【 Vol.9 】 ヨコの関係<GIVEの心>
アラウンド30世代の皆さま、「俺も随分オトナになったな・・・」と感じること、多いのではないですか?
会社組織においては『若手層』ではなくなり、会社によってはマネージメント層へ本格仲間入り・・・私生活では結婚や、親の現役引退など「社会のなかでもポジショニングが変わってきたな・・・」と、オトナの重みを感じられているのでは?
このコラムは、そんなアラウンド30の皆さまへ贈るキャリアの悩み解決コラムです。
講師の本田勝裕氏は、学生・社会人のキャリア形成、企業の人材採用などのコンサルタントとして活躍中。
組織心理学「FFS理論」と、コーチングの最先端技術である「ソリューションフォーカスドアプローチ」をベースに、アラウンド30世代:オトナのキャリアの悩みを解決します。
社会責務やら、悩みやら、ついこの前まで頭を悩ませていた問題とはちょっと違う「いわゆるおとなの悩み」が出てきはじめたアラウンド30の皆さま・・・「楽スルナカレ、クルタノシモウ」!
まいど〜!
暑いな〜。
ところで熱いか?イヒヒ、これを読んで熱くなるかな〜?
どっちにしても僕は熱く書くことにする。
タテ、ヨコ、ナナメの関係を活かせってことで、この原稿からヨコの関係を書くね。
結論から書こう。
“TAKE, TAKE, TAKE”じゃなくて
“GIVE, GIVE, GIVE”の関係へ
これをヨコの関係で作っていこうよ。
別名「情けは人のためならず」即ち「人への情けは自分のためにある」ということやで。
ところで君へ質問。
・君に同期入社の友達はいるかな?
・それから君にお取引先(営業先でも仕入先のパートナーでも)はおるかな?
このヨコの関係は「竜馬がゆく」(司馬遼太郎さんの作品)を読んでると、
日本では江戸時代までは武家社会では「同期」とか「友達」という関係よりも、
主君である藩主への忠誠の都合からか、タテの関係が強かったみたい。
それにしたがって、東京では今も「ヨコ」の関係より、「タテ」の関係が強いように感じる。
「株式会社○○の本田です」とか「慶○義○大学出身です」とかね。
所属先を言おうとするのは、タテの関係を重視している現われではないやろか?
僕の考える『自分スタンダード主義』には反するな〜。
主君が先に存在して、従属する自分がいるという感じがするけど、どう感じる?
まず自分がいて、次に所属するところがあるというのが、『自分スタンダード主義』ね。
もちろん昭和から平成の時代は江戸時代と違って、
「友達を大事にしなさい」という時代でもあるし、
大阪では元々商人文化が栄えたのと、漫才を幼稚園からやる文化(!)があるため、
ボケ・ツッコミというヨコの関係を重視するコミュニティが自然にある。
(ウフフ、まるで歴史学者みたいやな〜。チャウチャウ。僕はコンサルタント。ただ歴史に学んでいるだけ)
関西以外の人は「ウソでしょ」と思うらしいけど、
実際僕らはガキの頃からボケ・ツッコミをやってきた。
たとえばこんな具合。
ツッコミ「冬の星座はオリオン座」
ボケ「え、オニオン座?」
ツッコミ「なんでオマエは食べ物のことばっかり言うねん」
(これはウチの息子が小学校4年生の頃に音楽発表会の舞台でボケたネタ)
そんな大阪でも最近「ヨコ」関係も希薄になってるような危機感を感じてるねん。
武家社会が浸透してきたのか、家の鍵と同じように心にロックをかけている人が多くて、
すぐにこんなことを言い出す。
「利害関係のない学生時代にできた友人は、社会では得られない」
とか、
「学生時代に親友が得られない奴に、社会で親友など得られるか」
とか。
あほか!そんなことないわい!
それを言う奴が悲しいと、僕は思うねん。
だってそんなん気持ちの問題やろ?
ってことは気持ち次第でなんぼでも「ヨコ」の関係はできるんとちゃうかな?
ではどんな気持ちでいれば、ほんまもんの友達というヨコの関係ができるんやろう?
それは徹底的なGIVEの意識と行動やで。
閑話休題。
不景気の煽りもあって、僕の粗い予測では大学生で6月末時点で内定の出ていない学生は
およそ学部卒業生55万人として院進学や留学17.2%を引くと、
就職活動をしているのは45万人強。
6月に各大学に内定状況をヒアリングしたところ現時点で50%前後。
ということは20万人以上の大学生が未内定ということになる。
採用環境が急に好転することはないやろうから、
卒業までに未内定の学生は15万人ぐらいになる可能性がある。
つまり、エライ時代でんな〜!
さてそこで大学生は就職活動の窮地に、こう言う。
「内定がとれないんですよー」
これはTAKE発想。
そもそも採用サイドは「一緒にチームで働く仲間を採用したい」と思っているのであって、
「内定をア・ゲ・ル」なんて思ってない。
つまりゴールがズレてる。
就職活動する側と採用する側のゴール(目標)の不一致やな。
これを一緒にしとかんと、効率も効果も得にくいやん。
これは中途採用でもまったく同じこと。
採用担当者は、相手(転職希望者)が、
「どんな能力、実績、個性、価値観を持っているのか?
一緒に働くと、我社にどんなGIVEをしてくれるのか?」と思いながら面接をする。
この連載のVOL.4『孤立することなかれ』に書いたように、
転職活動でもっともイケナイコトは、孤立すること。
しかも「僕は情報をTAKEしよう」ではなくて、「僕の情報をGIVEしよう」やで。
面接官に、GIVEの心得で面接にいってるか〜?
自分のリソース(個性・価値観・能力・実績)をベースに、
その企業で自分がGIVEできること(役に立つこと)を、
話し合いにいくことが、結果として内定を得やすい効果的な就職活動やねん。
もちろん転職は新卒の就職活動に較べて、
専門性を中心に能力や実績は重視されるやろう。
しかし
「チームで仕事する仲間を探す」という採用担当者のミッションは同じ。
でもってチームでGIVEしあいながら仕事は進めていくものやから、
内定TAKE発想ではズレてまんねん。
さて本題『ヨコの関係』にもどろう。
自分が窮地に立つのであれば、
その分だけ余計に仲間の窮地に立って相談にのることが、「ヨコ」の関係を強くする。
自分を公開し、GIVEする「ヨコ」やから、
「ウエ」でも「シタ」でもない、「フェア」とか「フラット」になる。
それを君は閉ざしてないやろうか?
情報をTAKEしようと目論んで、結果として苦悩し孤立してないやろうか?
今ね、経済状態が悪いのはみんな知ってる。
そういう時は、自分だけの情報をみんな持ちたがる。
その気持ちはわかるんやけど、時代の大きなトレンドは逆方向。
オープン&チームでソリューションする時代や。
企業はガンガン資本提携や事業提携をしているし、
かつては上下関係にあった自動車の完成品メーカーが部品メーカーと対等に提携をして、
エコロジー社会における燃料開発をフラットな関係でチームでおこなってる。
これは企業だけやないで、個人も同じ時代に入ってるで。
つまり自分も他者もオープンにして、チームで解決に向かう時代であって、
独占し閉鎖し隠して、完成する時代ではない。
そんなことをしてたら転職活動が成功しても、仕事でのスタンスで切り替えにくい。
上司や同僚と一緒に課題を解決していく。
顧客と一緒に課題を解決していく。
ビジネスパートナー(仕入先)と一緒に課題を解決していく。
それと同じ方法で転職活動する必要があるんとちゃうか?
マーケティングでいうところのSWOT分析を、どんどん公開していくわけやな。
(Strength:強み、Weakness:弱み、Opportunity:機会、Threat:脅威)
しかし顧客や脅威(ライバルや敵)には、自分を公開しにくいね。
つまり自分の周辺を味方で集める必要があるやろ?
チームづくりやな。
そしてそのチームには、どんどん自分のSWOTを伝えていく。
(これをポンタキャリアカレッジでは「自分マーケティング能力」として教えてる)
これは本気でやらんと、すぐに見破られる。
本気でやらんと、チームが脆くなる。
場合によっては裏切る奴もおるやろう。
しかしその裏切り者は、自分が裏切り者だと知っていて、もう君に近づけない弱虫になる。
友達を減らし、情報をTAKEするだけだから嫌がられる存在になり、
仲間の結婚式にもよばれないので、最終的に孤立する者の戦略である。コワ〜!
また議論もあるやろう。
「それをしてもメリットは少なくないか?」「もっとこうしてはどうやろう?」
「今はまだ時機ではないよ」「オマエがやらんと誰がやんねん」
「それはちゃうやろ!」「オマエもっとちゃんと考えろや!」
さてこういう議論や喧嘩は、相手が本気でないと成り立たない。
つまりこんな熱い、厚い、暑い友達ができると、君にはヨコのつながりができたことになる。
傷つくけど、気づくこと多し。
そのためにも、さっさと君のとなりにいてる仲間にGIVEの開始や。
どんどん自分の情報を公開してチームづくりに勤しみなはれ。
さて最後にまたしても閑話休題。脱線が多くてゴメンネ。
僕は神戸に住んでいる。
14年前に地震にあった。
その時に僕の会社や取引先の関係がクッキリと二分された。
「大丈夫、ポンチャン。なにか送ろうか?」
という僕の顧客である、青山一丁目の外資系化粧品会社の宣伝マネジャーの友達もいた。
ガスも水道も止まった神戸に住む僕に「風呂入りにくるか?」、
ビジネスパートナーの大阪の広告代理店の仲間が言ってくれた。
その反対に、無関心な人もいた。
つまりビジネスだけの関係の人。
これは全部、その人の心が決める。
ギブする気持ちの人と、テイクする人の気持ちが、僕の自分人脈を二分した。
本気でやると、
タテもヨコもナナメも本気でエエ奴になってくれるという、
フツーの話なんや。
それか、ただ僕が「隠す」のが苦手で体当たりしてたからかもしれん。
さーどうする?
隠す?公開する?
TAKEする?GIVEする?
どっちでもエエねん、解決したらね。
だから選んでごらん、トナリの友達とのGIVEかTAKEを。
新しい人間関係の旅、出かけておいで、今そこにいる友達と一緒に。
僕はおばあちゃんが電車で立ってたら席を替わろうっと。
ご飯食べたら店の人に「ありがとう」と「ごちそうさま」を言おうっと。
街中を「ヨコ」の関係にしてやろうっと。
普段やり慣れると、使いたい時にちゃんとGIVEが使えるからね。
ほな、ごきげんでいこう〜♪
本田 勝裕
キャリア・コンサルタント。有限会社ポンタオフィス代表取締役。
就職、創業、進学をテーマにしたコンサルタント。1962年生まれ。神戸在住。1985年甲南大学経営学部経営学科卒業。同年、(株)学生援護会に入社し、11年間『an』の編集及び企画業務に携わる。また、学生・OL向けのイベント、セミナーもプロデュース。同社退社後、(株)クリエテ関西(あまから手帖版元)で広告企画部長を経て、1997年1月にキャリア・コンサルタントとして独立。
現在は、企業や学生を対象に講演及び執筆活動を行っている。また、キャリア支援ホームページ「ポンタのキャリアゼミナール」やメーリングリストを主宰。授業・講演実績約506本(90分単位)、コラム執筆約100本、本出版1冊(すべて2009年実績)。社会人、学生がお互いに学びあう学校、ポンタキャリアカレッジも主催。
自分と組織の関係性、コミュニケーション能力、自分マーケティング能力などについてのセミナーが反響をよんでいる。