飲食業界の転職事情 ~実態から転職成功のコツまで~

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気合を入れる飲食店の店員

飲食業といえば、学生のアルバイトとしても一般的で、自分の店を出すことを夢見て他業種から参入してくる人もいる業界。その一方、給与の低さや待遇に不満を感じ、“ブラック”な環境から脱出するために転職を考える方も少なくないようです。

ここでは、飲食業界の現状を紹介しながら3つの転職ケースを挙げ、それぞれの志望動機例や転職成功のポイントをお伝えします。

【目次】
1.「飲食は底辺業界」? 業界の現状
全業界中1位!離職率は16.7%
年収ランキングでは129職種中120位
全業界中最少!年間休日数は95.7日
【体験談】飲食からの転職理由
2.飲食からの転職前に知りたいポイント
飲食業界で得たスキルは無意味!?
同業他社に転職するのも1つの手
飲食から転職しやすい業界・業種は?
【キャリア例】飲食から他業種への転職成功例
3.【例文付き】パターン別・飲食の志望動機の書き方
飲食から他業種飲食から同業他社他業種から飲食
【コラム】飲食業界、未経験でも採用してくれる?
4.オススメの転職サイト・エージェント
総合型
飲食業界特化型
5.まとめ

1.「飲食は底辺業界」? 業界の現状

よく飲食業界は低賃金・重労働で「ブラック企業の多い業界だ」などと言われますが、果たして本当なのでしょうか? ここでは飲食業界の現状をデータとともにご紹介します。

全業界中1位! 飲食業界の離職率は16.7%

いわゆる“ブラック”な業界を判断する指標の1つが離職率ですが、厚生労働省の調査によると飲食業界の離職率は16.7%と飛び抜けて高い数値を記録しています(数値は「宿泊業、飲食サービス業」)。

全業界の平均値7.7%と比較すると、飲食業界は倍以上の離職率となっています。

平成28年上半期 産業別離職率のグラフ※参考:平成28年上半期雇用動向調査結果の概況-厚生労働省

もちろん離職率が高いだけで一概にブラックとは言えませんが、この離職率の高さは、長く続けることが難しい=労働環境が悪い、賃金が低い職場が業界全体で多いことを示している可能性があります。

年収ランキングでは129職種中120位

悩む調理師

厚生労働省の調査によると飲食業で働く人(給仕従事者)の平均年収は291.2万円で、平均年収ランキングでは129職種中120位です。また、調理師も336.1万円で99位と下の方に位置しています。

双方ともに全職種の平均年収454.3万円を大きく下回る数値です。

平成28年度 職業別平均年収ランキング※参考: 平成28年度賃金基本統計調査-厚生労働省
※給仕従事者とは飲食物給仕従事者と旅館接客案内係を合わせたもの

会社ごとに給与体系は異なり、また役職が上がれば給与もアップする可能性もありますが、全体の平均値で言うと飲食業界はかなり年収が低いと言えます。

全業界中最少! 飲食業界の年間休日数は95.7日

厚生労働省の調査によると、宿泊業・飲食サービス業の年間休日数は95.7日でした。これは平均的な年間休日数108日よりも約12日少なく、全産業中では最も低い数値です。

平成28年 産業別年間休日のグラフ※参考:平成28年就労条件総合調査 結果の概要-厚生労働省               

座布団を運ぶ飲食店の店員飲食業は土日・祝日など、世の中の人が休むタイミングが忙しくなるため、どうしても他産業と比較したときに休日が少なくなりがちです。そういった休みの取りにくさも、「飲食はブラック」というイメージにつながっているのかもしれません。

【体験談】飲食からの転職理由

給料や休日数といったデータの数値に着目すると、飲食業界の労働条件はほかの業界と比較してあまり良くないことが分かります。実際に飲食業界から転職した方は、どのような理由で転職を決めたのでしょうか?

よくある理由は以下の通りです。

<労働条件・労働環境>
・給料が低い、ボーナスが出ない
・休みが少ない、土日休みがほしい
・人間関係が悪い
・会社の将来性に不安がある

<キャリアチェンジ>
・職種を変えたい
・業態を変えたい

<スキルアップ>
・独立するために技術を身に付けたい
・ポジション(役職)を上げたい

以下では、さらに詳しいケースを見ていきましょう。

<労働条件・労働環境が転職理由のAさん>

私の働いていた店は常に人手不足で、サービス残業や急な出勤命令、休憩なしの長時間労働はもはや日常的。さらに、ボーナスが出ないのはもちろん、休日出勤の手当てがきちんと支給されていなかったため、「割に合わない」と感じて転職を決意しました。

繁忙期でなくても週1回程度しか休めませんでしたし、シフトがオフの日にもかかわらずミーティングや会社のイベントで呼び出されることもしばしば。プライベートの時間が十分に確保できなかったため、しっかり土日に休みが取れる給食調理員に転職しました。

<キャリアチェンジが転職理由のBさん>

私は学生時代にアルバイトしていた店に声をかけられてそのまま就職したのですが、全く違う仕事がしてみたくなって3年目で転職しました。飲食時代はホールもキッチンも経験しましたが、毎日同じことの繰り返しでマンネリを感じてしまったので…。

また、前職では出世したいと思っても、店長になるか独立くらいしか可能性がなかったことも大きいです。現在は食品卸で営業の仕事をしていますが、チームリーダー、課長、部長……とキャリアアップのコースが見えているのでやる気になります。

<スキルアップが転職理由のCさん>

元々独立して自分の店を持つことが夢だったので、経営のノウハウを学ぶために、小規模経営の店舗から全国各地に複数出店している大企業の本部に転職しました。

経営者になるためには提供する料理のことだけではなく、仕入れから従業員のマネジメントまでさまざまなことを学ぶ必要があります。転職先ではエリアごとの店舗をまとめるマネージャーの仕事を通じて、独立に必要なスキルを身に着けていければと思っています。

以上の3人のケースでは、低賃金・長時間労働といった飲食業界のブラックな現状に耐えられず転職する方もいれば、キャリアチェンジやスキルアップなどポジティブな理由で飲食業界から転職する方もいることがわかります。

似た理由で転職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。

2.飲食からの転職前に知っておきたいポイント

今の職場で辛い思いをしている方の中には、すぐにでも飲食業界を抜け出したいと思っている方もいるかもしれません。しかし、転職先を決めないまま退職してしまうのはNG。

より条件のよい転職をするために、一度は考えておきたいポイントを紹介します。

飲食業界で得たスキルは無意味!?

飲食店の接客風景

飲食業界はお客様と接するBtoCの仕事が多いため、BtoBの業界に転職する際はこれまで苦労して身に付けたスキルが生かせない場合もあります。

特に年齢を重ねるほど転職は難しくなると言われているため、30~40代で飲食業界から他業界への転職を考えている場合は、エリアマネージャーなどを経験し、他業界でも必要とされる「マネジメント経験」を積んでおくと良いでしょう。

ただし、20代など若いうちはポテンシャルを見込んで採用される場合もあるため、マネジメント経験がなくても面接や書類でうまくアピールすることができれば他業種への転職は十分に可能です。

同業他社に転職するのも1つの手

せっかく転職するからには給料をアップさせたいと思うのも当然ですが、理想とは裏腹に給与がダウンする可能性もあると覚悟しておいたほうが良いかもしれません。

特に未経験で他業種に転職した場合は、一から仕事を覚え直さなければならないため、新しい職場で生かせるスキルを持っていなければ給与が今より下がる可能性は大きいです。そのリスクを負いたくない方は、飲食業でのスキルを生かして、より給与の高い同業他社に転職するのも1つの手でしょう。

飲食から転職しやすい業界・業種は?

飲食業界から他業種に転職する場合、自分の飲食業界で培ったスキルを生かしやすい業界・業種は何なのでしょうか。

握手する営業職

一概に述べることはできませんが、例えば、コミュニケーションスキルを生かすなら営業職が向いている可能性も。また、接客や販売に長けていて、店長経験があるのであれば、同様のスキルが求められるアパレル店や雑貨店でも活躍できるかもしれません。

そのほか、食品に関わった経験や店舗運営経験を生かして、グルメサイト運営会社や食品系のコンサルティング会社に転職する方もいます。

【キャリア例】飲食から他業種への転職成功例

ここでは、飲食から他業種への転職に成功した事例を紹介します。飲食業界から他業種への転職を考えている方はぜひ参考にしてください。

<ケース1>居酒屋接客スタッフからIT企業営業職へ(20代前半・男性)

アルバイト社員として居酒屋に勤務していたDさんは、卒業後、同じ店に正社員として就職しました。人と話すことが好きなDさんは接客の仕事にやりがいを感じていましたが、休日の少なさや労働時間の長さに不満を持ち転職を決意。

完全週休二日制で残業時間の少ない会社を探し、これまでに飲食業界で培った対人折衝のスキルを生かせるIT企業の営業職に転職しました。IT業界は未経験のため学ぶことが多く大変ですが、以前より余暇の時間が増えてAさんは満足しています。

<ケース2>レストラン店長から学習塾の教育長へ(20代後半・女性)

Eさんは、レストランの店長として資材管理やスタッフ採用・教育などを経験してきました。スタッフが成長する姿を見られるのはEさんにとって一番の喜びでしたが、残業も多く体力的な限界を感じて転職することに。

E さんは、人材育成に携わることができ、店舗運営で得たマネジメントスキルを生かせるという2つの軸に沿って転職活動を進め、学習塾の教育長に転職しました。現在の職場はデスクワーク中心のため前ほどの身体的負担もなく、教育の現場に関わることでやりがいを感じながら働いています。

3.【例文付き】パターン別・飲食の志望動機の書き方

履歴書の上を歩く2人の人

ここまで、転職する際のコツや転職の成功事例をご紹介してきましたが、実際に転職活動を始めると案外困るのが志望動機の書き方です。

そこで(1)飲食業界から他業種に転職(2)飲食業界内で転職(3)他業種から飲食業界に転職の3パターンに分けて、志望動機の例文をご紹介します。

(1)飲食業界から他業種へ

日本料理店のフードコーディネーターからインテリア会社の営業スタッフへ

貴社の「接客の質を高めるために1人のスタッフが製造から接客までを担う」という方針を魅力的に感じ、応募しました。

前職では、素材を深く知ることが質の高い製品・サービスを提供につながると考え食材の調理法研究と情報収集を積極的に行った結果、ヒット商品を生み、リピートしてくださるお客様を増やすことができました。

業種は違いますが、これらの経験は商品理解が重要な貴社のシステムに生かせると考えております。

インテリアに関しては現在勉強中ですが、いち早く知識を吸収して貴社に貢献したいと思います。

(2)飲食業界から同業他社へ

回転寿司チェーン店の接客スタッフから洋食レストラン接客スタッフへ

貴社の「一人ひとりに最高のおもてなしを提供する」という方針に共感し、応募しました。

前職では、お客様に心地良い店舗体験をしていただくために、接客態度や提供商品の研究を日々重ね、結果として毎年開催される会社の接客コンテストで応募スタッフ5,000人中1位をいただくことができました。

貴社は少人数制であり、じっくりと店舗づくりに関わることができる点を魅力に感じています。

前職で培った接客スキルを生かして、多くのお客様に愛されるお店づくりに貢献していきたいと思います。

(3)他業種から飲食業界へ

アパレル店接客スタッフからカフェのホールスタッフへ

学生の頃からオーガニックフードや肌なじみの良いリネンの服など、自然素材を使ったものやナチュラルなライフスタイルに興味がありました。

前職はナチュラル服のアパレル店店長でしたが、服飾関係よりも体の資本となる「食」を支える仕事に就きたいと考え、転職を決意しました。

貴社の「安心・安全の自然素材を提供する」というこだわりに大変魅力を感じます。

前職での接客スキルを生かして、貴社に貢献したいと考えております。

こんな志望動機はNG!

「この店の接客が良く、ここで働きたいと思った」「貴社の雰囲気が自分にぴったりだと思った」などと書く方がたまにいますが、店舗の実情を知らずに書くのは危険です。書くとしても、相手を納得させられるような理由が必要になるでしょう。

また、「人と接することが好きだから」というありがちなフレーズは、志望動機としてはやや弱い印象を与えます。採用担当者には、その店そのものに魅力を感じたというよりも、接客業に興味があるから応募したというように聞こえてしまいます。ですから例えば、「この店のここに共感した」「こういう方針が魅力的だと思った」というふうに書きましょう。

 

【コラム】飲食業界、未経験でも採用してくれる?

飲食店の面接

結論から言うと、飲食業界は離職率が高く人材の流動性が高い業界であるため、他業種から未経験で飲食業界に応募しても採用してもらえる可能性はあります

ただし、未経験では給料が低くなることは覚悟しておいた方が良いでしょう。また、飲食業界でも自分が前職で培ったスキルを生かせるポジションを探すことで、できるかぎり給料を落とさずに転職することができるかもしれません。

4.オススメの転職サイト・エージェント

転職活動の際には、転職サイトや転職エージェントを利用すると便利です。ここでは転職サイトやエージェントを転職者全般向けのものと、飲食業界に特化したものとの2つに分けて紹介します。

求人数の多さやサイトの見やすさなど、重視したいポイントに合わせて利用サービスを選びましょう。

総合型

転職したい業種が明確に決まっていない方には、幅広い業種から検索でき、求人数が豊富な総合型の転職サイトやエージェントがお勧めです。また、大手企業の求人情報が比較的多いため、大手企業への転職を考えている方にも役立ちます。

転職サイト

リクナビNEXT
求人数が圧倒的に多く、毎週1,000件以上の新着求人が届くサイト。大手人材サービス会社が運営しており、転職ノウハウも豊富です。

ピタジョブ
求人情報の見やすさが好評。20~30代の転職支援に強く、会員登録がわずか1分程度で終了するのも魅力です。

転職エージェント

リクルートエージェント
転職成功実績1位。求人数・非公開求人数ともに業界トップクラスを誇っています。若手からベテランまで幅広い層の転職をサポートしているのが特徴です。

DODA
求人数は約100,000件以上で、業界最大級。スカウトメールの配信数が他社より圧倒的に多いことが特徴です。

マイナビエージェント
大手人材サービス会社マイナビが運営しており、非公開求人数が全体の80%以上を占めています。特に20~30代の転職サポートに強いです。

飲食業界特化型

飲食業界に特化した転職サイト・エージェントは、飲食企業とのつながりが強いぶん、隠れた優良求人情報を紹介してもらえる可能性もあります。

飲食業界への転職(もしくは飲食業界内での転職)を心に決めている人は、飲食業界に特化した転職サイト・エージェントを利用すると良いかもしれません。

転職サイト

クックビズ
求人数は7,000件以上。利用者の8割以上が20~30代で、若手のサポートに強みを持っています。求人には写真が豊富に掲載されており、働く現場を想像しやすいのも魅力です。

ジョブ・レストラン
求人数は約4,000件以上と比較的豊富。飲食業界に特化した日本最大級の転職支援サイトです。全国対応しています。

テンポスジョブ
日本だけでなく海外の求人情報も掲載されており、ジャンルも居酒屋、カフェ、バーなどさまざま。自分に合う仕事を見つけやすいサイトです。

転職エージェント

株式会社itk
最短9秒で登録でき、求人数が圧倒的に多いのが特徴。年収600万円以上の好条件な求人情報も多数あり、利用者からの評判が良いエージェントです。

エフジョブ
人気企業の求人情報を多数取りそろえているのが魅力。ヘッドハンティングと転職コンサルティングの支援ノウハウを組み合わせて、内定獲得までフルサポートしてくれます。

食ジョブ
求人数は関西最大級。関西地方に強い飲食業界専門の求人サイトです。入社決定で最大18万円のお祝い金がもらえます。

5.まとめ

転職にはリスクも伴いますが、自分がこれまで身に付けてきたスキルを生かせる職種を探したり、転職活動に役立つサイトやサポートサービスを利用したりすることで、転職成功に近づくことができます。

飲食業界で培ったスキルを生かすことができるかどうかはあなた次第です。「このまま飲食業界にいても良いのか」「ほかの可能性があるのではないか」などと悩んだときは、転職という選択肢を思い浮かべてみてはいかがでしょうか。