役員や公務員の場合は? 常勤と非常勤の違いとは
求人広告などで「常勤」「非常勤」という言葉を見かけたことのある人は多いはず。
しかし、その違いについて説明できる人は少ないのではないでしょうか。ここでは、常勤と非常勤の違いや職種によって異なる働き方について解説します。
常勤と非常勤の違いとは?
常勤と非常勤はそれぞれ明確に定義されているわけではありませんが、職種や業種、企業によって働き方が異なります。
常勤と非常勤の大まかな違いや傾向について説明します。
常勤と非常勤の最大の違いは労働時間
常勤と非常勤は、労働時間の長さで区別されることが多い傾向にあります。
具体的には、フルタイム(1日8時間)で週5日勤務していれば「常勤」、1日8時間で週3日、1日5時間で週5日など、フルタイムの勤務時間に満たない場合は「非常勤」と分けられます。
常勤・非常勤で区別されることが多いのは、医師や看護師、保育士、教員、塾講師などです。また、常勤・非常勤の区別の基準は、職種や企業によっても違うことがあります。
職場によって常勤・非常勤の基準は違うことも
労働時間の長さ以外で常勤・非常勤が区別される例として、一部の国立大学では労働時間に関係なく「定年までの勤務」を前提とする場合のみ「常勤」、それ以外はすべて「非常勤」と呼んでいます。
また、週5日のフルタイム勤務でも非常勤であったり、逆にフルタイム勤務ではなくとも常勤というケースもあります。
もし求人情報で常勤・非常勤という記載があった場合は、具体的にどんな働き方なのかをしっかり確認しましょう。
【職種別】常勤と非常勤の働き方の違い
常勤・非常勤は、職種ごとに働き方が大きく変わります。モデルケースとともにその違いを紹介します。
公務員における常勤/非常勤
公務員の場合、公務員試験に合格して「正規職員」として採用された場合は常勤(フルタイム勤務)となります。
そもそも公務員は「特別職」と「一般職」に分かれており、それぞれ常勤または非常勤の働き方があります。
特別職の非常勤は「専門的な知識や経験にもとづいて助言や調査、診断などの事務を行う者」に限定されており、教育委員会の理事や市会議員、消防団員、審議会や審査会の委員などがあてはまります。
一般職には、公立図書館の司書、公立保育所の保育士、公立校の教員などがあてはまりますが、非常勤の場合は常勤のサポート業務がメインとなり、昇進することはありません。
このように、公務員は雇用形態や待遇が複雑なので、求人に応募する際は自治体の担当者に詳細を確認しましょう。
<公務員の常勤・非常勤のモデルケース>
常勤(市役所職員)
正規職員、月給18万円前後(新卒の場合)、別途手当・ボーナス・昇給あり、月~金のフルタイム勤務、無期雇用
非常勤(市役所職員)
嘱託職員、月給18万円前後、ボーナス・昇給なし、月~金のフルタイム勤務、有期雇用
公務員の場合、常勤であれば昇給やボーナスの制度が整っており、手当が充実しています。一方、非常勤の場合は、有期雇用であることがほとんどです。
保育士における常勤/非常勤
保育士の場合は、正社員であれば常勤、パートやアルバイト、契約社員などその他の雇用形態が非常勤とされることが多いようです。
<保育士の常勤・非常勤のモデルケース>
常勤
正社員、月給20万円前後、早番・遅番のシフト制
非常勤
アルバイト・パート、時給1,000円~、週1日・1日6時間からOK
常勤(正社員)の場合は保育士免許が必須です。非常勤の場合は保育士免許がなくとも保育補助として勤務可能な場合があり、働きながら保育士免許取得を目指すこともできます。
介護士における常勤/非常勤
介護士の場合、介護施設などの事業所が定める正規職員が1週間に勤務すべき時間数に達していれば常勤、そうでなければ非常勤と呼ばれることが多いようです。
パートや派遣社員などの非正規職員であっても、雇用契約上で1週間に勤務すべき時間数が正規職員と同じであれば常勤と呼ばれます。
<介護士の常勤・非常勤のモデルケース>
常勤
正社員、月給20万円前後、別途手当あり、早番・中番・遅番、夜勤あり
非常勤
アルバイト・パート、時給1,000円~、週2日~5日のシフト制、扶養内OK
常勤の場合は夜勤などがある場合も多く、生活が不規則になることもありますが、その分夜勤手当がつくので給料が増えます。非常勤の場合は好きな時間のみ働いたり、扶養内で働いたりすることもできます。
医師における常勤/非常勤
医師の場合は週に32時間以上勤務している場合に常勤、それ以下の勤務時間であれば非常勤とされることが多いようです。
これは厚生労働省医政局が「病院で定めた医師の1週間の勤務時間が32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する」と定義していることが関係しています。
ただし、この定義は厚生労働省が常勤・非常勤の医師数を算出するために設けたられた規定なので、実態とは異なります。
同要項では「常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう」と定められており、病院によっては週32時間以上勤務していても非常勤であったり、勤務時間が32時間に満たなくても常勤扱いとなる場合もあります。
※参考→医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱|全日本病院協会 医療行政情報
<医師の常勤・非常勤のモデルケース>
常勤
正社員、年収1,000万円~、早番・遅番のシフト制
非常勤
アルバイト・パート、時給10,000円~、曜日固定制またはシフト制
常勤の場合は当直などで生活が不規則になることもありますが、その分給料に手当が加算されます。一方、非常勤の場合は好きな時間で働くことができ、ライフスタイルに合わせて複数の病院を掛け持ちすることもできます。
大学教員(講師)における常勤/非常勤
大学教員の場合は、基本的にフルタイム勤務であれば常勤とされます。
非常勤の場合は、必要に応じて授業をするという形で、複数の大学の非常勤講師を兼任していることもあります。
<大学教員の常勤・非常勤のモデルケース>
常勤
年収700~1,000万円(教授、准教授、講師によって大きく差がある)、月~金のフルタイム勤務
非常勤
時給1,800円~、曜日固定制
大学教員は、常勤・非常勤ともに有期雇用の場合があります。非常勤の場合は複数の大学を掛け持ちする他、一般企業で働きつつ定期的に大学の授業を担当するケースもあります。
監査役や取締役などの役員における常勤/非常勤
監査役は会社の営業時間中に監査役としての職務に就いている場合に常勤、取締役会や監査役会に出席するために月に1~2回出社するのみなどの場合は非常勤となることが多いようです。
取締役は、出勤日数や業務、責任が明らかになっている場合に常勤で、月に数日程度出勤して必要に応じて相談に乗るなどの場合は非常勤とされることが多いようです。
非常勤の場合は複数の企業の非常勤取締役を兼任していることも珍しくありません。
<監査役や取締役の常勤・非常勤のモデルケース>
監査役(常勤)
年収600万円~、月~金のフルタイム勤務
監査役(非常勤)
年収100万円~、週1または月1~2回程度の勤務
取締役(常勤)
年収500万円~、月~金のフルタイム勤務または週1~4回勤務
取締役(非常勤)
年収150万円~、週1または月1~2回程度の勤務
監査役や取締役には、公認会計士などの資格やその業界にまつわる専門知識や実績、経験が求められるケースが多くみられます。監査役、取締役ともに非常勤の場合は他社と掛け持ちすることもあります。
常勤と非常勤にまつわるQ&A
常勤・非常勤にまつわる疑問について解説します。
Q:常勤から非常勤になることは可能?
業種や職種によっては、同じ職場で常勤から非常勤へと働き方を変えることが可能な場合もあります。特に医師、看護師、保育士、介護士などの資格職は、結婚や出産、家族の介護を理由に常勤から非常勤に変わるケースが多いようです。
非常勤になると、常勤に比べて労働時間が短くなり、プライベートを優先させて働くことができますが、待遇面がどのように変わるのかを確認することも大切です。
Q:非常勤から常勤になるためにはどうする?
同じ職場で非常勤から常勤になりたい場合、企業によっては資格取得や試験に合格する必要があることも珍しくありません。また、非常勤としての勤務経験が考慮され、常勤になりたい場合に有利になることもあるので、勤務先で非常勤から常勤になった前例がないか調べてみましょう。
非常勤から常勤になると、仕事の責任が増え、企業に対してよりいっそうの貢献を求められることが多いようですが、その分給料などの待遇面が充実することも多いというメリットがあります。
ちなみに、非常勤の教員から公立学校の教員を目指す場合は、年1回行われる教員採用試験に合格する必要があります。
Q:有給休暇や退職金、社会保険に違いはある?
退職金があるかどうかは、常勤・非常勤ともに会社の退職金制度の有無や規定によって決まります。有給休暇は、常勤であれば取得できることがほとんどですが、非常勤でも勤務期間や労働日数によっては取得できる場合があります。
社会保険は、正社員として雇用されている常勤であれば加入できますが、非常勤でも1日または1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数がその事業所で同じような業務をしている正社員の4分の3以上となっていれば加入できます。
Q:パートや派遣にも常勤や非常勤があるって本当?
企業や部署によって常勤・非常勤の規定が異なることがあるため、パートや派遣でも「常勤」と呼ばれる場合と「非常勤」と呼ばれる場合があります。例えば、介護士はパートや派遣であっても、正規職員と労働時間が同じであれば、常勤扱いされることが多いようです。
コラム:非常勤でも労災は受けられる?
非常勤でも、会社との雇用関係があれば労災を受けることができます。
しかし、過去には非常勤という勤務形態が理由で労災請求ができなかった例がありました。
北九州市の非正規職員の女性が仕事のストレスが原因でうつ病を発症し、退職後の2015年に自殺した際、遺族は公務災害(労災)の認定請求を行いましたが、北九州市はそれに応じませんでした。そのため、遺族は北九州市に賠償を求める訴えを起こしたのです。
こういった流れを受け、総務省は2018年7月、非における常勤/非常勤し、現在ではほぼすべての自治体で常勤・非常勤にかかわらず本人や遺族の労災請求を認めることになっています。
まとめ
常勤と非常勤は、労働時間の長さで区別されることがほとんどです。
ただし、常勤・非常勤の働き方は業種や職種によって大きく変わることがあるため、常勤または非常勤の求人に応募する際には、具体的にどんな働き方なのかを確認するようにしましょう。