作成方法や様式を解説【記入例あり】 ジョブカードとは?
職業訓練などで提出を求められるジョブカード。通常の履歴書や職務経歴書と何が違うのでしょうか?
ジョブカードそのものの概要と、制度の背景や最新の助成金の有無などをまとめました。
ジョブカードとは
ジョブカードの目的や活用シーン、制度が始まった背景などを説明します。
キャリア形成やスキル証明のために作成する書類
ジョブカードは、キャリア形成やスキル証明に活用するために作成する書類で、厚生労働省がフォーマットを提供しています。
下記の3つの独自様式がセットになっており、「ジョブカード制度総合サイト」やハローワークを通じて入手できます。
- キャリアプランシート…仕事に対する希望などを書く
- 職務経歴シート…これまでの職務内容をまとめる
- 職業能力証明シート…資格や学習歴などを示す
履歴書や職務経歴書と見た目は異なりますが、スキルの証明やそれを通じた就職・転職活動に活用するという点では、同じような役割を持つ書類です。
実際の様式については後述の「ジョブカードの様式と記入例」で紹介しています。
職業訓練などでも活用されている
ジョブカードは、主に厚生労働省の施策である雇用型訓練(従業員として雇われながら受ける雇用訓練)や、ハローワークで申し込む職業訓練に参加する際、応募書類や評価書類として利用されることが多くなっています。
転職活動でハローワークを利用した方は、実際に目にしたことがあるかもしれません。
ジョブカードは誰でも無料で利用することができますが、就職・転職活動での応募書類としてはあまり活用されることはないようです。
ジョブカード制度ができた背景と現状
ジョブカード制度は、2008年に政府の成長戦略の一つとして打ち出された人材支援策です。
新卒で正規の職に就くことが難しかった就職氷河期世代の雇用対策であり、職業能力の向上などを目的に、フリーターや子育て後の女性など就職の機会に恵まれにくい人を対象として「職業能力形成プログラム」が実施されました。
ジョブカード(制度)は、このプログラムに参加・活用するために創設されました。
かつて事業仕分けや行政レビューの対象となったことがあり、廃止も検討されましたが、2008年から10年以上継続しています。
ジョブカードの累計取得者数は2018年8月末時点で約203万人。政府は2020年までに累計300万人の利用を目標としていますが、活用状況は低調です。
ジョブカードの様式と記入例
ここでは、ジョブカードの具体的な様式と記入例を紹介します。
ジョブカードの様式は3種類12パターン
ジョブカードには「キャリアプランシート」「職務経歴シート」「職業能力証明」の3つの様式が含まれています。
「キャリアプランシート」と「職業能力証明シート」は職業経験の有無や職業訓練実施団体の種類などによって記入するシートが異なり、全部で12パターンになります。
ジョブカード制度総合サイトでは、求職者ごとの状況や年代に合わせた記入例が公開されています。
<ジョブカードの様式一覧>
※出典:厚生労働省告示第408号「職業能力開発促進法第15条の4第1項に基づく様式」|厚生労働省
様式1 キャリアプランシート
キャリアプランを作成するために、目標とする働き方、興味・関心や強み、将来取り組みたい仕事などを記入するシートです。
就業経験がある人とない人で、記入する形式が異なります。既卒や主婦(夫)の方だけではなく、学校卒業前の新卒者の場合も「就業経験なし」のシートを利用します。
※出典:キャリアプランシート(就業経験のある方用)の記入例|ジョブカード制度総合サイト
記入例(「ジョブカード制度総合サイト」より)
- 様式1-1 就業経験がある方用(就業経験が長い中高年の例)
- 様式1-1 就業経験がある方用(就業経験が短い若年層の例)
- 様式1-2 就業経験のない方、学卒者等用
様式2 職務経歴シート
これまでの職務経歴を記入するシートです。内容は一般的に使われている職務経歴書と似ていますが、記入欄が横長の罫線ではなく箱型になっているなど見た目の点では異なります。
シートは2面構成になっていて、第1面は勤務期間や職務内容、得られた知識・技能などを自分で記入します。
第2面は、勤務した会社側が第1面の内容について確認したことを証明する欄です。証明を受けた場合は、就職活動時に職務経歴の証明書として使用できます。
※出典:職務経歴シート(第一面)の記入例|ジョブカード制度総合サイト
記入例(「ジョブカード制度総合サイト」より)
- 様式2 職務経歴シート
様式3 職業能力証明シート
学歴や持っている免許・資格、職業訓練歴などを記入します。一般的に使われている履歴書に近い内容です。
職業能力証明シートのパターンは「免許・資格」「学習歴・訓練歴」「訓練成果・実務成果」の3つがあります。
訓練成果・実務成果のシートはさらに企業実習・OJT用や離職者用、学卒者訓練用などに分かれており、これらは訓練や実務を実施した企業・自治体が記入します。
※出典:職業能力証明(免許・資格)シートの記入例|ジョブカード制度の総合サイト
記入例(「ジョブカード制度総合サイト」より)
- 様式3-1 職業能力証明(免許・資格)シート
- 様式3-2 職業能力証明(学習歴・訓練歴)シート
このように、ジョブカードの様式や項目は、通常の履歴書などと比べてかなり細かく分かれています。
難しいときは作成支援を受けよう
ジョブカードをうまく記入できない場合は、キャリアコンサルタントの支援やハローワークでのサポートを活用しましょう。
項目が多く通常の履歴書と仕様が異なるため、1人で作成するのは難しいかもしれません。必要に応じてハローワークや職業訓練などでアドバイスを受けましょう。
ジョブカードを使うと助成金がもらえる?
ジョブカード制度は厚生労働省が推進しているため、一定の条件を満たすと個人や企業が助成金をもらえる場合があります。
ジョブカードに関わる助成金制度は、下記の2つです。
【個人】専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を受講した人が、受講費用の一部をサポートしてもらえる制度です。
雇用保険に3年以上加入していたことや、仕事を辞めてから1年以内に受講を開始することが条件で、教育訓練経費の50%(年間上限40万円)、訓練修了後に正職員などに雇用された場合は同70%(年間上限56万円)が支給されます。
訓練前に、専門の訓練を受けたキャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングを受けます。ジョブカードの交付を受けたのち、受講開始日の1ヶ月前までに手続きを行うと給付を受けることができます。
【企業】人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、企業が特定の教育訓練などを実施した場合に受け取れる助成金です。
キャリア形成支援制度導入コース、職業能力検定制度導入コースの2つがあり、助成額は47万5,000円で、労働生産性に関する条件をクリアしていれば割り増しで60万円が助成されます。
2019年4月1日以降、この制度を利用するためにジョブカードの写しの提出が必要になりました。
助成金は廃止されたものが多い
過去にはキャリア形成促進助成金、キャリアアップ助成金、企業内人材育成推進助成金などジョブカードに関わる助成金制度が多くありましたが、いずれも2018年までに廃止や新規受付終了となっています。
その影響のためか、ジョブカードの利用者数は減少傾向にあります。
まとめ
キャリアプランなどを考える一助にはなるものの、知名度が低いジョブカード。活用が推進されていますが、実際は職業訓練などジョブカードが活用される場は限られています。
項目が多く記入が難しいこともあるため、利用する際はハローワークなどのサポートを活用してみましょう。