外資系メーカー未経験エンジニアの9割が抱える疑問と誤解
ほとんどの人から誤解されている?外資系メーカー
現在、日本には多数の外資系企業が進出しており、即戦力となる人材を求めて活発な採用活動を展開しています。製造業(メーカー)での実務経験をお持ちの方が、ステップアップやキャリアアップの転職をお考えになる時、選択肢の一つとなるのが、そんな「外資系メーカー」ではないでしょうか。
けれど、そんな外資系企業について、「興味はあるけれど、外資系に勤務したことがないので実態が分からず不安」、あるいは「ものすごく優秀な人ばかりのようなイメージ。自分でもやっていけるのだろうか」といった声をよく耳にします。仕事内容、人事制度、給与面、文化や社風…いずれも、初めて外資系企業に転職するという場合には、当然気になる部分ですが、実は一般的に考えられているイメージが誤解にもとづくものであることも珍しくなかったりします。
そこで今回は、外資系企業、特に「機械・電気・半導体・自動車業界の外資系メーカー」について、転職希望者の皆様から多くいただくご質問にお答えしてみたいと思います。
外資系企業は国内には工場を持ってない?
「ものづくり」に関わりたいエンジニアの方にとっては、国内で生産を行っていない外資系企業は対象外…とお考えの方も多いようです。しかし、結論からいいますと、外資系企業でも国内に生産拠点(工場)を持っている企業はかなり多く存在します。
これは、トヨタやホンダ、松下電器産業やSONYなどの日本企業がアメリカや欧州に工場を持って現地生産を行なっている例の、ちょうど逆のパターンとお考えいただければ分かりやすいのではないでしょうか。もちろん、生産を海外で行なう企業もあり、それぞれ募集職種なども変わってきます。
1.日本国内に自社の生産拠点を持つ場合
自前の工場や開発センターを持つ外資系企業の場合、募集職種は日系メーカーとほとんど変わらないといっていいでしょう。設計・開発、技術営業、生産技術、生産管理、品質管理、サポート、営業…など、幅広い職種の募集があります。
2.生産を海外の自社工場で行っている場合
国内に工場を持たない外資系企業では、主に海外の自社工場に生産を委託しています。セールスエンジニア、FAE(フィールドアプリケーションエンジニア)、サポート、営業などが主な職種です。エンジニアの仕事は、技術的な提案業務、仕様のとりまとめなどを中心とした上流工程の開発業務となります。
このように、工場が国内にあるか海外にあるかによって、必要とされる職種は多少変わってきますが、いずれの場合も顧客と開発・生産部門をつなぐ技術的コミュニケーションはエンジニアの重要な業務となっています。つまり、どのような形態の外資系企業でも「ものづくり」に関わることは十分に可能なのです。
また、生産と同様に「技術開発」についても、国内に「技術センター」や「研究所」といった開発拠点を持つ外資系企業から、主に海外で開発を行っている企業までさまざまなパターンがあります。自ら研究開発に従事することが希望なら前者を、語学力を生かしながらグローバルな環境で技術に携わってみたいなら後者を…など、自分のやりたい仕事とスタイルをしっかり考えて選べば、外資系企業においても開発力を生かせるフィールドは豊富に用意されているといえるでしょう。
日本企業とは社風・文化が違うのでは?
外国人の社員が大勢いて、社内では英語が飛び交っている…外資系企業というと、そんな光景を想像される方も多いかもしれません。しかし、風土・文化面からも外資系企業はいくつかのパターンに分類することができます。大きく分けると以下のようになります。
1.純粋な外資系企業
外資が単独でゼロから立ち上げた日本法人。初期の頃は本国から出向の外国人社員も多くいますが、しだいに日本人社員中心に移行していきます。ただ、組織や制度などは本国のそれをベースにしているケースが多いようです。
2.もとは日系企業だった外資系企業
外資が日本に進出するにあたって、同業の日本企業を買収して足がかりとすることは珍しくなく、また提携先の日本企業と合弁会社を設立する場合もあります。組織や社員、工場等の設備は元の日本企業のものがそのまま残っていくケースが多いようです。
転職先として考えている外資系企業がこのどちらのパターンなのかは、ホームページなどで沿革を調べるか、あるいはクイックのコンサルタントにご確認いただければすぐに分かるはずです。実際に調べてみると、②に該当する「以前は日系企業だった外資系企業」が意外に多いことに驚かれるかもしれません。
②の方式は施設や工場などをゼロからつくらなくてもよいためスピーディーな立ち上げが可能ですし、日本のビジネス慣習に通じた人材も同時に確保できるなど、外資側にとってもメリットは大きいのです。こうした企業では、業務も基本的に日本語で行なわれる割合が多く、最初からビジネス英語には自信がないという方にとっても入りやすい外資系企業といえるでしょう。
もちろん、マネージャークラス以上には英語力が求められるケースがほとんどですので、入社後は語学の習得にも取り組む気持ちは必要です(社内に語学トレーニング制度を用意している企業が多くあります)。また、給与システムや社風なども日本的なものをベースにしながら、成果主義など外資系のよい部分を取り入れている企業が目立ちます。
一方、①の純粋な外資系企業は、本国と連絡を取り合いながら業務を進めることが多く、語学力を生かしたい、国際的環境で働きたいという方に適しています。注意していただきたいのは、日本法人が20〜30名といった比較的小さい規模であったとしても、世界レベルでは数万名という場合もあることです。これらは、安定性や資本力も大企業そのものであり、いわゆる隠れた優良企業です。日本法人の規模だけですべてを判断しないことも重要ではないでしょうか。