書く内容は「普通」でいい 人事が自己PRから知りたい本当のこと

初めて転職活動を行う20代前半の若手の中には、いざ応募書類の自己PRを書こうとするときに「自分には取り立ててアピールできるようなことがない」と悩んでしまう人も多いでしょう。

既卒や第二新卒の転職支援を行う株式会社UZUZの専務・川畑翔太郎さんに、自己の強みに悩む人が陥りがちな状況や、人事が自己PRから見ているポイントについて、お話をお聞きしました。

自己PRは「普通でいい」ってどういうこと?

柴田

20代前半では社会人経験の浅さから、応募書類の「自己PR」という文字をいざ目の前にすると、自分がアピールできるポイントって何だろう、どういったことを書けばいいのだろう、と悩んでしまう人は多いと思います。

僕に相談をしてくる人の中にも、自己PRと聞くと「すごいこと」を書かないといけないと思いこんでしまっている人が多い印象があります。

ただ、書く内容は「普通」でいいんです

川畑

柴田

「普通でいい」とは、どういうことですか!?

月に1000万円売りましたとか、社内でMVPを取りましたということでなく、取引先や社内でのやり取りといった「成果だけではない日常の業務プロセスの話」でOKということです。

企業の人事が応募書類から知りたいことは「あなたはどんな人で、どこで、何をしてきたか」。なので自己PRで伝えることは輝かしい経験である必要はなく、日々の業務の中でどのように仕事に向き合ってきたのかや、どのような工夫を行い取り組んだのか、でいいんです。

川畑

柴田

なるほど。

もちろん20代後半から30代の人であれば、売り上げなどの目に見える結果がかなり重要になりますが、経験が浅い20代前半の若手の場合は、まだ十分な経験を積めていないケースが多いので、その分プロセスを評価してもらえる可能性が高い

語れるような経験が少ないからこそ、自己PRでは自分の仕事への向き合い方を掴んでもらえそうなエピソードを伝えるといいと思います。

川畑

柴田

応募者の年齢によって、企業が見ているポイントは違うということですね!

はい。実際のところ企業は経験が浅い20代前半くらいの若手人材には、そこまで大きな結果などを求めてないと思います。

輝かしい実績などがある人の方が珍しいくらいですよ。だから、気持ちを楽にしてもらえればいいと思います。

川畑

柴田

実績が大事だと思っていたので、少し安心しました。

もちろん実績はあるに越したことはないですが、逆にそれしか書かれていないものは自己PRとしてNGです。

川畑

柴田

え! 実績を出しているのに、ですか?

はい。というのも、実績だけを書いても、その結果はあなたの力で達成できたことなのか、再現性がちゃんとあるのか、企業は判断できないためです。

例えば、営業職の場合、商材やサービス自体が魅力的なものであれば、営業の力が弱くても勝手に売れるケースもありますよね。

であれば同じ1000万円を売った人でも商品の魅力で売れたのか、その人の工夫や努力で売れたのかによって評価は変わります。つまり、企業は「金額そのもの」よりも「その売り上げをどのようにして達成したのか」というプロセスを評価する、ということです。

川畑

柴田

社内で1位の成績になったからと言って、結果だけを伝えても、それだけで評価されるわけではないということですね。

そうです。「1位を取ったのはすごい!はい、採用!」ということはないですね。

ただ1位になるにはそれ相応の工夫を行い、結果を出したはずなので、その詳細をエピソードとして伝えるようにしてください

川畑

【自己PRを考える時のポイント1】・自己PR自体がすごい実績である必要はない/・日々の業務プロセスから、仕事への向き合い方や工夫した点をできる限り具体的に伝える

どんなに小さなエピソードでも切り捨てちゃダメ!

柴田

自己PRを考える際は、なにから始めればいいですか?

ネットの記事などには「自己PRを書くときは、まずは自分の強みを一言で表そう」と書かれていることが多いと思いますが…

そこから考えることはやめましょう。

というのも、たとえば先に「私の強みは○○力だ」と決めてしまって、後からその「○○力」のアピールとなるエピソードを日々の業務の中から探そうとしても見つからない、見つけたとしても内容が薄くなりがちで、残念な自己PRになってしまうケースが多いからです。

川畑

柴田

そうなんですね。では、どうすれば?

まず始めに、日々の業務を振り返り、自分が仕事で結果を出すために、どのような工夫や改善、試行錯誤をしたのかを思いつく限り書き出してください。

課題→仮説→実行→結果」の流れに沿って、目の前の課題や現状に対して、自分がどんな分析をして、どんな仮説を立て、どのように行動してどんな結果が生まれたのか、といった形で書いてみましょう。

さらにその結果を再度振り返って、どのような改善行動を試みたのか一連の流れ、つまり「課題→仮説→実行→結果→改善」というプロセスまで具体的に説明できれば、なお良い自己PRになります。

川畑

柴田

ストーリー立てて書くようなイメージですね!

そうですね。まずは目標としてエピソードを10個、書いてみてください。

川畑

柴田

10個! そんなに書けるかな…

「課題→考え方→実行→結果」はあくまで基本の流れなので、どれかひとつが抜けていても大丈夫。もし「実行」や「結果」が上手くいかなかった場合でも、それに対してどのようなリカバリーをしたのかを書ければ問題ないです。

あとは、「課題に対してこんな仮説を考えて実行した」といったことではなく「こういったことを意識しました」くらいのことでもOKですよ。

川畑

柴田

それなら書けそうです。

エピソードを書き出す際に大切なのが、どんなに小さなことでも自分で過小評価して切り捨てないこと。

「これは改めて言うほどのことではないかも」と思うことでも書き出してください。すごいエピソードばかり出そうとすると、途端に何も出てこなくなるのでやめましょう。

川畑

柴田

わかりました。

次に、洗い出した10個のエピソードを「業務効率を上げるためにしたこと」「周りとの協力体制を構築するためにしたこと」など、見出しをつけてまとめられそうなもの別に分類してください

川畑

柴田

自己PRになりそうなエピソードをすべて書き出してから、似ている話題ごとにカテゴリ分けするようなイメージでしょうか?

そうです。そして最後に、カテゴリ分けしたエピソードごとにキャッチコピーとなる一言を見出しとして付ければ完成です!

実際の応募書類の自己PRには「業務効率化に向けた取り組み」「周りとの協力体制を構築するための施策」など、違うジャンルのエピソードを2〜3つ書くことをおすすめします。

川畑

柴田

そんなにいくつも書いてしまっていいものなんですか?

むしろ1つに絞らない方がいいですよ。

企業が求める力をアピールするエピソードを、本当は書けたのに書かなかったせいで「この人は採用基準となっている○○力を持っていないんだな」と思われてしまうともったいないので。

川畑

柴田

たしかにそうですね。

でも逆に、エピソードとして語れそうな経験が1つもない…という場合には?

この時点で語れそうなエピソードが2つ3つ出てこないということは、日々の仕事において本当に何も工夫せず、自分の仕事の質を上げることを考えずに過ごしてしまっている可能性があります。

転職を支援する立場としては、その状態で転職することはおすすめできないので、まずは自分なりに日々の業務の質を上げるための工夫を考え、実行してみるといいのではないでしょうか。

川畑

【自己PRを考える時のポイント2】・「課題→仮説→実行→結果」の流れに沿って思い出す/・まずは10個を目標に書き出してみる/・応募書類に記載する自己PRには、工夫したことを2つ3つ書いてOK

未経験職種への転職に効く自己PRとは?

柴田

異業種や未経験の職種に転職する場合、どのように自己PRすればいいでしょうか?

未経験転職なら、応募企業でも生かせそうな経験をアピールするようにしましょう。20代前半の転職であっても経験を活かした転職なのか、未経験職種への転職なのかで人事の目は変わるからです。

川畑

柴田

くわしく教えてください。

たとえば、あなたがサッカー選手で、応募先の企業が自分がプレーしたいチーム、面接官が監督だとします。

同じ業界内で転職する場合や比較的似ている職種で転職する場合、すなわちサッカーチームからサッカーチームに行くのであれば、先ほどお話したようにどんな工夫をしたのかといった、プロセスに関するアピールも大事ではありますが、当然、サッカーのスキルだったり、どんな成績を残したのかという実績を伝える必要があります。

川畑

柴田

そうですね。

逆に、未経験転職の場合、先ほどの例でいうならサッカーチームから野球チームに行くのであれば、サッカーのどんな試合で何点シュートを入れたかを伝えても、野球で同じような結果を出せるのか、つまり再現性があるかどうか監督は判断できません。

その代わりに「チーム内の人間関係を円滑にするためにこんなことをした」や「筋力を強化するために食事や筋トレの方法論を考え、改善し続けた」など、業界や職種が変わっても応用できる工夫や経験、考え方を伝えると、監督はあなたが自分のチームでどのように活躍できるかイメージしやすくなります。

川畑

柴田

たしかに。自分が応募したい求人にあわせて、アピールすべき部分を変えたほうがよさそうですね。

はい。経験職種への転職と未経験職種への転職の両方に応募する場合には、それぞれにあった履歴書・職務経歴書を作りましょう。

もし応募する職種がどちらかだけであれば、基本的には企業にあわせて別々の自己PRを用意する必要はないので、応募書類は1つ用意すれば問題ありません。

川畑

【自己PRを考える時のポイント3】・未経験職種に転職する場合、これまでの成績や結果だけ伝えても、再現性があるか面接官は判断できない/・転職先でも応用できる経験や考え方を伝えれば、活躍する姿をイメージしてもらえる

評価される自己PRになっているか確認するには?

柴田

特に未経験職種への転職の場合、自分の自己PRが本当に企業に評価されるものになっているのか自信が持てない人もいるかと思います。

アピールすべきポイントを外さないためには、どうしたらいいですか?

まずは応募企業がどのようなビジネスを行っているのか、整理しましょう。

これはビジネスモデルを簡単に整理するフォーマットですが、すべてのビジネスモデルは「だれに、なにを、どのように売るか」の3つの要素によって成り立っています。

まずは、応募先企業のビジネスモデルはどうなのか、当てはめて整理してみてください。

川畑

【応募企業のビジネスの在り方は?】だれに✕なにを✕どのように売るか

加えて、応募するポジションの職種が、ビジネスのどの部分の役割を担っているのかを理解することが大事です。「売る人」なのか、「売った後サポートする人」なのか、「そもそも売るものを作る人」なのか。

その上で、その職種に求められるスキルや知識を書き出し、いままで行ってきた日々の業務から、その職種でも役立つような経験や考え方を探すようにすると、アピールすべきことが見えてくるはずです。

たとえば、もともと売る人である「セールス」を経験した人が、顧客をサポートする「カスタマーサクセス」に応募したい場合は、顧客との商談にまつわるエピソードよりも、商談後の手続きややり取りで顧客の成果を最大化させるために行った工夫を伝えたほうが、企業は採用後に活躍するイメージを持ちやすくなります。

川畑

柴田

たしかに…

いまの話を下のフォーマットにまとめたので、自分に置き換えて埋めてみてください。

川畑

応募ポジション/ビジネスで担っている役割/職種に求められているスキルや知識/役立ちそうな過去の経験や考え方

柴田

一度書き出してみると整理できそうですね。

フォーマットを埋めているときに「自分の経験は役立ちそうにないかも…」と思った企業に応募してもムダですか?

そんなことはないです。企業の採用状況によっては、少しでも求める人物像にかすっていたら採用されることもあります。

1人採用したいところに100人の応募があれば、企業は条件を満たす1人を選べばいいですが、仮に10人採用したいのに5人しか応募が集まらなかったら、どうにか近い経験のある人や活躍してくれそうな人をひとりでも多く採用したいはずなので。

川畑

柴田

迷っているくらいなら応募したほうがいい、ということですね。

はい。ただ、10社も20社も出して書類が通らないということであれば、企業が求める人物像と、自身の経験やスキルになにかしらのミスマッチが生じているので、応募先の選定をやり直した方がいいですね。

実際に書類が通りづらいという人は、企業が求める経験やスキルを持っていない、もしくは採用できるレベルに達していないケースがほとんどです。

たとえば、企業側はリーダー経験やその素質がありそうな人を求めているのに、その経歴やポテンシャルが一切感じられない人が応募しても書類選考が通ることはないので、自分の能力が企業の求める人材タイプ、人材レベルに合っているのか確認したほうがいいでしょう。

川畑

【自己PRを考える時のポイント4】・未経験職種への転職であれば、応募企業のビジネスモデルと応募職種への理解を深める/・書類選考が通りづらい場合、企業の求める人材タイプや人材レベルに合致していない可能性がある

「自己PR」をしっかり読んでもらうために…

ここまで話しておいてなんですが、企業は書類選考の段階で、そこまで自己PRを念入りに読み込んでいないところも多いかな…と。

川畑

柴田

そんな…全部ひっくり返された気持ちです…

企業が応募書類を選考する方法には大きく「ポジティブリスト型」と「ネガティブリスト型」の2つがあります。

前者は、応募書類の情報からわかる範囲で、企業が求める採用条件をいくつか満たしていると判断できたら書類選考は合格にして、面接に進めるパターン。後者は、採用NG条件に1つでも当てはまったら書類選考不採用にするパターンです。

どちらであっても応募書類の段階では、今までの経歴や経験などが一定の条件とされるケースが多いので、経歴や経験などの条件がマッチしていないのに自己PRの出来栄えだけで「書類選考合格!」とは、なかなかならないかなと思います。

柴田

となると、履歴書・職務経歴書では自己PRだけに注力するのではなく、経歴や経験を具体的に整理して、しっかり伝えられるようにするのが大事ですね!

はい。社会人経験が浅いからこそ、応募書類では今までの業務経験を余すことなく書いてくださいね。

川畑

柴田

そうします!

あとは「目は口ほどにものをいう」ではないですが、なんだかんだ証明写真は大事ですよ。なんたって、履歴書の右上にあって最初に目に入りますからね。

川畑

柴田

証明写真ですか…!

書類に書かれていることはあくまで経歴や経験に関連した情報なので、人柄についてはそこまでわからないです。なので、人柄や雰囲気は結局、証明写真の人相から判断していることが多い。

応募書類の内容を改善するだけでなく、顔が暗く見えたり、身だしなみがだらしないと思われたりしない証明写真を用意することが実は大事です。

川畑

柴田

わかりました。書類選考は転職活動の第一の関門なので、少しでもいい印象を残せるように、隅々まで気を配ったほうがよさそうですね。

本日はありがとうございました!

(文:転職Hacks編集部)

この記事の話を聞いた人

株式会社UZUZ専務取締役

川畑翔太郎

1986年生まれ、鹿児島出身。高校卒業後、九州大学にて機械航空工学を専攻。大学卒業後、住宅設備メーカーLIXILに入社。高校の同級生の誘いと自身のキャリアチェンジのため、「UZUZ」立ち上げに参画。第二新卒・既卒・フリーターなどの若者の就業支援実績は累計2,000名を超える。現在はITリスキリングサービス「ウズウズカレッジ」の事業責任者とメタバースサービス運営を行う。

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