「3年は働け」は正しい? 辞めたいと感じたら考えてほしいこと
激務とストレスで会社を辞め、そのときの心情や状況をブログにしたためて大きな話題を呼んだ、はせおやさいさん。今は兼業ブロガーとしてベンチャー企業で働くはせさんに、会社を辞めたいと悩む人へのアドバイスをいただきました。
「入社したら3年は働け」は今も有効か?
わたしが新卒で就職活動をしていたとき、よく言われていたのが「入社したらせめて3年は働け」ということでした。
それは「どんな仕事も3年続けてみないと、真の価値はわからない」という意味だったかもしれませんし、「3年くらい辛抱できないと、どんな会社でも続かない」という戒めだったのかもしれません。
内閣府が発表した平成19年度『青少年の現状と課題』によると、就職して3年以内に中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が離職するという「七五三現象」が報告されており、早期離職が以前から課題視されていることがわかります。
しかし、令和を迎えた今現在、副業やパラレルキャリアが当たり前になり、自分が所属している会社に3年とどまる以外の選択肢がいろいろ増えたように思います。
「辞める=逃げ」ではない
これを読んでいる方の中で「せめて3年」に共感する人もいるでしょうし、「今はもうそんな時代じゃないよ」と感じている人もいるかもしれません。まさに今は時代の端境期(はざかいき)で、わたし自身の中にも、この2つの価値観が入り交ざっているような気がします。
その一方で「せめて3年」という先入観に縛られ、「今のままでいいの?」と感じていても、なかなか辞められない、という悩みを見聞きすることが増えました。中には3年我慢せずに辞めるのは「逃げ」なのではないかと考えてしまう人もいます。
勤めている会社に対して、不満や不安があるのは当然です。まったく不満や不安がない、という人のほうがレアだと思うのですが、その不満の中にも、「限度を超えたもの」というのが存在します。そして限度を超えていると感じた場所から離れることは、けして「逃げ」ではないと思うのです。
健康で安心な人生は何よりも大切
「限度を超えた」不満や不安、言い換えれば我慢する必要のない不満や不安は、大きくふたつに分類されるのではないでしょうか。
- 仕事が自分の生活やライフスタイルを侵害してくるケース
- 仕事で意思や意見を表明する機会が与えられず尊厳を奪われてしまうケース
ワークライフバランス、という言葉もかなり浸透してきましたが、わたしたちの人生において「ワーク」の部分はあくまでごく一部です。生活があって仕事があり、仕事があって生活がある。この2つがバランスしているからこそ、健康で安心した人生を歩めるはずです。
「ブラック企業」と言われる会社でよく使われる手法ですが、過度の残業や休日出勤の強制(言外の強要も同様です)により、生活をままならなくさせることで働く人の思考を奪い、コントロールしようとしてくる人がいます。
また、自分の意見や意思を表明しようとすると、頭ごなしに否定してくることで自分の権力を見せつけ、支配しようとする人もいます。
思考の余裕を奪い、支配しようとするのはとても醜く愚かなことですが、実は管理手法としてはとても楽だったりします。「言うことを聞かせる」状態にするため、管理する側の労力が少ないからです。
子どもがコップの水をこぼしたシーンを想像してみてください。こぼした水を拭き、理由を聞いて、また同じことが起きないようどうしたらいいか?を一緒に考えるのと、怒鳴ったり叩いたりして恐怖で支配して自由に動けないように縛るのと、どちらが楽でしょうか。
子どもの心を無視して「置いてあるコップの水がこぼれないようにする」だけでよいなら、後者のほうが簡単なのです。
自分から踏み出さないと未来は変わらない
少し嫌な気持ちになることを書いてしまいましたが、そういう管理方法でしか部下をマネジメントできない上司や会社、というのは存在します。
わたし自身もブラック企業で働き、心身を壊してしまった経験があるのですが、当時は、上司が厳しく当たってくるのは、自分に能力がないからだと自分を責めてしまっていました。
でも、逆だったんです。管理する側が無能だったから、心身を壊すほど乱暴なマネジメントをするしかなかった。
そして、様々な出会いや気づきを経て、そんな無能な上司や会社に耐え、人生をめちゃくちゃにされるほど、わたしの価値は低くない。そう思えるようになって初めて会社を辞める決心がつきました。
わたしの体験はちょっと極端な例かもしれませんが、5年後、10年後の自分は、今の自分と地続きです。いつかどこかで上司や会社が変わってくれるかもしれないと待つのではなく、自分から踏み出さないと、未来を変えることはできないのです。
「第三者の目」で自分を振り返ってみよう
とはいえ、「じゃあ今の会社に不満があるからすぐ辞めよう!」というのも乱暴な話です。それこそただの「逃げ」になってしまいます。
だからと言って、「逃げるな」と言いたいのではありません。自分の人生は自分しか生きられないのだから、どこから逃げたってあなたの自由です。そして、逃げないのもまた、あなたの自由です。
でも、自由だからこそ、何も考えずに逃げるのではなく、本当に逃げるべきかどうか自分で考え、選んでほしい。そのためには、第三者の目を自分の中に持ってほしいと思います。
多くの人の話を聞き、たくさんの本を読んで、自分と違う価値観をどんどんインストールしてください。
話を聞く相手は、自分から遠ければ遠いほどよいと思います。同僚よりは他の会社の人に、地元の友人よりはそれ以外の友人に、親よりは他人に話を聞いてみてください。
本を読むのなら、普段は読まないような本を読んでください。ビジネス書でなくてもいいんです。映画が好きなら映画でもかまいません。
そうやってインストールした価値観で、現在の自分とこれまでの人生を振り返り、おかしいところ、苦しそうなところ、不自然なところがないかをよく見てほしいのです。
人生には無限の選択肢がある
できれば第三者目線から見た自分の人生の苦しそうなところだけでなく、楽しそうなところも見つけて、両方紙に書き出してみてください。その結果、「あれっ、思ったより今の生活は悪くないかもしれないな」と思えるかもしれません。
その上で「辞めない」という決断もまたありだと思いますし、やっぱり「辞めよう」と思うのもありだと思います。繰り返しますが、あなたの人生はあなたにしか生きられません。あなたの人生には無限の選択肢があり、それはすなわち無限の可能性なのだということを知ってほしいと思います。
ただ、厳しいことを言うようですが、あなたがどんな選択をしても、誰も責任を取ってはくれません。わたしのコラムを読んでただ逃げたとしても、わたしは何も責任を取ってあげられないのです。それは、あなたの人生は、あなたが生きるしかないからです。
とはいえ、このコラムを通じてあなたが新しい第三者の目を得て、自分の人生を振り返るきっかけのひとつになったら嬉しいな、と思っています。後から誰かのせいにしたり、後悔したりすることのないよう、しっかりと考え、選んでほしいと思います。またどこかでお会いしましょう。
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この記事の執筆者
はせおやさい
会社員兼ブロガー。仕事はWeb業界のベンチャーをうろうろしています。
一般女性が仕事/家庭/個人のバランスを取るべく試行錯誤している生き様をブログに綴っています。
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