【 Vol.7 】 タテの関係<『学生訪問』から学ぶこと>
アラウンド30世代の皆さま、「俺も随分オトナになったな・・・」と感じること、多いのではないですか?
会社組織においては『若手層』ではなくなり、会社によってはマネージメント層へ本格仲間入り・・・私生活では結婚や、親の現役引退など「社会のなかでもポジショニングが変わってきたな・・・」と、オトナの重みを感じられているのでは?
このコラムは、そんなアラウンド30の皆さまへ贈るキャリアの悩み解決コラムです。
講師の本田勝裕氏は、学生・社会人のキャリア形成、企業の人材採用などのコンサルタントとして活躍中。
組織心理学「FFS理論」と、コーチングの最先端技術である「ソリューションフォーカスドアプローチ」をベースに、アラウンド30世代:オトナのキャリアの悩みを解決します。
社会責務やら、悩みやら、ついこの前まで頭を悩ませていた問題とはちょっと違う「いわゆるおとなの悩み」が出てきはじめたアラウンド30の皆さま・・・「楽スルナカレ、クルタノシモウ」!
まいど!
さて君に質問である。
社会人になってもう○年(人によっては○○年か・・・?)
最近学生と話したことあるか?
話したことある人は、どんなことを話したん?
なにか教えたん?
それともなにかを学んだん?
社会人として、モヤモヤがあるんやったら、
学生と対話してみてはどうや?
教えてるのに、学べるから。
僕はこれを『学生訪問』と呼ぶ!
実は僕の甲南大学の授業に、毎週卒業生F君が聴講生としてやってくる。しかも大学公認(笑)
別に、毎週きてくれ〜ってお願いしたわけではないねんで・・・(笑)。
でも彼は毎週火曜日の午前9時にいつもの教室にニコニコ座っている。
「転職して午前中が空いたんですわー」と笑うF君は半年前、暗い顔だった。
一昨年、ポンタキャリアカレッジを修了しても解決しない課題が彼にはあった。
その課題とは「上司」と「不景気」であった。
学生時代の就職活動で彼は、
「人と組織をつなぐ仕事の面白さ」を思い、人材ビジネス業界に就職した。
たしかに人材ビジネスのオモシロサはそこやねん。
でもね、それをビジネスにするから仕事になる。
ってことは「人と組織をつなぐ仕事の面白さ」を外野から見てるのと、
実際にバッターボックスに立ってやるのでは、まったく別の厳しさもあるわけやな。
上司は思う以上に「ダメ出しバカ野郎」だったみたいで、
目標達成しても「あたりまえやろ」という感じやったらしい。
どんな会社にもツマラン上司はいてるもんやね。
「ダメ出し」は上司として誰でもできること。
その「ダメ」なところを「どうしたら良くなるのか」を指導するか、
「ダメ」ではなく「できたところ」を「どうしたらもっと伸びるのか」を引き出すのかは、
その上司のビジョンによるわけやけど、当然これはムズカシイ。
それを前回の原稿でこう書いたよね。
ワカラン、フクザツなことはオモシロイ。
ワカリヤスイ、カンタンなことはツマラナイ。
だから仕事も人間関係もオモシロイ。
さて話を戻そう。
F君は「バカ上司」に加えて「不景気」が重なって、
秋に就職活動をして、教育業界に転職した。
個別指導の塾で社員数が20人足らずというベンチャーである。
「出社はお昼なんですよ。なんせ子どもが学校に行ってますからね。
帰るのは大体終電なんですけど、こっちは授業を終えて会議した後でしらふなんで
サラリーマンの酒臭さにやってられませんよ〜」
と笑う彼。(心の中で「お前もサラリーマンやんけー」とツッコム僕)
僕の朝一の授業が終わる頃、その笑顔にキラキラした瞳も加えてる。
僕は社会人が学生と対話することを、勝手に「OB・OG訪問」ならぬ「学生訪問」と銘打っている。
F君はなぜ、学生と会いに授業にやってくるのか?
F君はなぜ、瞳までキラキラして、昼からの仕事に向かうのか?
これを聞いてみると、彼はこう答えた。
「ポンタさんの授業の内容と展開方法が、
そのまま塾の運営や子どもたちのやりとりに役立つんです」
(「なかなかかわいいこと言うやんか〜」と照れ笑いの僕)
「ほかにもあるんです。学生から質問を受けると、自分の考えが整理できるんです」
(「気づきおったか。そのとおりじゃ。OPEN&SHAREは自分のためでもある」と微笑む僕)
しかし僕はそれだけではないように思う。
彼は僕の授業にやってくることで、自分の原点を見ているのではないかと思う。
原点回帰。
元いた場所に帰って自分の点を見つめる。
甘かった自分と、素直だった自分がそこにいる。
今大学では、個人情報保護の観点からOB名簿を公開していない。(つまりCLOSE)
君自身は別に隠しているわけではないやろうけど、隠しているような感覚が学生を襲っている。
だから昔みたいに、気軽にOB・OG訪問ができず、社会人との対話を持たないまま、
就職活動をしている学生が増えてるねん。
大学の先輩であろうとなかろうと、
社会人に仕事のことをリアルに聞くことすらなくなりつつある。
ウェブでは学べないことが、リアルな対話にはたくさんあるのに。
広告情報ではなく、ナマ情報なのに、
曖昧さが減り、しっくりが増えるのに。
だから学生は一人引き篭もっている状態なんや。
つまり学生訪問は、
君のためだけになるんでもない、学生のためにもなる。
つまり仕事と一緒や。
仕事は自分のためだけでは成立せん。
仕事は相手のためになって、初めて成立するもの。
学生に会って、自分の状況を話してごらん。
整理はできるは、原点回帰もできるは、
ってことで思考と行動の素にある『自分エンジン』が熱くなったり、クールになるやろ?
もちろん友達や同期の仲間でヨコの関係も大事にしたらエエけど、
タテの関係もガンガン充実させてや〜。
ただしそのカフェや居酒屋は奢ってやってね〜。
するとその学生も後輩に奢りだす。
つまり君のガキもいずれ先輩の世話になれるで、っちゅう話や。(いつの話や〜!)
ほな、またな。
ちょっとオランダに行ってくる。
しばらくオランデ。
本田 勝裕
キャリア・コンサルタント。有限会社ポンタオフィス代表取締役。
就職、創業、進学をテーマにしたコンサルタント。1962年生まれ。神戸在住。1985年甲南大学経営学部経営学科卒業。同年、(株)学生援護会に入社し、11年間『an』の編集及び企画業務に携わる。また、学生・OL向けのイベント、セミナーもプロデュース。同社退社後、(株)クリエテ関西(あまから手帖版元)で広告企画部長を経て、1997年1月にキャリア・コンサルタントとして独立。
現在は、企業や学生を対象に講演及び執筆活動を行っている。また、キャリア支援ホームページ「ポンタのキャリアゼミナール」やメーリングリストを主宰。授業・講演実績約506本(90分単位)、コラム執筆約100本、本出版1冊(すべて2009年実績)。社会人、学生がお互いに学びあう学校、ポンタキャリアカレッジも主催。
自分と組織の関係性、コミュニケーション能力、自分マーケティング能力などについてのセミナーが反響をよんでいる。