わかりやすく簡単に紹介 労働組合とは?
労働者の権利について調べると、労働組合について目にする機会は多いでしょう。とはいえ、「実はどういう団体なのかよく知らない」という人も多いのではないでしょうか。
ここでは、労働組合の役割や活動についてわかりやすくご説明します。メリットやデメリットについても解説しますので、加入するかどうか迷っている人はぜひ参考にしてみて下さい。
労働組合とは?
労働組合の成り立ちや組合員数についてわかりやすく説明します。
まずは、労働組合とはどんな団体で、どのような役割をもっているのかについて把握しておきましょう。
労働者が主体となり結成した団体
労働組合とは、労働条件の改善や維持を目的として、「労働組合法」や「労働三権」に基づき、労働者が主体となって結成する団体です。
労働組合の役割は、雇用主よりも立場の弱い労働者が団結することで、雇う側と対等な立場で交渉することです。
労働組合の具体的な活動内容
労働組合の活動の中心は、団体交渉です。
例えば春闘(春季生活闘争)と呼ばれる賃金改定の交渉、年間を通した会社の経営状況や賃金水準などについての調査・討論などが挙げられます。その他にも、基本的な労働組合の活動内容は以下のようなものがあります。
- 労働条件の改善・維持や経営に対する提言
- 職場環境の改善の申し立て
- 不当な解雇や安易なリストラに対して、撤回の申し立て
また、団体交渉を行っても会社が要求に応じようとしない場合は、集会やデモ・ストライキを行う団体行動権も、公務員でない限りは保証されています。
労働組合は大きく分けて4種類
労働組合は大きく分けて4種類あります。そのなかでも個人が加入できる組合は「企業別組合(単位組合)」と「合同労働組合(ユニオン)」です。一般的に労働組合と言う場合、この2つの組織のことを指すことが多いです。
企業別組合(単位組合)は同じ会社の労働者が集まって結成されており、入社と同時に加入する方も多いです。
合同労働組合(ユニオン)は複数の企業の労働者が集まって結成する組織で、自分で適した組合を探して加入する必要があります。
このほかにも「ナショナルセンター(全国中央組織)」と呼ばれる労働組合を代表する組織や、同じ業種の労働組合で結成する「産業別・職業別組合」がありますが、これらはあくまで企業別組合やユニオンをまとめる組織ですので、労働者個人で加入することはできません。
労働組合の加入率はどれくらい?【全国・産業別・企業規模別】
実際に労働組合に加入している組合員数はどれだけで、労働者の何人に1人が加入していることになるのしょうか。厚生労働省の令和3年労働組合基礎調査を元に、全国・産業別・企業規模別に加入率をご紹介します。
全国の6人に1人が労働組合に加入している
労働組合全体の加入率(推定組織率)は16.9%で、全国の労働者の6人に1人が労働組合に加入していることになります。この数字は1947年の45.3%から年々低くなっています。
産業別でみる労働組合の加入率
労働組合の加入率が最も高い産業は「複合サービス事業」の51.6%、すなわち労働者のおよそ2人に1人が労働組合員です。それに続くのが「電気・ガス・熱供給・水道業」の51.4%、「金融業・保険業」の45.4%です。
一方、最も加入率が低い業種は「農業・林業・漁業」で加入率は1.7%となっています。
企業規模でみる労働組合の加入率
企業規模別に労働組合の加入率を見ると、最も高いのは「1,000人以上の企業規模」の39.2%で、2.5人に1人近い人数が労働組合に加入しています。反対に、加入率が低いのは「99人以下の企業規模」で、その割合はたったの0.8%となっています。
この数字から、大企業のほうが加入する会員が多く、中小企業にはそもそも労働組合がない傾向が強いことがわかります。
※「300~999人」と「100~299人」、「30~99人」と「29人以下」は雇用者数を合計して調査されているため、推定組織率も両社を合わせた数値となっている。
労働組合に加入する方法・結成する方法
労働組合に加入する方法・結成する方法についてご説明します。
労働組合に加入したいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
自社の労働組合への加入方法
自分の勤めている会社に企業別組合があれば、告知されている組合の窓口に聞いてみましょう。もし窓口がわからない場合は、社内の組合員に聞いてみてください。
自社の労働組合がないときの加入方法
自社の労働組合がないのであれば、合同労働組合(ユニオン)に加入することもできます。その場合は、インターネットで自分に合った組合を探し、加入の申込みを行います。
〈業種・雇用形態問わずインターネットから加入できる労働組合〉
→【申込】ジャパンユニオン
〈東京の東部地域を中心に、業種・雇用形態問わず加入できる労働組合〉
→【申込】東京東部労働組合
〈建設・運輸・清掃業を中心に、業種・雇用形態問わず加入できる労働組合〉
→【申込】連帯ユニオン
管理職や公務員も労働組合に加入できる?
部長や課長などの立場である管理職も労働者ですので基本的には加入可能です。
ただし、雇入・解雇・昇進などの「人事権をもつ監督的地位にある者」や、取締役・監査役・理事・監事などの「役員」は加入できないため注意しましょう。
公務員については、「労働者」ではなく「奉仕者」という扱いのため労働組合法の適用が除外され、一般の労働組合に加入することはできません。しかし、全日本自治団体労働組合(自治労)や日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)といった公務員専門の産業別労働組合であれば加入することができます。
自社で労働組合を結成するには
労働組合を結成するには、法律(労働組合法第2条)により定められた3つの条件を満たさなければなりません。また、「人事権を持ち監督的地位にある者」や「役員」は労働者に含まれませんので注意してください。
〈労働組合の条件〉
- 労働者が主体となって組織する
- 労働者による自主的な団体である
- 労働条件の維持改善を主な目的とする
労働組合は2人からつくれますが、会社側との交渉は人数による力関係に左右される場合もあるので、なるべく従業員の過半数以上が加入する労働組合を目指しましょう。
〈結成までの流れ〉
有志で組合規約・運動方針・組合役員・予算案の作成
↓
組合加入を対象者に呼びかける
↓
労働組合規約の作成、要求項目のとりまとめ
↓
組合規約・運動方針・予算案の審議決定を行い、役員を選出
↓
結成通知書、要求書を提出し、団体交渉を申し入れる
結成までの流れとしては、まずは数人の有志を集めて大まかに規約や方針を決めた後、本格的に組合員を募集します。そして人数が集まったら話し合いで労働組合規約などを具体的に形にして、役員を選出することで結成となります。
労働組合のメリットとデメリット
労働組合に加入することで得られるメリットとデメリットをご紹介します。
加入するかどうか悩んだときは、こちらを参考にしてみて下さい。
メリット
働きやすくなる
不当な条件に対して意見を訴えることが可能なので、職場環境の向上が期待でき、働きやすくなります。
また、労働組合という組織に帰属することで企業側への抑止力にもなり、経営陣の独断による不当な賃金改正を防ぎ、賃金を維持することができます。
納得できないリストラや解雇は抗議できる
強制的なリストラや不当な解雇に対して、労働組合の力を借りて抗議することができます。
個人では相手にされない状況であっても、組合員であれば団結権及び団体交渉権により団体という力関係によって話し合いに持ち込むことが可能です。
会社の内部事情を知ることができる
労働組合に所属することにより、普段の業務では知ることのできないような、賃金や労働環境に関する、経営陣や管理職の考え方・取り決めを知ることができます。
これにより、会社への理解度を深めることができ、納得度の高い環境で働けます。
デメリット
時間的・金銭的な負担
労働組合に加入すると、労働時間外に役員会議などの組合活動を行う時間的な負担や、毎月数千円の組合費を支払うなどの金銭的な負担があります。
無理のない範囲内で活動できる労働組合に加入するようにしましょう。
役員になるとやるべきことが増える
労働組合では部署や支店単位で、各部の意見のとりまとめ役として「代議員」となる人を選びます。さらに代議員のなかから、労働組合の代表者となる「委員長」「副委員長」「執行役員」を選ぶので、望まない役割を与えられる場合もあります。
これらの役員は、毎月数回の打ち合わせや資料作り、労働組合員の意見のとりまとめなどの仕事をする必要があるので、多くの時間と労力を費やさなければいけません。
組合費が月に1,000~6,000円程度かかる
組合の規模によって異なりますが、組合員になると月々1,000~6,000円程度の組合費が徴収されることになります。ボーナス等の一時金から徴収される場合もあります。
もし、組合費が毎月6,000円であれば、年間7万2,000円です。加入したい労働組合があれば、自分の収入で支払いができる費用であることを確認してから加入するようにしましょう。
まとめ
労働組合について把握できたでしょうか。大企業ほど加入数が多いのが現状ですが、1人でも入れる合同労働組合(ユニオン)もあります。
会社の労働条件や職場環境の改善を希望する場合は加入を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。