【 Vol.8 】 タテの関係<『社長訪問』から学ぶこと>
アラウンド30世代の皆さま、「俺も随分オトナになったな・・・」と感じること、多いのではないですか?
会社組織においては『若手層』ではなくなり、会社によってはマネージメント層へ本格仲間入り・・・私生活では結婚や、親の現役引退など「社会のなかでもポジショニングが変わってきたな・・・」と、オトナの重みを感じられているのでは?
このコラムは、そんなアラウンド30の皆さまへ贈るキャリアの悩み解決コラムです。
講師の本田勝裕氏は、学生・社会人のキャリア形成、企業の人材採用などのコンサルタントとして活躍中。
組織心理学「FFS理論」と、コーチングの最先端技術である「ソリューションフォーカスドアプローチ」をベースに、アラウンド30世代:オトナのキャリアの悩みを解決します。
社会責務やら、悩みやら、ついこの前まで頭を悩ませていた問題とはちょっと違う「いわゆるおとなの悩み」が出てきはじめたアラウンド30の皆さま・・・「楽スルナカレ、クルタノシモウ」!
まいど〜!
前回の原稿で、オランダ行くのでオランデ。と書きましたが、
無事にインフルエンザにもかからずビール飲み過ぎ痛風(僕の持病)にもならず、
無事に帰還いたしました。
オランダ紀行については、
僕の個人サイト「ポンタのキャリアゼミ」のメッセージとバックナンバーを読んでみて。
さて今回もタテも関係について。
前回は「学生」という関係やったけど、同様にこんな方法もあるで。
君の会社の社長室の扉は開いてるか?
社長訪問もいかがかな?
僕は最初に就職した会社に11年お世話になって転職する時、部長に辞表を提出したものの、
社長が僕を「なんとか引きとめろ」と言ってくださってなかなか退職願いを受理してもらえなかった。
「ありがたい話」やね。
でも次の会社と仕事が決まってるから時間がない。
ある日、僕は意を決して、ビルの10階にあった社長室に出かけてみた。
そこはいつもそうであるようにドアが開いていた。
鋭い視線と厳しい言葉で、いつも会議を凍らせる社長が座っているのが見えた。
僕はそのまま秘書に声もかけず、社長室に「失礼します」と勝手に入った。
すると椅子に座る社長は、僕の顔を見上げながらしばらく黙っていた。
「社長。辞めさせてください。どうしてもやりたいことができました」
という僕のギリギリの声を聞いていた。
そして次の瞬間、社長が笑った。
初めて見たその笑顔の次に出た言葉は、こうやった。
「しゃーないなー、君に直接ここまで来られては止めようがない。次でしっかりやりなさいよ」
実は僕、この手を時々使ってた。
新しい事業を始める時、部長や次長をすっ飛ばして、お願いにいったこともある。
逆に今までやっていた事業から撤退する時も、直接頭を下げにいったことがある。
係長や課長だった僕はその度に書類に先にハンコをついてもらって、
それから部長や次長の印鑑をもらった。
君はそういう行動をとったことがあるかな?
僕だけが特別やと思ってる?
ちゃうねん。
僕はただ本気やっただけ。
本気やから、まっすぐに10階の社長室に出かけただけ。
そこに肩書きとか序列は関係ない。
だって気持ちのことやもん。
大事な大事な仕事のことやもん。
タテの関係というのは、学生がそうであるように、社長もまた君のタテの関係のはず。
ましてや君の会社の経営トップなんやから、
君がマジでやったら、想像とは違う答えが返ってくることもあるのとちゃうか?
そしてそんな(組織維持上は)反逆的な行為でも、
君が上級管理者になったときに、そういうヤンチャな若手を見逃すことがなくなるやろう。
タテのタテともいえる使い方を、僕はこうして使った。
今から社長室のぞきにいってみてはどないや?
さて社長室で初めて見る社長の笑顔に驚き、
僕は「この人は僕のお父さんやったんや」と思った。
もちろん僕の実父ではない。
しかし僕の11年間を、ニコニコ見守ってくれた親父だったことに気づけた。
上司がアホでも、社長がアホかどうかはわからんよ。
僕は社長室でボロボロに泣きながら、これまでの礼と自分の非礼を詫びて転職したんや。
エヘヘ、ここでこの話を終わっておけば「エエ話」で終われるねんけどな〜。
まだあんねん。ゴメン
僕は自己紹介で書いたようにこの転職に失敗した。
失敗して10ヶ月で転職先を辞めた。
にっちもさっちもいかんようになったのが、8ヶ月目。
僕はオフィスの近くにある文房具屋で封筒と便箋を買い、
ドトールの片隅で2社目の会社の退職願を書き、その足で社長のもとへ提出にいった。
君もやってみたらわかるけど、
退職願を提出したら、その瞬間から自由に言いたいことが言える。
それまでは経営のこと、部下のこと、関連部署のこと、取引先のことなど、
複雑な関係のなかでなかなか言えなかったことが、ズバズバ言えるようになった。
そりゃそうや、もう保身がないねんもん。
どう思われるかではなく、仕事をどうするのかに集中できるんや。
むしろ本気でやってきた大事な仕事のことを言わずに、後味の悪い辞め方なんてできるかい。
ありがたいことに転職先のその会社は社長も編集長も、
最後の僕の意見を素直に聞いてくれた。
そしてその意見が通った企画が12年経った今も続いているという。
さらに今月、その時の社長が引退されるという。
僕はソリューションフォーカストアプローチを学びにオランダに行くので挨拶はできない。
だから13年前に雑誌創刊祝いのパーティの席で、
社長と一緒に飲んだバローロ(イタリアンワイン)を贈ることにした。
もし君が今退職するというのであれば、社長室に行ってみてはどうかな?
事業のこと、仕事のこと、思う存分話してみてはどうかな?
あれ〜、なんか「エエ話」で終わってるな〜。
あ、そうか、僕が「エエ奴」やからしゃーないんか〜!チャウチャウ!
本気でやると、
タテもヨコもナナメも本気でエエ奴になってくれるという、
フツーの話なんや。
それを僕は授業にやってくるF君の笑顔と瞳に、今も学んでる。
そのF君の横には、親父のような社長の笑顔も、バローロの社長の笑顔もならんでる。
本田 勝裕
キャリア・コンサルタント。有限会社ポンタオフィス代表取締役。
就職、創業、進学をテーマにしたコンサルタント。1962年生まれ。神戸在住。1985年甲南大学経営学部経営学科卒業。同年、(株)学生援護会に入社し、11年間『an』の編集及び企画業務に携わる。また、学生・OL向けのイベント、セミナーもプロデュース。同社退社後、(株)クリエテ関西(あまから手帖版元)で広告企画部長を経て、1997年1月にキャリア・コンサルタントとして独立。
現在は、企業や学生を対象に講演及び執筆活動を行っている。また、キャリア支援ホームページ「ポンタのキャリアゼミナール」やメーリングリストを主宰。授業・講演実績約506本(90分単位)、コラム執筆約100本、本出版1冊(すべて2009年実績)。社会人、学生がお互いに学びあう学校、ポンタキャリアカレッジも主催。
自分と組織の関係性、コミュニケーション能力、自分マーケティング能力などについてのセミナーが反響をよんでいる。