後悔しない決断のために 介護離職しても大丈夫?基礎知識を解説 

高齢化とともに社会問題となっているのが、介護を理由に仕事を辞める「介護離職」。仕事と介護の両立が難しく介護離職をした場合、経済的な問題が出てきてしまうこともあります。

介護離職の現状や、介護離職の防止策などについて説明していきます。

介護離職の現状と問題点

はじめに、介護離職の概要について説明していきます。

介護で仕事を辞める人は年間約10万人

2017年の総務省の調査によると、過去1年間で介護離職をした人は全国で9.9万人に上っています。

その内訳は女性が7万5,000人、男性が2万4,000人となっており、介護離職をする人の約8割が女性という結果が出ています。

急速な高齢化に伴い、40代~60代の労働者が親の介護のために離職するケースは、今後ますます増えていくとみられています。

※参考→平成29年就業構造基本調査結果|総務省

介護離職後の再就職率はたったの3割

同じく総務省の調査によると、介護離職後に再就職ができた人は全体の3割程度にとどまっています。

いったん介護離職をすると、介護をしながら再就職活動をするのが難しかったり、職歴にブランクが空いてしまうことで採用されにくくなったりといった問題が出てくるためです。

また、再就職できたとしても、以前に比べて給料が減ったというケースや、正規雇用を希望していてもパートなどの非正規雇用として働かざるを得ないケースも珍しくありません。

※参考→介護施策に関する行政評価・監視 -高齢者を介護する家族介護者の負担軽減対策を中心として- <結果に基づく勧告>|総務省

収入激減・負担増加で後悔する場合も

介護離職したことで後悔しているケースも多くみられます。介護離職をすれば、当然収入が減り、さらには生活の中心が介護になるため、経済的・精神的・肉体的な負担が増えることが多いからです。

仕事を辞めて介護に専念する場合、その後の生活のシミュレーションをしっかりと行った上で決断しなければなりません。

介護離職の理由は両立の難しさ

介護離職する理由の多くは「仕事と介護の両立が難しい」ことです。

具体的には自分のほかに介護をする人がいないことや、仕事と介護の両立に体力的、精神的限界を感じるという離職理由が多くなっています。

要介護度が重くなり介護の負担が増えることも、離職に拍車をかけています。

同時に、勤務先との関係も大きく影響しています。具体的には「仕事と介護の両立について職場の理解が得られなかった」「介護による欠勤や早退などで職場に迷惑をかけることが多かった」などの理由があるようです。

介護離職をする前にできること

介護離職をしないための対策として、以下のようなものがあります。

  • 介護休業法などの制度を活用する
  • 介護保険サービスを利用する
  • 地域包括支援センターで相談する
  • グループホームや有料老人ホームを利用する

詳しく見ていきましょう。

介護休業法などの制度を活用する

介護離職を防ぐための方法としてまず挙げられるのが、介護休業制度や介護休業給付金の活用です。

介護をする場合、要介護状態の家族1人につき、トータルで93日の介護休業を申請することができ、その間は介護休業給付金として給料の約67%が支給されます。以前は一度のみでしたが、2017年からは3回まで分割して取得できるようになっています。

※介護休業について詳しくは→介護休業の取り方ガイド

また、企業には介護をしている社員に対して短時間勤務や始業・終業時間の繰り上げ・繰り下げなどを認める義務があります。

その他、企業独自の介護離職防止制度として、在宅勤務や短時間勤務を推奨している場合もあります。介護離職を決める前に、まずは勤務先の担当者に確認してみましょう。

介護保険サービスを利用する

介護保険サービスを利用することも、介護離職の防止につながります。

最寄りの市町村の窓口で要介護認定の申請を行い、ケアマネージャーの調査を経て認定されます。自己負担は費用の1割なので、経済的な負担低減も見込めます。

地域包括支援センターで相談する

高齢者の暮らしをサポートするための機関、「地域包括支援センター」にも相談してみましょう。上記の介護保険サービス申請のサポートのほか、高齢者の生活に関するさまざまな悩みを相談できます。

保健師や社会福祉士などの専門スタッフに生活の中で困っていることや介護について相談できる他、介護サービスの利用についてのアドバイスをしてもらうこともできます。

相談先があることで精神的負担の低減も期待できますので、「何をすればいいかわからない」という方はまず近隣の地域包括支援センターを探してみましょう。

グループホームや有料老人ホームを利用する

介護離職を防ぐために、グループホームや有料老人ホームなどを利用して、プロに介護を任せるという方法もあります。

介護離職をした場合、収入面での不安があったり、24時間介護と向き合うことで負担が大きくなったりするケースも少なくありません。

介護のプロに家族の面倒を見てもらうことで、仕事に集中できるだけでなく、自分の負担が減ったことから家族とも気持ちよく接することができることも。

ただし、介護保険サービスに比べてかなりの高額になるため、介護離職を防げる一方で金銭面のやりくりが必要となることには注意しなければなりません。

介護離職Q&A

最後に、介護離職に関するさまざまな疑問について解説していきます。

介護離職したら、失業保険は受給できる?

介護を理由に離職した場合でも、失業保険を受給できます

介護離職をしたら、すみやかにハローワークで失業保険の受給手続きを行いましょう。

介護離職防止支援助成金とは?

介護離職防止支援助成金とは、介護と仕事が両立できる職場環境を目指している企業が受け取れる助成金で、介護休業を利用した社員に支給されるものです。

支給の条件には、社内でのアンケート調査や研修の開催などさまざまな項目があるので、詳しくは厚生労働省のホームページで確認してください。

※参考→介護離職防止支援助成金|厚生労働省

「介護離職ゼロ」とはどんな取り組み?

介護離職防止支援助成金とは、介護と仕事が両立できる職場環境を目指している企業が受け取れる助成金で、介護休業を利用した社員に支給されるものです。

支給の条件には、社内でのアンケート調査や研修の開催などさまざまな項目があるので、詳しくは厚生労働省のホームページで確認してください。

※参考→介護離職防止支援助成金|厚生労働省

まとめ

介護離職は、労働者なら誰でも当事者になる可能性があります。

国や企業が行っているさまざまな介護離職防止策を活用しながら、できるだけ負担の少ない形で介護や仕事に向き合いましょう。

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