不利にならない? 休職中に転職してもいいのか

休職中「復職せずにこのまま転職してしまおう」と考えることもあるでしょう。

この記事では、そもそも休職中に転職活動をしてもいいのか休職の事実は伝えなければならないのかなど、休職と転職にまつわる疑問にお答えしています。

なお、病気を理由に休職している場合は、転職活動を始める前に主治医と十分に相談をしておくようにしましょう。

そもそも、休職中に転職活動をしてもいい?

休職中の転職活動は可能

休職中に転職活動をすること自体は可能です。休職中の転職活動を規制する法律はないため、法的な罰を受けることはありません。

ただし、休職とはそもそも、会社に籍を置きながらやむを得ず一時的に休んでいる状態。あくまで復職が前提となっているので、本来休みにあてるはずの期間に転職活動をするのは、推奨されることではないかもしれません。

現在の職場でトラブルに発展するリスクがある

休職中の転職活動に法的な問題はありませんが、もし会社の就業規則や雇用契約書に休職中の転職活動を禁止する規定があれば、最悪の場合は懲戒処分を受ける可能性もあります。

また、たとえ休職中の転職活動を禁止する規定がなくても、現在の職場でトラブルに発展する可能性は否めません。主なトラブル事例はつぎの通りです。

トラブル事例

  • 転職する旨を伝えたところ、非難されて退職手続きがスムーズに進まなかった
  • 転職先が決まらず復職したら、SNSを通して転職活動をしていたことがばれており、働きづらくなった

できれば休職中はしっかりと休むことに集中し、転職活動は復職後か退職後に行うのが望ましいでしょう。

面接で休職中だと伝えるべき?ばれたらどうなる?

休職を隠すと、内定取り消しや解雇のリスクあり

自ら応募先に「休職している」と言わない限り、隠せる可能性もありますが、休職中ならその事実をきちんと話すのが大切です。応募書類や面接ではうまくごまかせたとしても、入社後に提出する書類でばれてしまうことがないとはいい切れません。

後から休職の事実がばれたとき、面接で「休職していない」と言っていた場合や、転職先の健康診断を受けたとき、病気やケガを理由に休職しているにもかかわらず「体調は良好」と伝えていた場合は、虚偽の申告をしたことになります。

休職を隠していたことを理由に、内定取り消しや解雇になるリスクもあるため、隠せば大丈夫とたかをくくるのは得策ではありません。

コラム:休職はどんな場面でばれる?

具体的に、どのような場面で転職先に休職の事実が伝わる可能性があるのかを解説します。

〈入社時の手続き〉

  • 源泉徴収票
    源泉徴収票には1年間の給与総額が書かれているため、長期間休んでいて収入が少ない場合や、そもそも前年の給与支払いがなく源泉徴収票を提出できない場合は、休職を疑われる可能性があります。前職の源泉徴収票は、年末調整のために転職先に提出するのが基本となっています。
  • 住民税
    住民税の課税対象は前年度の所得なので、前年に長期間休んでいて納税額が少ない場合は、転職先の給料から前年の住民税が引かれ始めるタイミングで、休職を疑われる可能性があります。なお、傷病手当金で収入を補っていたとしても、この手当は非課税のため納税額は少なくなります。

再発したときの手続き

  • 傷病手当金
    傷病手当金は、業務外の病気やケガが理由で働けないときに健康保険から支給される給付金のこと。ひとつの病気(同一疾病)での支給期間は、支給が開始した日から最長1年6ヶ月と決まっているため、転職後に病気の再発などで再申請する場合は、受給歴を照会されて休職していた事実が伝わる可能性があります。

応募先の企業に休職中と伝えたら、不利になる?

不利になるかどうかは休職理由による

転職活動において休職が不利になるかどうかは、休職理由によるでしょう。よくある休職理由別に、不利になりやすいか・なりにくいかを紹介します。

【休職理由別・転職で不利になる?ならない?】うつ病など心の病…不利になりやすい。外傷…完治していれば、不利になりにくい。留学・勉強…目的が明確であれば、不利になりにくい。介護など家庭の事情…業務に支障がある場合は、不利になることもある。訴訟…内容によっては不利になる。

  • うつ病などこころの病
    再発するリスクを懸念される可能性があるため、不利になりやすい。
  • 外傷
    完治していれば、不利になりにくい。日常業務に支障が出るような後遺症が残っている場合は、業務内容によって不利になることもある。
  • 留学や勉強、ボランティア
    休職の目的が明確であれば、不利になりにくい。
  • 介護など家庭の事情
    人物評価には影響がないが、入社後も業務時間の制限など実務に影響がある場合、不利になることもある。
  • 訴訟
    大きな事件に関わっていたり、モラルを疑われるような内容だったりする場合は、不利になりやすい。

休職している事実の伝え方

うつ病などこころの病で休職していた場合や、外傷を理由に休職していた場合は、面接で「現在は回復しており、業務に支障はない」と明言するのが大切です。

伝え方の例

実は、長時間勤務や休日出勤が続いたことで体調を崩してしまったため、月から休職をしております。

静養の結果、現在は体調も回復していますので、業務に支障はありません。医師からはこれまで通り仕事に取り組んで問題ないと言われており、間もなく休職期間は明ける予定です。御社で一刻も早く戦力となれるよう力を尽くしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

まだ完治しておらず、働き方に工夫が必要なら「通院のため、週に一度半休をいただきたいです」などと、実情を伝えるのが大切。選考で不利になるリスクはあるものの、後々の働きやすさにつながります。

ただ、そもそも完治していない場合はまず療養に専念し、十分に回復してから転職活動に励んだほうがいいでしょう。回復している場合でも、環境が変わってストレスがかかることで再び体調が悪化する可能性もあります。いずれの場合も、まずは主治医と十分に相談をするようにしてください。

留学やボランティアなどの理由で休職していた場合、休職の理由と目的を述べたうえで、応募先の会社で活かせる経験を伝えると、むしろ有利に働く可能性もあります。

「休職中なのに転職活動していいの?」と聞かれたら

面接で休職中だと伝えたら、「今、転職活動をしていいの?」と聞かれる可能性もあります。これは、現在の職場でトラブルに発展することを懸念して聞かれる質問です。

規則上、休職中に転職活動をしても問題ないことを伝えたうえで、復職前に転職活動をする理由を明確に答えましょう。

伝え方の例

現職では休職中の転職活動は禁じられていないため、問題ありません。

休んでいる間にキャリアを見つめ直した結果、できるだけ早く新たな環境に身を置いたほうがスキルアップにつながると判断したため、休職中ではありますが転職活動を始めました。

休職中・退職後・復職後…結局、転職はいつがベスト?

休職中の転職活動はトラブルに発展するリスクがあるものの、復職は気が進まない人もいるでしょう。

ここでは、休職中・退職後・復職後に転職活動をする場合のメリットとデメリットを、それぞれ紹介します。

休職中に転職活動するメリット・デメリット

メリット

  • 応募書類の作成などの準備に時間が取れ、面接の日程調整もしやすい
  • もし転職活動がうまく行かなかった場合、復職する道もある

デメリット

  • 休職理由によっては選考で不利になる
  • 休職の事実を隠していた場合は、ばれたときに内定取り消しなどとなるリスクがある
  • 退職時にトラブルになる可能性がある

復職後に転職活動するメリット・デメリット

メリット

  • 通常の転職活動と同じ扱いなので、退職時にトラブルになるリスクを減らせる
  • 「ばれないか」「不利にならないか」と不安を抱えずに済む

デメリット

  • 応募書類の作成や面接対策に時間を取りづらい
  • 面接の日程調整がしづらい

退職後に転職活動するメリット・デメリット

メリット

  • 応募書類の作成準備に時間がとれ、面接の日程調整もしやすい
  • 「ばれないか」「不利にならないか」と不安を抱えずに済む

デメリット

  • 離職期間が長いと、再就職が難しくなる可能性もある
  • 経済的に不安定になる
  • 社会保険の切り替え手続きを自分でする必要がある

※社会保険の切り替え手続きについて、くわしくはこちら→退職にともなう4つの手続き【完全版】

まとめ

休職中に転職活動はできるものの、休職理由によっては選考で不利になることも事実です。また、休職の事実を隠して転職活動をしたとしても、ばれたときに内定取り消しなどになるリスクがあります。

休職中は、何よりもまず病気を治したり、勉学に励んだりすることが最優先。本来の目的を達成した後、転職活動に取り組むのが望ましいでしょう。

(文・転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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