ライフスタイルに合わせて働ける 歯科衛生士の年収は?

景気に左右されず安定しているため、人気の高い医療分野の専門職。中でも歯科衛生士は国家資格を必要とする仕事で、一度取った資格で一生働くことができます。

実際、歯科衛生士の年収はどのくらいなのでしょうか。歯科衛生士になるメリットや資格の取り方、キャリアアップの方法とあわせて解説します。

あまり稼げない?歯科衛生士の年収は

歯科衛生士は、虫歯などの歯の病気の予防し、口の中を健康に保てるようサポートする歯科医療の専門職です。歯科衛生士はどれくらいの年収をもらっているのか、どのような業務を行っているのかを詳しく説明します。

歯科衛生士の平均年収は約370万円

厚生労働省の「2019年賃金構造基本統計調査(全国)」から試算すると、歯科衛生士の平均年収は370.5万円

細かく見てみると、毎月の残業代を含む給与が26.9万円、年間のボーナスが合計48万円です。26.9万円の月給であれば、毎月の手取りは21万円強です。同じ調査から労働者全体の平均年収が501万円と試算されることを考えると、歯科衛生士の年収は残念ながら低い水準といえます。

医療系専門職の中でも歯科衛生士の給料は低め

歯科衛生士の年収は、ほかの医療系専門職と比較しても低めです。医師や歯科医師が高給なのはもちろんですが、歯科技工士や理学療法士、作業療法士といったそのほかの職業と比べても歯科衛生士の年収は低くなっています。

同じ歯科医院で働く専門職とくらべても、歯科医師とは2.5倍、歯科技工士とは1.2倍もの差がついています。

職種 年収(万円)
医師 1169
歯科医師 570
診療放射線・診療X線技師 502
薬剤師 562
看護師 483
臨床検査技師 461
歯科技工士 385
理学療法士、作業療法士 410
准看護師 403
歯科衛生士 370
栄養士 357
看護補助者 303

※引用元→厚生労働省 2019年賃金構造基本統計調査

長く働いても、収入が大きく伸びるわけではない

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※引用元→厚生労働省 平成28年賃金構造基本統計調査

もちろん、歯科衛生士としての経験年数が上がれば収入は上がります。しかし、その幅は決して大きくありません。

歯科衛生士の場合、残業代などを除いた月給は1年目で平均21.8万円。ですが、経験年数が16年以上になっても月給は平均28.7万円にとどまります。

どんな仕事?歯科衛生士の3つの役割

歯科診療の補助

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歯科衛生士といえば歯科医師の診療をサポートするというイメージが強いのではないでしょうか。実際には、歯科医師のサポートだけでなく、歯科衛生士自身が歯科医師の指示を受けて直接患者さんの治療の一部を担当する場合もあります。

歯科予防処置

歯や口の病気を予防するため、口腔内を健康に保つための処置を行うことも、歯科衛生士の大切な仕事。虫歯を抑える「フッ素」など歯や口に薬を塗ったり(薬物塗布)、歯垢(プラーク)や歯石など、口の中の汚れを取り除いたり(機械的歯面清掃)といった仕事がこれにあたります。

歯科保健指導

歯科衛生士は、歯や口の中の健康を守るため、歯磨きや生活習慣を指導する専門家としての役割も担っています。一人ひとりが普段から健康で快適な生活を送れるようサポートすることも歯科衛生士の仕事の一つです。

歯科衛生士になるメリット!自分に合わせた働き方ができる

歯科衛生士はあまり高い年収が期待できない仕事ですが、歯科衛生士になるメリットはどこにあるのでしょう?
ここでは歯科衛生士として働くメリットについて見ていきます。

高い求人倍率!全国どこでも働ける

新卒の求人倍率は平均20.7倍!

全国歯科衛生士教育協議会の調査報告によると、2019年度に歯科衛生士養成施設を卒業した6,922人のうち就職したのは6,298人で、就職率は91.0%でした。この年に全国の歯科衛生士養成施設に寄せられた求人募集は130,155人。求人倍率は20.7倍にものぼります。

歯科衛生士の求人倍率はここ5年で急上昇しています。歯科衛生士の募集が増えているのに対し、新卒の歯科衛生士が減っているからです。最近では歯科医院の数は頭打ちですが、歯科衛生養成校を卒業した後、就職先がなくて困るということはないでしょう

※引用元→全国歯科衛生士教育協議会 令和2年歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告

全国で働ける

日本中どこでも仕事ができるという点も歯科衛生士のメリット。歯科診療所は全国に7万施設近くあり、約5万5000軒あるコンビニの店舗数よりも多いというのは有名な話です。全国どこに行っても一つの資格でキャリアを続けられるのは、歯科衛生士という仕事の魅力です。

配偶者が転勤の多い仕事に就いているなど、同じ場所で働き続けるのが難しい人にとっては、場所を選ばず仕事ができる歯科衛生士は打ってつけの仕事かもしれません。

※引用元→日本フランチャイズチェーン協会 2020年12月度JFAコンビニエンスストア統計調査月報

自分のライフスタイルに合わせた働き方ができる

働き方は人それぞれ

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※引用元→公益社団法人 日本歯科衛生士会 平成27年歯科衛生士の勤務実態調査報告書(PDFダウンロード)

歯科衛生士の仕事には、自分の生活や家庭の都合に応じて仕事を調整しやすいという良さもあります。

日本歯科衛生士会の調査によると、歯科衛生士全体の4割が非常勤で働いています。そのうち8割近くは1日の勤務時間が8時間未満。3時間以上5時間未満という人も4割近くいます。

この調査によると、非常勤で働く歯科衛生士の割合は増加を続けています。日本歯科衛生士会はその理由を次のように分析しています。

回答者の年齢構成では40歳代、50歳代以上がそれぞれ3割以上を占め、雇用形態では非常勤者の割合が4割以上になるなど、過去の調査結果に比べ大きく変化している。歯科衛生士の働き方のひとつとして、20歳代後半~30歳までに結婚・出産・育児等の理由で一旦離職し、35歳~40歳以降で復職する傾向があり、同時に、家庭と仕事を両立させながら働くことを望み、その結果として、非常勤者の割合が高くなっていることが推測される。

※「公益社団法人 日本歯科衛生士会 平成27年歯科衛生士の勤務実態調査報告書(PDFダウンロード)」より抜粋

一方で、常勤で働いている人も全体の半数以上います。常勤の場合は、7割近くが1日8時間以上勤務しています。

歯科衛生士はたくさん仕事をしたいという高いモチベーションを持っている人も、自分や家族の都合を優先したいという人も、希望に応じて働きやすい仕事といえるでしょう。一人で生活しているときは常勤で働き、家庭ができたら一旦仕事を離れ、子育てが落ち着いたら非常勤で短時間勤務、というようにライフスタイルに応じて仕事を調整することもできそうです

ただ、仕事を離れている期間が長くなると、復職のハードルが高くなるのも事実。長期のブランクで復職を悩んだり、復職後も周りに迷惑をかけているのではないかと不安に思ったりする歯科衛生士もたくさんいるようです。都道府県の歯科衛生士会などでは、歯科衛生士の復職をサポートする研修も行われています。

勤務先の数も人によってさまざま

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日本歯科衛生士会が行ったアンケート調査の結果によると、非常勤で働く歯科衛生士の半分以上が複数の勤務先を掛け持ちしています。

病院・大学病院勤務の人は6割以上が一カ所で勤務していると回答しましたが、その他の施設(診療所や保健センターなど)で働く人は半分以上が2カ所以上の職場を掛け持ちしています。
非常勤で働いて「今の仕事が物足りない」「仕事を増やしたい」と感じたら、職場の数を増やすことも一つの手。収入アップだけでなく、同時に複数の職場で違う経験を積むことができます。

ただし、常勤の場合、勤務先にもよりますが副業は原則として禁止されているところが多いようです。非常勤でも掛け持ちを認めていない歯科医院もあるようなので、事前にきちんと確認した方がよさそうです。

※引用元→公益社団法人 日本歯科衛生士会 令和2年歯科衛生士の勤務実態調査報告書

40代、50代で仕事を続ける人も多い

医療関連の職業の中には体力が求められるものも多く、年齢が上がると仕事を続けるのが難しくなる場合があるのも事実です。歯科衛生士のように業務の中で体力を求められない、かつ、長く働けばその分の経験や知識を活かすことのできる仕事は長期にわたって働きやすい仕事といえます。

歯科衛生士になるには国家資格が必要

ここまで歯科衛生士の年収や働き方について見てきましたが、歯科衛生士になるにはどうしたらいいのでしょうか?ここでは、歯科衛生士になるために必要な国家資格の取り方、歯科衛生士養成校の選び方について説明します。

歯科衛生士以外の医療分野の専門職と迷っている方のため、歯科助手、管理栄養士、介護療法士、医療事務、理学療法士の情報についてもまとめました。

歯科衛生士になるには?

資格取得までの流れ

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歯科衛生士になるには国家資格が必要です。科衛生士養成校(短期大学、専門学校、大学のいずれか)を卒業し、国家試験に合格しなければいけません。

歯科衛生士の養成校はすべて3年制以上。必要な知識・技能を習得し、卒業すると国家試験の受験資格が得られます。国家試験に合格すれば歯科衛生士免許証が与えられ、歯科衛生士として働けるようになります。

国家試験の合格率は90%以上

2020年に実施された第29回歯科衛生士国家試験の合格率は94.3%。例年、95%前後の合格率です。
ただし、これは必ずしも簡単に合格できることを意味しているわけではありません。試験前には過去問や予想問題集で、自分が合格までどのくらいのレベルにあるかチェックしましょう。

歯科衛生士の国家試験は毎年3月はじめに行われます。ここ2年は選択式の問題が220問出題されており、合格点は合計点の約6割。試験では歯科衛生士養成校で学ぶ必須科目から、幅広く出題されるようです。

※引用元→厚生労働省 第29回歯科衛生士国家試験の合格発表について

歯科衛生士養成校を選ぶポイント

学費

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全国に150カ所ほどある歯科衛生士養成校でも、卒業まで150万円ほどで通える所から300万円以上かかる所まで、学費には大きな差があります。地方の公立校は安い傾向にあるようです。

入学試験で成績がよかった学生は特待生として入学金や学費が一部免除されるという仕組みがある養成校も。勉強に自信がある方は、養成校から資料を取り寄せてチェックしてみましょう。

ただ、養成校のホームページや入学案内にかかれている学費には教科書や白衣といった授業や実習で必要となる物品の費用は含まれていないということには注意が必要です。先輩から譲り受けるなど、出費を抑える方法があれば、ぜひ活用したいところです。

入学の難易度

歯科衛生士養成校は全体として、2006年以降、入学定員を入学者数が下回る状況が続いています。養成校ごとに倍率は異なりますが、どの養成校に行くのか選ばなければ、入学自体は難しいということはなさそうです。

国家試験の合格率や就職先

国家試験の合格率や就職率、卒業生の就職先も調べておいたほうがいいでしょう。
多くの歯科衛生士は一般歯科に勤務していますが「特定の分野に特化している歯科医院で働きたい」「歯科衛生士の資格を生かして歯科医院以外の場所で就きたい」と考えているのであれば、卒業生の就職先は確認しておくべきです。各養成校の資料を取り寄せるなどしてチェックしてみましょう。

全日制か夜間コースか

養成校の多くは昼間に講義を開く全日制をとっていますが、中には夜間部・コースを設けている所もあります。昼間に時間が取れない人は夜間部がある養成校に通うのがおすすめです。

ちなみに、どうしてもまとまった時間が取れない場合、留年制度を使って自分のペースで単位を習得して卒業することもできますが、1年卒業が伸びるたびに学費が1年分余計にかかるため、あまりおすすめできません。

他の医療系専門職の特徴は?

歯科助手

【仕事内容】受付、器具の洗浄、治療のアシスタントなど歯科治療のサポート
【資格】不要
【メリット】すぐに働くことができる
【デメリット】年齢が上がると求人が減る

管理栄養士

【仕事内容】学校や病院などでの給食管理、栄養管理、栄養指導
【資格】国家資格(最低4年で取得可能)
【メリット】栄養に関する知識が得られる。就職先が多い
【デメリット】年収が高くない

介護福祉士

【仕事内容】お年寄りや障害を持つ人の介護や、介護する人へのアドバイス
【資格】国家資格(最低2年で取得可能)
【メリット】介護業界で唯一の国家資格。管理職など責任ある仕事へのキャリアアップにつながる
【デメリット】体力が必要

医療事務

【仕事内容】医療機関で事務・経理。カルテの整理や医療費の請求など
【資格】不要(民間資格あり)
【メリット】未経験の求人が多い。医療に関する知識が得られる
【デメリット】年齢が上がると求人が減る

理学療法士

【仕事内容】ケガや病気で障害を負った人や、後遺症が残っている人を回復させるためのリハビリ
【資格】国家資格(最低3年で取得可能)
【メリット】就職先が多い
【デメリット】体力が必要
※理学療法士の詳細はこちら

同じ医療系の専門職でも、魅力はそれぞれ異なります。自分のやりたいことや将来の働き方、ライフプランを考えた上で仕事を選びましょう。

スキルアップして転職で有利に

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歯科衛生士は必ずしも転職が多い仕事ではありませんが、配偶者の転勤や、よりいい条件で働きたいといった理由で転職する人もいます。
歯科衛生士としての高いスキルをアピールできれば、転職活動も有利に。ここでは歯科衛生士になった後、スキルアップする方法を3つご紹介します。

最近増えつつある認定歯科衛生士とは

認定歯科衛生士は、特定の分野に関する専門的な知識・技能を持っていると認められた歯科衛生士です。最近では歯科医療の技術が発達し、特定の分野に特化した歯科医院が増えており、歯科衛生士にもより専門的な知識・技能が求められるようになってきています。

この認定制度には、「小児」「歯周病」「インプラント」などがあり、歯科衛生士の資格と違って認定は数年ごとに更新が必要です。認定制度は分野ごとに異なる団体によって運営されています。認定の条件は各団体のホームページで確認しましょう。

分野によっては専門医の推薦やその分野の歯科医院での実務経験が必要な場合も。自分が認定条件をクリアできるか、認定後の更新にも対応できるか、チェックしておいたほうがいいでしょう。

歯科医院、総合病院、福祉施設…活躍の場はさまざま

歯科衛生士の多くは歯科医院で働いていますが、一言で歯科医院といっても、力を入れている分野や、仕事内容もさまざま。例えば、歯科医院に来るのが難しい人の家まで出向いて診療を行う訪問歯科や、ホワイトニングなど歯を美しくする施術を専門とする審美歯科、お子さんの診療を専門で行う小児歯科などがあります。

さらに、歯科衛生士の職場は歯科医院にとどまりません。介護施設や保健センター、歯科衛生士養成校などで働く歯科衛生士も多くいます。介護施設では、介護を必要とする人の口腔ケアや摂食、嚥下の訓練、口腔清掃の指導などが業務。保健所・保健センターでは、その地域に住む人たちの歯科検診や歯磨き指導、歯に関する相談などを行っています。

もし幅広い経験を積みたいと思ったら、自分の関心や今後のキャリアに合った職場を探してみるといいかもしれません。

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まとめ

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歯科衛生士は、専門的な知識を活かして患者や地域の人の健康に貢献できる、やりがいのある仕事です。収入はそれほど期待できませんが、働く地域を選ばず、年齢が上がっても働くことができるなど、歯科衛生士になるメリットはたくさんあります。

「将来的に子育てを優先したい」「自分の趣味の時間もほしい」など、自分の生活や家庭の都合を優先して働きたいという方にとっては、歯科衛生士は魅力的な仕事なのではないでしょうか。

歯科衛生士の国家資格は一生もの。資格取得までに養成校に通ったり、国家試験に向けて勉強したりと、どうしても一定の時間が必要です。資格を取るのであれば、自分の人生設計に合わせてできるだけ早いタイミングで取得するのがよさそうです。