非正規との違いも解説 転職で正社員になるためのノウハウ
契約や派遣社員、パート、アルバイトなど、非正規で働く人は安定して高収入で働ける「正社員」になりたいと考えている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、正社員と他の雇用形態との違いや、正社員に転職するためのノウハウなどを分かりやすくまとめていきます。
そもそも「正社員」とは?
正社員の定義や他の雇用形態との違いなどを解説していきます。
正社員とは「雇用期間の定めがないフルタイム労働者」のこと
「正社員」とは、雇用期間の定めがなく、所定労働時間(午前9時~午後5時など)をフルに働く労働者を指します。
法律などで定められているわけではないため、極端に言えば、どのような労働者を正社員と呼称するかは、各企業の就業規則で自由に定義できます。
「正社員」は「正規社員」とも言われ、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員などの「非正社員」「非正規社員」と区別する言葉としても用いられます。また、「会社員」「社員」と表現した場合も「正社員」を指すことが多いようです。
コラム:助成金支給における「正社員の定義」はある
パートタイマーを正社員へ転換した場合に国から助成金が支給される制度があり、この支給条件を明確にするための「正社員の定義」は存在します。具体的には以下の通りです。
- 社会保険と雇用保険に入っている
- 雇用条件が「無期限」の雇用になっている
- 雇用契約書に「正社員」と書いてあるか、就業規則で定められた「正社員」の定義に則っている
おおよそ、一般的に考えられている「正社員」の定義と一致しているのではないでしょうか。
働く人のうち、正社員の割合は60%
総務省統計局の調査によると、現在の労働人口を正社員と正社員以外(非正規社員)で分けると、正社員が61.7%です。非正規社員の割合は年々上昇し、2019年1月の時点で38.3%となっています。
※参考:労働力調査 (基本集計)2019年(令和元年)11月分(速報)
正社員と非正規社員の最大の違いは契約期間
厚生労働省の調査をはじめ、一般的には、正社員での雇用は「正規雇用」、正社員以外の雇用は「非正規雇用」と分類されます。
非正規雇用は主に、契約社員、派遣社員、パート、アルバイト、業務委託契約という雇用形態が該当します。それぞれの特徴を表にまとめました。
※…以下のいずれかに該当する場合は5年まで契約可能
・高度な専門的知識がある人(博士の学位を持っている人、医師、弁護士など)
・契約を結んだ際に60歳を超えていた人
・事業の完了に必要な期間を定める場合(工事などで業務終了まで3年を超える期間が予定されている場合など)
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
正規雇用(正社員)
・雇用期間の定めなし(無期限)
・午前9時~午後5時など、所定労働時間をフルタイムで働くスタイル(シフト制などで時間が変動する場合もある)のことが多い
・一般的には勤務年数によって昇給、昇格し、ボーナスがもらえる
・健康保険(社会保険)、厚生年金保険、住居補助、財形貯蓄など、会社の福利厚生を受けられることが多い
非正規雇用
・一般的な「正規雇用」の定義である、「無期限の雇用形態で、所定労働時間をフルタイムで働くスタイル」以外の働き方
・要件を満たしていれば、非正規雇用でも健康保険や厚生年金保険に加入できるが、基準に満たないことも多い
<厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象>
・週30時間以上働く人
・従業員501人以上の会社で週20時間以上働く人
・従業員500人以下の会社で働く人で、労使が合意した場合(2017年4月より)
契約社員
・雇用期間に定めがある
・実際に働く企業と直接契約を結ぶ
・契約内容によっては、賞与等が支給される場合もある
※詳しくは→契約社員の働き方とは?正社員との違いを徹底比較
派遣社員
・雇用期間に定めがある
・雇用契約は派遣会社(派遣元)と結ぶが、実際に働くのは派遣先の会社
・給料の支払いや福利厚生などは雇用主である派遣会社が行う
・日々の業務についての指示は派遣先企業から受ける
・社会保険(厚生年金、健康保険)が完備されている(派遣元の社会保険に加入)
※詳しくは→派遣社員とは?わかりやすく解説
パート・アルバイト
・雇用期間に定めがある
・所定労働時間や日数が正社員より短い(実際は、正社員とほとんど変わらない時間や日数で働くケースも)
・一般的には時給制
・パートとアルバイトは、法律上は名称による区別がされていない
業務委託契約
・企業に雇用されるのではなく、企業と対等の立場で業務の依頼を受ける(雇用契約は結ばない)
・どんな仕事内容を、いくらで、どのように遂行、完了させるかなど、仕事の内容ごとに契約を結ぶ
・業務自体が対価となる「委任契約」と、納品物や成果物が対価となる「請負契約」の、2つの契約形態がある
※詳しくは→業務委託とは?
コラム:非正規労働者の労働環境を守る「パートタイム労働法」
非正規労働者と正社員を差別して扱うことを禁止し、雇用管理の改善などを促す「パートタイム労働法」という法律があります。
使用者(企業)に対して、パートタイマーであることを理由に正社員と給与や待遇面で差をつけることを禁止するほか、正社員への登用試験を受けたり、本人の希望を申し出る機会を設けるなどして、正社員への転換の推進も規定しています。
「パートタイム労働者」と言っても、対象は「パート(タイマー)」「アルバイト」のほか、「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」などの非正規労働者全般です。定義としては、「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」となっています。
なお、派遣社員に対しては、同様の法律として「労働派遣法」が適用されます。
正社員と非正規社員の平均年収の差は324万円
国税庁の2018年の調査によると、正社員と非正規社員の平均年収の差は324万円。正社員(正規雇用)が503万円、非正規社員(非正規雇用)が179万円なので、非正規社員は正社員のおよそ35%しか年収がもらえていないという結果です。
男女別に見てみると、双方の差は男性で323万円、女性で232万円です。
もちろん、非正規社員の中にはパートやアルバイトなど、働く日数や時間が正社員と比べて短い人も多いため、単純に比較することはできません。
それでも非正規社員は流動性の高い働き方をしているため、単純作業など責任の低い仕事を任されることが多く、どうしても給料が低くなってしまう傾向があります。
※参考:国税庁「平成30年分 民間給与実態統計調査」(第7表)
正社員のメリットとデメリット
正社員になれば、非正規社員に比べてメリットばかりと思われがちですが、視点を変えればデメリットも見えてきます。
正社員になることのメリット・デメリットについて、具体的にまとめてみました。
メリット
- 契約期間の定めがないため、定年まで雇われることが多い(解雇されにくい)
- 昇給・昇格の機会があり、ボーナスや退職金をもらえることも多いため、年収が高い
- 住宅手当、資格手当をはじめとする各種手当や福利厚生の恩恵を受けやすい
- 労働組合へ加入できる
- 住宅ローンが組みやすい
- 転職時、職歴として評価される
デメリット
- 非正規社員よりも雇われるまでのハードルが高い(募集人数が少ない、採用の難易度が高い)
- 月給が極端に低い場合、時給換算すると非正規社員より低くなる
- 異動や転勤が発生し、やりたい仕事を任されるとは限らない
- 降格や減給がある
- 自分の都合だけで長期の休みを取ることが難しい
- 残業や休日出勤への対応が発生することも
以上を踏まえて、自分の状況に「正社員」の条件がフィットするのか、またどんな会社の正社員を目指すのが良いのかなどを考えてみましょう。
コラム:同一労働同一賃金で、正社員と非正規の年収差を改善?
2016年12月20日、政府は「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表しました。
「同一労働同一賃金」とは、簡単に言えば「同じ仕事をしている人には同じ給料が支払われるべき」という考え方のことで、正社員と非正規社員の間にあるさまざまな待遇の差を解消するべく策定されました。
たとえば「正社員全員にボーナスを支払っているなら、非正規社員にも支払う」「正社員と同じだけの経験や能力のある非正規社員には、正社員と同じ給料を支払う」といった内容が、具体的な改善すべき例などを上げながら示されています。
政府は、日本の「正社員」のテンプレートであった「年功序列」の賃金体系を、「雇用形態にとらわれない」かつ、「能力主義」「実力主義」の賃金体系に変えようと、かなり真剣に取り組む姿勢を見せています。
ひいては、これまで日本の労働市場に深く根差してきた「正社員至上主義」も、もしかすると少しずつ形を変えていく流れにあると言えそうです。
※詳しくは→「同一労働同一賃金」で派遣はどう変わる?
正社員に転職できる可能性が高い人は?
ここでは、正社員に転職できる可能性が高い人の条件について、見ていきたいと思います。
若いほど正社員に採用されやすい
厚生労働省の調査によると、2014年から過去5年以内に非正規社員だった人のうち正社員になった人は、年齢が若いほうが多いという結果が出ています。
25~34歳で非正規から正社員になる人の割合が34.9%ともっとも高く、次いで15~24歳が27.6%、35~44歳では22.8%、45~55歳で17.8%と、年齢が上がるにつれて低下する傾向が見られます。
若者が正社員に採用されやすい理由としては、若い人は未経験でも歓迎されやすいこと、比較的安い給料で働いてもらえることが多いこと、長く務め続けてもらえることなどが考えられます。
※参考:厚生労働省「平成26年版労働経済の分析(労働経済白書)」 第3-(3)-11図 年齢階級別・就業年数別の非正規雇用から正規雇用への移行率
営業職や専門性が高い仕事の人は正社員になりやすい
同じく厚生労働省の調査によると、正社員になりやすい職種は、営業職や専門・技術的職業です。たとえば営業職では、非正規社員で転職した人のうち70.6%が正社員に移行しています。
また、専門性が高く、その企業にとって“なくてはならない”仕事をしている人や、企業間で人材を奪い合っているような仕事は、安定して務め続けてもらうために正社員として採用することが多いようです。
具体的には、エンジニア、ITエンジニア、医療系(看護師など)の仕事などが当てはまります。
※参考:厚生労働省「平成26年版労働経済の分析(労働経済白書)」 第3-(3)-9図 職業詳細区分別の正規移行率と離職率
「企業にとって条件が悪い人」は正社員になりづらい
正社員への転職が不利な人は、端的に言うと「企業にとって条件が悪い人」と言えます。
たとえば育児や介護をしていて残業ができなかったり、突発的な休みが多くなってしまう人、病み上がりでフルタイムで働くことが難しい人、年齢が高くどうしても給料が高くなってしまう人などが挙げられます。
これらに該当する人は、正社員での採用は一般的に高くなってしまいがちです。
ただ、近年は働き方が多様化しており、短時間勤務やリモートワークで正社員として働ける企業が増えているため、自分の状況やライフスタイルに応じた会社を探してみてください。
コラム:女性は正社員になりにくい?
厚生労働省の発表によると、2019年の男性の正社員率は78.9%であるのに対し、女性は43.5%にとどまっており、依然として正社員で働く女性の割合は男性に比べて低い現状が分かります。
男女で正社員率にどのくらいの差があるのか、年代別の推移とともに見てみましょう。
上のグラフを見てみると、男性の正社員率は20代後半以降安定して8~9割をキープし、60代に入ると定年退職により正規社員率が下がり、非正規社員率が上昇します。
一方、女性の正社員率は20代後半をピークとして以降は徐々に低下していきます。これは、結婚や出産を機に正社員を退職する女性が多く、仕事を続ける場合であっても家事や育児と両立するためにあえて正社員ではなくパートや派遣社員などの非正規雇用を希望する、あるいは余儀なくされるケースが増えるためと考えられます。
もちろん男女雇用機会均等法によって求人を出す際に男女で扱いを変えてはいけないルールになってはいるものの、いまだ女性の方がライフステージの変化によって働く条件に制限ができてしまうことが多いもの。いまだ女性の方が正社員の立場でい続けることが難しいのが現状です。
非正規から正社員に転職するには?
最後に、正社員の転職するために知っておきたい具体的な戦略や職探しの方法について、まとめていきたいと思います。
中途採用の求人が多い時期は3月と9月
1年のうち、企業の中途採用の求人数が多い月は、3月と9月です。
これは、多くの企業が上期と下期の期初である4月、10月に合わせて転職者の中途採用をしているためです。
3月、9月に続いて中途採用の求人が多い時期は6月です。これは、四半期の期初が7月なので、それに合わせて7月入社の社員を採用しているためです。また、6・7月は夏のボーナスが支給される企業が多いため、それをもらってから退職する人も増える時期です。
また、職種によって中途採用に対する求人の多い時期もあります。
管理・経理……6月
経理職は、年度末の決算期から株主総会が終わる6月ごろまでが1年で一番忙しい時期のため、仕事が一段落したタイミングで退職する人が多いとされます。
建築・土木……4月
公共事業の多い年度末(3月)を終えてから、転職活動を始めた求職者を採用するためです。
一般的な中途採用の募集が増える時期とは少しずれるので注意しましょう。
ITエンジニア・クリエイティブ……随時
これらの職種はもともと募集数が少ないうえに、退職者が出たらその都度募集するという、欠員補充の採用が多いためです。
自分が目指す職種はどのタイミングで中途採用に力を入れているのかを知っておくだけでも、求人は探しやすくなります。ただし、転職市場に動きがある時期は、それだけハイレベルな求職者たちも多くなりますので、その競争を勝ち抜く必要があることも覚えておきましょう。
正社員になりやすい地域は福井、岐阜、岡山
正社員の職に就きやすい地域について知るには、都道府県別の「有効求人倍率」がひとつの目安となります。有効求人倍率は、各都道府県の労働局ホームページで確認することができます。
2019年12月時点の都道府県別の有効求人倍率は、もっとも高いのが福井県(2.15倍)。2位は富山県(2.11倍)、3位は岐阜(2.07倍)と続きます。また、都心部の東京と大阪はともに1.50倍です。
ちなみに全国の正社員有効求人倍率を見てみると1.13倍で、仕事を探している人よりも求人のほうが多い売り手市場になっています。
※参考:厚生労働省|一般職業紹介状況(令和元年年12月分)について
人手不足の業界なら正社員になりやすい?
正社員になりやすい職業、すなわち正社員求人が多い職業は、時代や世相により「需要」が高まっている職業と、「人手不足」が深刻化している職業の2つです。
時代や世相による「需要」という観点では、2020年の東京オリンピックに向けて増加している建設関係の求人の他、ここ数年で急成長を遂げたスマートフォン関連の求人(アプリ開発など)が当てはまります。
また、人手不足が最も問題となっているのは「介護職」。その他、人材、インターネット、不動産など、活況な業界における「営業職」も、たくさんの人手を要している状況です。
これまでの経歴の延長線上にある職種だけでなく、経験も活かせる他の職種や業界も検討することで、正社員への転職チャンスが拡がるかもしれません。
正社員に転職したい人は転職エージェントに相談を
志望する職種や業界で、正社員の求人がなかなか見つからない場合、転職エージェントに相談するのもよいでしょう。
これまで正社員での職歴がない場合でも、自分がどのような正社員の職に就けるのか、非正規雇用時の職務経歴の書き方や面接でのアピール方法など、幅広く転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談することができます。
紹介予定派遣なら正社員を目指しやすい
現在、派遣社員として働いている場合、正社員を狙うなら、次に派遣先が変わる際に「紹介予定派遣」を希望するのがベターです。
紹介予定派遣とは、派遣先に正社員や契約社員などで直接雇用されることを予定した上で、一定期間派遣スタッフとして就業し(最長で6ヶ月)、期間終了後に派遣スタッフと派遣先企業の双方が希望すれば、派遣先企業から直接雇用されるというシステムです。
正社員になれる確率が高いため、安定した働き方を求める人はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※詳しくは→派遣から正社員が難しいワケ
コラム:「安定性を求めて」は面接では禁句?
非正規雇用から正社員への転職を目指す動機として「安定性を求めて」と面接で答えるのはNGです。
「安定性」という観点は、企業にとってあなたを採用するメリットとはなりえません。あくまでも転職の面接で話す志望動機は「企業があなたを採用するメリット」を伝えられるように組み立ててみましょう。
たとえば正社員と非正規社員の違いを見てみると、正社員の仕事が持つ一番の醍醐味は、「責任を持って仕事に取り組めること」にあると考えることができます。ここをポイントにしてみてはいかがでしょうか。
自己PRについても、これまで非正規雇用という立場に甘えることなく、「正社員同様に、責任感を持って仕事に取り組んできた」ことを軸に伝えることがポイントです。
納期の厳守、積極的な提案、自分から率先して仕事を引き受けた、苦手な仕事にも積極的に取り組んだ、といった点をアピールすることで、「何故、正社員になりたいのか」という動機は十分に伝えることができるでしょう。
まとめ
正社員の転職へ転職する場合のポイントは、以下の3点です。
- 正社員の魅力は長く安定して働ける、給料が高い、福利厚生をフルに使える
- 正社員になりやすいのは若い人、専門性の高いスキルがある人
- 需要が高い業界や、人手不足の業界は比較的正社員になりやすい
これらの情報を上手く活用して、正社員への転職を成功させましょう!