平均年収527万円丨社会保険労務士って稼げる仕事?

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スーツを着た女性

社会保険労務士法に基づいた国家資格である社会保険労務士は、企業の各種保険に関する手続きや書類作成、労務関係のコンサルティングなどを行う資格です。

資格取得後は開業するだけでなく、企業の人事部や総務部などでも活用できる実用的な資格として人気がありますが、実際どのくらい稼げるのかは気になるところ。

このページでは、年収の実情や年収アップの方法、仕事内容から資格の取り方まで、社会保険労務士として働く上で知っておきたい情報をご紹介します。

【目次】
1.平均年収は527万円!大きな個人差アリ
43歳、勤続年数10.5年で平均年収527万円
【平均年収の推移】最も高かった年は855万円
【規模別】年収と規模に大きな関係はナシ
【男女での違い】女性でも高収入が狙える
2.社会保険労務士の主な仕事は3つ
各種保険に関する手続きや給与計算
人事・労務に関するコンサルティング
企業や個人を対象とする年金相談
3.安定志向の「勤務型」と年収1,000万円も夢ではない「開業型」
「勤務型」企業や社会保険労務士事務所に就職
「開業型」年収がいくらになるかは自分次第
顧問企業増加が年収アップの決め手
【コラム】スキルアップ!関連資格と兼業
4.合格率4.4%!社会保険労務士への道のり
受験資格は「学歴・実務試験・国家資格」いずれか
合格率は一ケタ、難関試験の実情
登録には2年以上の実務経験か講習受講が必須
5.まとめ

1.平均年収は527万円!大きな個人差アリ

大手資格スクールで資料請求数2位となるなど人気のある社会保険労務士ですが、実際に働いている人の年収はどれくらいなのでしょうか。平均年収の推移や勤務先の規模別、男女別の年収を調査してみました。

43歳 、勤続年数10.5年で平均年収527万円

2016年に行われた厚生労働省の調査によると、社会保険労務士の平均年収は527万円。一般的な給与所得者は490万円なので、社会保険労務士はやや高めです。

平均年齢は43.3歳と一般的な給与所得者より高く、逆に勤続年数は10.5年で社会保険労務士のほうが短くなっています。

社会保険労務士と一般的な給与所得者の平均年収

 ※参考→賃金構造基本統計調査-厚生労働省

【平均年収の推移】最も高かった年は855万円

平均年収の推移はどうでしょうか。2005年から2016年までの社会保険労務士の平均年収と、一般的な給与所得者の平均年収を比べてみました。

社会保険労務士_平均年収の推移

一般的な給与所得者の平均年収は480万円前後でほぼ横ばい。一方、社会保険労務士は最も高かった年で855万円、最も低かった年で348万円と、年によってバラつきがあります。

こうした結果になっているのは、一口に社会保険労務士といっても働き方で個人の年収が大きく変わってくる上、調査の対象となる社会保険労務士の数も少なく、年によって人数や年齢、性別がまちまちなため。特に理由があって上がり下がりしているわけではありません。参考程度にしておきましょう。

【規模別】年収と規模に大きな関係はナシ

平均年収を勤務先の規模別で比較すると、従業員数が10人~99人で519万円、100人以上で540万円。その差は21万円です。

規模が大きくなるにつれて年収が多くなりそうなイメージがありますが、そうならないのは社会保険労務士の働き方が関係しています。

社会保険労務士の働き方には、自ら事務所を開く「開業型」と、企業や社会保険労務士事務所に勤務する「勤務型」があります。社会保険労務士事務所は小規模のところがほとんどですが、自分で事務所を開けば実力次第で仕事を増やすことができるので、高い年収を得ることも可能。一方、企業で働く場合は、あくまで一般の従業員として採用されるのがほとんど。年収は通常の会社員とさほど変わりません。

※詳しくは→3.安定志向の「勤務型」と年収1,000万円も夢ではない「開業型」

【男女での違い】女性でも高収入が狙える

2016年の平均年収を男女別で比較すると、男性が507万円、女性が555万円で、女性の方が高くなっています。一般的な給与所得者の平均年収は男性が549万円、女性が376万円なので、社会保険労務士は他の仕事と比べて女性でも高収入を狙える可能性があると言えます。

社会保険労務士の特徴のひとつとして、ほかの士業に比べて資格取得者に占める女性の割合が高いことが挙げられます。2016年度に行われた社会保険労務士試験の合格者に占める女性の割合は33.9%。下の表からも分かる通り、ほかの士業の試験に比べて女性の割合が高くなっています

主な士業の試験合格者に占める男女比

※参考→平成28年度行政書士試験実施結果の概要-一般財団法人行政書士試験研究センター
※参考→平成28年度 第2次試験-一般社団法人中小企業診断協会
※参考→平成28年度宅地建物取引士資格試験実施結果の概要-一般財団法人不動産適正取引推進機構

社会保険労務士は、企業で人事や総務に関わる仕事をしながら資格を取得する人も少なくありませんが、そもそも人事や総務は比較的女性の割合が高い仕事。このため、合格者に占める女性の割合がほかの士業に比べて高くなりやすいと考えられます。

2.社会保険労務士の主な仕事は3つ

一般の給与所得者に比べて年収の高い社会保険労務士ですが、実際にはどんな仕事をしているのでしょうか。社会保険労務士の仕事内容は大きく分けて3つ。ひとつずつご紹介します。

各種保険に関する手続きや給与計算

dentaku 企業には、従業員を適切な労働社会保険に加入させたり、労働に関する書類を行政官庁に届け出たりすることが法律で義務付けられています。

社会保険労務士の仕事としてまず挙げられるのが、こうした労働関係法令や社会保険法令に基づく各種書類の作成や届け出など。

具体的には、

・社員の入社、退社にともなう労働社会保険の資格取得、喪失手続き
・労働保険の年度更新
・標準報酬月額を定めるための算定基礎届に関する手続き
・各種助成金などの申請
・労働者名簿や賃金台帳の作成
・就業規則の作成

といった業務がこれにあたります。

例えば中小企業の場合、こうした業務を社外に委託することもありますが、報酬を得てこれらを行うことは社会保険労務士の独占業務。資格を持った社会保険労務士にしかできません。また、こうした業務とあわせて従業員の給与計算業務を委託されるケースも多くあります。

人事・労務に関するコンサルティング

2番目に挙げられるのが、企業が抱える人事や労務に関する悩みをスペシャリストとして解決するコンサルティング業務です。

具体的には、

・労働時間に関する相談
・人材の採用・育成
・賃金制度の設計
・福利厚生の見直し

などがあります。

パートやアルバイト、派遣社員など多様な雇用関係に対応した就業規則の作成や、定年延長に伴う退職金制度の見直しなど、人事・労務関係の課題を抱えている企業は増えており、コンサルティングに対するニーズは高まっています。これらは社会保険労務士の独占業務ではありませんが、人事・労務の専門家である社会保険労務士にとっては重要な仕事です。

企業や個人を対象とする年金相談

nenkintechou「消えた年金」問題などの影響で、「年金をきちんともらえるのか」「どれくらいもらえるのか」という不安を抱える人が多くなりました。「公的年金に関する唯一の国家資格」である社会保険労務士の中には、こうした人から年金に関する相談を受け付けたり、手続きを手伝ったりといった業務を積極的に行っている人もいます。

具体的には、

・街角の年金センターでの年金相談業務
・年金の加入期間、受給資格などの確認
・年金受給の申請手続き
・障害年金の手続き代行

など。先に挙げた「各種保険に関する手続きや給与計算」と「人事・労務に関するコンサルティング」の2つの業務は企業向けでしたが、年金相談はほとんどが個人向けの仕事となります。

3.安定志向の「勤務型」と年収1,000万円も夢ではない「開業型」

弁護士や税理士のように、資格を取ったら自分で事務所を開業するイメージの強い士業。ですが、社会保険労務士は資格を生かして企業で勤務する人が比較的多いというのも大きな特徴です。企業や社会保険労務士事務所に務める「勤務型」と、自ら事務所を開く「開業型」の2つに分けられる社会保険労務士の働き方についてご説明します。

「勤務型」企業や社会保険労務士事務所に就職

「勤務型」の社会保険労務士の勤め先は、企業や社会保険労務士事務所などです。

企業に勤める場合、資格を生かして人事・総務関係の仕事をするのが一般的。企業でこうした業務に就きながら、キャリアアップのために資格を取る人も少なくありません。

2016年の社会保険労務士試験の合格者を年代別に見てみると、20代はわずか9%で、30代と40代がそれぞれ32%。30代以上で資格を取る人がほとんどです。職業別では会社員が半数を超えており、仕事をしながら資格を取得する人が多いことが分かります。

社会保険労務士試験合格者の年代別割合

※参考→第48回社会保険労務士試験の合格者発表-厚生労働省

企業に勤務する社会保険労務士の場合、資格手当がつき、年収アップにつながることもあります。

ただし、企業では社会保険労務士として採用されることはほとんどなく、あくまで普通の従業員として勤務するのが一般的。就職や転職をする場合は、人事部や総務部など事務系職種に応募し、応募書類や面接で社会保険労務士の資格をアピールすることになります。

社会保険労務士として働きたい場合は、社会保険労務士事務所に就職・転職という道もあります。求人数は事務所の規模によりますが、多くの場合が欠員補充のみの募集です。そのため、採用人数が少なかったり、実務経験を求められたりと、ハードルは低くありません。

「勤務型」のメリットは安定性。特に企業に勤める場合、「今月は仕事をあまり受注できなかった」といったことはないので、毎月安定した収入を得られます。一方、年収はほかの従業員とさほど変わらないため、極端に高い収入は望めません。

「開業型」年収がいくらになるかは自分次第

kaigishitu「開業型」は事業主として自ら事務所を構える社会保険労務士です。主に専門スタッフのいない中小企業などから各種保険に関する手続きやコンサルティング業務を受注し、それによって報酬を得ています。社会保険労務士の約3分の2が開業型で、勤務型の人よりも多くいます

開業する場合、顧客との関係を一から作っていかなければいけません。このため、開業後1年から2年ほどの社会保険労務士は、年収が100万円~200万円の人も多くいます。一方、契約を結ぶほど年収もアップするので、開業型では年収の幅が広くなります。

ノウハウがないまま開業すると失敗のリスクが高まるので、一度勤務型で経験を積んでから開業する人がほとんどです。開業後年収が低くなってしまうことを避けるために、社会保険労務士の学校や通信講座で講師を務めながら働く人もいます。別の収入を確保しつつ顧客を増やしていくのも、一つの手です。

顧問企業増加が年収アップの決め手

「開業型」の社会保険労務士の報酬には、「顧客と一回限り契約を結び単発で得る報酬」と、「顧問契約を結び継続的に業務を受注して得る報酬」の2つのタイプがあります。

社会保険労務士が行う各種保険に関する手続きや労務相談といった業務は、特定の時期だけに必要となるものではありません。このため、企業は社会保険労務士事務所と継続的な顧問契約を結ぶことが多くなります。顧問契約の報酬は社会保険労務士事務所によって違いますが、顧問企業の従業員が多いほど報酬も高額になります。

かつては、都道府県ごとに定められた報酬基準に基づき、それぞれの社会保険労務士事務所が報酬額を設定していました。現在は自由化されていますが、それでも旧報酬基準に近い金額となっています。東京都社会保険労務士会が定めていた顧問報酬の旧報酬基準(抜粋)をご紹介するので、参考にしてみてください。

【参考】東京都社会保険労務士会 顧問報酬の旧報酬基準

従業員数 報酬(月額)
4人以下 2万円
10~19人 4万円
50~69人 8万円
100~149人 13万円
200~249人 19万円

 顧問契約を結べば、毎月固定された報酬を受取ることができるので、単発で業務を受注するよりも安定した収入を得ることができます。

開業型の社会保険労務士が収入をアップさせるには、この顧問契約を結ぶ企業をいかに増やすか、が決め手となります。そのためには、契約を勝ち取るための営業力と、社会保険労務士の仕事の中でも「人事・労務に関するコンサルティング業務」の能力を高めることが大切です。各種書類の作成や提出代行は人によって大きな違いが出るものではありません。コンサルティング業務を通して築いた信頼が、安定した顧問契約につながるのです。

【コラム】スキルアップ!関連資格と兼業

・特定社会保険労務士
特定社会保険労務士とは、社会保険労務士の業務に加えて、紛争解決手続代理業務を行うことができる資格のことです。
従業員と企業の間で労働に関わる問題が発生したとき、裁判を行うと時間も費用もかかります。そこで、特定社会保険労務士が間に入って話し合い、あっせんや調停、仲裁などの手続きを行うことを紛争解決手続代理業務といいます。
特定社会保険労務士になるには、社会保険労務士の資格を取得した上で「紛争解決手続代理業務試験」に合格する必要があります。

・行政書士
行政書士は、行政に関わる書類全般を扱うことができます。社会保険労務士と同じく各種申請手続きに携わる仕事ですが、分野が違います。そのため、兼業で幅広い業務を担当することができます。どちらも法律知識が問われる試験なので、社会保険労務士の受験勉強を活かすことができます。

・中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営コンサルティングが主な業務です。企業が成長するための戦略をアドバイスし、経営計画や経営環境の変化にともなった支援をします。中小企業診断士の資格は、社会保険労務士のコンサルティング業務にも役立ちます。

4.合格率4.4%!社会保険労務士への道のり

stepup_kokubanここまでは社会保険労務士の年収や仕事内容についてご紹介しましたが、実際に社会保険労務士の資格を取得するためにはどうすればいいのでしょうか?
難関資格と言われる社会保険労務士になるための道のりをまとめました。

受験資格は「学歴・実務試験・国家資格」のいずれか

社会保険労務士試験を受験するためには、まず受験資格を満たす必要があります。受験資格は大きく「学歴」、「実務経験」、「国家資格」の3つに分けられ、どれか1つを満たしていなければ受験することができません。

学歴
1.大学、短期大学、高等専門学校のうちいずれかを卒業している
2.大学で、一般教養科目の学習を終えるか、62単位以上を取得している
3.厚生労働大臣が認める、一部の専修学校や専門学校を卒業している
実務経験
1.労働社会保険に基づいた法人で、事務を3年以上している
2.公務員や特定独立行政法人などで、事務を3年以上している
3.社会保険労務士や弁護士の補助を3年以上している
4.労働組合の役員として労務を3年以上している
資格
1.厚生労働大臣が認めた国家試験(国家公務員など)に合格している
2.司法試験を、決められた範囲まで合格している
3.行政書士の資格を持っている

上記は一例なので、詳しく知りたい方は「受験資格・事前確認-全国社会保険労務士会連合会 試験センター」をご覧ください。

合格率は一ケタ、難関試験の実情

goukaku_hachimaki 社会保険労務士は、合格率が毎年10%以下の難関試験です。厚生労働省の発表によると、2016年の社会保険労務士試験は受験者数39,972人に対し合格者数は1,770人。合格率はわずか4.4%でした。過去には合格率が2.6%だったこともあり、簡単に合格できるものではありません。

気になる試験科目は、労働基準法や雇用保険法、国民年金法など8科目。それぞれの科目と合計の両方で合格基準点を満たす必要があります。公務員として労働社会保険法令に関係した事務を10年以上していた人などは、一部科目が免除されることもあります。詳しくは「試験科目の一部免除資格者一覧-全国社会保険労務士会連合会 試験センター」をご覧ください。

どのような方法で学ぶかにもよりますが、社会保険労務士試験に合格するためには1,000時間以上の勉強が必要だと言われています。試験の10ヶ月前から始めたとすると、1日平均3.3時間。軽い気持ちで挑めるものではありません。

試験日は8月、受験手数料は9,000円かかります。試験日を見据えた上で、しっかりとした勉強計画を立てることがポイントです。

※参考→社会保険労務士試験とは-全国社会保険労務士会連合会 試験センター

登録には2年以上の実務経験か講習受講が必須

晴れて社会保険労務士試験に合格しても、社会保険労務士会連合会に登録しなければ、社会保険労務士として業務を行うことはできません。

社会保険労務士会連合会に登録するには、労働社会保険諸法令に関する実務を2年以上経験しているか、全国社会保険労務士会連合会が主催する事務指定講習を受講することが必要です。2年以上の実務経験がある人は少ないため、合格者の多くは事務指定講習を受講することになります。

事務指定講習では、教材を使って自己学習し、通信教育のように添削指導を受ける「通信指導過程」(4カ月間)と、座学形式の「面接指導過程」(4日間)を受講しなければなりません。面接指導課程が受けられるのは東京・愛知・大阪・福岡の4カ所だけなので、仕事をしながら社会保険労務士を目指している人は特に注意が必要です。事務指定講習には「いつまでに受講するように」といった決まりがあるわけではないので、都合に合わせて受講するといいでしょう。

5.まとめ

労働環境を取り巻く法令や雇用環境が日々変化していく中で、社会保険労務士のニーズは増加しています。一方、働き方によって年収には大きな違いも。「せっかく難関試験を突破したのに思ったほど稼げなかった…」なんてことがないように、きちんとしたビジョンを持って挑むことが大切です。