国家/地方公務員・民間企業 地域手当とは? 相場は?

給与として基本給のほかにいくつかの手当が支払われるという方は多いでしょう。その手当のひとつに地域手当があります。

今回は、公務員や民間企業で受け取れる地域手当の概要や相場についてご説明します。

地域手当とは? 目的と種類を解説

地域手当とはどのような目的で支給され、どのような種類があるのか、わかりやすく説明します。

国家公務員の規定をもとにしていますが、地方公務員や民間企業でもほとんど同様のものが採用されています。

地域手当は生活費の差を埋めるための手当

地域手当とは、同じ省庁や自治体、企業でも、勤務地によって生じてしまう支出の差(物価や暖房費など)を埋めるための手当です。企業によっては勤務地手当や調整手当、地域給などの名称を使用していることもあります。

地域手当は物価が高い都市部に支給する手当のほか、特地勤務手当や寒冷地手当などがあります。それぞれの詳細について、国家公務員の手当を例に説明していきます。

1東京都など都市部に支給される地域手当

東京都近辺や京阪神地方など、物価が高く民間企業の賃金の高い地域に勤務する職員に支給される手当です。

地域ごとに支給割合が決められ、東京23区では月給の20%、大阪市や横浜市は16%と高い数値になります。

2離島や山間部に支給される特地勤務手当

離島や山間部など、生活を送る上で不便な地域に勤務する職員に支給される手当です。

地域によって金額が変わり、国家公務員の規定では給与の月額の約4~25%が支給されます。また、特地勤務手当に準ずる手当もあり、給与の月額の約2~6%が支給されます。

3寒く雪の多い地方に支給される寒冷地手当

北海道や東北地方など、寒く雪が多く暖房費がかさむ地域に勤務する職員に支給される手当です。

国家公務員の規定では、支給は11月~3月の寒冷期に限られ、扶養親族がいる場合は月に 1万7,800~2万6,380円、扶養親族がいない世帯主の場合は1万200~1万4,580円、独身の場合は7,360~1万340円支給されます。

4遠い地域に移動する人が受け取れる広域異動手当

転勤により、遠い地域に異動した職員が受け取ることのできる手当です。

国家公務員の規定では、元の職場と異動先の職場の距離が60km以上の場合に、給与の月額の5%もしくは10%が3年間支給されます。移動距離と支給割合の関係は以下の通りです。

移動距離と支給割合の関係

移動距離300km未満の支給割合は5%。300km以上だと10%。

国家公務員の地域手当の相場と基準【一覧表つき】

国家公務員の地域手当の支給割合を一覧表にして紹介します。

あわせて特地勤務手当、特地勤務手当に準ずる手当の計算法、国家公務員独自の異動保障(広域異動手当)についても説明します。

地域手当の相場は? 支給割合一覧表

地域手当の支給割合は、地域によって異なります。地域別の支給表は以下の通りです。

「級地」とは生活様式や物価の差などをもとに定められた地域の区分のこと。また、「支給割合」は給与のうちのどのくらいが地域手当として加算されるかを示しています。

国家公務員の地域手当一覧表
【国家公務員の地域手当一覧表】級地	主な支給地域	支給割合の順で。1級地:東京23区 20%。2級地:大阪市、横浜市 16%。3級地:さいたま市、千葉市、名古屋市 15%。4級地:神戸市 12%。5級地:水戸市、大津市、京都市、奈良市、広島市、福岡市 10%。6級地:仙台市、宇都宮市、甲府市、岐阜市、静岡市、津市、和歌山市、高松市 6%。7級地:札幌市、前橋市、新潟市、富山市、金沢市、福井市、長野市、岡山市、徳島市、長崎市 3%。

※参考・詳細:e-gov「人事院規則九―四九(地域手当)別表第一(第二条、第三条関係)」

国家公務員の地域手当の計算方法は?

国家公務員の俸給が30万円とした場合の詳しい計算方法を紹介します。

<地域手当>
(俸給+俸給の特別調整額+専門スタッフ職調整手当+扶養手当) の月額×支給割合

仮に俸給の特別調整額6万円、専門スタッフ職調整手当5万円、扶養手当3万円とすると以下の式で計算できます。

(30万+6万+5万+3万)×3~20/100

=1万3,200~8万8,000円

<特地勤務手当>
{特地官署に勤務することになった日の(俸給+扶養手当)の月額×1/2+現に受ける(俸給+扶養手当)の月額×1/2}×支給割合

支給割合は僻地の中でも比較的便利な1級地は4%であり、もっとも不便な6級地で25%になります。仮に扶養手当を3万円、勤務することとなった日の月額を28万円とすると以下の式で計算できます。

{(28万+3万)×1/2+(30万+3万)×1/2}×4~25/100

=1万2,800~8万円

<特地勤務手当に準ずる手当>
異動等の日の(俸給+扶養手当)の月額×(2%~6%)

扶養手当を3万円、勤務することとなった日の月額を28万円とすると以下の式で計算できます。

(28万+3万)×(2%~6%)=6,200~1万8,600円

俸給…収入から国家公務員に支払われる手当を引いた基本給
棒級の特別調整額…国家公務員の管理や監督の地位にある職員に支給される手当
専門スタッフ職調整手当…専門スタッフ職の3級職員が、極めて高度の専門的な知識経験や識見を活用して遂行することが必要とされる業務で重要度や困難度が特に高いものに従事する場合に、支給される手当
扶養手当…配偶者や子どもなど扶養親族のいる職員に与えられる手当

地域手当の異動保障とは?

地域手当の異動保障とは、地域手当が支給される地域に6ヶ月以上勤務したあと、地域手当が低い地域や地域手当がない地域に異動する職員に対して3年間支給される、国家公務員の地域手当です。異動後の1年間は、異動前の地域と同じ支給割合、2年目は8割が地域手当として支給されます。

地方公務員・民間企業の地域手当について

地域手当は国家公務員だけでなく、地方自治体や民間企業にもあります。

地方公務員や民間企業にはどのような地方手当があり、どのように支給されているのかを紹介します。

地方公務員の地域手当

地方公務員の地域手当は自治体により異なりますが、国家公務員の地域手当特地勤務手当寒冷地手当にあたる手当のほか、僻地手当を設けている場合もあります。

地域手当を支給している自治体は、2021年において全国で466件(26.1%)。東京23区では100%支給されています。都道府県は68.1%に上りますが、市町村では23.1%となっています。

支給率は国の基準と同様である場合が342件(19.1%)を占めますが、国の基準を上回る自治体も60件(3.4%)存在します。東京都、神奈川県、愛知県、福岡県には国の基準以上の自治体が多くあります。

※詳しくは→地方公務員の地域手当について

さまざまな問題から見直し・廃止の要望も

地方公務員の地域手当はさまざまな問題点があり、廃止の要望もあります。

一番の問題は、同地域の民間企業との賃金差は解消できても、自治体の違いによる格差が生まれることです。隣り合う自治体でも格差が生じることがあります。

そのため、2015年から地域間の給与配分の見直しにより、平均で2%の給料の引き下げが行われ、それに伴い東京23区などの高物価地域では民間企業との格差を埋めるために地域手当の引き上げが行われました。

民間企業の地域手当

民間企業の場合、地域手当に法的な規定はありませんが、給与の地域差を調整するために制度として設けている企業もあります。

厚生労働省の2020年の調査では、地域手当の金額は企業平均で2万2,800円ですが、会社により金額の差が大きく、全く支給しない会社も多いようです。

地域手当の制度は、あくまで補填的な手当です。同じ仕事でも地域によって給与が違う企業内格差などの問題が生じることが多く、廃止される傾向にあります。地域手当の有無や金額は求人票でチェックしましょう。

※参考:令和2年就労条件総合調査|厚生労働省

まとめ

地域手当は国家公務員や地方公務員、一部の民間企業に設けられている制度で、地域によって金額が違います。

就職先を決める際や、自分の給料の手当ての確認などの参考にしてください。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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