未払い残業代の請求方法【完全ガイド】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
お給料

毎日残業三昧の日々だけど、それに見合った給与が支給されていない気がするな、という人はいませんか? もしかしたら、企業から支払われるべき残業代が、きちんと支給されていないかもしれません。

未払い残業代は、退職するタイミングで請求を考える人が多いようです。在職中に請求すると会社とトラブルになり、結局退職することに……というケースもあるからです。

ここでは、残業代が発生する仕組みや、具体的な未払い残業代の請求方法、残業した証拠の残し方などを紹介していきます。

【目次】
1.残業代を請求できるか確認しよう
まずは残業代が発生する条件を確認
残業代の基準設定は「労働基準法」の効力が最強
請求の時効は2年! 早めに動こう
時効は内容証明送付で半年延長、裁判を起こせばリセットされる
企業の不法行為があれば時効が3年に延びることも
2.これって請求可能? ケース別請求可否まとめ
(1)裁量労働制/みなし労働時間制
(2)固定残業制
(3)年俸制
(4)管理職/名ばかり管理職
(5)派遣社員
(6)退職後
3.残業代を請求する手順と注意点
請求前の準備は「残業した証拠」の収集から
労働基準監督署に相談し、正確な残業代を把握
残業代請求の流れは 「話し合い」→「内容証明」→「労働審判」→「労働訴訟」
(1)まずは企業と話し合いで交渉
(2)企業に内容証明を提出
(3)労働審判手続きを行う
(4)労働訴訟を起こす
確実に請求するなら、弁護士など専門家に相談するのがベスト
士業別・できること&できないこと
弁護士
司法書士
社会保険労務士
行政書士
4.残業代を請求するための証拠の残し方
タイムカードはコピーでも可
出勤簿や業務日報に出退勤時刻を記録する
パソコンのログイン&ログアウト記録をとる
メールやメモも重要な証拠に
5.まとめ

1.残業代を請求できるか確認しよう

そもそも残業が発生していなければ、残業代を請求することはできません。
まずは残業代発生の仕組みを定めている「労働基準法」に則って「残業」の定義を確認し、自分が働いている時間のどこからが「残業」なのかを確かめてみましょう。

まずは残業代が発生する条件を確認

疲れた様子のビジネスマン「定時以降に働いた時間はすべて残業で、残業代(割増賃金)が出る」と考えている人もいるかもしれませんが、実際はもう少し複雑です。残業にも種類があり、残業代が出るかどうかにも違いがあるからです。

法律では、労働時間について以下のように定められています。

【労働基準法第32条】

1.使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

2.使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

この規定により、残業は「法定時間外残業」と「法定時間内残業」の2種類に分かれます。残業代にも違いがあります。

法定時間外残業
「1日に8時間、1週間に40時間」を超えた残業。企業は「割増賃金」(25%)の支払い義務あり。

法定時間内残業
「1日に8時間、1週間に40時間」の範囲内ではあるものの、企業が定めた所定労働時間を超えて行われた残業。つまり、所定労働時間が1日8時間以上、週40時間以上の会社では発生しない。
法律上、割増賃金の支払い義務はない。企業ごとの規則で残業代が決まる。

残業代の計算方法はそれぞれ異なりますが、どちらの残業代が支払われていなかった場合も、企業に請求することができます。

残業代の基準設定は「労働基準法」の効力が最強

残業にまつわるルールでは、国が定めた法律である「労働基準法」が第一に守られなくてはなりません。
つまり、企業が勝手に「うちはいくら残業しても残業代はでないから」とルールを定めていても、そのルールが労働基準法に違反していれば残業代は請求できます

企業は、「労働条件通知書」や「就業規則」などで労働基準法に違反したルールを独自に定め、社員を違法な条件で労動させていることがあります。
労働条件通知書や就業規則で定めたルールは、労働基準法の規定に満たなければ無効です。それぞれのルールの効力の強さは以下のとおりです。


労働ルール効力の強さ

請求の時効は2年! 早めに動こう

未払い残業代の請求には「2年」という時効があります。
この「2年」は、「残業代が支払われるはずだった給料日から2年」という意味です。
例えば、2016年11月24日に残業代請求のアクションを行う場合、2014年11月25日に支給されるべきであった残業代まで請求できるというわけです。それより前の分については、時効のため請求権が消滅しています。

<未払い残業代 請求権時効早見表(2016年11月24日に請求する場合)>時効早見表

せっかく残業代を請求するなら、できるだけ多くもらいたいもの。退職後に請求するケースではとくに、できるだけ早めに動くのがベターです。
具体的な請求方法について、詳しくは3.残業代を請求する手順と注意点で説明します。

時効は内容証明送付で半年延長、裁判を起こせばリセットされる

残業代請求の2年の時効は延長、または中断させることができます。
2年に当たる日の前日までに、企業に「残業代を請求する」アクションを起こせば、その日から6か月間は時効が中断します。
代表的なアクションは、「内容証明」を送ること。例えば、2016年11月24日(時効を迎える2016年11月25日の前日)中までに、内容証明を郵送し、請求(催告)を相手方に到達させれば、到達後6ヵ月間は時効が中断(停止)します。

また、労働審判や訴訟などの裁判手続を申し立てた際には、措置を取った日から時効が中断され、措置日から2年のカウントが再スタートされます。

企業の不法行為があれば時効が3年に延びることも

稀なケースですが、残業代を未払いにした経緯に企業側の「不法行為」が考えられえると、残業代請求の時効が2年から3年に延びるケースがあります。不法行為があると、残業代(賃金)として請求するのではなく、「損害賠償」として請求することになり、時効が3年に延長されます。

過去の裁判例では、「杉本商事事件」が、残業代の請求権が3年間と認められた例として有名です。判例の詳細を要約すると、ここで言う不法行為とは以下のとおり。

・会社が残業の発生を認識していながら残業代を支払っていない
・残業時間を含めた勤務時間が管理されていない

未払い残業代の問題で同様の不法行為が絡むケースは多いでしょう。ただし、残念ながら実際、残業代請求で3年間と認められた例は少ないのが現状です。

2. これって請求可能? ケース別請求可否まとめ

会社員自分が正しく残業代を支払われていないと感じている人の中には、裁量労働制や年俸制で働いていて、最初から残業代請求を諦めている人もいるかもしれません。
しかし、実は残業代が支払われるべきケースも少なくありません。それぞれのケースで未払い残業代を請求できるか否かについてまとめました。

具体的な残業代の計算方法については、「正しい残業代の計算方法【すぐわかる図解つき】」を参照ください。

(1)みなし労働時間制/裁量労働制

みなし労働時間を越えた分は請求できる
みなし労働時間制では、労働者に働く時間をある程度コントロールする権限を与え、実際働いた時間に関係なく、事前に決めた時間だけ働いたと「みなす」勤務体系です。外勤営業やエンジニア、デザイナーなどの職種で多く使われています。
みなし労働時間を1日8時間とした場合には、実際の労働時間が10時間であっても、5時間であっても、8時間分の給与が支給されます。

一方、決められたみなし労働時間を超えた分は、本来であれば残業代を請求できます。「残業はすべてみなし労動時間に含まれているから」と休日出勤や休憩時間分の残業代を諦める必要はありません。

また、みなし労働時間制を正しく運用できていない企業も多いのが現状です。下記のルールが守られずにみなし労働時間が設定されている場合は、みなし労働時間制そのものが無効となり、法定時間外残業(1日8時間、週40時間を越えた分の残業代)を請求できる可能性があります。

【みなし労働時間を、法定労働時間を越えて設定する場合のルール】
・36協定(※)を労使間で締結している
・企業がそれを労働基準監督署に提出している
・時給が最低賃金(東京都は932円)を下回っていない
(※)36協定…1日8時間、週40時間より多く働く場合に労使で締結する協定。

弁護士など専門家に相談することで、自社のみなし労働時間制の無効が明らかになれば、さらに多く残業代を請求できるかもしれません。

(2)固定残業代

規定時間をオーバーする残業代は請求できる
固定残業代は、「基本給○○万円、うち固定残業代として△時間分の残業代○万円を含む」といった給与形態のこと。よく、みなし労働時間制と混同されがちですが、本来は別の制度です。
給料に固定残業代が含まれている場合でも、あらかじめ決められた時間以上に働いた場合はその分の残業代を請求できます

例えば、就業規則で「1ヶ月あたり20時間分の残業をしたものとして、固定残業代3万円を支給する」と定められている場合、1ヶ月の残業時間が20時間に満たなくても、固定残業代3万円を支給されます。
一方、残業時間が20時間を超えた場合は、固定残業代にプラスして20時間を超えて労働した時間分についても残業代を受け取ることができます

また、固定残業代自体が無効になるケースもあります。
「基本給○○万円、固定残業代○万円を含む」など、以下のポイントが明確に定められていない就業規則は無効となります。

【企業が固定残業代を定める際のルール】
・定額残業代部分が、それ以外の賃金と明確に区分されている
・何時間分の残業代が含まれているのかが明確に定められている

(3)年俸制

契約の残業時間を超えた分の残業代は請求できる
年俸制では、あらかじめ年俸に残業代が含まれた契約になっていることが多いです。(1)の裁量労働制(みなし労働時間制)に近い制度と言えます。
例えば契約内容には、「年俸には1ヶ月◯◯時間、◯万円分の残業代を含める」というように書かれています。

この場合、○○時間以内の残業代は既に年俸に入っていることになりますが、○○時間以上の残業が発生すれば、追加の残業代を請求することができます。年俸制の会社では残業代のことを考えずにバリバリ働く人も多いかもしれませんが、実は請求できるということを知っておきましょう。

(4)管理職/名ばかり管理職

実態が伴わない管理職なら残業代は請求可能
労働基準法では、「管理監督者(管理職)には割増賃金を支払わなくて良い」と定められていますが、実態が伴わない「名ばかり管理職」の場合は残業代の請求が可能です。

ここでいう管理職とは、「経営者と同等の立場にいて、出退勤時間の決まりがなく、一般社員との給与に差がある」といったポジションに位置する人のこと。
一方、「名ばかり管理職」は、経営者と同等のポジションにいるわけでもなく、出退勤時間の制限もあり、年収も数百万円程度で一般社員と変わりません。しかし、「管理職」という肩書がつくために残業代は支払われません。

名ばかり管理職であると認められるためには、上記のような働き方を強いられている証拠を示す必要があります。
他の社員と同様に出退勤時間の制限がある、役職手当が労働時間に見合っていない(普通に残業代を支給されたほうが手取りが高い)、といった事実を証明できれば、残業代を取り戻せる可能性はあるでしょう。

(5)派遣社員

派遣社員でも残業代が出るので、未払いの場合は請求できる
派遣社員も労働基準法の適用対象ですので、未払い残業代は請求できます

万が一、派遣先の会社がサービス残業を強要してきた場合は、派遣元の担当者に相談しましょう。
ただし、休日出勤の扱いなどは、派遣会社によって時給や割増率の規定が異なる場合がありますので、登録している派遣会社の基準について、派遣元に確認を取るとよいでしょう。

(6)退職後

2年の時効以内であれば請求可能
会社を退職した後でも残業代請求することができます。ただし、残業代請求の時効である給料日から2年以上を遡って請求することはできないので注意しましょう。

なお、退職した場合、労働者は退職した日の翌日から原則として年14.6パーセントの遅延損害金を事業主に請求することができます(賃金の支払の確保等に関する法律第6条1項より)。

参考:厚生労働省 東京労働局 未払い賃金とは

3.残業代を請求する手順と注意点

ここまでで、自分の未払いの残業代を請求できるかは確認できたでしょうか?
次は、実際に企業から未払い残業代を支払ってもらうためのプロセスや注意点について、まとめていきたいと思います。

請求前の準備は「残業した証拠」の収集から

未払い残業代を請求するためにもっとも重要なのは、残業をした証拠をできるだけ集めることです

タイムカードなどの他、タイムカードがない企業でも、業務日報やパソコンのログイン・ログアウト記録など残業をした証拠を残す手段はたくさんあります。
※詳しく→4.残業代を請求するための証拠の残し方

また、残業代請求の手続きは自分でもできますが、専門家を頼る場合はこの時点から相談しておくとスムーズです。

労働基準監督署に相談し、正確な残業代を把握

未払い残業代があるという証拠が揃ったら、それらを持参して労働基準監督署へ相談に行ってみましょう。

厚生労働省 全国労働基準監督署の所在案内

個人で労働基準監督署に相談に行く場合は、特に費用はかかりません。
また、残業代の計算方法などに関する知識がなくても、労働基準監督官は労働基準法の専門家ですので、給与明細やタイムカード等の資料を基に、正確な残業代を計算してくれます

残業代請求の流れは「話し合い」→「内容証明」→「労働審判」→「労働訴訟」

(1)まずは企業と話し合いで交渉

請求できる残業代の金額が出たら、それらの証拠(給与明細、タイムカード、労働基準監督署で計算してもらった残業代など)を提示し、残業代を支払ってもらうよう、会社側と話し合いましょう

コンプライアンスを重視している会社であれば、おそらくこの話し合いの段階で、未払いの残業代を支払ってくれるはずです。
しかし、いわゆる「ブラック企業」的な体質の企業の場合、話し合いすらまともに応じてくれないこともあるでしょう。

その場合は、次の(2)の内容証明郵便でアプローチしてみましょう。

(2)企業に内容証明を提出

企業が任意の交渉に応じてくれないようであれば、「内容証明郵便」を送ります
中小企業など、あまり法律に詳しくない企業の場合には、内容証明郵便が公的な書面の体裁を備えていることから、焦って残業代を支払ってくれる可能性があります。

ただし、内容証明郵便をもらい慣れてしまっている会社などは、内容証明に法的拘束力がないことを知っているため、対応してもらえない可能性もあります。その場合でも、内容証明郵便を送ることで「残業代の時効(2年)の進行を止める」ことはできます。

また、今後、(3)の「労働審判」や、(4)の「労働訴訟」といった段階へコマを進める際に、「以前に内容証明を送ったが、企業からのレスポンスがなかった」という事実が有効に働く可能性も高まります。

内容証明郵便とは
内容証明とは、「いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度」です。

参照:郵便局 内容証明とは

未払い残業代請求時の内容証明には、以下の内容を明記します。
(1)タイトル(「請求書」など)・日付
(2)会社との契約関係(入社日、所属課、氏名など)
(3)労務の提供、残業代の未払い(○時間残業したのに、△円の残業代が未払いだということ)
(4)支払期限(「本書面到達後○日以内」という書き方が一般的)
(5)請求金額(未払い残業代に加えて、遅延損害金なども記載)
(6)支払方法(金融機関の口座番号など)
(7)支払われなかった場合どうするか(「労働基準監督署への申告を含むしかるべき法的措置を講ずる予定である」など)
(8)通知人・被通知人の住所・企業名(被通知人のみ)・氏名

なお、時間外労働の集計に使った表や、タイムカードなどの証拠書類は、内容証明郵便に同封する必要はありません。というのも、内容証明には本体の文書以外に何かを同封することができないので、どうしても送りたい場合は、別送しましょう。

内容証明は、自分で作成することも可能ですが、社会保険労務士や行政書士に頼むこともできます。

(3)労働審判手続きを行う

次の手段は「労働審判」です。
労働審判とは、解雇や給料の不払いなど、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルを解決するための手続きです。基本的には話し合いでの解決を目指し、話がまとまらなければ労働審判によって解決案の提示が行われます。

手続きは裁判所で行われます。期日は3回以内とされており、労働訴訟に比べて早期解決が期待できるというメリットがある反面、付加金(未払い残業代を請求する場合に請求額が2倍になる制度)の支払い命令が出ないというデメリットもあります(労働訴訟なら可能)。

また、労働審判は、裁判所の判断であるため、確定すれば判決と同一の効力があり、差し押さえをする(強制的に預金など企業の財産を没収し、そこから残業代を支払わせる)ことも可能です。

しかし、審判の結果にどちらかが納得いかなかった場合に、審判に対する当事者から異議の申立てがあれば、労働審判はその効力を失い、最終手段となる「労働訴訟」に移行します。

(4)労働訴訟を起こす

労働審判をしても解決できなかった場合には、裁判所に民事訴訟を提起して残業代を回収することになります。

訴訟は、(1)~(3)の手続きを踏んでも解決しなかった場合の「最終手段」。訴訟で決着がつけば、法的な最終解決がはかれます。一方、弁護士などに依頼するなどの費用負担が大きく、非常に時間もかかります。こういったデメリットも考えておく必要があるでしょう。

確実に請求するなら、弁護士など専門家に相談するのがベスト

専門家に相談上記の(1)から(4)は、個人でやろうと思えば、実はできます。労働訴訟(民事訴訟)も「本人訴訟」という形で、弁護士等を立てずに訴訟を起こすことも可能です。

しかし、時間や心身にかかる負担を考えれば、早い段階で専門家に相談するほうがベター。
専門家に委ねれば、回収に至るまでの見通しが立てやすくなる上、難しい法律を理解する手間も省け、自分一人で戦う心理的負担も軽減されます。

ただし、専門家に依頼するには料金が発生するので、回収できる残業代がいくらになるのかとバランスを取りながら判断するのがよいでしょう。

士業別・できること&できないこと

未払い残業代の請求において力を借りられる士業には、「弁護士」「司法書士」「社会保険労務士」「行政書士」が挙げられますが、それぞれできることや得意分野が異なります。
専門家に依頼する場合は、どこまで自分でやってどこから専門家に頼むか、また料金と回収できる残業代の兼ね合いを考えて依頼先を決めましょう。

<士業別・業務代行可否一覧表>

士業別・業務代行可否一覧表

弁護士

報酬は高いがすべてを任せられる
弁護士に頼めば、先の(1)から(4)のすべての作業を代行してくれます。
成功報酬は回収額の20~30%というところが多く、4つの士業の中ではもっとも高額です。多少高額になってもすべて任せたいという忙しい人や、自分で交渉ごとを行う自信がない人に向いています。

司法書士

請求金額が140万円以下なら安価で頼める
司法書士には、簡易裁判所の訴訟代理権しか認められていないため、地方裁判所での訴訟や労働審判(労働審判は地方裁判所でしか行われない)などで代理人となることができません。この場合、裁判所への提出書類を作成や、裁判手続きの流れなどを伝えて本人訴訟をサポートする役割に限られます。

認定司法書士であれば、請求金額が140万円以下の簡易裁判所内では、弁護士と同様に訴訟代理人として残業代請求の手続きを行うことができます

そして、弁護士に比べて報酬が安価であるというメリットもあります。一般的な成功報酬は10%程度のところが多いようです。
「できれば安く済ませたい」「本人訴訟をしたいけれど専門知識がない」、「裁判に同席して一部始終を知りたい」、「残業代が140万円未満」の場合は、司法書士に依頼すると良いでしょう。

社会保険労務士

内容証明の作成や、ADR機関における示談を任せられる
社会保険労務士は、主に中小企業と顧問契約を結び、企業の労働・社会保険の手続きや労務管理に係る業務を中心に行っています。
残業代請求においては、内容証明の作成を依頼できます。弁護士や司法書士のように、依頼者の代理人として裁判へ出ることはできません。

また、特定社会保険労務士であれば、都道府県労働局の紛争調整委員会やADR(※)機関で企業と話し合う際(〈1〉まずは企業と話し合いで交渉)、代理人として交渉を行ってもらえます。これを「あっせん」と言います。

(※)ADR・・・「裁判外紛争解決手続」のこと。裁判に依らず、当事者双方の話し合いに基づき、紛争(労働問題)の解決を図ろうとするもの。残業代の請求も交渉対象となる。

参照:全国社会保険労務士会連合会「あっせんによる労働問題解決事例

ADRによる交渉は、裁判よりも簡単な手続きで行える反面、参加に強制力がないことや、開催回数が1~3回と少なめであることから、企業側に話し合いの意思がないと解決が難しい場合も。

「まずは自分の要求の妥当性を確認したい」という人は、労働相談という形で、社会保険労務士を訪ねるということもできます。
相談料は数千円~、企業との話し合い同行、付き添いは1万円程度~、が相場のようです。

行政書士

内容証明の作成を依頼できる
行政書士は、役所に提出する許認可などの申請書類の作成、および役所への提出代理、事実証明や契約書の作成などを行います。
残業代請求においては内容証明の作成を依頼することができます。しかし弁護士や司法書士のように依頼者の代理人として裁判へ出ることはできません。
内容証明の作成相場は、約1万円です。

4.残業代を請求するための証拠の残し方

タイムカード最後に、未払い残業代回収のための必須アイテムとなる、「残業をした証拠」の集め方、記録方法についてまとめていきます。

タイムカードはコピーでも可 サインがあれば尚よし

もっとも好ましい資料は、タイムカードです。
タイムカードはもっとも正確に在社時間を示す資料となりますので、残業代請求の回収率もグンと上がります。
上司の確認印等が押印されていれば、なお効力があります。コピーでも構いません。

ただし、不必要な早出や残業は労働時間として認められませんので、タイムカードの出勤時刻から退勤時刻まで、1分も違わず残業代を請求できるわけではない点は留意しておきましょう。

出勤簿や業務日報に出退勤時刻を記録する

そもそもタイムカードがない、もっとひどいところでは、タイムカードを定時に打刻させた上で残業をさせるようなブラック企業もあるようです。

その場合は、出勤簿や業務日報、残業申出書などに出退勤時刻を記入しておけば、ある程度客観的な資料として扱われるでしょう。

パソコンのログイン&ログアウト記録をとる

会社のパソコンを使って仕事をしているのであれば、パソコンのログイン・ログアウト時刻も労働時間の証明材料となり得ます
パソコンのログは、IT担当の部署などに頼めばすぐに記録が分かります。
ログイン・ログアウトの時間とともに、閲覧したサイトなどもすべて明らかになりますので、万が一息抜きでネットサーフィンなどをしている場合もバレてしまいますので、その点の心づもりはしておきましょう!

メールやメモも重要な証拠に

タイムカードも出勤簿もない、パソコンもあまり使用しない、全く労働時間を管理していない、という会社で働いている人は、以下のような方法も、100%とまではいきませんが、ある程度の証拠として認められます。

・毎日の出退勤時刻を手帳に記録する
・個人的に日記を書く(出社時間、退社時間が分かるような内容で)
・遅い時間に受電/架電した履歴やメモを残しておく
・遅い時間に会社からFAXを送信した履歴を残しておく
・遅い時間に会社のパソコンからメールを送信する
・退勤時に会社内の時計を携帯電話で撮影しておく

裁判例でも、手帳を証拠にした労働者の残業代請求が、5~6割程度認められたという事例があります。

1点気をつけたいのは、手帳のメモは、働いていた当時にその都度行うことが重要です。
後でまとめ書きすると、どうしても不正確な記載になってしまい、会社側から反論され、証拠としての能力が低くなってしまう恐れがあるからです。

5.まとめ

はたらけど はたらけど猶 わが生活 楽にならざり…ぢっと手を見るその前に、未払いの残業代は後から請求できるということがお分かりいただけたかと思います。

証拠の収集から万が一訴訟に至るとなれば、道のりは長く険しいかもしれません。しかし、頑張って働いた残業代を回収するのは、労働者として当然の権利です。

在職中に請求する場合には、トラブルとなって辞めざるをえなくなる可能性もあるので慎重に。また、退職後に請求する場合は時効に気を付けながら、「働いたのに残業代もらえない」という状況を打破してみてはいかがでしょうか。