手取り金額や家計簿を公開 年収1000万円の理想と現実
「年収1000万円」は、よく高収入のボーダーラインと言われていますが、実際の手取りや生活はどうなっているのでしょうか?
この記事では、手取り金額や生活費の内訳、稼いでいる人の割合など、年収1000万円の実態をご紹介します。
年収1000万円の手取りと税金
手取り金額は700~750万円程度
年収1000万円の手取りは意外にも低く、700万円~750万円ほど。月収換算で45万円前後になるようです。年収500万円から1000万円にアップしても、単純に手取りが2倍になる訳ではありません。
また、扶養親族の有無や、独身かによっても手取り金額は大きく変わります。たとえば「16歳以上の子ども」といった扶養親族が1人いる場合、独身と比べて所得税が年間で約16万円、住民税が約7万円ほど節税可能。これは「家族を養っていることによる優遇措置(控除)」があるためです。
「年収1000万円」でも手取りが少ない、3つの理由
年収500万円→年収1000万円に収入がアップしても、手取りが単純に倍になるわけではありません。手取りが思ったよりも伸びない理由には、主に下記の3つが挙げられます。
- (1)所得税が大幅アップ
- (2)児童手当が減額される
- (3)高校の学費無償化の対象外になる
(1)所得税が大幅アップ
年収1000万円でも手取りが少ない一番の原因は、所得税の増額です。所得税は年収が高くなるほど税率が高くなる「累進課税」が適用されるため、同じ家族構成でも税率が大きく異なります。
たとえば、年収500万円と比較した場合、課税所得金額※に対する「所得税率」は、5%→20%にアップします。
※課税所得金額とは・・・すべての収入のうち、所得税の課税対象になる金額のこと。所得から、配偶者控除等の控除を引いた金額。
実際の所得税を計算すると、年収1000万円の人は、年収500万円の人に比べて約10倍近くの所得税を払っていることに。この出費により、手取り額が大きく目減りしてしまいます。
(2)児童手当が減額される
年収1000万円の場合、児童手当が減額されるのも、手取りが少ない原因のひとつです。児童手当の所得制限によって、収入額などが一定の基準を超えると、支給金額が一律5000円に制限されてしまいます。
たとえば年収1000万円・扶養親族3人の家庭は制限に引っかかるため、児童1人あたりの児童手当の支給金額は月5000円に。満額だと中学生以下の子ども1人につき月1万円~1万5000円支給されるため、年収1000万円の人は年間6万円~12万円ほど支給額が減る計算になります。
(3)高校の学費無償化の対象外になる
年収1000万円の場合、高校の学費無償化の対象外です。通常、公立私立問わず、高校等に通う子どもに対して高校授業料相当額(年額11万8800円~)が支給される制度ですが、世帯の収入によって支給制限があります。
世帯年収がおおよそ910万円を超えている家庭は無償化の対象外となるため、年収1000万円の場合は支給対象外となるようです。
コラム:共働きで年収1000万円だと、手取りは多くなる
夫婦共働きで世帯年収が1000万円の家庭は、片働きよりも手取り金額が多くなります。たとえば共働きで500万円ずつ稼いでいる場合、片働きで1000万円世帯よりも手取りが約50万円多くなるようです。
共働きで手取り年収が多くなる主な理由は、所得税が抑えられるから。累進課税制度では収入が少ないほど税率も低くなるため、同じ年収1000万円でも、夫婦で500万円ずつ稼いだ方が節税に繋がります。
また、共働きだと「児童手当」の減額対象にならないのもポイントです。減額の基準は、夫婦のうち年収が高い方の金額で判断されるため、年収500万円ずつなら制限に引っかかりません。そのため、片働き1000万円世帯と異なり手当を満額もらうことができます。
加えて「高校の学費無償化」でも、共働きの場合は支援金の支給基準となる年収が引き上げられ、年収1000万円の世帯でも学費の支給対象になります。夫婦共働きのメリットの一つとして、覚えておくといいでしょう。
年収1000万円付近の「手取り」一覧
年収1000万円に近づくと、手取りの年収はいくらになるのか? 気になる方のために、25万円区切りで一覧をまとめました。
年収のシミュレーションに、よければご活用ください。
1000万円の生活費|家賃・貯金など
年収1000万円を稼ぐ人の生活は、どのようなものなのでしょうか?ここでは例として、家庭持ちの前野さん・独身の加藤さんの2名の実際の生活費をご紹介します。
前野さん(仮名):50歳片働き、中規模メーカーの開発部門長
■家族構成
前野さん | 50歳、中規模メーカーの開発部門長 |
妻 | 専業主婦 |
息子 | 大学生(私立の理系学部に通う、1年生) |
- 前野さんは現在、家賃13万5000円・築15年の賃貸一戸建てに住んでいます。築15年・都心まで40分ほどの立地のため、不自由はしていないそう。いずれは生まれ故郷にある実家で両親と同居する予定なので、マイホームは持っていません。
- 現在とくにお金がかかっているのは大学生の息子の教育費で、授業料が月額にして9.5万円。なかなか貯金ができず、日々節約している状況のようです。
- 年間189万円のボーナスは貯金にまわすほか、家族での海外旅行などに使っています。
加藤さん(仮名):35歳独身、ベンチャー企業の経営コンサルタント
■家族構成
加藤さん | 35歳独身、ベンチャー企業の経営コンサルタント
※結婚を考えている彼女あり。 |
- 加藤さんは都内のタワーマンションに住んでおり、気ままなひとり暮らしで出費もかさんでいるようです。車にお金をかけているほか、彼女とのデート代ももちろん加藤さんが支払っているとのこと。そのため、月の収入を貯蓄に回すことができていません。
- 外食の頻度が多く、基本的に自炊もしないため、食費は高め。特に外食費は、彼女とのデート以外で月3万円以上使っているそう。交際費も月5万円かかっており、負担は小さくないようです。
- 貯金はボーナスで貯めればいい、と考えていたものの、最近は「結婚を控えて、そろそろ貯め始めたほうがいいかもしれない」と、彼女からのプレッシャーを感じているようです。
年収1000万円を稼いでいる人の割合は?
年収1000万円以上の人は、約5%
年収1000万円以上の人は、民間企業で働く人のうち「約5%」(2021年、国税庁調べ)。人数に直すと、約260万人です。
ちなみに、男女別の割合・人数は下記の通りです。
男性に比べ、女性の割合が極端に低いことが分かります。女性の場合、結婚や出産によって仕事を辞める方が多いため、収入が全体的に低くなる傾向があるようです。
一番稼いでいるのは、50代前半
65歳を定年としたとき、年収1000万円以上を稼いでいる人が最も多いのは男女ともに50代前半です。男性で15.2%、女性で2.6%の方々が、年収1000万円を手にしています。
女性の場合、年齢によって割合に大きな変動はありません。一方で男性は40代に入ったあたりから年収1000万円の方の割合が急激に増えはじめ、50代に入ると全体の10%を超えるようです。
※出典:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」(公表:2020年3月31日、参照:2023年9月15日)
※月収60万円以上(ボーナス4~5カ月分)の人を年収1000万円以上として計算)
年収1000万を稼ぎやすい業界・仕事・企業
年収1000万円稼いでいる人の内訳を見ると、特定の業界・企業で人数に偏りがあることがわかります。ここでは「業界・仕事(職業)」「従業員数」「企業の資本金」別に、年収1000万円を稼ぎやすい企業を紹介します。
【仕事・業界・職業】人数なら製造業、割合はインフラ関係
※出典:国税庁「令和3年民間給与実態統計調査結果」(公表:2022年9月、参照:2023年9月20日)
業種別に年収1000万円を稼いでいる人数の内訳を見ると、「製造業」が2位以下に倍近くの差をつけている状況です。次いで「卸売業・小売業」「医療・福祉」と続きます。従事している労働者の人数が多いことも、この結果に関係しているようです。
ただし、1000万円以上稼いでいる人の割合に着目すると「インフラ関係(電気、ガス、熱供給、水道業)」が24%でトップです。従事している人数こそ少ないものの、高収入の方が多いため、このような結果になっています。
また、高収入な職業の印象が強い「金融業、保険業(17.7%)」や、「情報通信業(10.7%)」も、1000万円以上稼いでいる人の割合が高い業種です。インフラ関係に比べると労働者人口が多い業種なので、1000万円を稼ぐチャンスも多いと言えるでしょう。
職業で言えば、インセンティブが支給される「営業職」や、専門性が評価されて基本給が高い「技術者」、残業代等の手当で稼ぐタイプの「システムエンジニア」「施工管理」などが、高収入を実現しやすいと言われています。
【従業員数】従業員数が多い企業ほど、稼ぐチャンスあり
※出典:国税庁「令和3年民間給与実態統計調査結果」(公表:2022年9月、参照:2023年9月20日)
基本的には、従業員数が多い大企業ほど1000万円を稼いでいる人数・割合ともに高いようです。従業員数1000人以上の企業なら、7%以上の人が年収1000万円を手にしています。一般的に、大企業ほど平均年収が高くなる傾向があるため、それに沿った結果と言えるでしょう。
【企業の資本金】資本金10億円の大企業が、圧倒的
※出典:国税庁「令和3年民間給与実態統計調査結果」(公表:2022年9月、参照:2023年9月20日)
資本金が多い企業ほど、1000万円以上稼ぐ人数・割合ともに高いことが分かります。
特に、一般的に大企業と言われる「資本金10億円以上の企業」が、人数・割合ともにその他の企業に倍以上の差をつけており、労働者の10人に1人以上が年収1000万円を手にしています。
企業規模を基準に企業を選ぶ場合、大企業を選ぶことで年収1000万円以上稼ぐチャンスを最大限に高めることができるでしょう。
もし転職を考えているなら、資本金や業種別の傾向も併せて判断することで、年収アップの確率を高められるかもしれません。
まとめ
サラリーマンの憧れとも言われていた、年収1000万円。華やかな印象もありますが、所得税の負担増といった理由で手取りが目減りし、なかなか貯蓄できない現実が待ち受けているようです。
ただし、趣味の充実や子どもの進学などを考えれば、目指してみる価値は十分にあります。特定の業界・企業を選ぶことで、年収1000万円を手にする確率を高められるので、行動に移す際はこの記事の情報も活用してみてください。