2020年の法改正でどう変わる? 非正規公務員とは|待遇改善や雇い止め
近年、待遇や労働環境が問題視されている非正規公務員。その働き方や待遇、法改正による影響の実態について、詳しく解説します。
非正規公務員とは|実態と問題点
非正規公務員とは、どのような人たちを指すのでしょうか。非正規公務員の定義や職種、問題点について解説します。
地方自治体の組織で働く臨時・非常勤職員のこと
非正規公務員とは、主に地方自治体の組織で働く臨時職員や非常勤職員を指します。非正規公務員が多い職種には、以下のようなものがあります。
<非正規公務員の職種例>
- 自治体の窓口業務担当者
- 公立の学校教師
- 公立の図書館司書
- 公立保育園の保育士
総務省によると、2005年に全国で45万人程度だった地方自治体の非正規公務員は、2016年にはおよそ64万人にまで増加。
10年余りでおよそ1.4倍に増加したことになります。現在、地方自治体職員の約3人に1人が非正規公務員といわれています。
自治体の財政難などを理由に増加している
非正規公務員が増えている原因として、自治体の財政難や求められるサービスの多様化が挙げられます。
かつての日本では、介護や貧困などの問題があっても、同居している家族がサポートしてくれるケースがほとんどでした。
しかし近年、少子高齢化、核家族化、未婚化が進み、単身世帯が増加した結果、そうした問題に一人では対応できない人が多くなり、行政にさまざまな要望が寄せられるケースが増えているのです。
さらに近年問題となっている保育園や学童保育の不足、DV被害・生活保護・児童虐待などの相談に対応するため、窓口業務や子どもにかかわる職種で非正規公務員の採用が増えているのが実情です。
その対応策として職員を増やす必要がある一方で、国の交付金は削減され税収も減っています。そのため、自治体は正規職員に比べて人件費を抑えられる非正規公務員を増やすことで、なんとか対応している状況が続いています。
※参考:総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査」
問題点は低い賃金水準や雇い止め
多くの問題を抱えているといわれる非正規公務員ですが、主に以下の2点が強く問題視されています。
- 業務内容に比べて賃金水準が低い
- 雇い止めの不安がつきまとう
業務内容に比べて賃金水準が低い
非正規公務員の問題点としてまず挙げられるのが、賃金水準の低さです。
総務省が行った調査によると、例えば「事務補助」という職種の場合、非常勤職員(一般職)の平均時給は919円、臨時職員では845円となっています。
1日8時間のフルタイム勤務で働いたとしても、一般職非常勤職員では月給約14万7,040円、臨時的任用職員では月給約13万5,200円。
民間企業の事務係員の平均月収は約27万5,000円なので、事務係員と事務補助というポジションの違いはあるものの、非正規公務員の月給が相当に低い傾向にあることがわかります。そのため、非正規公務員は「官製ワーキングプア(政府がつくった働く貧困層)」などと呼ばれることもあります。
※参考
→総務省「地方公務員の臨時・非常勤職員に関する実態調査結果」
→厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」
雇い止めの不安がつきまとう
雇用契約を更新してもらえない、いわゆる「雇い止め」も非正規公務員にとって大きな問題の一つです。
民間企業では、2018年4月から有期雇用労働者が5年を超えて働けば無期契約に移行できる「無期転換ルール」の適用が始まりましたが、このルールは公務員には適用されません。そのため、依然として多くの非正規公務員に対して雇い止めが行われているのが現状です。
契約更新の確約がない不安定な雇用に不安を抱えている人は少なくありません。
コラム:非正規公務員になるには?
非正規公務員(非常勤職員や臨時職員)の求人は、公官庁、自治体のホームページや広報誌、ハローワークなどで探すことができます。
採用プロセスは自治体により異なりますが、書類審査の上、民間で行われるSPIなどの適性検査のような筆記試験と面接を行い、合否が決まることが多いようです。
非正規公務員から正規職員を目指す場合は、公務員試験を受ける必要があります。
2020年4月から、非正規公務員の待遇が改善する?
地方公務員法改正により、2020年4月から会計年度任用職員制度が導入され、非正規公務員の多くは「会計年度任用職員」として一本化されました。
会計年度任用職員は、週の就業時間が38時間45分以上であればフルタイム、それ未満はパートタイムとして分けられます。
この制度は、非正規公務員の任用を適正かつ明確にすることで、労働条件を改善することを目的としています。
改善されるポイント3つ
法改正によって非正規公務員の待遇が改善されるポイントは、以下の3つです。
- 昇給制度が導入される
- 残業代や通勤手当が支給される
- ボーナスや退職金、休暇制度などの待遇が改善される
昇給制度が導入される
法改正により、職務経験などに応じた昇給制度の導入が可能となります。
会計年度任職員の任期は、1会計年度の範囲内と定められているため、任期終了後に再度同じ職に任用された場合でも「任期が延長された」のではなく、あくまで「新たな職に改めて任用された」という位置づけになります。
そのため勤続年数に応じて昇給することはありませんが、会計年度ごとに職務経験に応じて“初任給”が見直されるため、前年度より増額されれば実質的に昇給となります。
ただし、初任給が上がる具体的な基準(実質的な昇給の基準)については、各地方自治体の判断に委ねられています。
残業代や通勤手当が支給される
これまで非正規務員には支給されなかった手当が支給されるようになります。支給される手当の種類や金額は自治体によって異なりますが、主なものとして通勤手当、時間外勤務手当(残業代)、期末手当などが挙げられます。
ボーナスや退職金、休暇制度などの待遇が改善される
非正規公務員にはボーナスがありませんでしたが、会計年度任用職員は6ヶ月以上勤務している場合にボーナスとして「期末手当」が支給されるようになります。
フルタイムの会計年度任用職員の場合、6ヶ月以上勤務していれば退職金も支給されます。
また、会計年度任用職員は産前産後休暇、介護休暇、育児休業(子どもが1歳になるまで)なども取得可能です。ただし、これらの休暇・休業を取得している期間は、正規職員とは異なり無給扱いとなります。
副業禁止や月給が下がるといったデメリットも
非正規公務員から会計年度任用職員に変わったことにより、副業や給料についてのデメリットが指摘されています。
パートタイムの会計年度任用職員は副業が可能ですが、フルタイムの会計年度任用職員は公務員と同じく守秘義務が課され、原則副業が禁止になります。
また、ボーナスの支給によって増えた人件費を、月給を下げることでまかなう自治体もあるようです。その場合、年収は変わらないものの、月給が減るため、毎月の生活費の見直しをしなければならないことも考えられます。
まとめ
非正規公務員とは国や自治体の組織で働く臨時職員や非常勤職員のことで、職種としては自治体の窓口担当や教師、保育士などが多いようです。
法改正で会計年度任用職員という名称に変わり、待遇が改善される一方、副業禁止などのデメリットもあります。