、ですか。それ、どのくらいの期間で打ち解けられるものなんですか?

高山:相手にもよりますが、まぁ1年くらいはかかるでしょうね。ただ、どうしても受け入れてもらえないケースはもちろんあります。そこは様子を見ながら、距離を縮めていきましょう。

互いに甘え合えるチームを作ろう

——高山さんが思うリーダーの役割って何ですか?

高山「チームが円滑に動けるよう指揮を取る人」です。人によってできること・できないことは違います。メンバーを理解して、自分も含め、一人ひとりが特技を最大限発揮できる環境を整える。それがリーダーの役割なんじゃないかな、と。

インタビュー後、飲み屋に帰っていく高山さん。

——お互いに特技を活かしながら、苦手を補完し合うということですね。

高山リーダーになったからって、何でも自分でやる必要なんてないんですよ。

仕事って、その時たまたまそこにいる人たちとやっているだけじゃないですか。部下はいつか離れていくし、自分が辞めることだってある。変に肩肘張らず、一緒に仕事をするその瞬間、いかにメンバーと共存共栄していくかを考えたほうがいい。

——「リーダーだから!」と気負いすぎる必要はないんですね。

高山:お互いの特技を活かしながら、甘えて甘えられて。持ちつ持たれつですよ。そのほうがチームもうまく回るし、みんなストレスなく、ハッピーに仕事できるんじゃないかな。

高山洋平(たかやま・ようへい)

クリエイティブカンパニー、おくりバント代表。新卒で不動産会社に入社し、その後、インターネット広告企業のアドウェイズに入社。同社の中国支社の営業統括本部長を務めるなどの実績を持つ。2014年にアドウェイズの子会社として株式会社おくりバントを設立。「プロ営業師」「プロ飲み師」を自認するコミュニケーションのスペシャリスト。

Twitter:@takayamayohei1

取材・文/中村英里(@2erire7 )
写真/鈴木勝