ひとこと解説 東証一部上場とは?何社ある?
東証一部上場という言葉を、ニュースなどで聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?就職活動でもよく見かける言葉の一つです。
この記事では、東証一部上場企業とはどのような意味なのか、就職する際の注意点をわかりやすく解説します。
東証一部上場とは?
まずは東証一部上場の意味について理解しておきましょう。
株式市場にはどのような種類があるのか、証券取引所の種類についてもあわせてご紹介します。
東証一部上場とは東証一部で株取引が行われること
東証一部上場とは、株式市場の一つである東京証券取引所の市場第一部(東証一部)に株式を公開することです。
上場とは、証券取引所で株式を売買できるようにすることで、上場した株式会社はより多くの投資家から会社の資金を集めることができるようになります。
また、東証とは東京証券取引所の略で、その中の市場第一部という株式市場で株式を公開している企業が東証一部上場企業と呼ばれます。
証券取引所には、東京証券取引所のほかに、名古屋証券取引所・札幌証券取引所・福岡証券取引所があります。
各取引所と市場は、以下のようになっています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
東京証券取引所には4種類の株式市場がある
東京証券取引所では、東証一部・東証二部・マザーズ・JASDAQ(ジャスダック)の4種類の株式市場を運営しています。
ニューヨークやロンドンと並ぶ世界三大証券市場の一つでもあり、国内だけでなく世界の経済活動を支えているともいえる証券取引所です。
東京証券取引所のそれぞれには、以下の特徴があります。
上場企業の特徴
- 東証一部上場企業
…大企業が多く、知名度や社会的信用度が高い - 東証二部上場企業
…中堅企業が多く、東証一部上場企業よりも知名度が劣る - マザーズ上場企業
…ベンチャー企業が多く、東証一部・二部への上場を目指している場合が多い - JASDAQ上場企業
…新興企業が多く、今後成長していく
※上場企業についてより詳しくは→上場企業とは? 意味やメリットをわかりやすく解説
コラム:2022年4月、株式市場が再編される
2022年4月4日に東京証券取引所は再編されることが決まっています。
これまでの「東証1部」「東証2部」「JASDAQ」「マザーズ」という市場区分から、「プライム」「スタンダード」「グロース」という3区分に再編される予定です。
市場再編の目的は、株式市場の活性化です。新しい市場区分では上場基準が強化されると同時に、上場維持基準を新たに設けることで、投資家にとって魅力的な企業が集まる市場を実現しようとしています。
東京証券取引所の調査では、東証1部に上場する企業のうち、プライムの基準に該当するのは約7割(2021年6月末時点)という結果が出ました。現在、多くの企業でプライム市場の上場基準を維持するための取り組みが行われています。
東証一部上場企業は何社? 上場の条件は?
東証一部上場企業の数や上場の条件について詳しく説明します。
東証一部上場企業の数は2,183社
東証一部上場企業の数は2,183社(2021年12月末時点)です。一方、総務省の調査によると日本の企業数は約558万社(2016年時点)。
すなわち、東証一部上場企業の割合は日本の企業全体の0.1%以下と考えられ、上場のハードルは非常に高いといえます。
※参照:
上場会社数・上場株式数|日本取引所グループ、企業活動|総務省統計局、
東証一部には日本人なら誰もが名前を知っている企業が名を連ねています。
これらの企業は投資家からの評価も高く、日本企業の時価総額トップ10はすべて東証一部上場企業が占めています。
東証一部に上場する条件
東証一部は、上場の基準が最も高い株式市場です。条件の項目は、株主数・流通株式数・時価総額・純資産・利益・設立年数などで、以下のような基準を満たす必要があります。
- 株主数2,200人以上
- 流通株式数2万単位以上、もしくは、流通株式数(比率)上場株券等の35%以上
- 時価総額250億円以上
- 取締役会を設置して、事業継続年数が3年以上
- 連結純資産の額が10億円以上
- 2年間の利益総額が5億円以上、もしくは、時価総額が500億円以上
- 虚偽記載または不適正意見等がないこと
- 単元株式数が100株以上となる見込みがあること など
※参照:上場審査基準|日本取引所グループ
東証一部と東証二部の上場基準の違い
東証二部に上場する場合は、東証一部よりも条件が緩和されます。
そのため、ほとんどの企業はまず東証二部に上場するのが一般的です。東証二部に上場した後、さらに厳しい基準を満たすことで東証一部へ変更します。
時価総額を見ないと企業の実力はわからない
上場基準となる指標の中で、企業の価値や規模を表す指標として投資家などから注目されているのが「時価総額」です。時価総額とは「その企業をいくらで買えるか」を示したもので、現在の株価に発行済み株式数をかけて求めます。
〈時価総額の計算式〉
時価総額=株価×発行済み株式数
時価総額を見ることで、株価だけではわからない企業の価値や規模が見えてきます。
たとえば、トヨタ自動車の株価は2,068円(2021年12月8日終値)なのに対して、ソニーグループは1万4,270円と7倍近い株価です。一方、時価総額で比較するとどうなるのか、概算で見てみましょう。
〈トヨタ自動車の時価総額〉
株価2,068円×発行済み株式数163.1億=約33.7兆円
〈ソニーグループの時価総額〉
株価14,270円×発行済み株式数12.6億=約17.9兆円
時価総額で見ると、ソニーグループの約17.9兆円に対して、トヨタ自動車は約33.7兆円と2倍近い規模を持っています。つまり、株価だけを比べても企業の本当の価値や規模はわからないのです。
時価総額は市場からの評価を表しており、高い成長性や収益力を持つ企業の時価総額は大きくなります。時価総額が大きいのはどんな企業なのか、日本と世界の時価総額トップ10を下記の記事で紹介しています。
東証一部上場企業に就職する際の注意点
東証一部上場企業で働きたいと考えている人のために、就職する際の注意点についてご紹介します。
上場企業では英語が必要な可能性が高い
海外展開をしている企業の場合、仕事内容によっては英語が必要な可能性が高いです。TOEICの運営団体による2013年の調査によると、上場企業の75%に業務で英語を使用する機会があります。
東証一部に上場するような大企業は海外進出をしていることが多く、海外と取引を行うグローバル担当などの職種であれば、何らかの形で英語を必要とするといっても過言ではないでしょう。
※参考:2013年「上場企業における英語活用実態調査」報告書|一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会
従業員持株制度について勉強しておく
従業員持株制度とは、従業員が会社やその親会社などの自社株を保有する制度で、上場企業の多くが導入しています。基本的には従業員が給与天引きで自社株を購入して配当金を得るというシステムになっており、福利厚生の一環として自社株購入費の一部を負担する企業もあります。
上場企業に転職した人の中には自社の株と言う安心感や「株=儲かる」というイメージから安易に従業員持ち株制度を利用する方がいますが、投資である以上、損失を被るリスクも存在します。
従業員全員が必ず利用しなければならないわけではないため、知識を蓄えたうえで利用するかどうかを判断しましょう。
気になる企業は株価をチェックしておく
気になる東証一部上場企業があれば、事前に株価をチェックするのがおすすめです。株価の動きは、企業の成長性や将来性を判断する指標となるからです。
株価は発行された株数と、株を購入したい投資家の需要と供給のバランスによって、日々変動しています。どれだけの人がその企業に期待して投資をしているのかを株価から読み取り、会社選びの参考にしてください。
まとめ
東証一部上場とは、東証一部の証券取引所において株の売買ができるようになることです。東証一部はほかの株式市場と比べて審査基準が高く、一部上場企業は限られた大企業のみとなっています。
ただし、すごい企業だというイメージだけで入社を志望すると仕事の大変さで苦労するかもしれません。上場企業に就職したい人は、企業の知名度だけでなくどんな環境でどんな仕事をしたいかをハッキリさせることが大切です。