データで見る「公務員からの転職事情」 公務員から転職って実際どう?

公務員試験に合格して働き始めたものの、想像していた働き方とのギャップから「実は転職したい…」と考えている人もいるのではないでしょうか?

しかし家族や友人の「安定した公務員の職を捨てるなんて、もったいない!」という声もあり、なかなか転職へ踏み切れない人も多いのでは。

実際のところ、公務員を辞めて新たな道で活躍している人はたくさんいます。

ここでは、公務員から転職することの実情や、転職するにあたり留意すべき点、具体的な転職方法などを網羅していきたいと思います。

データで見る「公務員からの転職事情」

まず公務員から転職するにあたっての基本的なデータを紹介します。公務員と民間企業の離職率の差や年齢による傾向の違い、公務員から転職したいと思った理由について、まとめています。

やはり低い!公務員の離職率(ただし職種による)

人事院の調査結果を元に算出すると、国家公務員における24歳以下から49歳までの離職率は、男性が4.2%、女性が3.3%とかなり低い結果となります。この数値には出向のための辞職者なども含まれているため、純粋な自主退職者はさらに少ないと言えるでしょう。

ただし、これはあくまで国家公務員(行政職俸給表”一”適用職員)のみのデータです。公務員には他に地方公務員や警察官、自衛官、教員など、さまざまな職種があります。

公務員全体の離職率は一般的に1~5%程度と言われており、職種によって割合は異なるということは頭に入れておきましょう。

一方、厚生労働省が発表した令和元年度の一般企業の離職率は、19歳以下から49歳までの男性が約15%、同年齢層の女性が20%

この数値の差から、公務員の定着率の高さが分かります。

公務員と、一般労働者の離職率を年齢・性別で比較したグラフ。~24歳(公務員)男性4.4%・女性3.8%/(一般)男性35.6%・女性37.4%、 25~29歳(公務員)男性4.6%・女性4%/(一般)男性16.8%・女性23.2%、 30~34歳(公務員)男性5.4%・女性4.5%/(一般)男性12.5%・女性19%、 35~39歳(公務員)男性4.6%・女性3.5%/(一般)男性8.9%・女性13.1%、 40~44歳(公務員)男性3.5%・女性2%/(一般)男性7.4%・女性14.7%、 45~49歳(公務員)男性2.8%・女性2.1%/(一般)男性8.2%・女性12.8%、 50~54歳(公務員)男性3.1%・女性2.6%/(一般)男性6%・女性12.3%、 55~59歳(公務員)男性4.3%・女性4.5%/(一般)男性9.1%・女性11.6%。

※参考
→公務員:令和元年度一般職の国家公務員の任用状況調査-人事院
→一般:2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要-厚生労働省

公務員でも若手の離職率はやや高め

一般に、離職率は若いほど高くなりがちですが、公務員でも同様のことが言えます。

先ほどのグラフを見ると、公務員の離職率は30歳から40歳にかけて男女ともに一直線に下がり圧倒的な定着率が見て取れますが、20代以下の若年層を見ると、その数値はやや高め

すなわち、若手公務員ほど転職を考え、実行に移している人が多いことが分かります。

次の項目では、さまざまな人の、さまざまな「公務員を辞めたい」と思った理由について整理していきます。

みんなの「公務員を辞めたい」理由

「公務員を辞めたい」と思った理由をたずねると、主にこのような答えが返ってきます。

  1. 思ったより激務だった
  2. 人間関係の閉塞感に疲れてしまった
  3. 理不尽なクレーム対応などにストレスを感じる
  4. 若いときは、思ったほど給与が高くない

いずれも、収入や労働条件の安定性、公共の仕事ならではのやりがいといった期待とのギャップが大きな理由となっているようです。

辞めたいと思った理由について、それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。

<ケース1>思ったより激務だった

同じ公務員でも、労働状況はかなりまちまちです。仕事によっては残業続きの激務となるため、ワークライフバランスを重視して公務員になった人は、「話が違う!」と転職を考えがち。

また、予算の問題で、激務であっても残業代が時間どおり支払われない場合もあるようです。

<ケース2>人間関係の閉塞感に疲れてしまった

公務員の職場は、部署単位で見ると比較的小規模な場合が多く、必然的に同じ部署内での人間関係が濃くなります。

ひいては、身近に嫌な上司や同僚がいても、なかなか離れることができない、相談する相手もいない、という状況に陥りやすく、人間関係に疲れて転職を検討する人も多いようです。

<ケース3>理不尽なクレーム対応などにストレスを感じる

特に地方公務員に多い事例と言えますが、市民と直接コミュニケーションを取る機会の多い市役所の窓口などでは、さまざまな価値観の市民と接しなければならず、中には無理を言ってくる人もいるのが事実。

こうした対応にストレスを感じ、転職を考えるケースも見られます。

<ケース4>若いときは、思ったほど給与が高くない

40~50歳のキャリアになれば高給が望めますが、新卒入社時の公務員の収入は、民間企業と大きな開きはなく、むしろ大手民間企業や勢いのあるベンチャー企業のほうが高収入だったりします

若いうちから自分の能力で勝負して、もっと稼ぎたい!という野心家型公務員も転職、さらには独立・起業に踏み切る人が多いようです。

以上のような理由から、やはり若年層が早々に公務員職に見切りをつけて新天地で働こうとする傾向が見られます。特に<ケース4>などが最たる例でしょう。

転職前に考えておきたい4つのポイント

せっかく公務員試験という難関をくぐり抜けたのに、安易に公務員を辞めて後悔してしまっては後の祭り!実りのある転職を実現したいものです。

ここでは、実際に「公務員から転職する」という行動に移す前に、もう一度よく考えておきたいポイントをまとめました。

(1)「なぜ辞めたいのか」を整理し、優先順位をつける

公務員を辞めたい理由を、自分の中で比重が大きい順に整理してみましょう。すると、どんな転職先を探せばいいのかが見えてきます。

例えば「仕事がハード」が最大の理由の人は、残業時間が少ない求人を探すと良いでしょう。また、人間関係が理由の場合は、企業の経営方針や面接官の雰囲気に注目して転職活動をするのがベターです。

しかし、辞めたい理由がはっきりしないまま転職してしまうと、本当は残業の少ない仕事を希望していたのに給料に釣られてハードな職場を選んでしまうなど、本末転倒な結果になってしまうことも。

すべての不満を解消できる職場を見つけることは難しいですが、納得いく転職をするためには辞めたい理由を整理することが大切です。また、理由を深く考えていくうちに、「今はまだ辞めるべきではない」という結論に至るかもしれません。

(2)先輩たちの「転職実例」を踏まえて考える

転職するかしないか、また、転職するにしても民間企業に行くのか、それとももう一度公務員になるのかを考える上では、転職経験者の体験談が参考になります。

例えば以下のサイトでは、「公務員から民間企業へ」、「公務員から別の公務員職へ」、「公務員からの独立・起業へ」など、ケース別の実体験が詳細かつ分かりやすくまとめられています。

[公務員プラス]セカンドキャリア情報

自分と似たケースの体験談はもとより、まったく畑違いの職種へドラスティックな転職を遂げた人や、独立・起業した人の話などを読むことで、「自分にもこんなことができるかも」と視野が広がるかもしれません。
また、辞めたことを後悔している人の体験談もあるため、ネガティブな要素も加味して考えることができます。

実体験を読んで転職の具体的なイメージを膨らませ、転職するかしないか、するとしたらどんな転職をするのかをよく考えてみましょう。

(3)辞めないと決めた人の選択肢:人事異動や相談窓口で解決することも

一方、辞めたい理由を考えてみて、まだ転職するほどでもないかも…という場合は、信頼できる上司などに人事異動を打診するのもひとつの方法です。

新しい仕事に取り組んでみたいなど、前向きな理由で相談してみましょう。

また、民間企業の労働組合に相当する団体もありますので、そちらに相談することで、解決の糸口が見つかるかもしれません。

[人事院]勤務条件や勤務環境等に関する相談

都道府県及び政令指定都市などには、それぞれ「人事委員会」が設置されており、一般的に労働組合と同等の役割を担っています。

それ以外の自治体には、「公平委員会」が置かれ、上記機関と同じ働きを持ちます。

(4)辞めるなら若いほどチャンスは広がる

転職を考えるにあたっては、年齢を必ず考慮してください。公務員として働き、40歳を超えてしまうと、やはり民間企業への転職は難しくなります。

40歳を超えると中途採用では管理職の経験が求められますが、公務員の管理職は「利益追求」という大前提がないため、管理職の経験としてはあまり評価されません。

逆に20代~30代であれば、民間企業への転職は十分に可能です。元公務員というキャリアは、「公務員試験を突破した優秀な若手」という印象を与えることもあります。

人生の大きな決断ですので、難しいところですが、「若いほどやり直しがきく」のも事実です。選択は慎重に、決断したなら、なるべく早く動くのが得策でしょう。

公務員から民間企業へ転職する方法と職探し法

この章では、公務員から民間企業への転職方法や、具体的な職探し法を紹介します。

さまざまな熟慮の末、「やっぱり、公務員を辞める!」と決意した人は、しっかり読んで参考にしてみましょう。

公務員と民間企業の違いは「利益の追求」

公務員を辞めて民間に行きたい!という人が抑えるべき公務員と民間企業の最大の違いは、「利益というシビアな結果が求められるか否か」です。

民間企業は、業績であったり、仕事に対する工夫であったり、試行錯誤をして会社の利益を上げられる人だけが、正社員として採用され、勤続し続けられます。その能力がないと判断されれば、最悪の場合リストラされる可能性もあります。

対して公務員は、国や自治体から与えられた予算内で、できる限りのことをし、金銭的な利益の追求の必要がありません。そして、よほどのことがない限り、リストラの心配もありません。

この体制の違いから、公務員はどうしても受け身な「お役所的働き方」しかできない人間になってしまいがちと言われています。

しかし、そもそも公務員のみなさんは公務員試験を突破した優秀な人材です。民間企業で求められる「利益を追求する」という感覚を身に着ければ、必ず活躍できるはずです。

有資格者や専門職は民間への転職にも有利

公務員から民間企業へ転職する場合は、専門性のある職に従事していた人のほうが有利です。

公務員の専門職から、どのような民間企業へ転職が可能であるか、まとめてみました。

  • 研究員民間研究所社員、大学教員
  • 教師塾・予備校講師
  • 警察官警備会社社員
  • 税務署職員税理士
  • 労働基準監督署職員社会保険労務士
  • 法務局職員司法書士、行政書士
  • 国有財産管理職員不動産鑑定士
  • 医療機関職員民間医療施設職員(医師、看護師など)

※出典→公務員からの転職先5つの探し方|民間へ転職しやすい人の条件は?「3.専門職採用・起業」より-はたらくす

これらはほんの一例であり、他にもさまざまな可能性があります。

後で紹介する「転職エージェントに登録し、相談するのがベスト」にもあるように、専門性の高いキャリアコンサルタントに相談すると、更なる活路が見出せるかもしれません。

事務系の転職は厳しいが、落ち着いた組織風土の会社を狙って

専門職に対して、事務系の職務に従事していた公務員にとっては、民間企業への転職は少々厳しくなります

例えば、同じ総務職でも、役所と民間では仕事内容は大きく異なるため、公務員時代の経験はあまり活かすことができません。

また、男性公務員で事務職の経験しかない場合は、民間企業の総務は一般的に20~30代の女性が担っていることが多いため、さらに転職は困難になることは覚悟しましょう。

ただし、民間企業の中でも、比較的公務員と組織風土が近く、ルールやマニュアルが整備された老舗、官僚的な側面がある企業は狙い目です。

例えば、国や自治体と取引があるような企業の窓口業務や、公務員時代に法務の知識、経験があれば、法律事務所、行政書士事務所の事務などに、採用の目があるかもしれません。

公務員としての経験と照らして、仕事内容が近い仕事を選ぶことが大切。自分のキャリアが民間企業に通用するのか判断がつかない人は、転職エージェントのキャリアコンサルタントに相談するとよいでしょう。

転職エージェントに登録し、相談するのがベスト

新卒で公務員試験をパスした人は、実は就職活動を一切しなかった、数社しか受けなかった…という人も多いのではないでしょうか。

新卒時に就活を経験していない人は、必ず転職エージェントに登録しましょう

キャリアコンサルタントにこれまでの経歴とともに、就職活動の経験の浅さなどを相談すれば、実践的なアドバイスをもらうことができるでしょう。

また、公務員の仕事と民間企業の仕事のマッチングも充実しています。自分でも思いもよらなかった転職先で実力が生かせることがわかるかもしれません。

残念ながら公務員専門の転職エージェントは存在しませんが、代表的な転職エージェントを紹介します。

やりたい仕事が決まっていれば、転職サイトで検索してみる

具体的な転職ビジョンが見えており、仕事選びの条件がはっきりしている人は、転職サイトで希望の職種を検索し、どんどん応募してみるのもよいでしょう。

以下には、幅広い業種・職種の求人情報とともに、公務員や団体職員の求人が多めに掲載されている求人サイトをまとめました。

次章で紹介する「公務員から公務員へ転職する方法」でも役立てるかと思いますので、公務員から公務員へ転職を検討している人も、参考にしてください。

公務員から独立・起業する人も

中には、公務員を辞めて自ら会社を興す人もいます。

そのケースは実にさまざま。公務員時代の経歴を活かす人から、趣味の世界で起業する人もいます。もしあなたが、公務員という平坦な人生に疑問を感じて転職を考え、挑戦したい仕事があるのなら、独立という選択肢もアリかも知れません。

先輩たちの「転職実例」を踏まえて考える』の章で紹介した公務員プラスでは、公務員から独立・起業した人の事例も載っています。

これを読むと、「人生は一度きり、悔いのないように生きなくては!」という思いに駆られる、かもしれません。(でも、選択は慎重に!)

公務員から公務員へ転職する方法

今の職場を辞めることを決めたものの、もう一度公務員として働こうと考える人もいることでしょう。

この章では、公務員として働いている人が、別の職場で再び公務員として働く方法をお伝えします。

国家、地方…それぞれ受験資格や年齢制限は異なる

公務が転職する場合、民間企業への転職だけでなく、「公務員から公務員への転職」を検討している人もいるでしょう。

公務員から公務員への転職の一般的なパターンとしては、以下の2つがあります。

  1. 市役所などの地方自治体→国や都道府県へ
  2. 国家公務員や都市圏の自治体→地元の自治体へ

「公務員」と一口に言ってもにたくさんの職種が該当し、職種や自治体ごとに、募集の詳細もすべて異なります。自分がどの枠で受験することが可能なのかについては、自分の状況に合わせてしっかりと確認することが大切です。

公務員→公務員も「社会人採用枠」で受験可能

公務員から公務員へ転職するには、大きく分けて2つの受験方法があります。

1社会人採用枠で受験

公務員の社会人採用枠は「民間企業等」職務経験者と記載されていることが多いですが、最近は公務員としての職務経験も「民間企業等」に含めて良いとする自治体が増加しています。

つまり、公務員として勤務した経験を活かして、別の役所へ転職することが可能なのです。

230~35歳までの人は、一般枠でも受けられる

一般枠は、新卒者ないしは第二新卒者ほどの若い人しか受験資格がないように思われがちですが、そんなことはありません。

多くの自治体は30歳を上限にしており、まれに35歳まで受験可能な自治体や、実質的に年齢上限のない自治体もあるほどです。

ただし、年齢上限が高い試験は、一般的に高倍率となることが多いので、より一層の試験対策が必要となるでしょう。

採用条件の詳細については、応募したい自治体のサイトで確認しましょう。

不合格時のリスクを考慮&合格時は速やかに報告を

試験勉強に集中するため、先に公務員を辞めてしまいたい…と考える人もいるかもしれませんが、それはあまりにもリスキー!万が一、不合格になってしまったら、確実に無職の期間ができてしまいます。

上記のとおり、公務員試験は在職中に受けても良いのですから、今の公務員職と試験勉強を並行するのが得策です。

ただし、職場の上司などほかのメンバーには伝えないように。間違いなく職場の雰囲気は悪くなりますし、不合格になって現職場に残留ともなれば、肩身の狭い思いをすることになるでしょう。

また、晴れて試験に合格し、採用が決定したら、速やかに今の職場の上司に伝えましょう。やはり公務員ですから、きちんと手順を踏んで退職するべきです。決められた書類を作成し、現在の職場へ提出しましょう。

手順やルールさえ守れば、トラブルはほとんど起きません。あとは新天地で思う存分、力を尽くすのみです。

勤務体系の近い「団体職員」や「特殊会社」も狙い目

今の職場は辞めたいけれど、民間企業の勢いにはついていけないかもしれない、公務員試験も自信がない…そんなあなたは、公務員と勤務体系の近い、いわゆる「団体職員」や「特殊会社」へ転職することをおススメします。

「団体職員」とは?

独立行政法人、国公立大学法人、財団法人、社団法人、社会福祉法人、医療法人、学校法人、農協、漁協、生協、NPO法人などで働く人のこと。

これらの組織も、国や自治体と同様に営利目的で運営されていないため、暦通りの休みが取れ、残業も少ない傾向にあります。

「特殊会社」とは?

こちらは、簡単に言えば「もともと国営だったが、民営化した会社」のこと。

NTT、JT、JRなどが分かりやすいかと思います。また、日本政策金融公庫 、商工組合中央金庫、産業革新機構、成田国際空港、NEXCOなども特殊会社に含まれます。

あくまでも株式会社という形態を取っていますので利益は追求しますが、公共性の高い事業を行っており、組織風土も公務員に近い部分が色濃く残っていることが多いようです。

まとめ

安定を捨てるということは、危険なことにチャレンジするよりも、実は大きな勇気を要するのかもしれません。

せっかく試験に合格したのに、辞めるなんて、もったいない…それは、他者が決めることではなく、あなた自身が決めることです。

一度は公務員試験をパスしたという経験は貴重な財産ですし、新しい職場でさらに充実した仕事ができるのであれば、公務員からの転職が「もったいない」ものではなくなります。

「公務員を辞めたい」と一度でも考えたことのある人は、新たな一歩を踏み出す選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

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