7つの状況別に解説 退職を引き止められたときの断り方
退職を引き止められたとき、どうすれば穏便に断ることができるのでしょうか?
この記事では「情に訴えかけられる」「給料アップを提案される」「脅される」など、状況に合わせた対処法を解説しています。
退職の引き止めにあう人は増えている
上司に退職を申し出た際に、「引き止められたらどうしよう」と不安を抱えている人も多いでしょう。
結論、ほぼ間違いなく引き止められるものだと思っておいてください。
どの程度強く引き止められるかは人それぞれですが、企業側としては、退職によって欠員を発生させたくない、採用にかけたコストを無駄にしたくないといった事情から、よほどの問題社員でない限りは退職してほしくないというのが本音です。
上司としても、部下をマネジメントする責任がある以上、引き止めることも仕事の1つです。部下から「辞めたいです」と言われて、「わかった」と二つ返事で了承するわけにはいきません。
また、近年の人手不足の状況を受けて、多くの企業が採用難に直面しており、退職時の引き止めは増えている傾向にあるようです。
こうした背景から、引き止めは必ずあるものだという認識で、退職交渉の準備をしておくことが望ましいと言えます。
退職を伝える前なら…引き止めを防ぐポイント3つ
まだ上司に退職を伝える前なら、切り出し方次第では引き止めを防ぐ、または軽く済ませることが可能です。おさえておきたい3つのポイントを解説します。
1.退職は1.5~2ヶ月前に切り出す
上司から「今辞められたら困る」と言われないためには、退職日までの期間に余裕を持って退職を切り出すことが大切です。
後任者の選出や引き継ぎに十分な時間が取れるように、退職希望日の1.5~2ヶ月前には伝えるようにしましょう。
会社の就業規則や雇用契約書に「退職は◯ヶ月前までに申し出なければならない」などと記載があれば、可能な限りその指示に従うようにしましょう。
また、繁忙期やプロジェクトが大詰めの時期は避けるのがベター。業務量が多いタイミングでの退職は、会社へのダメージがことさら大きくなるので、強く引き止められる可能性が高くなってしまいます。
2.引き止められにくい退職理由を伝える
「(現職ではできない)◯◯の仕事に挑戦したい」など、前向きかつ会社側ではどうにもできない退職理由がおすすめです。
一方、待遇を退職理由にするのはNG。「それなら給料を上げる」と提案されると、引き止めを断る理由がなくなってしまいます。
加えて「仕事がつまらない」「会社の方針に同意できない」など、会社への不満をストレートに伝えるのもご法度。上司の心象が悪くなると、トラブルに発展して退職交渉が長期化する可能性があります。
3.「必ず辞める」強い意志を持つ
引き止め防止にもっとも大切なのは「何を言われても必ず辞める」という、強い意志を持つことです。
誰しも、引き止めを受けたら、会社や上司に対して申し訳ない気持ちを抱いてしまうもの。
ですが、申し訳なさから退職を考え直してしまうと、後になって「あのときに辞めておけばよかった」と後悔することにもなりかねません。
退職すると決意したのであれば、強い意志を持って退職交渉に挑むようにしましょう。
【7つの状況別】退職を引き止められたときの断り方
どのような引き止めを受けるかによって断り方は異なるもの。
7つの状況別に、実際に引き止められた際の断り方・対処法を紹介します。
よくある引き止めの状況7つ
1.「辞められたら困る」と情に訴えかけられる
「君は会社に必要な人材だ」「辞められたら人手が足りなくなる」などと情に訴えかけられた場合は、再度退職の意志をハッキリと述べるのが効果的です。
ポイントは、申し訳ない気持ちを伝えたうえで、今の会社では希望が叶わないと明言すること。揺るがない意志があると伝われば、退職を受け入れてもらえるでしょう。
断り方
「そのようなお言葉をいただけて、大変ありがたく思うと同時に心苦しい気持ちです。もちろんこの会社で経験を積むことも検討したのですが、やはり事業会社に転職して顧客と直接関わる仕事に挑戦したいと考えています」
2.「辞めるなんてもったいない」と言われる
「せっかく成績を出せているのに辞めるなんてもったいない」「もうすぐ昇進のチャンスがあるのに」などと、会社に残るようにさとされた場合は、評価をしてくれていることに感謝をしつつも、ハッキリと退職の意思を伝えることが大切です。
退職を申し出たことをきっかけに昇進をしても、周りの社員との軋轢を生む可能性もありますし、そもそも本当に昇進させてくれるかどうかはわかりません。
他の業界・職種でやりたいことがあること、あるいは現職ではできなかったことにチャレンジしたいことを伝えましょう。
断り方
「そう言っていただけて大変うれしく思います。ただ、自分としても◯◯業界で新たなチャレンジをしたい気持ちが強く、退職の意志は堅いのが正直なところです。ご了承いただけると幸いです。」
3.「退職時期を遅らせてほしい」と言われる
「退職日は◯ヶ月後にしてほしい」「プロジェクトが一段落つくまで辞めないでほしい」などと、退職時期の後ろ倒しをお願いされた場合、数週間程度の延長であれば応じるのがベター。
無理に辞めようとするとトラブルに発展するリスクがあるので、できれば転職先の入社日を調整するほうがいいでしょう。
もし入社日を調整できない場合は、退職日を変更できない事情を正直に話し、きちんと引き継ぎをする意志があることを伝えるのが大切です。
断り方
退職時期を調整できる場合
「承知しました。それでは、退職日は2ヶ月先の◯月◯日にさせていただきます」
退職時期を調整できない場合
「大変申し上げにくいのですが、次の職場との兼ね合いがあるため退職日の変更はできません。勝手なお願いで大変申し訳ございませんが、引き継ぎはきちんと済ませますので、ご了承いただけないでしょうか」
▼引き継ぎの流れや、後任者がいないときの対応方法は?
4.給料アップや残業削減を提案される
「給料を上げる」「残業を減らせるよう業務量を調整する」のように待遇改善を提案された場合は、条件面を理由に退職するわけではないことをハッキリと伝えましょう。
会社にはどうにもできない事情で退職するのだと分かってもらえるように説明するのがポイントです。
断り方
「そのようなご提案をいただけて、大変ありがたい気持ちです。しかし、お給料に不満があるのではなく、◯◯の仕事に挑戦したいというのが退職理由ですので、退職意志に変わりはありません」
▼給与アップなどを提示されるカウンターオファーとは?
5.「辞めても成功しない」と不安を煽られる
「君くらいの実績で今うちを辞めても成功しない」「悪いことは言わないから残った方が君のためだ」などと、不安を煽って引き止めてくる場合は、意見を受け入れる姿勢は見せつつ、退職の意志が堅いことを伝えましょう。
こんなことを言われたら感情的になってしまうかもしれませんが、気持ちを落ち着かせて、事を荒立てずに退職することを最優先に考えましょう。
断り方
ご心配いただきありがとうございます。◯◯さんのおっしゃることも心に留め、転職先ではより一層精進をして、成果を上げられるように努めたいと思います。
6.そもそも退職の話を聞いてくれない
そもそも直属の上司に取り合ってもらえず、退職交渉が前に進まない場合は、さらに上の上司や人事担当者にかけあってみましょう。
それでも退職を認めてもらえないときは、最後の手段として内容証明郵便で退職届を提出します。この方法をとれば、退職届の提出後2週間で法的に退職が成立します。
断り方
さらに上の上司や人事部に相談するときの例
「突然で申し訳ないのですが、この度一身上の都合で退職させていただきたいと考えております。すでに◯◯課長には何度もご相談しているのですが、お話を聞いていただけなかったため、△△部長にお伝えさせていただきました」
▼内容証明郵便で退職届を提出する方法について、くわしく解説
7.「辞めるなら損害賠償を請求する」と脅される
「辞めるなんて絶対に許さない」「辞めるなら損害賠償を請求する」といった、退職させまいとする脅しに法的拘束力はありません。
法律で労働者はいつでも雇用契約解約の申し入れができると定められているので、退職を認めなかったり、退職時に違約金などの金銭を要求したりすることはできません(民法627条)。
脅しを受けている場合、さらに上の上司や人事部に相談することで解決するケースもあります。
それでも状況が変わらない場合は、内容証明郵便で退職届を提出し、法的に退職を成立させることも選択肢のひとつ。
程度によってはパワハラとして、逆にこちらから損害賠償を請求することもできるので、思い悩む前に労働基準監督署や弁護士に相談するようにしましょう。
もしもしつこい引き止めをされてしまったら
上司や会社からしつこい引き止めにあえば、誰しもが退職を躊躇してしまうものです。
ですが、退職するのに会社の許可は必要ありません。法的には会社は社員の退職を拒否することはできないのです。
退職の決意を固めたのであれば、毅然とした態度で退職の意思を示しましょう。
かまわず退職届を提出!はっきりと意思表示をする
強引な引き止めにあってしまった場合でも、かまわず退職届を提出するのがもっとも確実な方法です。
法律上、退職の意志表示をしてから2週間で辞められることが認められています。
上司が退職届を受け取ってくれない場合は、さらに上の上司または人事部に提出しましょう。それでも受け取ってくれない場合は、内容証明郵便で会社宛てに退職届を郵送します。
上司に怒られてしまわないかと不安になる人もいるかもしれませんが、そんな会社に残るメリットはないので、1日でも早く退職するための行動を起こすことを優先しましょう。
スムーズに退職するために
スムーズな退職に向けて、参考になる記事をピックアップしました。
退職は労働者の権利なので、引き止めを受けたとしても会社は必ず辞めることができます。とはいえ、可能な限り円満退職を目指して準備を進めましょう。
▼退職までの一通りの流れをおさらい
▼上司に納得してもらいやすい退職の切り出し方
(作成:転職Hacks編集部 城間美将)
この記事の監修者
弁護士
南 陽輔
一歩法律事務所
大阪市出身。大阪大学法学部卒業、関西大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。その後、大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立。誰もが利用しやすい弁護士サービスを心掛け、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行う。