月給・日給・年俸から時給へ 時給のわかりやすい計算方法

自分の月給を時給に直すといくらだろう? と考えたことはありませんか。

時給は1カ月の給与額や労働時間から算出することができます。時給計算の方法と合わせて、計算に役立つアプリや職種別の平均時給をご紹介します。

月給を時給に換算すると? 基本の計算方法

「時給」とひとことで言っても、割増賃金の計算で使われる正式な時給と、サービス残業などの時間を含めた実質的な時給の出し方では計算の方法が異なります。

自分が1時間でどれだけの金額を稼いでいるのか把握するために、月給や労働時間をもとにして時給を計算してみましょう。

残業代を含めた時給の計算方法

残業代を含めた実質的な時給の計算方法。1カ月の給料を1カ月の労働時間で割る。

残業代を含めた実質的な時給は、【1カ月の給料÷1カ月の労働時間(定時×出勤日数+残業時間)】で計算できます。

給料や労働時間には、残業代や残業時間をそれぞれ含めましょう。

ここでは所定労働時間が8時間の会社で20日働き、月の残業時間は20時間、月給25万円(残業代込み)の場合の時給を計算してみます。

残業代を含めた実質的な時給の計算方法。1カ月の給料÷1カ月の労働時間(定時×出勤日数+残業時間)=時給。(例)250,000円÷(8時間×20日+20時間)=1388.8…。よって、時給はおよそ1,389円となる。

コラム:最低賃金も要チェック

労働環境があまり恵まれていない人は、時給を計算するのと同時に最低賃金もチェックしておきましょう

給与を規定通りにもらっていても時給に直すと意外と安いかもしれません。

例えば東京で時給1,113円未満、大阪で1,064円未満だと、最低賃金を下回っていることになります。(2023年10月時点)詳しくは『地域別最低賃金の全国一覧』でご確認ください。

割増賃金などの計算で使われる時給の計算方法

割増賃金の計算で使用する正確な時給=月給/1年間における1カ月の平均労働時間

割増賃金の計算などで使われる時給は【月給÷1カ月の平均所定労働時間】から計算できます。

計算に必要なのは、「1年間の所定休日数」「所定労働時間」「月給」の3つ。それらを確認した上で計算してみましょう。

ここでは所定労働時間が8時間、1年間の所定休日数が125日、月給25万円(残業代抜き)の場合の時給を計算してみます。

割増賃金などの計算で使われる時給の計算方法。(1年間の所定出勤日数×1日の所定労働時間)÷12カ月=1年間における1カ月平均所定労働時間。月給÷1年間における1カ月平均所定労働時間=時給。(計算例){(365日-125日)×8時間}÷12カ月=160時間。250,000円÷160時間=1562.5円。よって時給は1562.5円。

用語解説

年間所定休日

企業が定める休日です。土日祝日や夏季休暇、冬季休暇など、企業が指定した休日が所定休日数に含まれます。
なお、有給休暇は含まれません。

所定労働時間

企業が個別に定めた労働時間のことで残業時間は含みません。雇用契約書や就業規則に明記されています。

月給

ここでは、基本給に地域手当や役職手当、資格手当、皆勤手当など一律支給される手当を含めた金額を意味します。
通勤手当や住宅手当、家族手当など、個人的事情によって変動する手当は割増賃金を計算する際の月給に含めません。

さらに、日給や年俸の金額から時給を計算する方法についても詳しく説明します。

日給から時給を計算する方法

日給から計算した時給=日給/1日の労働時間

日給から時給を求める計算式は【日給÷1日の所定労働時間】です。休憩中は時給が発生しないため、労働時間から差し引いて計算しましょう。

日給1万円で始業9時、終業18時(実労働8時間、休憩1時間)の場合、時給は下記の通りです。

日給から時給を計算する例

年俸から時給を計算する方法

年俸から計算した時給=月給/1年間における1カ月の平均労働時間

年俸から計算する場合は、まず年俸を12で割り1カ月あたりの平均給与を算出します。

その後は1カ月の平均所定労働時間を割り出し、月給÷1カ月の平均所定労働時間】から時給を求めます。年俸の中に賞与が含まれていることが明らかな場合は、賞与に相当する額を除いてから12で割ります。

例えば年俸360万円で1日の所定労働時間が8時間、年間所定休日が125日の場合は下記の計算になります。

年俸から時給を計算する方法。(1)1カ月あたりの給与を計算。年俸÷12カ月=月収。(2)1カ月あたりの平均所定労働時間を計算。年間出勤日数÷12カ月×1日の所定労働時間=平均所定労働時間。(3)平均月給を平均所定労働時間で割る。月収÷平均所定労働時間=時給。(例)(1)3,600,000円÷12カ月=300,000円。(2)(365日-125日)÷12カ月×8時間=160時間。(3)300,000円÷160時間=1,875円。よって時給は1,875円となる。

コラム:正しい勤務時間の把握に便利なアプリ

残業代・残業時間を含めた時給を知るためには、勤務時間を正確に把握している必要があります。

裁量労働制で勤務時間をきちんとつけていなかったり、サービス残業が多かったりして実際に働いた時間がわからない人には、勤怠時間を管理できるアプリの使用がオススメです。

タイムカード機能で出勤・退勤時間を記録しておけば、毎月何時間働いたのかを正しく把握することができます。

給与明細とあわせれば、正しい時給が計算できるようになります。

エクセルで計算する方法も

自分で時給を管理したい場合は、出退勤の時刻をエクセルに記入し、その記録から給与を計算するという方法もあります。

あらかじめエクセルに数式を入力しておけば、時刻を記入するだけで稼働時間や給与額を計算してくれます。スマートフォンを持っていない方や、計算結果を他人と共有したいという方におすすめの方法です。

知っておきたい時給の基礎知識

自身の正しい時給を知るためには、時給計算のルールを知っておくことも必要です。

「時給計算に休憩時間は含まれる?」「残業したら給与が増えるって本当?」などの疑問をここで解決しておきましょう。

知っておきたい時給の基礎知識:「時給」は1時間単位で支払われる給与額のこと。ただし、休憩時間は時給の対象外!1分でも残業した場合は残業時間としてカウントされる。「割増賃金」を請求できる場合がある。対象は、法定時間外労働・深夜労働・休日労働。

時給とは1時間単位で支給される給与額

そもそも時給とは、時間単位で支給される給与のことです。アルバイトや派遣社員、契約社員は、時給制で働くことも多いため馴染みのある言葉かもしれません。

月給制と異なり、働いた時間に応じて給与が支給されるため、給与の内訳がわかりやすいのが特徴です。

休憩時間は時給の対象にならない

仕事の間であっても、休憩時間には時給が発生しません。例えば1時間お昼休憩がある職場で9時間拘束された場合は、休憩時間を差し引いた8時間分の給与が支払われます。

給与を計算するときは、休憩時間を合算してしまわないように気を付けましょう。

ちなみに、労働基準法では労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合60分以上の休憩を与えるよう定められています。

「15分未満切り捨て」の時給計算は違法?

「15分に満たない労働時間は切り捨てて計算する」という会社がありますが、これは違法です。

労働基準法第37条では「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働について(中略)割増賃金を支払わなければならない。」と定められています。

ただし、1カ月の労働時間を通算して30分未満の端数が出た際は、その端数を切り捨てて、それを1時間に切り上げることが認められています。

時給が増える!? 「割増賃金」を請求できるケース

残業や休日出勤を行うと割増賃金が発生しますが、これは時給で働く場合も同様です。割増賃金を請求できるのは法定時間外労働・深夜労働・休日労働などのケースがあります。

残業種類別の賃金割増率を表した表。以下、残業の種類:賃金割増率(%):備考/注意点。法定時間外労働:25:なし。法定時間外労働(1ヶ月60時間を超えた場合):50:代替休暇取得の場合は25%。深夜労働:25:午後10時から午後5時までに労働した場合。休日労働(法定休日に労働した場合):35:休日労働では、8時間を超えても時間外労働の25%割増は加算されない。法定時間外労働+深夜労働:50:なし。法定時間外労働(1ヶ月60時間を超えた場合)+深夜労働:75:なし。休日労働+深夜労働:60:なし。

法定時間外労働

法定時間外労働とは、法定労働時間を超過して働いた時間のことです。

法定労働時間は労働基準法により「1日8時間、1週間で40時間」と定められています。この時間を超えて働くと時給に25%の割増賃金が上乗せされます。

深夜労働

午後10時から午前5時までの間に働くことを深夜労働といい、時給×25%の割増賃金が発生します

もし法定時間外労働の延長で夜10時~翌朝5時の間に働いた場合は、時間外労働の25%分と併せて時給は50%増になります。

休日労働

労働基準法によって定められた法定休日に働くと時給×35%の割増賃金が発生します。労働基準法は法定休日として「毎週1日の休日」または「4週間を通じて4日以上の休日」を取得するよう定めています。

毎週日曜日を法定休日とする企業で働いている場合は、日曜日に出勤すると休日労働としてカウントされます。

時給制で働いて、賃金が高い職業は?

派遣やアルバイト、パートなど時給制で働いている人は、自分の時給が平均より高いかどうか気になる人も多いはず。

令和4年賃金構造基本統計調査から算出すると全職種の平均時給は1,,367円ですが、業界や職種によって平均金額は異なります。

ここではアルバイトや派遣で働くことの多い職種を一部ピックアップして、平均時給を紹介します。

【職種別平均時給ランキング】(円)※従業員数10名以上の企業<順位 /職種/時給>1 /薬剤師 /2,414|2 /システムコンサルタント・設計者 /2,358|3 /ソフトウェア作成者 /1,866|全職種平均時給1,825円|	4 /看護師 /1,773|5 /個人教師	 /1,604|6 /飲食物給仕従事者 /1,268|7 /保育士 /1,199|8 /介護職員(医療・福祉施設等) /1,182|9 /ビル・建物清掃員 /1,115|10 /販売店員 /1,070

※参考:「厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」短時間労働者の職種別1時間当たり所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(公表:2023年3月17日 参照:2024年1月15日)

薬剤師やソフトウェア作成者、看護師などの専門性の高い仕事は、時給も高い傾向にあります。

また個人教師は資格不要の仕事ですが、時給は平均金額を若干上回っています。

一方で販売店員や清掃員などの仕事は、他の職業と比較すると平均時給が低いようです。アルバイトやパートで稼ぐなら、平均時給の高い仕事を選ぶと良いかもしれません。

まとめ 

同じ月給20万円でも、160時間働いた場合と200時間働いた場合を比較すると時給が大きく異なります。

自身の給与額や労働時間について考えるにあたって、時給は1つの指標です。ポイントを押さえて計算してみましょう。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。