職種別・地域別 大卒の初任給、平均いくら?|手取り・控除
初任給とは、社会人になって初めて受け取る給料のことです。
ここでは業界・職種別の大卒の初任給の平均額を紹介するとともに、初任給の高い企業や地域をランキング形式で紹介します。
大卒の初任給平均額はいくら?
大学を卒業した人の初任給について、厚生労働省の「令和5年度 賃金構造基本統計調査」をもとに見てみましょう。
大卒の初任給は平均23万7,300円
2022年の厚生労働省の調査によると、大卒の初任給の平均額は23万7,300円です(通勤手当を含む)。男女別に見ると、男性が24万300円、女性が23万4,300円と、女性の方がやや低い金額になっています。
毎月同じ金額をもらい、ボーナスはないと仮定して試算すると、年収は284万7,600円となります。
大卒初任給の推移 金額は上昇傾向に
大卒初任給の平均額がどう推移してきたか見てみると、アップダウンを繰り返してはいるものの、2013年以降は上昇を続けています。
これはここ数年の人手不足により、新卒採用においても売り手市場となっている影響が考えられます。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の有効求人倍率は1.55倍を記録し、バブル期の水準を超えています。初任給を上げることで、1人でも多くの優秀な新卒者を採用したいという企業側の思惑が見てとれます。
※参照:「令和5年賃金構造基本統計調査結果の概況(厚生労働省)」
ただし、これから就職活動をする人が応募する企業を選ぶ際、初任給だけを見るのはナンセンス。企業の平均年収やポジションが上がるとどのくらい昇給できるのかも併せて確認しておきましょう。
初めての給料日、満額もらえるとは限らない
就職して最初の給料日には、求人票に書いてあった初任給の満額をもらえるとは限りません。給料の締め日と支払日(給料日)のタイミングによりますが、たいていは締め日までの給料を日割りでもらう形になります。
たとえば「15日締めの25日支払い」という企業であれば、15日までの分の給料を、25日にもらえることになります。
4月中に最初に給料日が来るにもかかわらず満額がもらえるのは、たとえば「月末締め・25日払い」というように、締め日の前に給料日が来るパターンのみ。多くの人は、5月の給料日にはじめて満額の初任給を手にすることになります。
※初任給をもらうタイミングと金額の関係→初任給はいつもらえる?金額とあわせて解説
初任給はほぼ全額が手取りとなる
初任給が2023年の大卒者平均の23万7,300円の場合、手取り金額は22万1,349円。初任給からは控除される項目が少ないので、それ以降よりも手取り額が高くなります。
「手取り額」とは、会社から支給される「額面」給与から、税金や保険料などが「控除」として差し引かれ、実際に手にすることにできる金額のことです。初任給からは、所得税と雇用保険料のみが引かれます。
健康保険料や厚生年金保険料は翌月徴収としている企業が多いため、引かれる金額が大きくなります(一部、初任給からも引かれる企業あり)。また、2年目からは住民税も引かれるので、手取り額は額面の8割程度になります。
以下に給料から引かれる項目と、初任給が大卒平均の20万6,700円だった場合の手取り額をまとめました。
初任給から引かれる項目
・雇用保険…失業したときに失業給付金を受給するための保険。2023年4月からは給与の0.006~0.007%が引かれる。
※こちらでは、一般企業の0.006%で計算
・所得税…個人の所得(給与)に対して発生する税金。規定の金額が引かれる。
◆手取り金額=22万9,766円
=23万7,300円-雇用保険(1,424円)-所得税(6,110円)
初任給の翌月から引かれる項目
・厚生年金保険料…将来、年金を受給するために支払う掛け金。企業と労働者で折半した規定の金額が引かれる。
・健康保険料…病気や怪我の治療費の自己負担額を軽くするための保険。企業と労働者で折半した規定の金額が引かれる。
◆手取り金額=19万7,030円
=23万7,300円-雇用保険(1,424円)-所得税(6,110円)-健康保険料(11,976円)-厚生年金保険料(21,960円)-所得税(4,910円)
就職2年目から引かれる項目
・住民税…在住する都道府県や市町村に納める税金。前年1年間の所得に応じて発生。
◆手取り金額=18万8,2261円
=23万7,300円-雇用保険(1,424円)-健康保険料(11,976円)-厚生年金保険料(21,960円)-所得税(4,910円)-住民税(8,804円)
※前年の給与を「23万7,300円×9カ月」+「賞与:夏冬で計4カ月分」として計算(4月入社の場合、4~12月までの所得をもとに計算)
このほか、企業によっては労働組合費や共済費、積立金、社宅の家賃なども控除される場合があります。
※控除額の計算方法について詳しくは→「誰でもわかる給料の手取り計算方法&平均給与の実態」
※参照:「イージー給料計算」
【職種別】気になる初任給は?
ここでは公務員、研究職、看護師、技術者、事務員の初任給の平均額を紹介します。
ただし、同じ職種でも企業や働く地域によって初任給は異なります。また、公務員の場合は基本給が決まっていても、通勤手当や住宅手当、残業手当などによって初任給は変動します。
公務員は国家と地方で4~5万の格差
公務員には国家公務員と地方公務員があり、国家公務員法や地方公務員法によってそれぞれ給与が定められています。
国家公務員の場合
内閣官房内閣人事局「国家公務員の給与(令和3年度版)」によると、大卒程度の国家公務員の総合職の初任給は23万6,440円、一般職は22万9,440円です。ただし、手当などにより金額は変動する可能性があります。
総合職は将来の幹部候補を目指せるポジションで、キャリア官僚と呼ばれることもあります。多くの部下をまとめるマネジメント能力やゼネラリストとしての資質が求められる職種です。
一般職は中堅幹部候補を目指すポジションで、所属する省庁や機関によって仕事内容も大きく変わります。主に専門的なスキルを磨くことが多いようです。初任給は総合職に比べて若干低いですが、大卒の平均初任給は上回っています。
地方公務員の場合
地方公務員の初任給は地域や所属する機関によって変動するものの、概ね19~23万5,000円程度のところが多いようです。
一般に「公務員」としてイメージされるのは地方行政職ですが、警察官や消防士、学校教諭や看護師、保健師なども公務員に含まれます。具体的な初任給の例は以下の通り。
▼地方公務員の初任給例
・東京都Ⅰ類B(事務)(大卒):23万5,400円
※出典:東京都職員採用
・大阪府行政職(大卒):19万300円
※出典:大阪府 職員のモデル年収額
・愛知県行政職(大卒):20万7,800円
※出典:愛知県職員採用情報
研究職は21万9,146円
研究職の初任給は21万9,146円です。
なお、有名企業の研究職は倍率も高く狭き門であり、企業によっては大卒ではなく大学院卒を採用条件としているところも少なくありません。
例えばDHCの場合、大学卒業生の総合職の募集が6~10名なのに対して研究職はわずか1~5名となっています(2025年度新卒採用)。東京都立産業技術研究センターのように研究職の募集は「若干名」という企業もあります。
看護師は20万9,616円
日本看護協会の調査によると、大卒の看護師の初任給は20万9,616円で、諸手当込で27万1,730円。(2022年実績)
看護師は資格職で給与が高いイメージがありますが、実際は夜勤に入ったときにもらえる「夜勤手当」で稼いでいるケースがほとんどです。
なお、夜勤手当については病院ごとに独自の基準が設けられています。三交代制の場合は一回の夜勤につき平均4,000~5,000円、二交代制の場合は平均1万円程度の手当が支給されます。
※参照:「看護師の初任給いくら?専門卒と大卒の違いは?(看護roo!)」
技術者は21万5,365円
技術者の初任給は21万5,365円です。
新卒の技術者の需要は高まっており、とくに大手自動車メーカーや電機メーカーが採用に積極的に乗り出しています。人材確保を目的に、初任給や1年目のボーナスを引き上げる企業もあります。
事務員は21万1,094円
事務員の初任給は21万1,094円です。
事務職は人気の高い職業である一方、昇給が少なく年収が上がりにくいというデメリットもあります。事務職の中でも秘書や貿易事務は平均年収が高い傾向にあるようです。
※参照:「令和5年職種別民間給与実態調査の結果(人事院)」
コラム:文系と理系は年収で差がつく場合も
事務職(文系)と技術職(理系)の初任給に大きな差はありませんが、経験を積むと差が出てくることがあります。
実際、経済産業研究所の調査によると、文系出身者(男性)の年収は559万200万円、理系出身(男性)の場合は600万9900円と、約40万円の開きがあります。いずれも平均年齢は46歳です。
理系出身者は、専門的な知識やスキルの素地があり、専門職として経験を積んでいくケースが多いため、年齢を重ねるにつれてしっかり給料が上がっていくケースが多いようです。
※参考→「理系出身者と文系出身者の年収比較∗-JHPS データに基づく分析結果- 」(独立行政法人経済産業研究所)
学歴や地域で異なる初任給
初任給は将来の給与のベースともなります。そのため、なるべく条件の良いところに就職したいという方は多いでしょう。ここでは学歴や地域によって異なる初任給事情について紹介します。
学歴が高いほど初任給も高い
一般に院卒や大卒、高卒など最終学歴によって初任給の金額は変化し、最終学歴が高いほど初任給の金額も高くなります。これは業界・業種問わず共通している傾向です。
例えば、事務職の例を見てみましょう。
学歴 | 平均初任給(円) |
大学院博士課程修了 | 25万9,245 |
大学院修士課程修了 | 23万3,806 |
大学卒 | 21万1,094 |
短大卒 | 18万4,336 |
高校卒 | 17万3,442 |
※出典→「民間給与の実態 (令和5年職種別民間給与実態調査の結果)表2 初任給関係職種の職種別事業所数等及び平均初任給月額 (人事院)」
高卒で事務員になった場合の平均初任給は17万3,442円なのに対して、大卒は21万1,094円と、高卒と大卒で約3.8万円近くも差があります。さらに修士、博士と初任給はアップするため、同じ事務職であっても初任給には大きな差ができるのです。
ただし、日本の新卒採用では、初任給でも高額を出さなければならない修士、博士修了者を「オーバースペックである」と避けることもあるため、学歴が高すぎると就職先を見つけるのが難しくなる傾向もあります。
※詳しくはこちら→「一度なってしまうと抜け出せない?! 今も深刻な『ポスドク問題』」。
関東圏は高給! 初任給が高い都道府県ランキング
初任給は地方によっても変動します。初任給の高い都道府県ランキングは以下の通り。
※参照→「令和5年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況_表3 都道府県、性、学歴別初任給及び都道府県間格差(厚生労働省)」
堂々1位は秋田の26万7,700円。2位に山口、3位に静岡、4位に佐賀、5位に埼玉と続きます。
一方、初任給最下位は鳥取の20万2,400円。46位の岐阜とは4,500円ほどの差がついています。
初任給の平均額、男女で差が出る理由は?
労働基準法では「労働者が女性であること」を理由に賃金差別を行うことは禁止されており、求人票を見ても男女で初任給の違う仕事はありません。
しかし、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」における男女の初任給を比較すると、男性は24万300円、女性はちょうど23万4,300円と、女性のほうがわずかに低くなっています。これは、女が比較的給与の低い一般職や事務職に就く傾向にあるためと考えられます。
また、人事院の「令和4年民間給与実態調査」によると労働者全体の平均年収は男性が約563万円、女性は約314万円と大きな差がついています。女性は結婚や育児のためにキャリアが途切れたり、アルバイトやパート勤務を選んだりすることが多いため、収入減につながっていると考えられます。
IT強し! 初任給が高い業界ランキング
初任給は、業界・職種によっても異なります。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」を元に、初任給の高い産業をランキング形式でまとめました。
1位は鉱業,採石業,砂利採取業で27万3,300円、2位は情報・通信業で24万3,400円、3位は学術研究,専門・技術サービス業で23万5,300となっています。
一般に人材に対する需要の高い業界は、初任給が高額になる傾向があります。学術研究,専門・技術サービス業は専門的な知識をもつ学生が求められ、初任給が高額になっているようです。また、2020年に東京オリンピックを迎えることもあり、建設業周りの需要も高まっています。
一方、初任給がもっとも低い業界は複合サービス業です。複合サービス事業である郵便局や協同組合は組織規模が大きく安定しているため、離職率は低いものの、賃金面は厳しい状況のようです。
学生からの人気が高い企業ランキング
続いて就活生に人気の企業の初任給を見てみましょう。上位10位には、総合商社や金融系が多くランクインしており、高収入を求める就活生の傾向が伺えます。
多くの企業の初任給は平均以上であるものの、飛び抜けて高額というわけではないようです。さらに、勤務地域が限定される一般職などでは初任給が平均以下という例もありました。
※参照:東洋経済ONLINE/2万人の学生が投票した「就職人気ランキング」(2024年)
商社・金融は、他の企業と比べてもやはり初任給が高い傾向にあるようです。その他の企業の初任給は、意外にも平均と大差ありません。就職活動ではつい初任給の金額に注目しがちですが、長く勤めることを考えれば年収の伸び率をチェックすることも大切です。
昇給のペースが遅かったり、昇給の天井が低かったりすると、初任給が高くても経験を積んでから給料に不満を抱く原因になりかねません。これから就職活動をする人は、初任給だけでなく企業の安定性や将来性なども考慮し、総合的に判断して応募する企業を決めましょう。
まとめ
大卒の初任給は年々増加傾向にありますが、初任給が高いからといって年収も高くなるとは限りません。また、働く地域や業界、職種によっても平均は異なります。就職活動では初任給の金額を参考程度にとどめ、慎重な企業選びを行いましょう。
この記事の担当者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。