メリット、企業例、背景も解説 ジョブ型採用とは?

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最近よく耳にする「ジョブ型採用」。採用方法の一種ということはわかるけれど、詳しい内容までは知らないという方も多いはず。

ここでは、ジョブ型採用のメリット・デメリットや、実際にジョブ型採用を行っている企業の例、ジョブ型採用が注目を集めている背景などを解説します。

ジョブ型採用とは?

ジョブ型採用とはどのような採用方法なのでしょうか?

仕事内容や勤務地が限定される採用方法

ジョブ型採用とは、仕事内容や勤務地が限定されている採用方法で、専門的なスキルが評価されます。

ジョブ型採用の会社を受けると、例えば「東京本社の人事部で新卒採用を担当する」など、入社後の具体的な業務を前提にした選考が行われます。

ジョブ型採用とよく比較される採用方法として、メンバーシップ型採用があります。

メンバーシップ型採用とは、入社した後に具体的な仕事内容や勤務地を決める採用方法のこと。例えば、新卒の総合職採用などがこれに当たります。

 海外ではジョブ型採用が主流ですが、日本企業は昔から新卒一括採用をはじめとするメンバーシップ型採用を行っています。

新卒一括採用は、年功序列、終身雇用と並び、日本企業の雇用を支えてきました。しかし、近年はIT系企業を中心に国内でもジョブ型採用を行う企業が登場し、新しい採用方法の1つとして注目を集めています。

ジョブ型採用と従来の採用方法の違いは5つ

ジョブ型採用と従来の主流であるメンバーシップ型採用は、「採用に対する会社の考え方」「仕事の範囲」「給与体系」「勤務地」「教育」の5つの面で、異なった特徴があります。

ジョブ型採用とメンバーシップ採用の違いの一覧。【ジョブ型】採用に対する考え方:仕事に対して人をあてる 仕事の範囲:ジョブディスクリプションに記載されていない仕事は原則しない 給与体系:職務給で給与を決める 勤務地:原則転勤なし 教育:個人のスキルは基本的に社外で身につける 【メンバーシップ型】採用に対する考え方:人に対して仕事をあてる 仕事の範囲:明確なきまりなし。ジョブローテーションの可能性もあり 給与体系:職能給 勤務地:採用後に配属が決まる。転勤の可能性あり。教育:社内での体制がしっかりある

採用に対する会社の考え方

ジョブ型採用は、担当者のいない仕事に対して人を当てるという考え方で社員を採用します。

そのため、欠員が出た場合や新規事業を始めるタイミングで求人が出されます。

一方、メンバーシップ型採用は、採用した人に対して後から仕事を割り当てるという考え方で行われます。求人募集は、欠員状態にあまり左右されず、定期的に行われます。

仕事の範囲

ジョブ型採用では、具体的な仕事内容や勤務地などがジョブディスクリプション(職務記述書)という書類に記されます。仕事の範囲が明確に決まっているため、ジョブディスクリプションに書かれている仕事以外は、原則する必要がありません。

メンバーシップ型採用の場合はジョブディスクリプションがなく、職務の範囲があいまいです。そのため、会社の判断によっては、ジョブローテーションなどでこれまで担当していた仕事以外の業務をすることがあります。

給与体系

ジョブ型採用で入社した場合、給与の額は職務給によって決まります。職務給とは、担当業務の難易度や責任の度合いを評価する賃金制度です。

勤続年数や、新卒か中途かなどは給与に関係ありません。入社してすぐの新人でも、難しい仕事を担当すればベテランよりも給与が高くなります。

一方、メンバーシップ型で採用された場合は、一般的に職能給で給与が決まります。職能給とは、仕事の知識、リーダーシップ、コミュニケーション能力など、仕事を進める上で必要な力を総合的に評価する賃金制度です。これらのスキルは仕事の経験を通じて身につくと考えられており、役職や勤続年数で判断されることが多いようです。

勤務地

ジョブ型採用の場合、担当業務や勤務地はジョブディスクリプションで明確に決まっています。異動や転勤などは原則ありません

一方、メンバーシップ型で採用されると、採用された後に勤務地や配属が決まります。また、会社の指示で異動や転勤をする場合があります

教育

ジョブ型採用は社員を即戦力として採用するため、社内で改めて教育は行わないことが前提です。経験の蓄積や、業務時間以外で社員が個人的に勉強したり、研修に参加したりすることで能力を高めます。

一方、メンバーシップ型採用を行う企業は、ポテンシャルで採用した社員を長期間雇うことを前提にしているため、社内教育制度が充実しています。新卒で入社した場合は、新人研修として数ヶ月単位の手厚い教育を受けられることが一般的です。

ジョブ型採用を行っている企業の例

従来の採用方法と大きく異なるジョブ型採用ですが、実際にどのような会社がジョブ型採用を取り入れているのでしょうか。ここでは企業例として、ジョブ型の新卒採用を行っている「楽天」「資生堂」「サイバーエージェント」を紹介します。

楽天

楽天株式会社では、エンジニアが完全なジョブ型採用になっています。応募者は「アプリケーションエンジニア」など希望する職種と、会社が展開しているサービスを選んだ上で、選考を受けます。採用活動は新卒・中途に関係なく通年で行われ、給与は実力や経験によって決定します。

また、一般的な総合職にあたる「ビジネス総合職」の募集も、専門的なキャリアを築きたい人向けにコース別採用が設けられていて、総合職で採用されたとしても、ある程度は仕事内容が決まった状態で入社できる仕組みになっています。

資生堂

資生堂グループの新卒採用は、総合職をさらに「ファイナンス」「カスタマーマーケティング」など8つの職域に分けている点が特徴です。

また、8つの中には化粧品の研究などを行う「R&Dコース」も理系学生向けに設けられています。新卒でも、専門知識を生かした仕事に就くことができます。

サイバーエージェント

サイバーエージェントでは、エンジニアコースとデザイナーコースでジョブ型採用を行っています。エンジニアやデザイナーとして入社した場合、一律初任給ではなく、個人の能力別に給与が決まります。また、エンジニアコースの場合は、豊富なサービス開発経験や知識を持っている人に対して給与を1.6倍近く上げる仕組みもあります。

コラム:ジョブ型採用が注目されているわけ

ジョブ型採用に関心が集まっているのは、AI(人工知能)など高度な専門性を必要とする技術の普及とそれに伴う国際競争の激化から、最先端技術を扱えるスペシャリストの需要が高まっているためです。

これまでも、中途採用ではある程度、ジョブ型採用が行われてきましたが、新卒ではメンバーシップ型の一括採用が主流でした。

しかし、メンバーシップ型採用の場合は入社してから仕事のスキルを身につけても、一定期間が経つと部署を異動するため、高度な専門知識を持ったスペシャリストが育ちにくいという難点がありました。

こういった背景をふまえ、経団連がこれまでの「主流」を変えるべく「『新卒採用でも』ジョブ型採用を取り入れるべき」という考えを発表しています。

※参考:中間とりまとめと共同提言(採用と大学教育の未来に関する産学協議会)

ジョブ型採用のメリット3つ

ジョブ型採用で入社することには、「異動や転勤に振り回されない」「ワークライフバランスが取りやすい」「専門性が身につく」というメリットがあります。

異動や転勤に振り回されない

ジョブ型採用の場合、入社してから想定外の異動や転勤をさせられることは原則ありません。採用時に、ジョブディスクリプションで仕事内容や勤務地が明確に決められているためです。居住地を変えずに済むため、家を購入するなどのライフプランも立てやすくなります

ワークライフバランスが取りやすい

ジョブ型採用では個人の仕事の範囲が明確に決まっているため、仕事量がいたずらに増えず、タスクがいつ終わるかの目処が立てられます。急な残業や休日出勤で対応する必要がないため、ワークライフバランスを取りやすくなります。

また、業務そのものが増えた場合は、ジョブ型採用で同じようなスキルを持つ人を増やすことで一人ひとりの仕事量を調整できます。そのため、対応できる人が自分しかいないという状況が起きにくく、大量の仕事を抱えずに済みます。

専門性が身につく

ジョブ型採用で入社すると1つの職務に注力できるため、社内で異動を繰り返すメンバーシップ型採用に比べて、個人の専門性が高まります。専門性が身につけば、ジョブ型採用でさらによい待遇の会社に転職することもできます。

ジョブ型採用のデメリット3つ

ジョブ型採用で入社することには、「担当業務がなくなった場合の異動が難しい」「勤続だけでは給与が上がらない」「即戦力前提のため教育の機会が少ない」というデメリットがあります。

担当業務がなくなった場合の異動が難しい

ジョブ型採用には、自分の担当業務がなくなった場合の異動が難しいというデメリットがあります。

異動が頻繁に行われるメンバーシップ型採用であれば、異動者の受け入れや教育もスムーズに行われます。しかし、採用前から担当業務や勤務地を明確に決めているジョブ型採用の場合は、異動を前提にした組織体制がなく、担当業務がなくなった場合は契約終了として解雇される可能性もあります。

ただし、現在の日本の法律では、解雇は厳しく制限されているため、海外のように簡単に解雇されることは考えにくいでしょう。

日本では、ジョブ型採用がまだメジャーではないという状況もあり、解雇に関する従来の法律とジョブ型採用との現実的なバランスが取れていないのが実情です。

勤続だけでは給与が上がらない

ジョブ型採用の場合、長く勤めるだけでは給与の額が上がりません

勤続年数ではなく担当業務の難易度や責任の度合いを給与額の基準としているためです。高い給与を求めるなら、額に見合った実力をつけることが条件になります。

即戦力前提のため教育の機会が少ない

ジョブ型採用の場合、OJTや社内研修などの手厚い教育はありません。働きながらスキルを伸ばすのではなく、即戦力として働くことを期待されているためです。

社内教育の機会が少ない状況で自分の能力を向上させるには、会社に頼らずプライベートの時間で自主的に勉強したり、社外のセミナーを受けたりする必要があります。

まとめ

働く前から仕事内容や勤務地が決まっているジョブ型採用。勤続だけで給与が上がらないなどデメリットはありますが、ワークライフバランスが取りやすいなどのメリットもあります

技術革新など社会の変化に合わせて、今後は新卒採用をジョブ型へ切り替える企業が増えていくかもしれません。そのときには、ジョブ型採用の仕組みやメリット・デメリットをしっかり理解し、納得した就職・転職活動ができるといいですね。

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