【 第2回 】 自分を「ロック・イン」するためのツールを見つける
勉強しようと強く決意をしたとしても、実際に思ったとおりに勉強することはかなり困難です。それもそのはず、脳と心を味方につけるのは、思っている以上に難しいから。このコーナーでは、そんな勉強を“快感”にするテクニックを、4回に分けてお伝えします。
佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト
専門は認知心理学。
1973年北海道旭川市生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスで派遣社員として働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック社)『やる気ハックス』(あさ出版)、『マインドハックス勉強法』(日本実業出版社)など。
あの本の著者!
ライフハックが、仕事や生活の問題を解決するための創意工夫の精神だとすれば、マインドハックス勉強法は、勉強にまつわる様々な問題を解決しようとする、心の創意工夫です。
マインドハック:ツールで勉強の習慣を逓増する
この法則をうまく使って、勉強を習慣化してしまうことができそうです。
先ほど出したキーボードの例で、QWERTYは必ずしもキータッチに最高の配置ではないのに、すっかり世の中がこれに支配されてしまったといいました。同じようなことを、特定のツールを使い込むことで、それを使って何かをすることを、習慣化してしまえばいいのです。
ここでは、iPhoneというツールを例にします。他のものでもいいのですが、デザインが洒落ていることや、使い勝手がやはりよいこともあるので、このツールを採り上げましょう。
やることは簡単です。iPhoneを購入して、音楽もゲームも一切インストールせず、ひたすらオーディオ・ブックやリスニング教材だけを取り込むのです。これを電車中にランダムで聞き流します。基本的にやることはこれだけです。特別意気込んで聞いたり、その効果を計ることはありません。
このようにして脳に特定の行動を安易に選択させ、その習慣をあらゆる機会を捉えて強化するよう仕向けるわけです。こうした行動が一定の回数を超えると、あとは無意識に習慣的行動を取ってしまうようになります。
他のことをするのが面倒になる
こうして、無意識的にiPhoneを使ってオーディオ・ブックを聞いたり、英語のリスニングをするのが習慣化すると、あえてiPhoneにゲームをインストールしたり、音楽を移すのが面倒になります。習慣にはそれほどの力があるのです。
私が子供の頃には、自動車の助手席に着いていても、シートベルトを締める義務はありませんでした。シートベルトを締めなければならなくなったとき、それは大変面倒に思えたものですが、今では締めないととても落ち着かない気持ちになります。
通勤中や移動時、iPhoneでオーディオブックを聞いたりする行動も、最初はまったくうっとうしいものに感じられるはずです。しかし、いったん習慣化してしまえば、それなしでは落ち着かなくなるはずです。
そのように、勉強する習慣に、自分をロック・インしてしまえばいいのです。そうすることによって、勉強するための特別な精神的努力などせずとも、脳が全ての流れを自動的に強化していってくれますから、その流れに乗るだけで済むようになるわけです。