理系の職業図鑑 学部学科別・就職に適した職業

理学部、工学部、農学部…理系の学部学科出身者が歓迎される職業って何があるの?

特定の学部学科から目指せる職業と、理系人材なら誰でも応募可能な理系職業。それらの仕事内容ややりがいに加え、年収や業界ごとの展望、企業の知名度など…職業選択をする上で欠かせない情報を、このページでは解説していきます。

加えて、2017年卒の理系学生がどんな軸で職業選択をしているのか、気になる統計データもご紹介します。

これを見れば、理系のあなたにとってどんな可能性があるか…きっとはっきりとイメージできるでしょう。

学部学科別・理系学生が就く職業

まずは各学部学科の出身者が多く活躍する職業について、詳しく解説します。

理学部出身者の職業

数学・物理学や、化学・生物学、地学・生命科学・地球学などの学科がある理学部出身者が多い職業、強みを活かせる職業をご説明します。

アルゴリズム開発/データサイエンティスト/アクチュアリー/アナリスト/光学設計/臨床開発モニター/研究職/製造技術/地盤調査など18職種

理学部出身者が多く活躍する職業

工学部出身者の職業

機械工学や電気・電子工学、情報工学などの学科を擁する工学部を卒業した人がどんな職業に就いているか、就くことができるかをご説明します。

機械設計/金型設計/生産技術/航空整備士/電子回路技術者/電気設備設計/生産技術・プロセス開発/プラントエンジニア/プログラマ・システムエンジニアなど18職種

工学部出身者が多く活躍する職業

農学部出身者の職業

農業・畜産をはじめとする食料生産分野、環境、食品、生物・バイオなど…幅広い学問領域を持つ農学部からなれる職業を解説します。

食品メーカー/種苗メーカー/観葉植物リース/ファーム/化粧品・製薬業界/土木系建設会社/JAなどの各職種

農学部出身者が多く活躍する職業

建築・土木系出身者の就職

建築・土木系学科出身者の就職先となれる職業を解説します。

意匠設計/構造設計/内装設計・インテリアデザイナー/建築施工管理/土木設計技術者/土木施工管理/測量士など9職種+α

建築・土木系出身者が多く活躍する職業

次の章では、各職業ごとの平均年収や理系学生に人気の企業のランキングデータをご紹介していきます。

職業別・理系の平均年収額

前述の「学部学科別・理系学生が就く職業」では、学部学科ごとに目指せる職業を解説しています。

ここではその中から、特別に年収の高い職業を抜粋し、ランキング形式でご紹介します。

なお、年収額は初任給ではなく20~40代を通じて受け取れる額が多いものを基準に比較しています。

1位 MR(医薬情報担当者)

勤務先:製薬メーカー、CSO
平均年収521万円(20代)、704万円(30代)、963万円(40代)
学部学科:理系全般

2位 アナリスト

勤務先:銀行・証券・保険会社など
平均年収:521万円(20代)、719万円(30代)、845万円(40代)
※証券アナリスト資格所有者の平均年収は800万円程度。外資系企業に就職した場合は将来的に1000万円を超える場合も。
学部学科:理系全般

3位 臨床開発モニター(CRA)

勤務先:製薬メーカー、CRO
平均年収:438万円(20代)、556万円(30代)、754万円(40代)
学部学科:理(化学)・農(化学・生物系)

4位 電子回路技術者(回路設計)

勤務先:半導体ベンダーや家電をはじめとする各種電気・機械系メーカーなど
平均年収:458万円(20代)、544万円(30代)、685万円(40代)
学部学科:工(電気)

5位 ネットワークエンジニア(NE)

勤務先:ITインフラ企業、通信系企業、SIer、各種一般企業など
平均年収:368万円(20代)、491万円(30代)、626万円(40代)
学部学科:理系全般

6位 生産技術・生産設備設計

勤務先:メーカー各種
平均年収:394万円(20代)、516万円(30代)、625万円(40代)。
学部学科:工

7位 機械設計・開発

勤務先:自動車・家電・産業機械メーカーなど
平均年収:395万円(20代)、504万円(30代)、601万円(40代)
学部学科:工(機械)

8位 プログラマ / システムエンジニア(PG/SE)

勤務先:SIer、web系企業、各種一般企業など
平均年収:389万円(20代)、501万円(30代)、598万円(40代)
学部学科:理系全般

9位 製造技術

勤務先:製薬・食品・化学系メーカーなど
平均年収:384万円(20代)、491万円(30代)、586万円(40代)
学部学科:理・農

10位 意匠設計

勤務先:設計事務所、アトリエ、ハウスメーカーなど
平均年収:343万円(20代)、431万円(30代)、572万円(40代)
※会社規模によって給与額に差。加えて一級建築士や個人事務所の建築家の中にもより高収入を得ている人も。
学部学科:建

※年収額はDODA調べ「平均年収ランキング2015」による。

高収入のアナリストとMRとNEには学部学科問わずなれる

上記のデータを比較したとき、ずば抜けて年収額が高いのは、銀行など金融業界で働くアナリストと、製薬会社のMR。

数字を扱うアナリストは理学部出身者が多く活躍するものの、統計や数学に慣れ親しんでいる理系出身者なら、学部学科関係なく応募が可能です。

同じく製薬会社のMRも、薬と化学の知識に長けた薬学部や化学系学科などが歓迎される傾向にはありますが、武田薬品工業やアステラス製薬などの大手をはじめ多くの企業が、理系出身であれば学部学科不問の採用を行っています。

他にも年収額が高めの傾向にあるインフラ系エンジニア(NE)も、工学部の情報系学科で専門的な勉強をした人だけでなく、様々な学部出身者が活躍する職業として知られています。

年収で判断する場合は初任給だけでなく生涯年収を考慮すべし

給与額を職業・企業を選択する際の判断軸の1つとする場合、初任給だけを見て決めるのは避けましょう。仮に初任給が高かったとしても、昇給幅が狭ければ、生涯年収に大きな差が開いてしまうからです。

定年まで・40代までなど長期にわたって同じ企業で働くことを前提に考えるのであれば、「自分は月収20万前後でじゅうぶん」と決めつけず、結婚や出産といった将来のことも視野に入れつつ、10年後・20年後の給与も確認の上、判断しましょう。

興味のある企業の採用ホームページをチェックする際は、そこに掲載された初任給だけでなく、「○歳時に年収××万円」というモデル年収や平均年収・平均年齢も合わせて確認し、将来もらえる額を試算してみましょう。

初任給・生涯年収ともに高い業界の理系職種はどんなものがある?

初任給が高くてもその後の昇給ペースが鈍かったり、その逆に昇給はするけれど初任給は低かったり…というケースが多い中、保険業と石油・石炭製品、鉱業の3業種が初任給・生涯年収ともに高いことが、厚生労働省の「平成25年賃金構造基本統計調査」と各社の有価証券報告書を元にした調査で明らかになりました。

鉱業…初年度年収493万円(1位)、30歳時613万円(3位)、40歳時747万円(4位)
保険業…初年度年収439万円(2位)、30歳時658万円(1位)、40歳時826万円(1位)
石油・石炭製品…初年度年収425万円(3位)、30歳時617万円(2位)、40歳時758万円(3位)
上場企業平均…初年度年収314万円、30歳時453万円、40歳時589万円

※年収は全てその業界の上場企業の平均年収。()内は全33業界中の順位

※参考: 初公開!「給料が伸びる業界」ランキング

鉱業とは、石油や天然ガスといった地下資源の採掘・開発を行う業界のこと。石油・石炭製品業界は、採掘された石油や石炭を精製・販売する業界です。

いずれの業界も、建築系の設計職の1つであるプラント設計や、製品の品質を守る品質管理、生産ラインの企画・設計・導入・メンテナンスを手がける生産技術、社内システムの構築やデータの分析を行うシステムエンジニアなどの技術職で募集が行われています。

但し、他業界に比べると、鉱業の上場企業は6社のみしかなく、募集数は少なめの傾向に。

一方、保険業界は上場企業だけで11社ある上、全体的に採用人数が多い傾向にあります。中でも、アクチュアリーが、理学部を中心とした数字や分析に強い理系出身者を対象に募集されやすい職種です。加えて、社内の金融システムを構築するシステムエンジニアの募集も行われやすいでしょう。

各業界の展望と採用ニーズ

業界ごとの現況と展望、採用動向を見ていきましょう。理系出身者が多い、IT・自動車・工作機械・電子/半導体・化学・製薬・化粧品・食品・建築土木業界についてポイントを絞って解説します。

なお、いろいろな業界があって悩む…という場合は、プログラマやシステムエンジニア、インフラ系エンジニアなどの職種があるIT業界がオススメです。IT業界は、学部・学科を問わず募集されているため、学校でプログラミングを学んでいなくても今から目指すことが可能です。

IT業界…クラウド、ビッグデータ関連で採用が活発化

IT関連はソーシャルメディアやゲーム業界を中心に、クラウド関連の分野で採用が活発化。一般にニーズの高まっているセキュリティ業界では、ネットワークやソフトウェアセキュリティ関連のスペシャリストが求められています。

また、近年では蓄積されたビッグデータの活用法をめぐり、データサイエンティストやアナリスト、ITコンサルタントの需要も増加しています。また、システム開発を主とする会社以外でも、webサービス企業などでは自社の運営するサービスやサイトを内製する“インハウス”SE/PGを囲い込む姿勢も。

一方、数年前までは活発だったソフトウェアや通信キャリアの領域は成長が鈍化しています。

とはいえ、業界全体として需要が高く、エンジニアは不足傾向に。学部学科問わず募集が行われる傾向は、今後もまだまだ続きそうです。

自動車業界…フォルクスワーゲンや三菱の不正問題も、業界全体で採用が活発に

自動車は、日本の基幹産業の1つです。トヨタやホンダといった完成車メーカーと、部品を開発・供給するサプライヤーの大きく2つに分かれます。

一台の車はおよそ3万個の部品から構成されている、と言われているように、サプライヤーの存在なしではこの業界を語ることはできません。

自動車業界の直近のトピックスとしてあげられるのは、フォルクスワーゲンの排ガス不正や三菱自動車の燃費不正問題です。

特に世界シェア1位をトヨタと争うフォルクスワーゲンの不正が与える影響は大きく、同社の生産・販売台数の減少にあえぐ外資系サプライヤーは、世界的にも競争力のあるトヨタやホンダなどの日系企業にビジネスの活路を見いだそうと、日本法人の増員をはかっています。

一方の日系では、逆に海外進出を加速。グローバルで活躍できる優秀な人材の獲得を行うほか、国内で設計・開発や生産を担う理系人材を積極的に採用しています。

自動車業界のトレンドを語る上でもうひとつ欠かせないのは、自動運転技術やIoTといったコンピューターを駆使した先進技術の開発が激化していること。機械系エンジニアに加え、電気・電子系エンジニアやプログラマ・システムエンジニアなど情報系の分野でも、採用が活発化しています。

サプライヤーの中でも将来性が見込まれるのは、ボッシュ、コンチネンタル、マグナ、ZFTRW といった、外資系のシステムサプライヤー。

これは、近年の完成車メーカーの傾向として、無数のサプライヤーから細かな部品を供給するのではなく、バックモニター一式、自動ブレーキシステム一式…というように、モジュール単位・システム単位で供給を受けようとする動きがあるためです。

工作機械業界…設計職の求人増。AIやNC工作機械が今後も安定か

工作機械業界(産業用ロボット含む)は、取引先である製造業各社で、人工知能(AI)付きの工作機械の登場や工場のFA(ファクトリーオートメーション)化など、設備投資が強化されていることもあり、堅調な業績で推移しています。

加えて業界全体の受注の7割を占める海外需要が高止まり。2014年の受注額は過去2番目の高水準となりました。

このため全ての職種で採用が活発になっています。中でも特に目立つのが、製品を製造する上で重要な生産技術や品質管理と、新たな製品づくりを担う機械設計や回路設計。

もともと製造業界は「開発職は新卒で採用して育てていく」という風潮が強いこともあって、新卒向けの募集では特に設計職が発生しやすくなっています。

設計職は業績の悪化とともに求人数が減る傾向にあるため、学生にとって2016年現在は花形職種に就きやすい時期と言えるでしょう。

もともと工作機械業界は、浮き沈みが激しいことで知られます。特に円高が進んでしまうと、海外メーカーとの価格競争に負けてしまうなど、業績が厳しくなる場合が多いと言われています。

今後、業界全体ではNC工作機械やAI付きの工作機械など、自動化・人工知能化の流れが進むものと言われています。景気の波に左右されやすい業界ですが、これらのトレンドを牽引する企業は勝ち残れる可能性が高いと言えます。

電子部品・半導体業界…設計をはじめ全職種で求人増。自動車向けが堅調か

電子部品・半導体業界も、工作機械同様、設計職を自社で育てる風潮があり、新卒向けに求人が多く出ています。加えて、リーマンショック以降採用を控え、リストラを行ってきた反動から、現在では職種問わず募集を行っている企業が多く見られます。

とはいえ、半導体業界も電子部品業界も成熟期を迎えつつある昨今。『ムーアの法則』でも知られるように、ここ50年間、半導体集積回路の集積度は2年おきに倍増のペースで成長を遂げてきたものの、ついにスローダウン。

さらに、ここ数年はスマートフォンが電子部品市場の動向を左右し、スマホメーカーからの受注増加に増員する企業がある反面、サムスンの販売不振や国内スマートフォンの価格競争熾烈化などを受け、事業転換や身売りを迫られる企業も。業界内では淘汰が進みました。

とはいえ、半導体も電子部品も、現代社会に不可欠な存在。3次元NANDフラッシュメモリーなどの新技術も実用化される見込みで、引き続き好調が予想されています。

海外勢との競争が激化する中、国内メーカーは変動の激しいスマートフォン市場から、自動運転技術やIoT技術で盛り上がりを見せる自動車や、医療機器、産業機器といった安定的成長を望める分野へとシフトしようとしています。

このため、自動車向けの電子部品や半導体を手がけている企業は将来性が見込まれますが、必ずしも安定すると断言できるものではありません。IoT分野の成長はまだまだ時間がかかると言われているほか、海外勢との競争が激しいことは、念頭に置いておくとよいでしょう。

化学業界…機能性化学品や新素材へ注力する企業が将来性アリ

自動車や電子機器、衣料品など…様々な業界へ化学素材を提供する化学産業は、日本の基盤産業の1つです(付加価値額は自動車などの輸送機に次いで2位)。ですが、外資系メーカーと比較すると収益性が低いという特徴があります。

その要因の1つとされるのが石油化学製品への依存。売上の半分近くを占めるにもかかわらず、収益性での貢献度が低い石油化学製品部門の縮小・最適化が進むため、国内の汎用化学品部門ではリストラが行われています。

増税の影響で衣料品の需要が落ち込んだものの、エアバッグや低燃費タイヤ、リチウムイオン電池など自動車向けの化学素材ニーズが増加したことで、業界全体としては引き続き堅調。

但し、グローバルでは、新興国企業の参入や外資系大手企業の存在などが激化し、東レなど一部の強みを持つ企業を除けば、日系企業は全体的に苦戦を強いられていると言えます。

「次世代製品の開発」と「国際的な競争力の向上」「戦略的な事業展開」とともに、「次世代を担う人材の育成」が、将来性を握る鍵と言われています。

国内市場が頭打ちとなり、グローバルでの戦いが不可避なこの業界は決して好調とは言えないものの、付加価値の高い高機能性化学品(※)へ注力する企業や、日本市場に参入する外資系企業、フィルムやFRP、セラミック、塗料といった商品開発が盛んな企業で、積極的に採用が行われています。

※機能性化学品とは、独自技術により材料に特殊な機能を持たせることで解決策を提案し、顧客の製品の付加価値向上を実現した化学製品のこと。

製薬業界…企業選びの基準は「新薬を開発できそうな会社か否か」

製薬業界では、1990年代から新薬の開発ラッシュがピークを迎え、現在までに患者数の多い生活習慣病の新薬がほとんど出そろってしまいました。

今後開発が進められるのは、癌やアルツハイマーといった原因が明らかになっていない、難易度の高い疾患に対する薬ばかり。開発費が高騰し、年々新薬の開発が難しくなっていると言われています。

こうした事情があるものの、製薬業界で働く人の給与は依然として高めの傾向。新卒向けの採用もコンスタントに行われています。

具体的な職種を挙げると、新薬開発に関わる治験を担当する臨床開発モニター(CRA)、薬の市販前後の臨床データを収集するデータマネジメント、そのデータを分析する統計解析、そして自社の薬の普及を担うMRなど。

もともと製薬業界では一職種あたり何十名という規模の大量採用を新卒・中途ともに行っているのが通例だったため、募集人数こそ減るものの、求人は今後も発生するでしょう。

企業の将来性を考慮すると、中小企業はやや不安。開発力・資金力があり、新薬を生み出すことができる可能性がある大手企業を選ぶのがベターと言えます。

化粧品業界…求人は少なめだが品質・安全性に関わるポジションで需要増

化粧品業界は、インバウンド(外国人による爆買い)によって一時的に国内需要が増加していましたが、2016年に入り、円高が進んだことによって落ち込みを見せています。

とはいえ、もともと景気の影響を受けにくい業界のため、今後も大きく後退することは考えにくいでしょう。

業界全体の傾向としては、白斑問題やアレルギー問題をはじめ安全面でのトラブルが続いたことから、製品の品質に関わるポジションである品質管理・品質保証・薬事の需要が高まっています。

化学系学科出身者にとって花形である研究職の多くは、大学院卒を対象に募集が行われているため、学部生は対象外。

また、理系の中でも、機械系の学科出身者が多く活躍する生産技術・設備管理・設備保全などの職種も新卒向けに求人がありますが、ポジションがあるのは自社に工場を持っている大手企業のみ。全体的に見れば求人数は少なめです。

化粧品業界は、会社規模問わず大量採用を行うことが非常に少ない上、商材の身近さから、文系学生からも多く応募が集まる業界です。

多くの職種で理系学生の方が歓迎されるとはいえ、日系大手(資生堂、コーセー、カネボウ、ポーラなど)に入社するには、かなりの倍率を勝ち抜く必要があります。

なお、化粧品業界は製薬業界と比べると、給与が低めの傾向にあります。

食品業界…安定はしているが今後急成長も見込めない

食品業界は、大きな業績悪化こそしていないものの、増税と材料費(小麦など)の高騰の影響から、国内の需要は横ばいまたは微減と言われています。

食は人々にとって欠かすことのできないもの。それだけに大きく後退することはないものの、これから急成長を見込める余地もなく、給料も他業界に比べると低めの傾向にあります。

特に、国内の人口が平成22年をピークに減少に転じて以降、国内需要は頭打ち。加えて消費者のニーズも成熟してきているため、各社では、より美味しくて安全性が高い商品の開発に心血を注いでいます。

加えて、新興国をはじめとする海外へ活路を見いだそうと、国際進出を計画する動きも活発化。採用シーンでは、高品質で価値のある商品作りを支える研究・開発、品質保証の採用ニーズが増えています。

なお、清涼飲料業界は増税の影響で自販機の売上げが減少したことで、業界再編(合併や買収など)の動きも予想されています。食品系の中でも、清涼飲料業界志望する際はくれぐれも注意が必要です。

建設・土木関連業界…当面は工事案件が目白押し。若手人材が渇望される

バブル崩壊とリーマンショックの影響で、一定期間採用を控えていた背景を持つ建設・土木関連業界。業界全体で就業者の高齢化が進み、若手人材の人手不足が顕在化しています。

設計や施工管理を中心に、営業や技術開発に至るまで、幅広い職種で募集が行われています。加えて耐震化ニーズの増加に伴い、構造設計職のニーズも増加。大手建設会社による杭打ちデータ改ざん問題を受けて、品質管理の需要も高まっています。

ただでさえ若手の不足する業界全体では、現在さらに建設需要が増加中。

2012年から続く復興需要に加え、耐震化をはじめとする国土強靱化計画、高度経済成長期に作られ、いま一斉に改修時期を迎えているインフラやビルの改修工事、2020年のオリンピック・パラリンピック開催やリニアモーターカー開通に伴う新しい街づくりの必要性など……業界を賑わす案件が目白押しとなっています。

都心部では、山手線の新駅や東京駅八重洲口・渋谷駅周辺の大規模な再開発プロジェクトも。さらに政府が重要視するインフラ輸出をはじめ海外展開も活発化する見込みです。

こうした動きは2020年以降も当面は続くものと考えられており、各社で新卒採用が活発化しています。

メーカーで活躍する場合は英語力が必要になる場合も

自動車メーカーや産業ロボットメーカー、半導体メーカー、製薬メーカーなど…モノづくり系の企業には外資系企業が多いもの。加えて設計やテストエンジニアなど職種によっては日本人以外と接する機会が多かったり、国際的に活躍する場面も。

そうでなくても、ソフトウェアの解説書やプログラミングの参考サイトを見るときなど…英語ができると、何かと重宝するもの。

このため、多くの企業では英語力が業務上不可欠なものとされています。とはいえ、TOEICのスコアを基準に一定の英語力を応募条件に掲げている企業は一握り。メーカーで活躍している先輩の多くは、入社後に英語力を身につけた人ばかりです。

大切なのは、英語を勉強する意欲があること。英語は大切ですが、いま語学力がないからといって、あきらめる必要はありません。

電気電子系エンジニアは転職を前提にしたキャリアプランの構築がキモ

「手に職」という言葉があるように、かつて技術力のある人材はそれだけで生涯安泰のような印象がありました。ですが、エンジニアが終身雇用だったのは、もはや過去の話かもしれません。

ここ数年、シャープや東芝のみならず、三洋電機やパイオニア、ビクター、日立、NEC、そしてあのソニーですら、事業転換により多くの技術者がリストラを余儀なくされました。

高度経済成長期には考えられなかった大企業が失速し、中には三洋電機のように消滅してしまった会社もあります。

ここ10年の電機業界の変遷ぶりに、中央大学教授の電気電子情報通信工学科教授・竹内健氏は、下記のように語っています。

「(企業が)エンジニアを定年まで雇用し続けることは、これからも保証できないだろう。会社にしがみつくのではなく、自力で外に仕事を見つけられるような人材になって欲しい」「永続する事業、終身雇用を前提にするのではなく、事業転換、転職を前提とすれば、ひとつの分野を深堀りするよりも、多様な経験を積むようなキャリアプランにした方が良い」

※引用:日経テクノロジーonline『エンジニアのキャリアが根本的に変わろうとしている』)より。

実際問題、リストラ時に次の職を見つけやすいのは事務や営業などの文系職であると言われています。

技術職は、その専門性の高さから転職も容易と思われがちですが、1つの企業に長く居ることで、そのメーカー独自の色とやり方に染まってしまい、他では通用しない人材となってしまう危うさも持ち合わせています。

携帯電話がわずか数年のうちにスマートフォンに取って代わられたように、仮にいま安定した事業だったとしても、それが5年後・10年後もあるとは限らないのです。場合によっては、会社ごとなくなってしまう可能性も少なくありません。

電機系のエンジニアとしてキャリアを積むのであれば、常に社外にアンテナを貼り、自分の技術力がニッチ化しすぎていないか、他でも通用するものになっているか、日頃からバランスを取っておくことが大切です。

理系学生に人気の企業

理系出身者に人気のあるのは、実際のところどんな企業なのでしょう?

日本経済新聞の2016年5月12日号では、2017年3月卒業見込みの理系学生の多くは、「やりたい仕事ができそう」「技術力が高そう」という点を企業選びの判断軸としているケースが多いとされています。

このほか、理系男子は「安定している」「業界上位である」など企業の将来性を軸に据えることが比較的多め。理系女子は「社風の良さ」や「企業イメージの良さ」など職場にクリーンさを求める傾向が見られました。

学生の企業選択理由:分離男女別

※日本経済新聞2016年5月12日号より作成

理系学生に人気の企業(総合)

上で紹介した2016年5月12日の日本経済新聞には、2017年3月卒業見込みの全国の学生(理系対象者は10,407人)に対して行われたアンケート結果が、ランキング形式で掲載されています。

全学部学科を合わせた理系学生全体で見ると、1位・味の素、2位・JR東日本、3位・資生堂、4位・トヨタ自動車、5位・サントリーホールディングスとなっています。6位以下は、カゴメ、明治グループ、NTTデータ、山崎製パン、ソニーと続き、食品系メーカーが多くランクインする結果に。

本来、食品メーカーは農学部出身者に多く志望する人が多い業界でしたが、直近の農学部学生数は17,326人と、工学部86,684人や理学部17,828人と比べて決して多くはありません(いずれも文部科学省「学校基本調査」より平成26年3月卒業生)。

10位以下も、日立製作所やキリン、パナソニック、JR東海、アステラス製薬、三菱重工業、三菱電機など…JRを除けばメーカーが続くのが特徴的でした。

文系学生のランキングでは、1位がJTBグループ、2位がANA、3位がエイチ・アイ・エス・4位がJALと旅客事業がトップ4を独占。5位以下は三菱東京UFJ銀行、東京海上火災、三井住友銀行、電通、博報堂、みずほフィナンシャルグループと続きます。

ANAとJALは理系学生のランキングでもそれぞれ24位と36位にランクインしていますが、理系の場合は航空整備士をはじめ技術的な職業が含まれると予想されます。

文系学生が旅客事業、金融・保険、広告系の企業を中心に就職先を検討する人が多いのに対し、やはり理系学生は広くモノづくりという枠で就職先を検討していることがわかります。

理系学生に人気の企業(業種別)

次は、業種別にまとめられた理系の人気企業ランキングです。

同じく日経新聞から一部を引用しつつ、調査の偏りをなくすため、キャリタス就職が7613名の学生に対して行った業種別のアンケート調査の結果とも照らし合わせながら見てみましょう。

※調査結果ごとに業種のくくりが異なる場合のみ、業種区分を明記しています。

自動車・輸送機器…トヨタグループが人気

【日経新聞】
1位・トヨタ、2位・デンソー、3位・マツダ、4位・本田技研、5位・アイシン・エイ・ダブリュ。

【キャリタス就職】
1位・トヨタ、2位・デンソー、3位・本田技研、4位・日産、5位豊田自動織機自動車輸送機器

二つの調査結果によってマツダとホンダの順位が逆転するなど相違点は見られたものの、二輪メーカーよりも自動車メーカー、とりわけトヨタ自動車に人気が集まっている点は共通しています。

トヨタは本体が1位となっただけでなく、どちらの調査でもデンソーや豊田自動織機、アイシン・エイ・ダブリュ、アイシン精機、トヨタ紡織などグループ企業が10位以内に続々とランクインする結果に。

自動車・輸送用機器業界を志望する学生は「やりたい仕事ができそう」よりも「安定している」を重視して企業を選ぶ傾向があることも伝えられており、企業の安定を就職活動の軸とした場合、親会社だけでなくその関連会社にも人気が及ぶ傾向があると言えそうです。

電子・電気機器・精密・医療機器…三菱グループ・ソニー・日立グループが人気

【日経新聞】
電気電子機器…1位・ソニー、2位・パナソニック、3位・日立製作所、4位・三菱電機、5位オムロン
精密・医療機器…1位・オリンパス、2位・コニカミノルタ、3位・島津製作所、4位・リコー、5位ニコン

【キャリタス就職】
機械・電気・電子・精密機器・医療用機器…1位・日立製作所、2位・三菱電機、3位パナソニック、4位ソニー、5位富士通電子・電気機器・精密・医療機器

キャリタス就職では6位に三菱重工業がランクイン。三菱グループとソニー、日立グループが特に人気を博していると言えます。

食品…ビールメーカーが人気の傾向

【日経新聞】
食品・農林・水産…1位・サントリーホールディングス、2位・味の素、3位・キリン、4位・明治グループ、5位・アサヒビール

【キャリタス就職】
1位・サントリーグループ、2位・キリン、3位・明治グループ、4位・味の素、5位・アサヒビール食品

両調査でベスト5がほぼ変わらない結果に。興味深いのは、食品メーカーとしながらも、上位をビールメーカーが占めていること。日清食品やハウス食品といった、食品メインのメーカーは人気下位の傾向に。

かつては人気と言われた製菓メーカーも、5位以内に入ったのは明治のみ。製菓業界は少子化の影響で国内の市場は縮小傾向にあり、その人気にも陰りが見え始めているのかもしれません。

建設・住宅・インテリア…セキスイハイム・積水ハウス・住友林業が人気

【日経新聞】
1位・セキスイハイムグループ、2位・積水ハウス、3位・一条工務店、4位・住友林業、5位・大和ハウス工業

【キャリタス就職】※不動産含む
1位・三菱地所、2位・三井不動産、3位・セキスイハイムグループ、4位・積水ハウス、5位・住友林業建設・住宅・インテリア

キャリタス就職のランキングは不動産を含むため、デベロッパーである三菱地所と三井不動産を除外して考えると、セキスイハイムと積水ハウス、住友林業が人気。これら3社に共通して言えるのは、マンションや大型施設ではなく戸建てを中心とした住宅を作るメーカーだということ。

建設系といえばかつては『地図に残る仕事』というキャッチコピーのように、作るモノの大きさが人気のバロメーターでしたが、近年ではより身近な個人向けの家づくりも、人気を博しています。

製薬・化粧品・化学・素材…資生堂やコーセーなど化粧品メーカーが人気

【日経新聞】
繊維・アパレル・化学・薬品・化粧品…1位・資生堂、2位・コーセー、3位・アステラス製薬、4位・花王、5位・東レ

【キャリタス就職】
医薬品・化粧品…1位・資生堂、2位・アステラス製薬、3位・コーセー、4位・武田薬品工業、5位・第一三共。製薬・化粧品・化学・素材

いずれの調査でも、化粧品メーカーである資生堂が、女性の働きやすさから、製薬メーカーのアステラスと武田よりも支持されている点が印象的です。なお、キャリタスの「化学・素材」では、1位・花王、2位・富士フイルム、3位・東レと続いています。

※引用元:日本経済新聞(2016年5月12日)キャリタス就職2017『業種別ランキング』

知名度よりも仕事の中身で選ぼう

どの業界でも共通して、業界トップ企業や知名度の高い安定企業ほど人気の傾向が見られました。

実際、マイナビが行った大学生就職意識調査では、2017年卒の学生の大手志向は48.4%で前年よりも5.5pt増加。ほぼ半数近い学生が企業の知名度や規模を企業選びの軸にしていることがわかりました。

大手企業や有名企業なら倒産などのリスクがないだろう、と思いがちですが、「大手=安泰」「知名度=安定度」といった安易な決めつけは、あまり懸命ではありません。

それは、昨今の東芝やシャープ、三菱といった一連の報道を見れば明白です。安定度を求めて企業を選ぶ際は、社格だけで判断せず、必ず現在の経営状況まで見た上で判断するようにしましょう。

大手企業・有名企業の子会社を志望する場合は、さらに注意が必要です。子会社だからといって親会社と文化や社風が同じとは限りませんし、経営が安定しているとも限りません。

また、一見順調に見えても、親会社が資金調達のために売却してしまうなど…系列の整理に合う可能性は否めません。

大切なのは、ブランドや知名度ではなく、仕事の中身と企業自体の魅力で選ぶこと。その会社で働くことが自分にとっての理想と合致しているか…社風・風土、事業戦略などをしっかり見定めることが大切です。

いま、理系人材は世界中で渇望されている

世界39カ国で人材サービスを展開するオランダ系企業・ランスタッドが34カ国の労働者を対象にした調査によると、「自分の職場で理系人材のニーズが高まっている」と答えた層は、日本で40.2%、グローバルで実に45.9%に上ることがわかりました。

同調査では日本国内の58%、グローバルの71.1%が「理系のキャリアを目指す学生が増えるべき」とも回答しており、国内外を問わず、理系人材のニーズが高まっている現状が浮き彫りとなりました。

※参照:【ランスタッド・ワークモニター】理系人材ニーズの高まり、新興国の他、米国でも半数が実感!

学問内容が仕事に直結しやすい工学部系の学生のみならず、理系全体で言えるのは、数字に強い・論理性が高いこと。ビジネスに欠かせない素養が既に備わっている点が評価されています。

まとめ

いかがでしたか?

このページでは、理系出身者が職業を選択する上で参考になる情報を、業界や企業、年収といった側面からお届けしました。

就活では安定を求めて大手・有名企業が選ばれがちですが、景気が安定しない中、知名度があっても将来的にどうなるかわからない…というのが現状です。

そんな中、理系出身者には、技術力という武器があります。万が一のときもすぐ他から声をかけてもらえるような、市場価値の高い人間になることが、これから先求められるでしょう。

従って、会社に守られることを前提に安定企業を選ぶのも手ですが、いざというときに備えて将来性のある技術や経験を身につけられる仕事や会社を選ぶこと。それも職業選択の仕方の1つと言えるでしょう。

学部学科別にどんな業界のどんな職種に就くことができるかは、下記のページにまとめています。ぜひ、合わせてご覧下さい。