定義や意味、休暇・休職との違いも説明 休業とは?

労働者が長い期間会社を休む場合、「休業」という言葉が使われることがありますが、どのような状況で取得できるものなのか、よく知らないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では休業の定義や意味、種類や「休職」との違いについて紹介します。

休業とは? 意味や定義について解説

まずは休業の基本から説明します。

休業とは必要に応じて業務を行わないこと

休業とは、労働者が会社との労働契約を継続したまま業務を行わないことです。労働者側に働く意思があるにもかかわらず、働くことができない状況で発生します。

「働くことができない状況」には、労働者側が働くことができなくなった場合も、会社側が労働をさせられなくなった場合も含みます。

労働者側が働くことができなくなった場合の休業

労働者側が働くことができなくなった場合の休業は、通勤中・仕事中の病気やけが、育児・介護といった事情で、業務を行えない状況などがあります。

会社側が労働をさせられなくなった場合の休業

会社側が労働をさせられなくなった場合の休業は、大規模な震災、自社製品に使用する原材料の高騰、不況による業績不振などによって、会社が操業の全部または一部を停止する状況が典型例です。自然災害のような不可抗力で発生する場合もあれば、会社側の過失により発生する場合もあります。

休業すると給料はどうなる?

自己都合の休業の場合は、就業規則等で定めがない限り原則として給料は支払われません

ただし、休業の理由によっては、給料の支払いがあることもありますし、労災保険、雇用保険、健康保険から、手当金や給付金を受けることもできます。

また、労働契約関係は継続しているので、社会保険(健康保険・厚生年金保険)を支払う必要があります。その際は会社に相談して、社会保険料の自己負担分を会社に支払いましょう。

ただし、休業の中でも産前産後休業・育児休業の場合は、申し出を行うことで会社負担分を含め社会保険料が免除されます。手続きは会社が行うので、「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」に記入して会社に提出してください。

会社側の都合による休業の場合も必ず満額の給料が支払われるというわけではありませんが、労働基準法(第12条3項3号)によって会社側は平均賃金の60%以上の休業手当を労働者に支払うことが義務付けられています。ただし、自然災害などによる不可抗力の理由があった場合には、会社に支払い義務はありません。

休業と休職の違いは?

「休業」と「休職」をどう定義するかは会社によって異なります。休職は社員の個人的な事情によって、一定期間業務を行わないことを指すのが一般的です。

休業の場合、各法律(労働基準法、健康保険法、雇用保険法など)によって賃金が支払われない期間の取り扱いが決められていて、その期間には手当または給付金の支払いがあります

ただ、各企業が「休業」と「休職」について、独自の使用方法をとっており、各用語の意味するものが必ずしも同じではありません。大事なのは、形式的な呼称ではなく、個々の内容についてです。必要に応じて、ハローワークや労働基準監督署などに問い合わせてみてください。

なお、休業や休職と似た言葉には「休日」と「休暇」もあります。休日とは雇用契約書や就業規則等で定められている労働者が労働する義務のない日を、休暇とは本来勤務するはずだったものの会社が労働義務を免除した日を指します。

休日…労働者が労働する義務のない日。雇用契約書や就業規則等で定められている

休暇…本来勤務するはずだったが、会社が労働義務を免除する日

自己都合で休業したときの手当まとめ

自己都合で休業した場合、休業理由によっては手当がもらえます。

<自己都合の休業>

  • 業務上の負傷・疾病の療養のための休業(休業補償給付、療養給付、療養補償給付
  • 産前産後休業(出産手当金、出産育児一時金
  • 育児休業(育児休業給付金)
  • 介護休業(介護休業給付金)

業務上の負傷・疾病の療養のための休業

業務上の負傷・疾病の療養のための休業とは、労働者が通勤中・仕事中にケガや病気になり、働くことができなくなった場合に、その療養に必要な期間業務を行わないことです。

また、通勤中や仕事中での負傷・疾病は、それぞれ、通勤災害・業務災害とも呼ばれます。

もらえる手当:労災保険による休業(補償)給付

通勤中や仕事中の負傷・疾病の療養による休業中に賃金を受けていない場合、会社が労災保険に加入していれば、休業した日の4日目から休業給付(通勤災害の場合)もしくは休業補償給付(業務災害の場合)が給付されます。休業1日につき給付金基礎日額(直前3ヶ月の1日当たりの平均賃金)の60%相当額が支給されます

最初の3日間は国から補償されるまでの待機期間となりますが、休業補償給付の場合、給付金基礎日額の60%以上(※100%を補償している会社が多い)を会社から補償されます。

場合によっては損害賠償の請求も可能

業務上で負傷等をした場合、もし会社側に安全配慮義務違反や過失があれば、会社に対して民事上の損害賠償を請求し、支払いを受けることができます。

そうした場合には、弁護士などに相談して損害賠償を請求することも視野に入れておくと良いかもしれません。

産前産後休業

産前産後休業とは、妊娠中の女性が出産予定日の6週間前、及び産後8週間に休業することです。

労働基準法(第65条)によって、雇用している事業主は6週間(双子などの多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産予定の女性が休業を請求した場合や、産後から8週間経っていない場合は、就業させてはならないと決まっています。

もらえる手当:健康保険による出産手当金・出産育児一時金

労働者本人が健康保険に加入している場合は、出産手当金と出産育児一時金の給付を受けることができます。

育児休業

育児休業とは、1歳未満の子を養育する労働者が取得できる休業です。

育児休業法(第5条)によって男女問わず取得することができますが、派遣や契約社員など期間を定めて雇用されている労働者の場合は、雇用期間が1年以上で、養育する子が1歳6ヶ月になる日までに労働契約の満了が決まっていないことが条件となります。

もらえる手当:雇用保険による育児休業給付金

労働者本人が雇用保険に加入している場合は、育児休業給付金の支給を受けることができます。

介護休業

育児介護休業法(第11条)により、介護が必要な状態にある配偶者・父母・子・配偶者の父母がいる労働者が取得できる休業です。

また、育児介護休業法(第12条)により、労働者が事業主に介護休業申出をした場合、会社は拒むことができません。期間を定めて雇用されている労働者の場合は雇用期間が1年以上で、休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6ヶ月を経過する日までに労働契約の満了が決まっていないことが条件となります。

もらえる手当:雇用保険による介護休業給付金

労働者本人が雇用保険に加入している場合は、介護休業給付金の支給を受けることができます。

ただし、この給付は介護休業が終わってからでないと申請できません。休業中には受給できないので要注意です。また、介護休業期間中に就労して賃金が支払われた場合、介護休業給付の支給額は0円となる可能性があります。

まとめ

休業の理由によっては手当や給付金をもらうことができます。必要に応じて手続きを行いましょう。

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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