公務員or会社員 単身赴任手当ってなに?相場はいくら?
突然転勤を言い渡されたものの、転勤先まで現在の家から通勤することが難しい場合は、引っ越しや単身赴任を考えなくてはなりません。
この記事では、単身赴任手当についてだけではなく、関連する手当についても紹介します。
単身赴任手当ってなに?
単身赴任手当とはどんなもので、どんな目的で支給される手当なのでしょうか。
単身赴任手当は、単身赴任の負担を軽減するための手当
単身赴任手当とは、元々住んでいた家に家族を残し、転勤先に一人で住んでいる場合に毎月会社から支給される手当のことです。別居手当とも呼ばれます。
単身赴任をするとなると、元々住んでいた家の家賃や家族の生活費に加え、新たに一人暮らしをする家の家賃や光熱費など、多くのお金がかかります。単身赴任手当は、その負担を少しでも軽くするためのものです。
単身赴任=家族を残し一人で転勤すること
単身赴任とは、家族を残し一人で転勤することです。そのため、結婚していない独身の人が転勤することは、定義上単身赴任とは言いません。
転勤先に家族で引っ越すのではなく単身赴任をするのには、以下の理由が多いでしょう。
- 子どもを転校させたくない
- 配偶者が仕事をしている
- 持ち家がある
- 介護中の家族がいる
単身赴任手当が支給される条件
単身赴任手当が支給される条件は、企業によってさまざまです。
一方で、公務員の単身赴任手当は、以下の5つの条件のいずれかに当てはまる場合に支給されることが人事院の規定で定められています。
- 配偶者が、自分や配偶者の両親を介護する
- 配偶者が、学校その他の教育施設に在学する子どもを養育する
- 配偶者が現在の勤め先に引き続き就業する
- 配偶者が、所有する住宅を管理するために引き続き居住する
- 本人の通勤距離が60km以上ある、もしくは60km未満であっても通勤方法・通勤時間の状況から通勤が困難である
※参考:人事院規則9-89 第2条より
一般企業の場合も、これと同様の条件を設けていることが多いようです。ただし、そもそも単身赴任手当がない企業もあります。
単身赴任手当の金額の相場 ~公務員or会社員~
単身赴任手当は、いくらくらい支給されるのでしょうか?ここでは、公務員の規定の金額と、民間企業の平均金額を紹介します。
公務員の場合は月額30,000円+距離に応じた加算額
人事院の規則では、単身赴任手当は月額30,000円とすることと、さらに転勤先の家と家族の住む家までの距離に応じて加算された額が支給されることが定められています。
距離に応じた加算額は、以下のとおりです。
距離 | 支給額 |
100km~300km | 8,000円 |
300km~500km | 16,000円 |
500km~700km | 24,000円 |
700km~900km | 32,000円 |
900km~1,100km | 40,000円 |
1,100km~1,300km | 46,000円 |
1,300km~1,500km | 52,000円 |
1,500km~2,000km | 58,000円 |
2,000km~2,500km | 64,000円 |
2,500km以上 | 70,000円 |
※参考:人事院規則9-89 第4条より
例えば、東京から大阪に赴任した場合、東京-大阪間が直線で約400kmなので、単身赴任手当として月々46,000円(30,000円+16,000円)が支給されます。
民間企業の場合は平均47,600円
2020年度に厚労省が発表した最新のデータによると、民間企業の単身赴任手当・別居手当等の平均支給額は47,600円です。前回(2015年度)のデータでは平均支給額が46,065円、前々回(2010年度)は41,001円となっており、企業の規模により多少の違いはありますが、45,000円前後が相場であると考えられます。
※参照:令和2年就労条件総合調査
単身赴任手当以外の補助金・手当の種類
単身赴任をすると、新しく住む家の家賃や光熱費など今まで以上に出費がかさむものです。その出費を負担するために、企業の中には、単身赴任手当以外にも補助金や手当を用意しているところもあります。
家賃補助(住宅手当)
家賃の負担を軽くするための手当を家賃補助(住宅手当)と言います。
2020年度の厚労省の調査では、17,800円が民間企業の平均支給額となっています。家賃補助が手当として給料に上乗せされている場合もあれば、会社の寮や会社が契約している物件の家賃を2~5割程度家賃補助として会社が負担し、低額で住めるという形をとる場合もあります。
単身赴任手当を支給されている公務員の場合、自分の家の家賃を月額12,000円以上支払っていれば住宅手当が支給されます。さらに、家族の住む家の家賃も月額12,000円以上支払っていれば、家族の住む家に対しても単身赴任先の家に対する補助金額の1/2の額の手当が支給されます。
帰省旅費手当
帰省旅費手当とは、単身赴任先から家族が住む家に帰省する際の交通費を負担するために支給される手当のことです。交通費実費の全額が支給されることが一般的ですが、月に1回分や年間◯回分などの条件が付く場合が多いようです。
転勤支度金(単身赴任準備金)
転勤支度金(単身赴任準備金)とは、転勤に伴い一人暮らしをする場合にかかる引越し費用や、生活家電の購入代金の負担を補助する手当です。
手当として支給される金額は、かかった金額の8割や固定額3万円、かかった金額全額など企業によって様々です。
単身赴任手当は給与課税の対象になる?
手当の種類によって課税対象かどうか、違いはあるのでしょうか?
支給された手当が全額手元に残るわけではない
単身赴任手当は給与に含まれて支払われるため、所得税と社会保険料を徴収されます。そのため、所得金額によって異なりますが、仮に30,000円の手当が支給されたとしても手元に残るのは8割前後の24,000円ほどになります。
他の手当は条件を満たしていれば非課税の場合も
単身赴任手当や、家賃補助(住宅手当)、帰省旅費、転勤支度金(単身赴任準備金)など会社から支給される手当は、基本的にすべて課税対象になります。これらの手当は、職務遂行に関して必要なものではなく、その従業員に対する報酬として扱われるためです。
一方、例えば自宅から会社までの交通費は、職務遂行にとって必要な経費であるため、限度額はありますが非課税と規定されています。
※参考:所得税法施行令第20条の2
手当の名称 |
課税or非課税 |
単身赴任手当 | 課税 |
家賃補助(住宅手当) | 課税
ただし、借上げ社宅の場合は非課税扱い |
帰省旅費手当 | 課税
ただし、例外あり |
転勤支度金(単身赴任準備金) | 課税
ただし、例外あり |
家賃補助が給与に含まれて支払われる場合は、課税対象になります。しかし、借上げ社宅で家賃の一部を会社が補助し、残りが給料から天引きされる場合は、一定の条件を満たすと非課税扱いになります。
帰省旅費手当も職務遂行のためではなく、給与として支払われるものなので、原則的には課税対象です。出張のついでに帰省した場合の旅費は、目的が職務遂行上必要な交通費であると考えられ、経費として計上することができます。
まとめ
異動に伴い単身赴任という選択をするかどうかは、現在の収入や家族の状況、また会社の就業規則や給与規定などをよく確認し、家族と話し合って決めましょう。
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所