正社員との違いも解説 限定正社員とは? デメリットはあるの?

近年働き方が多様化するなかで、限定正社員という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?

この記事では、限定正社員とはどんな働き方なのか、正社員との違いやメリット・デメリットなどについて説明します。

限定正社員とは?

まずは限定正社員とはどのような働き方をする「社員」なのか、どんな職種や業界で導入されているのかについて説明します。

限定正社員とは、業務内容や働く地域が限定された正社員

限定正社員とは、業務内容や時間、働く地域などの就業条件が限定された正社員のことです。

「正社員」に区分されるものの、いわゆるフルタイムの正社員とは就業条件が異なるため、パートやアルバイト扱いではなく非正規雇用と正社員の中間的な雇用形態とされています。

企業によっては、ジョブ型正社員・地域限定社員・エリア限定社員といった呼び方をする場合もあるようです。

厚生労働省による限定正社員の定義

厚生労働省の定義によると、「多様な正社員〈限定正社員〉とは、いわゆる正社員(従来の正社員)と比べ、配置転換や転勤、仕事内容や勤務時間などの範囲が限定されている正社員」であるとしています。

ワークライフバランスの向上や、正社員と非正規社員の格差の緩和を目指し、「多様な正社員」の導入を推進しています。

限定正社員の就業条件は、勤務地・職務・勤務時間のいずれかが限定されているか、「勤務地と職務内容」など複数限定されていることになります。

勤務地限定正社員 転勤するエリアが限定されていたり、転居を伴う転勤がなかったり、あるいは転勤が一切ない正社員
職務限定正社員 担当する職務内容や仕事の範囲が他の業務と明確に区別され、限定されている正社員
勤務時間限定正社員 所定労働時間がフルタイムではない、あるいは残業が免除されている正社員
いわゆる正社員 勤務地、職務、勤務時間がいずれも限定されていない正社員

※参考→勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて|厚生労働省

限定正社員が広がる背景

限定正社員が注目されている背景として、増え続ける非正規社員の割合を減らすことを目的とした労働契約法の改正「無期転換ルール」があります。

2012年の改正により、5年以上務めるパート・アルバイト・契約社員などの非正規社員は、本人が希望すれば雇用期間を定めない労働契約(無期労働契約)に切り替えられるようになりました。

しかし企業側が契約の空白期間を設ける「クーリング」や契約更新を拒否する雇い止めを行うなど、制度が適切に運用されていない面もあり、2015年の派遣法改正による期間制限(原則3年が上限)とも重なった「2018年問題」も顕在化しています。

このような中、限定正社員という働き方が非正規労働者の受け皿になるかもしれません。

限定正社員を導入している業界や職種

配置転換などがなく、働きやすいメリットが大きい印象の限定正社員ですが、業界や職種により普及の傾向が異なるようです。

限定正社員が最も多い業種は建設業

労働政策研究・研修機構の「多様な働き方の進展と人材マネジメントの在り方に関する調査(企業調査・労働調査)」によると、限定正社員を導入している企業は全体の20.4%。

割合が高い業種は、建設業(29.9%)、生活関連サービス業・娯楽業(28.3%)、卸売業・小売業(28.1%)となっています。

従業員規模別では、100人未満では14.1%にとどまる一方、300~999人では24.1%、1,000人以上では46.6%となっており、大企業ほど導入が進んでいることがわかります。

職種別では事務職、専門・技術職が多い

限定正社員の割合の高い職種は、事務職が60%で圧倒的に多く、ついで専門・技術職(26.4%)、製造・生産工程職(20・3%)と続きます。

「限定されている内容」については勤務地が最も多く、職務上転勤の必要性が低い事務職との親和性がうかがえます。

また、専門・技術職についてはスキルを生かすために職務内容が限定されていると考えられます。

限定正社員と正社員の違い

限定正社員として働くメリット・デメリットなど、正社員とはどのような違いがあるのでしょうか。

限定正社員と正社員は勤務地や待遇が違う

限定正社員は勤務地・仕事内容・労働時間などを限定して働くことができるため、ワークライフバランス重視の人に適しています

それに比べて正社員は、雇用期間の定めなし・所定労働時間が通常の時間、であることが条件であり、原則として転勤や残業、職務内容の変更要請を受け入れなければなりません

そのため、転勤や職種の変更の心配がない限定正社員は、仕事と育児や介護を両立したい人に合った雇用形態といえるでしょう。

限定正社員には転勤の不安がないなどのメリットがありますが、正社員に比べて待遇が劣るデメリットもあります。限定正社員と正社員のどちらかを選ぶときには、働くうえで何を優先するべきなのかをはっきりさせることが大切です。また、会社によって条件がさまざまなので、雇用契約を結ぶ前によく確認しておきましょう。

限定正社員

給料 正社員より安い傾向
ボーナス 低め・なしの可能性もある
仕事内容 限られた担当の職務
昇進・昇格 正社員より制限される傾向
勤務地 限られた地域での勤務
解雇 労働基準法で定められた解雇予告に従う

正社員

給料 高い
ボーナス 満額
仕事内容 幅広い職務・配置転換の可能性あり
昇進・昇格 能力や勤続年数に応じて昇進
勤務地 全国転勤の場合あり
解雇 労働基準法で定められた解雇予告に従う

給料

限定正社員の給料は、正社員と比べると安めに設定されていることが多く、なかには正社員よりも非正規雇用に近い場合もあるようです。

独立行政法人経済産業研究所のデータでは、正社員の月収と比べると、勤務地限定の場合は約14%、業務限定の場合は6.5%低いという結果が出ています。

ボーナス

正社員より勤務時間が大幅に短い、業務の範囲が狭いなどの条件で働いている場合は、限定正社員はボーナスが出ないというケースもあります。

また、支給されるとしてもボーナスは基本給をベースに計算されるため、基本給の低さがそのまま反映されることになります。

企業によっては人材の流出を防ぐため、退職金の上乗せによって限定正社員を確保しようとすることもあるようです。

仕事内容

限定正社員は全国転勤や部署をまたいだ異動がない(少ない)ため、いわゆる一般職や事務職など、仕事の型がある程度決まっている業務を任されることが多くなります。専門職の場合は、ほかの仕事に従事せず決まった職務のみとなることが多いでしょう。

昇進・昇格

正社員と比べると、限定正社員は昇進や昇格の見通しがもてない傾向にあるようです。

もし昇進・昇格できたとしても、上限が設定されている場合もあります。全国転勤の総合職は将来経営に関わる可能性もありますが、勤務地限定の場合は支社内での管理職にとどまるなど、経営寄りではなく地域よりの職務になる可能性が高くなります。

勤務地

地域限定であれば、転勤の心配がありません。ただし、その地域の工場や店舗などの職場が閉鎖される場合は、その仕事を失ってしまう可能性もあります。

解雇されやすさ

「限定」されているからといって簡単に解雇できるわけではありません。もし会社都合で解雇になる場合は、正社員と同じように労働基準法で定められた解雇予告に従った手順で行われます。

まとめ

限定正社員とは、就業条件である職種・時間・地域などが限定された正社員のことです。非正規雇用と正社員の中間的な存在で、融通の利く働き方ができるメリットがありますが、給料面でのデメリットもあります。

雇用形態を選ぶときは、仕事をするうえで何を優先するべきなのかをよく考えることが大切です。

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