【 Vol.5 】 自分スタンダードのススメ
アラウンド30世代の皆さま、「俺も随分オトナになったな・・・」と感じること、多いのではないですか?
会社組織においては『若手層』ではなくなり、会社によってはマネージメント層へ本格仲間入り・・・私生活では結婚や、親の現役引退など「社会のなかでもポジショニングが変わってきたな・・・」と、オトナの重みを感じられているのでは?
このコラムは、そんなアラウンド30の皆さまへ贈るキャリアの悩み解決コラムです。
講師の本田勝裕氏は、学生・社会人のキャリア形成、企業の人材採用などのコンサルタントとして活躍中。
組織心理学「FFS理論」と、コーチングの最先端技術である「ソリューションフォーカスドアプローチ」をベースに、アラウンド30世代:オトナのキャリアの悩みを解決します。
社会責務やら、悩みやら、ついこの前まで頭を悩ませていた問題とはちょっと違う「いわゆるおとなの悩み」が出てきはじめたアラウンド30の皆さま・・・「楽スルナカレ、クルタノシモウ」!
—理論上408万4101通りある人それぞれの個性を組織でいかしきっているか?—
いきなりな質問やけど、あなたはどっちのタイプ?
以下の状況を想定して考えてみてください。
今あなたは急いでいます。駅についたら、電車はホームに到着しています。その駅もその電車もはじめて乗るものです。おそらくその電車で間違いないのだけど、これがいいのかどうかはわかりません。発車のブザーは鳴っています。さてあなたはどうしますか?
(1) とにかくダッシュ!してとりあえず乗り込む
(2) まずは周囲を見渡してみんなの様子を伺う
さーて、どっちかな〜?
僕の場合は完全に(1)とにかくダッシュ!でござるな〜。
でもって(1)が正解というわけでもない。
どんなに僕がダッシュしても電車を運行する車掌さんの意志には関わらない。
目の前でドアが閉まって、行ってしまうかもしれん。
みんなも46歳になるとわかるやろうけど、・・・上半身の意志にかかわらず下半身がついてこず駅でズッコケてるかもしれん。
無事に乗れても、行き先が間違っていることもある。
つまり行動にはリスクが伴う。
これは転職も一緒やな、それは最初の自己紹介の原稿で書いた。
では(2)みんなの様子を伺うが正解か?
周囲を見渡している時間が1秒だとしても、その電車は出発するかもしれん。
「どうしようどうしよう」と思っているだけで立ち止まっていては電車には乗れない。
「よしいってみよう」と思ったときにドアが閉じるかもしれん。
つまり思考にもリスクは伴う。
これは前回の原稿で書いた。
つまりどっちもリスクはあるっちゃある。「一つの完璧な正解」っちゅうもんは、ない。
っちゅうか、他にも答えはいっぱいある。
(3) 駅員さんに尋ねる
(4) 身体を半分だけ電車に入れて、周囲の人に行き先を確認する
(5) タクシーに乗る
(6) 天上天下唯我独尊とつぶやき、達観への境地にいたる
などなど、アンサーは自由。
しかし(1) とにかくダッシュ!と(2) みんなの様子を伺うを比較した時、
就職活動では(1)を勧めるコンサルタントが多い。
実は僕もそうやねん。 デヘヘ、アカンヤン!
「正解はその人が出すこと」なのにね〜。 コレ、ジューヨー!
しかしなぜ、人によって(1)のように行動する人と、(2)のように躊躇う人がいるんやろうね〜。
僕は小学生の頃からこういう人による思考や行動の違いの面白さをよく観察する癖があった。
- マジメな先生とオモロイ先生の違い
- サザエさんが好きな人とドラえもんが好きな人の違い
- 腕を組む人と頷く人の違い
などなど。
これは出版社の編集の仕事で取材をしていてもよく思った。
たとえば3人組のアーティスト取材のときにも、
「この3人組はなんでこうも考え方、感性、人との距離、握手の握り締め方の違い、
話す量、話すスピード、汗の量、服の趣味、が違うんやろう」ってね。
これらに答えは得られなかったある日、
僕は大阪ドームの人事制度(採用、配属、評価、給与など)を設計する
コンサルティングの仕事をした。
その時に出会ったのがFFS理論であり、その提唱者である小林惠智博士である。
このFFS理論を簡単に説明しとこうかね。
(なんでか知らんけどここからの理論説明はマジメな標準語になるねん)
FFSとはFive Factors and Stress の意味。
まず80問の設問に答えてもらい、5つの因子で個性を分析し個性傾向を把握する。
同時にストレスがポジティブに作用した場合とネガティブに作用した場合に、
どういう思考と行動をするのかという個性傾向を解析する。
この個性傾向を、組織の目的に合わせて組み合わせ(採用および配属)ていく。
これをコンビネーションマネージメントまたはチームビルディングという。
社員やスタッフの個性を把握して、適材を適所に配置できる理想的な理論。
そして個性と個性の組み合わせを最適化することで、社風の改善や変革にも役立てることができるもので、僕はこの理論以外に科学的にこれらのことを立証できる理論を知らない。
他のチームビルディングに使われているのは、他社で使われた「たまたまの成功事例」に基づいているものが殆どで、科学的とはいえない。
実際日本でも多くの企業がFFS理論を取り入れているが、コンサルティングの守秘義務として、どこの企業がそうなのかは明かすことができない。ユルセ!
さて次にFFS理論を基本マトリックスから説明しよう。
Five Factors という5つの因子がX軸にAからEまで並んでいる。
Y軸に位置するのはストレスがかかった場合に、どんなポジティブ反応をするのか、
同時にどんなネガティブ反応をするのかということを表している。
たとえば僕の場合、データはこうである。
つまり僕はBとDが突出して高く、Eが続き、CそしてAの順になっている。
このデータからわかる本田の個性傾向は以下のとおり。
これを本田が勝手に言い換えると、
イイ時は、新しいことに挑戦する(D)と同時に、他人の面倒見がよく(B)、
アカン時は、なにをしだすかわからん(D)のと同時に、いらぬお節介をやく(B)のである。
さらに一言にすると、
『プッツン(D)おばさん(B)』
ってことになるね〜。
文頭に書いた電車の場合、僕がダッシュしだすのは、このD因子の高さが、僕を積極的に、行動力を使って、創造させているという「プッツン」なのである。
僕と反対にD因子よりもE因子の高い人は、周囲と協調し、順応しながら全体行動しようとしているモジモジさんなのである。
こうして最初の例文の(1) とにかくダッシュ!してとりあえず乗り込む
と(2) まずは周囲を見渡してみんなの様子を伺う
の思考・行動の違いの答えを見つけることができた。
しかし(1)か(2)を決定する意思のなかに、体験や知恵もあるとちゃうかという反論もある。
「大体いつもこれで成功する」「前にこれで失敗した」という体験が知恵になってね。
ところが1回成功して10回失敗していても、(1)を選択する人が出てくる。
逆また真なりで、(2)を選択する人も出てくる。
そこで師匠であるその提唱者の小林惠智先生に聞いてみた。
「なんで人によってこんなにちゃうんですかね〜?」
「アハハ、ポンタ君、それは個性が思考と行動に影響を与えているのだよ」
「個性って、いつできるんですか?」
「先天的なものと、後天的なものがある。FFSの5つの因子のなかに先天的なものと後天的なものがあり、大体15歳ぐらいまにで形成されていくのだよ」
「ってことは個性って人それぞれってことですか?」
「そうだよ。FFSの場合、理論上408万4101通りの個性が出現する。そして43民族88カ国でデータを取ってわかったことがある。個性はそれぞれ異なる。その異なる個性の組み合わせの最適化が重要なのだよ。個人の視点に置き換えれば、自分の個性を異なる個性のあいだで、どう活かすかが問われているということだね。世の中に無駄な人など一人もいない。ただその個性が最適な部署部門に配置されているかというと、甚だ疑問だね〜」
「個性って変わるもんですかね〜、努力とか工夫で」
「先天的なものは変わらない。多少老化で減少するけれど。後天的なものもあまり大きく変わらない。むしろ無駄な努力をやめて、自分の個性を活かしきることが大事なのだよ」
これが14年前の師匠と僕との出来事である。
FFS理論では、極めて正確にその人の個性がわかる。
さらにその人と他の人との違いもわかる。
そしてどういうチームを作っていけばいいのかという「個人と組織の最適な関係づくり」もできる。
スッゲ〜エキサイティングな理論であり、活用できる手法なんや。
だから僕はこの理論を使ってポンタキャリアカレッジをやってるわけね。
組織からみた個人の最適化ではなくて、個人からみた将来のキャリアの最適化を目指してね。
だってほんまにアラサーの仲間にいいたい。
君は408万4101通りある個性のなかの一つの個性を有する。その個性に無駄はなく、社会や組織や仕事に有効な個性なのである。その個性を活かしきってるか?
新卒の就職活動以来、科学的な自己分析をしてるか?
感傷的なダメ出し自己分析や、
「他人は他人、僕は僕」という諦めや無関心を装って生きてないか?
上司に「なぜ君はできないんだ〜!」と言われてただ落ち込んでるだけになってないか?
そんなもんの価値は低い。
それよりも君の人生の、君のキャリアの価値を高めることが大事やろ。
自己分析をして君がすべきことは、社会や会社や仕事にあわせて生きていくことではない。
係長でも、部長でも、社長でも、アラサーでも、アラフィフでも、
つまり人は全員が、まず自分を標準化することが大事なんとちゃうかな?
自分スタンダード。
これに勝るものは、まさに神のみぞ知るやな。
僕は霊視なんて全然できないし(笑)。
人のオーラも見えたことがない。
つまり見えないことを否定することも、肯定することもできる立場ではない。
でも自分の個性にないものに力をかけて、無駄な努力をするよりも、
まず自分の個性の強みや弱みを理解し、それを社会や会社や仕事に活かす術は学んできた。
さて上に掲載したFFSマトリックスのなかに、自分が当てはまるところはあるかな?
そして社会、会社、仕事で求められているものとは合致しているかな?
合致していれば、それは幸せやね。オキバリヤス〜
合致していなければ、対策は2つ。
(1) 社会、会社、仕事に合わせる努力を重ねる
(2) 自分の強みを活かす工夫を重ねる
もちろん僕は両方とも大事だってことは、わかってるよ。
でもね、今の日本、なんだか(1)社会、会社、仕事にあわせる努力を重ねることだけを求める「世間体」という幻想があるように思えてならん。
なので僕は(2)自分の強みを活かすをオススメしてんねん。
それが『自分スタンダード』。
自分の強みを知り、活かして、工夫を重ねていく上で、自分の力を発揮して、社会や会社や仕事を作っていってはどうやろう?
もしちゃんとFFS理論を学びながら科学的な自分の活かし方を学びたければ、ポンタキャリアカレッジにいらっしゃい。
ちゃんと正確なデータを取って、自分のキャリアを考えていこうや。
様子を見て考えてから行動するのであれば、様子を見なはれ。
それも君の個性が決定することやから、それでよし。
電車に乗るために、ダッシュするか様子を伺うかは、その人の個性が決めていく。それをその人らしさといい、『自分スタンダード』とよぶ。
でもあきらかに「電車に乗る」という目標を達成しなければ意味はない。
さーて、ぼちぼちヨメサンとデートに出かけようっと。
僕は海好きなので、神戸の須磨海岸にある隠れ家カフェに出かけようかな〜。
この店のタンドリーチキンは抜群。
ここがまたオーナーの「自分スタンダード」な店なんやな〜。
来月から3週間ほどヨーロッパへ美味いもの巡りの旅に出る。
それも毎年。
自分を活かしていくと、僕ら客まで旅の話を聴きに行きたくなる。
オーナーと客が活かしあうという不思議が「お店」にはあるね。
これは「社会」「会社」「仕事」でも同じとちゃうかな〜。
自分スタンダードで、お互いに活かしあうキャリアを作りにでかけてや。
ほな、いってきまっさ〜!
本田 勝裕
キャリア・コンサルタント。有限会社ポンタオフィス代表取締役。
就職、創業、進学をテーマにしたコンサルタント。1962年生まれ。神戸在住。1985年甲南大学経営学部経営学科卒業。同年、(株)学生援護会に入社し、11年間『an』の編集及び企画業務に携わる。また、学生・OL向けのイベント、セミナーもプロデュース。同社退社後、(株)クリエテ関西(あまから手帖版元)で広告企画部長を経て、1997年1月にキャリア・コンサルタントとして独立。
現在は、企業や学生を対象に講演及び執筆活動を行っている。また、キャリア支援ホームページ「ポンタのキャリアゼミナール」やメーリングリストを主宰。授業・講演実績約506本(90分単位)、コラム執筆約100本、本出版1冊(すべて2009年実績)。社会人、学生がお互いに学びあう学校、ポンタキャリアカレッジも主催。
自分と組織の関係性、コミュニケーション能力、自分マーケティング能力などについてのセミナーが反響をよんでいる。