しつこいときは?残るのもアリ? 退職を引き止められたとき、穏便に断る方法
退職を引き止められたとき、どうすれば穏便に断ることができるのでしょうか?
この記事では「情に訴えかけられる」「給料アップを提案される」「脅される」など、状況に合わせた対処法を解説しています。
【5つの状況別】退職を引き止められたときの断り方
引き止めの断り方は、どのような引き止めを受けているかによって異なるもの。5つの状況別に、断り方・対処法を紹介します。
よくある引き止めの状況5つ
1.「辞められたら困る」と情に訴えかけられる
「君は会社に必要な人材だ」「辞められたら人手が足りなくなる」などと情に訴えかけられた場合は、再度退職の意志をハッキリと述べるのが効果的です。
ポイントは、申し訳ない気持ちを伝えたうえで、今の会社では希望が叶わないと明言すること。揺るがない意志があると伝われば、退職を受け入れてもらえるでしょう。
伝え方の例
「そのようなお言葉をいただけて、大変ありがたく心苦しい気持ちです。もちろんこの会社で経験を積むことも検討したのですが、やはり事業会社に転職して顧客と直接関わる仕事に挑戦したいと考えています」
2.「退職時期を遅らせてほしい」と言われる
「退職日は◯ヶ月後にしてほしい」「プロジェクトが一段落つくまで辞めないでほしい」などと、退職時期の後ろ倒しをお願いされた場合、数週間程度の延長であれば応じるのがベター。
無理に辞めようとするとトラブルに発展するリスクがあるので、できれば転職先の入社日を調整するほうがいいでしょう。
もし入社日を調整できない場合は、退職日を変更できない事情を正直に話し、きちんと引き継ぎをする意志があることを伝えるのが大切です。
伝え方の例
退職時期を調整できる場合
「承知しました。それでは、退職日は2ヶ月先の◯月◯日にさせていただきます」
退職時期を調整できない場合
「大変申し上げにくいのですが、次の職場との兼ね合いがあるため退職日の変更はできません。勝手なお願いで大変申し訳ございませんが、引き継ぎはきちんと済ませますので、ご了承いただけないでしょうか」
▼引き継ぎの流れや、後任者がいないときの対応方法は?
3.給料アップや残業削減を提案される
「給料を上げる」「残業を減らせるよう業務量を調整する」のように待遇改善を提案された場合は、条件面を理由に退職するわけではないことをハッキリと伝えましょう。
会社にはどうにもできない事情で退職するのだと分かってもらえるように説明するのがポイントです。
伝え方の例
「そのようなご提案をいただけて、大変ありがたい気持ちです。しかし、お給料に不満があるのではなく、◯◯の仕事に挑戦したいというのが退職理由ですので、退職意志に変わりはありません」
待遇の改善を条件に今の会社に残ることを検討している場合は、この後の「待遇改善が目的なら、会社に残るのもアリ」を参考にしてください。
4.そもそも退職の話を聞いてくれない
そもそも直属の上司に取り合ってもらえず、退職交渉が前に進まない場合は、さらに上の上司や会社の人事担当者にかけあってみましょう。
それでも退職を認めてもらえないときは、最後の強硬手段として内容証明郵便で退職届を提出して退職することも可能。この方法をとれば、退職届の提出後2週間で法的に退職が成立します。
さらに上の上司や人事部に相談するときの例
「突然で申し訳ないのですが、この度一身上の都合で退職させていただきたいと考えております。すでに◯◯課長には何度もご相談しているのですが、お話を聞いていただけなかったため、△△部長にお伝えさせていただきました」
5.「辞めるなら損害賠償を請求する」と脅される
「辞めるなんて絶対に許さない」「辞めるなら損害賠償を請求する」といった、退職をさせまいとする脅しは基本的にすべて無効です。
法律で労働者はいつでも雇用契約解約の申し入れができると定められているので、退職を認めなかったり、退職時に違約金などの金銭を要求したりすることはできません(民法627条)。
脅しを受けている場合、さらに上の上司や人事部に相談することで解決する可能性もあります。
それでも状況が変わらない場合は、内容証明郵便で退職届を提出し、法的に退職を成立させることも選択肢のひとつ。
程度によってはパワハラとしてこちらから損害賠償を請求することもできるので、思い悩む前に労働基準監督署や弁護士に相談するようにしましょう。
辞めるほうがいい人、会社に残るほうがいい人
引き止めを断って辞めるほうがいいのか、それとも受け入れて会社に残るほうがいいのか、判断基準となるのは、提示された条件によって退職の動機となった問題が解決するかどうかです。
根本的な問題が解決しないのなら、辞めるほうがいい
仮に引き止めに応じたとしても、退職の動機となった根本的な問題が解決しないのなら、やはり退職するのがベターです。
お世話になった上司に引き止められると、後ろ髪を引かれるのは当然です。
しかし、一時の感情で会社に残ったとしても、根本的な問題は依然として残っているため、再び退職が頭をよぎる可能性は低くありません。
「今の会社ではやりたい仕事ができない」「理想の働き方を実現できない」と思うのなら、勇気を出して引き止めを断るのが得策でしょう。
待遇改善が目的なら、会社に残るのもアリ
給料や残業時間など待遇を理由に退職を決めた場合、引き止めの条件によってその不満が解決する場合に限り、会社に残ってもいいかもしれません。
もし引き止めの場で待遇改善を提案されたら、単なる口約束にならないよう書面で通知をもらうのが必須。「近いうちに昇格させる」「残業時間が減るようにみんなで協力しよう」など、あいまいな表現だと、状況が変わらない可能性もあるので要注意です。
▼待遇改善を提案されたときの対処法について、くわしく解説
引き止めに応じると、デメリットもあるのが実情
引き止めを受け入れる前に、退職を撤回して会社に残るのはデメリットもあることを理解しておきましょう。考えられるデメリットは、つぎの3つです。
引き止めに応じるデメリット
- 待遇改善を条件に残留した場合「あの人は退職を切り札に給料を上げた」といったウワサが流れ、職場の人間関係が悪化する
- 「一度は退職を決意した人」という印象が残り、仕事へのモチベーションが疑われる。結果、出世コースから外されることも
- 再び辞めたいと思ったとき、退職を切り出しづらくなる
引き止めにあったときは、その場で決断せず「一度考えさせてください」と持ち帰るのがベスト。メリットとデメリットを冷静に考え、後悔しない判断をしましょう。
そもそも上司があなたを引き止める理由とは
上司があなたの退職を引き止めるのは、会社や上司にとってあなたが必要な存在だから。
「優秀な人材だから辞めてほしくない」といったプラスの理由だけではなく「会社の事業計画上、今辞められるのは困る」「退職者を出せば自分(=上司)の責任になる」など、会社や上司の勝手な都合で引き止められている可能性もあります。
その一方で、「もう少し経験を積んだほうがキャリアアップの視野が広がる」「勢いで辞めると、この先苦労することになる」など、あなたのことを思って引き止めている可能性も。
引き止められたときは無条件に突っぱねず、少し考え直してみるのがいいかもしれません。
退職を伝える前なら…引き止めを防ぐポイント3つ
まだ上司に退職を伝える前なら、切り出し方次第では引き止めを防ぐことも可能です。おさえておきたい3つのポイントを解説します。
1.退職は1.5~2ヶ月前に切り出す
「今辞められたら困る」と言われないためには、余裕をもって退職を切り出すことが大切です。
後任の選出や引き継ぎに十分な時間を取るため、退職予定日の1.5~2ヶ月前には伝えるようにしましょう。
会社の就業規則や雇用契約書には「退職は◯ヶ月前までに申し出なければならない」などと書いてあるので、あらかじめスケジュールの見通しを立てておくと安心です。
また、繁忙期やプロジェクトが大詰めの時期は避けるのがベター。
業務量が多いタイミングでの退職は、会社へのダメージがことさら大きくなるので、引き止められる可能性が高くなってしまいます。
2.引き止められない退職理由を伝える
引き止められにくい退職理由は「ステップアップのため、違う会社で自分の実力を試したい」など、前向きかつ会社側ではどうにもできないものです。
一方、給料や残業など条件面が改善されれば会社に残る場合を除き、待遇を退職理由にするのはNG。
「それなら給料を上げる」と提案されると、断る理由がなくなってしまいます。
加えて「仕事がつまらない」「会社の方針に同意できない」など、会社への不満をストレートに伝えるのもご法度。
上司の心象が悪くなると、トラブルに発展して退職交渉が長期化する可能性があります。
▼引き止められにくい退職理由について、くわしく解説
3.「必ず辞める」と強い意志を持つ
引き止め防止に最も大切なのは「何を言われても必ず辞める」という、強い意志を持つことです。
誰しも、引き止めを受けたら申し訳ない気持ちを抱いてしまうもの。
ですが、目先の情で退職をあきらめると「あの時辞めておけばよかった」と後悔する事態にもなりかねません。
自分なりに考えた上で退職すると決意したのであれば、強い意志を持って退職交渉に挑むようにしましょう。
コラム:引き止められないのは、悪いことではない
退職を引き止められなかったからといって、「自分は会社にとって重要な存在ではなかったのか?」と悲しい気持ちを抱く必要はありません。
引き止められるかどうかは、社風や上司の人柄によっても異なります。
退職を新たな門出として前向きに捉えている会社であれば、引き止められる可能性は低いですし、サッパリした性格の上司なら「去る者追わず」と考えているのかもしれません。
引き止められなかった分、スムーズに退職手続きを進められるとポジティブに捉え、過度に悲観して自己嫌悪に陥ることのないようにしましょう。
まとめ
退職を引き止められたとき、おさえておきたいポイントは次の3つです。
- 穏便に済ませるには、状況に合った断り方をするのが大切
- 会社に残ると決める前に、メリットとデメリットを冷静に考える
- 退職の切り出し方次第では、引き止めを回避できる
