移り変わりの早いテレビ業界で、変わらず必要とされ続ける井森美幸さん。

出演番組を眺めていると、大御所から同世代〜年下と、様々な年代・立場の方々と分け隔てなく信頼関係を築いていらっしゃるように見えます。

井森さんのコミュニケーション術には、若手ビジネスパーソンにとって非常に勉強になることが詰まっているのでは? 教えて、井森さん!

年上と接するときは「尊敬はしつつ、物怖じはしない」

──今日は井森さんに、どんな人とも打ち解けられる秘訣を聞きにきました! バラドルとしてずっとテレビに出続けていて、芸人さんたちからの信頼も厚いですよね。

井森美幸さん(以下、井森):いやいや! でも、そう言っていただけてうれしいです! 社会人のためになる話、できるかな(笑)。

──井森さん、大御所の方々にも好かれている印象があります。年上の人とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?

井森:まずは素直に甘える、っていうのが大事かなあ。あとは、あまり遠慮をしすぎない。

尊敬はしつつ、物怖じはしないようにしていますね。「それ、普通はその人に言いづらいよね」ってことを、サラッと言えたり、聞けたりする人になりたいなと思っています。

「尊敬はしつつ、物怖じはしない」まさに理想的な距離感…!

──年上の方の懐に踏み込むのって、すごく勇気がいりますよね。最初の一歩、どう踏み込んだらいいんでしょう?

井森:年上の人と仕事する際には、まず共通点を見つけるんです。出身、趣味、なんでもいいので、会話の中で共通点が見つかるとそれがフックになって、グッと距離が近づくような気がします。

──下調べをじっくりするんでしょうか。

井森:いえ、あんまり調べません。ウィキペディアも見ないようにしています。

「はじめまして」のときに、先入観なく入っていくことを大事にしているので、そのほうが相手に対してすごく興味がわくんですよね。最初から調べて備えると、知っていることを聞かなくなるでしょ? 好奇心がわきづらくなるんです。

──なるほど。会話を通して、相手を知るようにしているんですね。

井森:そうですね。目の前の相手に対して本当に好奇心を持つことが大切だと思います。

先輩方は経験も豊富なので、学ぶこともたくさんあります。とくに私は群馬の田舎育ちだからこそ、田舎者丸出しで郷土の話を伺ったり(笑)。かっこつけない、肩ひじ張らないことも大事ですね。

後輩と接するときに気をつけていることは?

──井森さん自身もベテランです。後輩に対しての接し方は、どんなところに気をつけていますか?

井森:否定からではなく、まずは肯定から入るようにしてるかもしれないです。あとは、ダメなところを無理して隠そうとしないことかな。

井森:30歳過ぎまでは「後輩よりも色々知っていなきゃ」「私が教えてあげなきゃ」っていう意識がすごく強くて、思考回路が凝り固まってたんです。

そんな時、年下のマネージャーがすごく熱意を持ってお仕事を提案してくれて。それに意見するんじゃなくて、流されてみようかなと思ったんですよね。

──年下の意見に耳を傾けたんですね。

井森:そうですね。これまでの慣れた場所から飛びだして、新しい挑戦をすることで、自分なら開けなかった扉が開いた感覚がありました

意見交換も大事だけど、まずは肯定から入ってみることも必要だと痛感しましたね。そこから考えが変わって、後輩や年下から学べるものはたくさんあるんだと思うようになりました。

──なるほど。上下関係なく、学びあえる間柄でいることが大事なんですね。

井森:年下でも年上でも、わかんないことはわかんないとはっきり言って、周囲を頼ってみるのもいいかもしれないですね。「しっかりしなきゃ」という気持ちを捨てると、仕事への向き合い方にも変化があると思います。

私は程よく隙があるってよく後輩に言われるし、隙だらけ(笑)。だからこそ得られるものがあるとも思ってます。

──「隙」が鍵だなんて、目から鱗です。

井森:隙があることによって、後輩が親近感を持ってくれてるのかも。ほとんどツッコまれてばっかりですけど(笑)。隙のない人は、意識して隙を作ってみるのも、距離が縮まるきっかけになるんじゃないかな。

後輩との距離が縮まる鍵は「隙」。井森さんの親しみやすさの理由でもあるかも?

苦手な相手にもめげないで。誠実に接したら人柄は伝わる

──誰とでもうまくやる印象がある井森さんですが、苦手な人もいると思うんです。どうやってコミュニケーションをとっていますか?

井森:うーん、私、いい意味で鈍感かもしれない(笑)。「この人、苦手かも」とかは、あんまり考えたことがないんですよ。どんな相手でも、この瞬間を楽しみたいと思うから。

ちょっと言い方がキツい人だとしても、別にこっちを不愉快にさせようと思って言っているわけじゃないと思うんですよね。

──ちょっと発言がひっかかったとしても、過剰に気にしない、と。

井森:「もしかしたら、この人と会えるのは今日しかないかも」って考えるようにしています。

限られた時間の中で自分を伝えたいとは思うし、もし相手が私に対する先入観を持っているなら、ちゃんとありのままをわかってもらって帰っていただきたいんです。

──ムスッとして全然しゃべってくれない相手の攻略法はありますか?

井森:まずは、ダメな自分をさらけ出すことかな。閉ざしている相手の気持ちを開かせるのは難しいですよね。そういうときは自分の恥ずかしい話をさらけ出すと、「あれ? この人、実はこんなとこあるんだ?」って、意外としゃべってくれます。

とにかく、めげずにコミュニケーションをしっかりとることが大切。誠実に接していれば、自分の人柄はきちんと伝わると思いますよ。自分が気にしすぎているだけってこともありますからね。

結果が出せない時期があったからこその今。遠回りも無駄じゃなかった

──井森さんは、芸能活動を続けていて、失敗を引きずったり、落ち込んだりしたことはありますか?

井森基本的には、ミスをどうポジティブにとらえるかを考えています。ミスがおいしくなる場面も、絶対あるんですよ。

休憩時間やオフの日も、なるべくポジティブになれるものを意識して見ているそう。

──あんまり落ち込まず、どっしり構えているんですね。

井森:私、ホリプロタレントスカウトキャラバンで優勝して芸能界入りしたんですけど、アイドル時代はなかなか結果が出せなくて。ドラフト1位で入ってきて、翌年即2軍落ちみたいな感じ(笑)

でも、そのおかげで今があると思っています。すぐに成功できなかったからこそ、学べたことがあるんですよね。

仕事はまず自分が楽しむこと。毎回全力投球で!

──今はお仕事もたくさんですが、仕事が途切れない秘訣はありますか?

井森:いやいや、わたしが聞きたいくらいですよ(笑)。でもとにかく、どんな仕事もまずは自分が楽しむことが大事だなと感じてます。

「仕事だからと割り切ってなんとなくやっておく」だと、周囲にも空気で伝わってしまうんですよね。本人が楽しんでやってるかどうか、ごまかせなくなってきていると思うんです。

──確かに、楽しそうな人にはどんどん仕事をお願いしたくなりますね。

井森もともと好きだったことが仕事に繋がっていったことも、ラッキーだったと思います。競馬や野球が大好きだと言い続けていたら、実現もしましたし。好きなものや興味があることだと、さらに頑張れる原動力にもなりますよね。

やってみたいこと、好きなことをちゃんと口に出せば、チャンスが来るものなんですね。

──ご自身のキャリアを振り返って、特に大切だったと思うのはどんなことでしょうか。

井森私は、ずっと人に助けられてここまで来ました。結果を出せなかった頃に出会った人に、コツコツお仕事をもらうことによって今日まで繋がってきたので、「いつも全力投球でやり続けるのが大切だ」と、特に強く思っています。

ただ、長くやっているとプレイスタイルが確立されてくるので、フレッシュさを保つことや立ち振舞いでの葛藤はあったりしますね。

──キャリアが長いだけに、悩みもあるんですね。年齢を重ねて、精神的に変わったことはありますか?

井森:40を超えてから改めて、当たり前のことを大切に、手を抜かず、サボらず、諦めず、丁寧に向き合っていきたいと思いましたね。後悔しないためのガツガツさも必要だと考えるようにもなりました。

──最後に、何かと焦ってしまう20代の社会人に伝えたい言葉はありますか。

井森:私の場合ですが、遠回りしたからこそ見られた景色もあったなと思っていて。効率よく仕事するのは大事だけど、無駄なことをしてみるのもいいんじゃないかな。それも経験のひとつとして、人生のヒントになることもあると思うから。

井森美幸(いもり・みゆき)

群馬県出身。第9回ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを獲得。アイドル歌手としてデビュー。その後「バラドル」として注目を浴びる。趣味は競馬と野球などスポーツ観戦。

取材・文/小沢あや(@hibicoto
撮影/飯本貴子(@tako_i
ヘアメイク:伊東久水
スタイリング:平野真智子(NOMA)