転職に迷う人必見! ヘッドハンティング対応マニュアル
「ヘッドハンティングは管理職や優秀な人だけの話で、自分には関係ない」と考えていませんか?
実はヘッドハンティングはさまざまな職種に広がっており、若手にも声がかかるようになってきています。ヘッドハンティングとは何か、自分に声がかかったらどう対処すべきかなどを紹介します。
ヘッドハンティングとは
企業が優秀な人材をスカウトすること
ヘッドハンティング(head hunting)とは、企業がほかの企業に勤める有能な人材をスカウトによって採用することです。
元々は欧米で生まれた手法で、普通の中途採用では採れないような人材を見つけるのが目的です。不足した人材を補うだけでなく、外部の人材を登用することで社内改革を図る人事戦略としても活用されます。
基本的な手法は、企業がヘッドハンターにどんな人物を採用したいかを伝え、条件に合う人材を探してアプローチさせるというもの。ヘッドハンティングを専門に行っている転職エージェントなどもあるので、組織的に優秀な人材を探していることもあります。
対象は管理職・専門職
ヘッドハンティングの対象となるのは、主に経営者や経営幹部などのエグゼクティブ層、あるいは専門性の高い職種です。
エグゼクティブ層であれば、事業の方針を決めて舵取りをする能力や、部署をまとめて指導するマネジメント能力が求められます。また、研究・開発やITエンジニア、医師などの専門職では担当領域に関する深い知識や革新的アイデアが求められることになります。こういったポジションでのヘッドハンティングは、とくに新規事業の立ち上げや組織改革のために行われることが多いようです
一方、最近では営業や人事、法務、財務などの仕事でもヘッドハンティングが行われています。求人を出すだけでは優秀な人材を獲得できないと悩んでいる企業がヘッドハンティングを活用する傾向にあるようです。
指名スカウト形式とロングリスト形式
ヘッドハンティングは、人材のサーチ方法によって指名スカウト形式とロングリスト形式の2種類に分けられます。
指名スカウト形式は、「この人が欲しい」と企業が指名した人物にヘッドハンターが接触する方法です。ターゲットは確定しているため、企業やヘッドハンターは念入りに情報収集を行ってからアプローチを行い、お互いの条件がマッチしたら採用となります。一般によく知られているヘッドハンティングの方法といえるでしょう。
ロングリスト形式は、ヘッドハンターが企業に求める人材の条件をヒアリングし、求人サイトに登録された人物からマッチングを行って該当者に接触する方法です。その後面接などの選考を経て採用されるため、候補者は一般的な転職活動と同じステップを踏むことになります。
特定の個人にしか声をかけない指名スカウト形式と異なり、ロングリスト形式では候補者について詳細に調べていないケースも少なくありません。ヘッドハンターに「他にも候補者はいますか?」と尋ねるとどちらの形式かわかることがあります。
ヘッドハンティングの判断ポイント
ヘッドハンティングの4ステップ
実際にヘッドハンターから声をかけられたらどうするべきなのでしょうか?まずはロングリスト形式のヘッドハンティングを受けた場合の流れを紹介します。
一般にはヘッドハンターからの接触があり、そこから企業と面接を行って双方の合意が得られれば内定となります。
1.ヘッドハンターからの接触
あなたをヘッドハントしたい会社が現れた場合、最初にヘッドハンターから電話やメールで連絡が来ます。SNSで公開しているメールアドレスや、あなたを紹介した人物から聞いた携帯番号などにかかってくることが多いようです。
なお、ヘッドハンターが扱っている求人は管理職や今後の注力事業に関わる主要人物など、競合他社に知られたくない情報も多いため、この時点で企業名が明かされることはまれです。
2.ヘッドハンターとの面談
あなたが興味を持った場合、ヘッドハンターとの面談がセッティングされます。ここでヘッドハンターと直接会い、転職先の企業名やポジション、おおよその年収などを知らされます。
面談でヘッドハンターは、本当に企業に紹介すべき人材かを見極めるため人間性やスキルを観察しています。「正直なお気持ちを話してください」などと言われても、現職の待遇面に不満を述べる、機密事項を漏らすなど不用意な発言は避けましょう。
なお、面談を経て選考に進む場合は履歴書や職務経歴書を提出する必要があるため、あらかじめ用意しておくとスムーズです。
3.企業との面接
ここからは一般的な転職とあまり変わらず、書類審査を通過後に企業との面接が複数回行われます。面接にはあなたの魅力を売り込むため、ヘッドハンターが同席する場合もあります。
面接内容は転職活動の一般的な面接と変わりありません。企業との面接で、仕事内容や待遇などの条件で合意できれば無事内定となります。
4.オファー(内定)提示・入社条件の調整
内定が出たら、企業からオファーレターが送られてきます。
給与などの待遇面の詳細については、内定後のタイミングですり合わせを行うことが多いようです。条件で調整したい部分があれば、ヘッドハンターに仲介をお願いしましょう。
なお、引き継ぎや退職の手続きに要する時間は平均1~3ヶ月といわれています。余裕を持って引き継ぎが行えるようにスケジュールを組みましょう。
スカウトを受けるか見極めるには
とくに転職やキャリアアップを考えている人には、ヘッドハンターの誘いは非常に魅力的に感じられます。ただし、ヘッドハンティングも普通の転職と同じで、自分でしっかりと考えて決断しないと後悔する可能性も。
気を付けるべき3つのポイントを紹介します。
1.ヘッドハンターの信頼性を確かめる
そもそも信頼していいヘッドハンターかどうかを確認することは必須です。おかしなヘッドハンターのせいで経歴に傷がつくことがないよう、十分な注意が必要です。
最初の連絡を受けた際や面談で、例えば以下のような点を確認しましょう。
・面談まで企業名を明かさないなど、ヘッドハンターとしてのマナーを弁えているか
・転職時期などについて先方の都合だけを押し付けず、こちらの事情にも配慮があるか
・業界内に人脈を持っており、内部事情に詳しいか
・勤務先の人材紹介会社が厚生労働省の許認可を受けているか(HPで確認可能)
2.キャリアの価値を考えるなお、履歴書や職務経歴書などはヘッドハンターが信頼できる人物であると確信してから渡すようにしましょう。万が一不審なヘッドハンターに当たってしまった場合に、個人情報絡みのトラブルを防ぐために役立ちます。
ヘッドハンターが信頼できそうな人物であっても、あなたのスキルを生かし、今後のキャリアにつながる仕事でなければ転職する価値はありません。
スカウトを受けただけでも「自分が評価された」と嬉しくなる気持ちをぐっとこらえ、その転職が本当に今後の自分のためになるのか、自分の知識やスキルだけを使い潰されないかなど、第三者にも意見を聞きながら検討しましょう。
なお、「異業界からのヘッドハンティングだから」と簡単に切り捨ててしまうのはもったいない行動。最近では異業界から同職種の人材を引き抜くケースも増えていますので、視野を広げ、スキルアップにつながりそうであれば前向きに検討するとよいでしょう。
3.企業が本当に自分に合うか調査する
仕事内容が自分に合っていそうでも、その企業に入社した後で気持ちよく働けるか、社風についても考える必要があります。社の伝統を重んじる日本企業なのか、合理主義の外資系なのか、チャレンジ精神豊富なベンチャーなのかなど、よく調べておきましょう。
企業のHPなどで経営方針や人事評価制度を調べたり、知り合いに同じ企業で働いている人がいたら話を聞いてみたりすることがオススメです。自力で調べるのが難しい場合は、ヘッドハンターに尋ねてみましょう。
以上の内容を吟味した上で、ヘッドハンティングを断る場合はヘッドハンティングの断り方を、受ける場合はヘッドハンティングを受ける場合のポイントを参照してください。
コラム:悪質なヘッドハンティングに注意
エグゼクティブ層など企業の「頭脳」となる人物をターゲットとしたヘッドハンティングに対して、単に手足となって働くだけの人材を募集するヘッドハンティングを「アームハンティング」といいます。
人集めを目的に好待遇な条件を提示しますが、個人のスキルやキャリアはあまり重視されないため、採用のミスマッチが起きやすいようです。高すぎる給与や高待遇をアピールされ、「自分の経歴に対してこんな好条件はおかしい」と感じた際は、入社後に「話が違う」とならないか疑うことも必要です。
また、ヘッドハンティングを装い社員を自主退職に追い込む「アウトプレースメント」にも注意が必要です。例えば、ヘッドハンティングのオファーが来たので退職したところ、転職の話はウソで就職先もなくなり、路頭に迷ってしまった……といったケースのことです。この手法は、企業イメージを下げるリストラを避け、解雇予告手当などのコストを削減するために行われます。
ヘッドハンティングのオファーが来たら、まずは企業の情報を調べ、転職先の部門やポジションが実在するか、ヘッドハンターの説明と整合性が取れているかを確認しましょう。
ヘッドハンティングの断り方
基本はメールか電話で断る
「転職を考えていない」「いまの環境で十分満足している」などの理由でヘッドハンティングの誘いを断る場合は、メールや電話などで断りましょう。
「話だけ聞いて断ろう」などと思っていても、ヘッドハンターと直接会ってしまうと巧みな話術に乗せられ転職に心が動いてしまう可能性があります。
また、今後また同じヘッドハンターやアプローチしてくれた企業にお世話にならないとも限りません。良い印象を残し穏便に済ませるためにも、なるべく丁寧に断りましょう。
メールで断る場合の例文
ヘッドハンティングを断るメールでは、声を掛けてもらったことへの感謝を述べつつきっぱりと断りましょう。
断る理由が企業側にある場合でも、「魅力的な条件でしたが、一身上の理由により……」など、遠回しな表現がベターです。
題名:求人案件のご紹介につきまして
株式会社◯◯
△△様(担当者の名前)
お世話になっております。
転職 太郎です。
この度は、××社のご紹介を頂きまして、誠にありがとうございます。
今回の案件は大変魅力的で、ご紹介いただけたことを嬉しく思っております。
しかし、私としても真剣に検討いたしましたが、
仕事の状況やプライベートなどを鑑み、
ご要望の勤務先に赴くのは困難であると判断いたしました。
ご期待に添えず申し訳ありません。
せっかくのご縁でしたし私としても残念でなりませんが、ご容赦いただければ幸いです。
また、この度◯◯社様とのご縁を提供してくださった△△様には、
心より感謝申し上げます。
今後ともご支援、ご協力を頂ければ大変光栄でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
転職 太郎(自分の名前)
電話で断るときに使えるフレーズ
ヘッドハンティングはメールで断るのが一番ですが、ヘッドハンターのメールアドレスを把握していない場合は電話で断ります。電話では断る意志を端的にはっきりと伝えることがポイントです。
先日ご連絡いただいたお話しですが、ご紹介いただきありがとうございます。
大変光栄な話ではありますが、現在の仕事を考慮して辞退させていただきたく存じます。
ご期待に添えず申し訳ありません。
ご連絡ありがとうございました。
ヘッドハンティングを受けるときのポイント
面談で条件を明確にしておく
ヘッドハントを受ける、あるいは前向きに検討する場合は、ヘッドハンターとの面談時に希望する入社条件や給与待遇などを明確にしておきましょう。
ただし企業から個人が指定される指名スカウト形式ではあなたが主導権を握り、条件交渉を行える場合もありますが、ヘッドハンターが手当たり次第に接触するロングリスト形式では候補者がほかにもいるため、面接の時点では要望についてあまり柔軟に対応してくれない可能性があります。この場合は企業面接の後に入社条件を調整する機会が設けられることが多いため、そこで多少の交渉が可能です。
面接は一般的な内容と変わらない
ヘッドハンティングといえども、企業との面接は一般的な中途採用と同じように進行します(人事面接などが省略されるケースもあります)。服装や面接のマナー、質問内容などはきちんと確認しておきましょう。
また、ヘッドハンティングといえども内定が確定している訳ではないため、企業から採用を見送られる可能性がありますのでスカウトを受けて舞い上がり、採用が決定しないうちに安易に退職してしまわないように注意しましょう。
コラム:求人サイトのスカウトメールとは?
求人サイトに登録した人の元に、見知らぬ企業や転職エージェント(人材紹介企業)から「スカウトメール」が届く場合があります。「スカウト」という言葉が入っているのでヘッドハンティングの一種と考えがちですが、実際の仕組みは全く異なります。
この「スカウトメール」は、求人サイトに登録したプロフィールを元に転職エージェントがマッチングを行い、適切な案件を紹介する仕組みです。基本的には転職を考えていない人を引き抜くヘッドハンティングとは異なり、転職を希望する人に向けて行われる点が特徴です。
転職エージェントが集客目的でメールを送っている場合もあるので、スカウトメールの誘いを受けるかどうかはよく考えて決めましょう。
まとめ
ヘッドハンティングを上手に活用することは、企業にも転職者にも大きなメリットがありますが、思わぬ落とし穴があることも事実です。
転職は自分のキャリアプランに良くも悪くも大きな影響を与える出来事です。安易に誘いに乗ることは避け、じっくりと考えて答えを出しましょう。