意味やメリットをわかりやすく解説 上場企業とは?

あなたは上場企業と聞いてどのような企業を思い浮かべますか? なんとなく安定していそう、良い企業だというイメージがあるのではないでしょうか?

この記事では上場企業とはそもそも何なのか、上場企業で働くメリットについてわかりやすく解説します。

上場企業とは? わかりやすく簡単に解説

まずは上場企業という言葉の定義を見てみましょう。

上場企業にはどのような種類があるのか、具体的にどの企業が上場企業になっているのかも併せてここでご紹介します。

上場企業とは株式を証券取引所で売買できる企業

上場企業とは株式を証券取引所で売買できる企業のことです。

株式会社は、会社の経営資金を集めるために株式の売買を行いますが、この株式の売買を行っている場所を証券取引所といいます。

そして証券取引所で株式を売買できるようになることを「上場する」といいます。

企業が上場するためには、株式の取引をしても良い信頼のおける会社であると証券会社に認めてもらう必要があり、厳しい審査基準をクリアしなければなりません。

例えば、東京証券取引所で一部上場企業として上場するには、以下のような基準を満たす必要があります。

〈一部上場企業の基準〉

  • 株主数2,200人以上
  • 流通株式数2万単位以上
  • 時価総額250億円以上
  • 事業継続年数3年以上
  • 2年間の利益総額が5億円以上、もしくは時価総額が500億円以上
  • 虚偽記載または不適正意見等がないこと
  • 単元株式数が100株以上となる見込みがあること

上場企業は高いハードルを乗り越えた社会的信用の高い企業であるといえます。

なお、全ての株式会社が上場しているわけではなく、上場企業は株式会社のうちのほんの一部です。

2022年4月から東証は再編される

東京証券取引所にあった「一部」「二部」「マザーズ」「ジャスダック」の4つの市場区分は、2022年4月4日に「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つに再編されることが決まっています。

「一部」は「プライム」に横滑りする企業がほとんどですが、「一部」とは数値基準が大きく変わります。以下のとおりです。

〈プライム上場企業の基準〉

  • 株主数800人以上
  • 流通株式数2万単位以上
  • 時価総額100億円以上
  • 流通株式比率35%以上
  • 2年間の利益総額が25億円以上、もしくは売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上
  • 純資産額50億円以上

上場企業の特徴を紹介【プライム・スタンダード・グロース】

一口に「上場」といっても、証券取引所にはいくつか種類があり、それぞれ上場している企業の特徴も違います。

ここでは、2022年4月に再編される「プライム」「スタンダード」「グロース」の市場区分の特徴について解説します。これらは日本の証券取引所の中で特に多くの取引を行っている東京証券取引所(東証)における上場企業の区分の仕方です。

なお、国内ではほかにも札幌・名古屋・福岡に証券取引所があり、地域に密着した企業の株式売買が行われています。

※参考→上場会社による新市場区分の選択結果 | 日本取引所グループ

1大企業が多いプライム

プライムは主に大企業が上場する市場で、上場のためにクリアしなければならない基準が最も高いことで知られています。2022年1月に公表されたデータによると、「一部」だった2,185社のうち1,841社が「プライム」を選択しています

プライム上場企業には、日本人なら誰もが名前を知っている企業が名を連ねます。経営が安定しているため福利厚生がしっかりしていることが多いのが特徴です。

〈例〉トヨタ自動車、任天堂、NTTドコモ、電通グループ、ZOZO、ソニー、資生堂など

2比較的中堅企業が多いスタンダード

スタンダードは、主に中堅企業が上場する市場。中小企業ではないがプライム上場企業よりも知名度がやや劣る企業が多いです。

もともと一部の下に位置づけられていた「二部」に属する企業は474社しかありませんでしたが、再編によって「スタンダード」を選択した企業はなんと1,477社

スタンダード上場企業になるための基準はプライムと大きく変わり、流通株式数や時価総額などの基準が低くなります。また「持続的な成長」と「中長期的な企業価値向上への積極的な取り組み」が求められます。

〈例〉ヱスビー食品、はごろもフーズ、ブルボン、クックパッド、ギグワークスなど

3ベンチャーが多いグロース

グロースはベンチャー企業が多いのが特徴です。上場基準は「高い成長可能性」が重視され、プライム・スタンダードよりも達成しやすくなっています。

グロースに上場している企業は、新規市場や開拓や新サービスの提供などによって、事業拡大や収益増加を目指しているとみなされます。再編では459社が選択しており、まずはグロース上場を目標とする新興企業も多いでしょう。

〈例〉はてな、BRUNO、ロコンド、ウォンテッドリー、ジモティーなど

上場企業数は何社?

日本取引所グループの公式ホームページによると、東京証券取引所をはじめとする日本取引所グループに上場している企業の数は3,822社(2021年12月末時点)です。

もっとも、上場企業は日々増えたり減ったりしており、正確な数はその日によって異なります。以下の参考サイトで毎日企業数が更新されるので、気になる方はチェックしてみてください。

※参考→上場会社数・上場株式数|日本取引所グループ

コラム:上場企業の読み方は?「じょうば」は間違い

上場企業は「じょうじょうきぎょう」と読みます。「じょうば」という読み方は誤りです。

株式市場では午前の取引を「前場=ぜんば」、午後の取引を「後場=ごば」と呼びます。そのため「上場=じょうば」という勘違いをする方もいるようです。つられて間違えないよう気を付けましょう。

上場企業で働くメリット・デメリット徹底比較

次に、上場企業で働くメリット・デメリットについてご紹介します。

上場企業で働くメリット

まずは上場企業に勤める際のメリットについてご紹介します。

社会的信用が得られる

上場企業に勤めることで、高い社会的信用を得ることができます。上場企業はいくつもの厳しい基準をクリアした社会的信用の高い企業です。また、企業の業績や将来性が認められている企業でもあります。

そのため、上場企業に勤務することで「社会的に認められた優良企業に勤めている優秀な人材」と認めてもらいやすくなります。また、上場によって取引先からの信用度もアップするため、営業などの業務がしやすくなるかもしれません。

大きなプロジェクトに関われる

上場企業では、潤沢な資金を用いた大きなプロジェクトに関わったり、興味のある事業を拡大したりと、やりがいのある仕事に取り組みやすいです。

この理由は、上場企業は非上場企業に比べて資金が豊富だからです。上場企業は社会的信用があるため、金融機関からの融資を受けやすいこと、多くの人に株式を買ってもらいやすいのです。

優秀な人材と働ける

上場企業は非上場企業に比べて優秀な人材が集まりやすい傾向にあります。上場によって社会的信用と知名度を得ることができるため、優秀な人材が数多く応募してくるからです。

優秀な上司や部下に囲まれて仕事をすることで、切磋琢磨してスキルを高めたりチームメイトの良いところを吸収したりして仕事の能力を成長させることができます。

上場企業で働くデメリット

次に、上場企業で働く際のデメリットについて見てみましょう。

業績維持のプレッシャーがかかる

上場企業で働く社員には業績維持のプレッシャーがかかります。厳しい上場基準を達成するため、売上や時価総額を維持し続ける必要があるからです。業績が落ちないように、株主から経営に関して意見されることも多くなります。

労働者の意見よりも株主の意見が優先された結果、ノルマが厳しく設定され、現場が疲弊しきってしまうこともあります。

金銭の管理が厳しい

上場企業では、上場基準を満たすために健全な経営が求められるため、金銭の管理が厳しくなりがちです。使う理由がしっかりしていないと「交際費等を経費で落とす」といった処理ができなくなるというデメリットがあります。

また、上場企業には四半期ごとに決算を開示して財務状況を報告する義務があるため、総務・経理といった財務に関わる部署では四半期ごとに繁忙期が訪れることになります。上場企業における財務管理の負担は大きいといえるでしょう。

買収される恐れがある

上場企業は買収される可能性が高くなります。上場企業は株式が市場で自由に売買されるため、会社にとって不利な株主に買われてしまうこともあります。

慣れ親しんだ勤め先が買収されることによって、職場環境がガラリと変わってしまう恐れがあります。

以上のようなデメリットのためか、有名な大企業であるにもかかわらず上場していない企業もあります。例としてはロッテ、佐川急便、大創産業、ヤンマーなどが挙げられます。

まとめ

上場企業は株式を証券取引所で売買できる企業のことです。厳しい審査基準をクリアし、高い知名度と社会的信用を持っています。

とはいえデメリットもあるため、あえて上場しないことを選ぶ企業もあります。

転職・就活の際には応募する企業が上場企業なのか、どこの市場に上場しているのかをチェックしてみても良いかもしれませんね。