計算式でわかりやすく解説 離職率の計算方法
原則、離職率が低い会社は働きやすい会社です。
就職活動をする人の中には、会社の離職率や業界の離職率などを気にする人も多いのではないでしょうか? 離職率の計算方法から意味の読み解き方まで説明していきます。
離職率の計算方法 3年後離職率も
離職率とは「ある時点で企業に在籍していた従業員のうち、一定期間後に退職した人の割合」のこと。
例えば、2018年4月に入社した新入社員20人のうち、3年後に2人が退職していた場合、離職率は10%です。
一定の期間でどれだけの人が企業を辞めたのかがわかるため、企業の働きやすさの指標になるといわれています。
離職率の計算方法は「離職人数÷従業員数×100」
離職率は、対象となる期間と対象の従業員を定めれば、以下の計算式で算出できます。
対象となる期間は「1年間」「3年間」などで、対象となる従業員は「全従業員」「新卒」などと設定されることが多いです。
例えば、2018年1月1日時点で全従業員100人(うち新卒10人)の会社から1年間で新卒2人を含む従業員が10人退職した場合、離職率は以下のように計算できます。
<全従業員の離職率>
離職率=離職人数÷従業員数×100
=10人÷100人×100
=0.1×100
=10%
よって、全従業員の離職率は10%。
<新卒社員の離職率>
離職率=新卒の離職人数÷新卒の従業員数×100
=2人÷10人×100
=0.2×100
=20%
よって、新卒社員の離職率は20%。
離職率を計っている一定期間内で、中途入社した人は母数に含まず除外して計算されることが多いですが、明確な計算方法はなく、企業によって計算方法は異なります。
また、全従業員の離職率計算の際に定年退職者を含むかどうかは、企業によって異なります。
たとえば『就職四季報』に載っている離職率のデータは、その年度の離職者数÷年度初めの時点の総従業員数で算出されています。定年退職やグループ会社への転籍は含まれていません。
3年後離職率の計算方法
新卒の離職率の場合、3年後離職率という指標が重要だといわれています。
3年後離職率は、離職率の計算対象期間を新卒の入社日から3年、対象従業員を新卒とすれば計算できます。
計算例は、以下の通り。
<2018年4月1日で入社した新卒10人のうち、4人が3年後(2021年4月1日)までに退職した場合>
離職率=離職人数÷従業員数×100
=4人÷10人×100
=0.4×100
=40%
よって、新卒社員の離職率は40%。
3年後離職率は3割が1つの指標
3年後離職率は、企業の働きやすさを判断する指標として重要だといわれており、3割より低ければ働きやすいという一つの基準になります。
それは、厚生労働省の調査における2016年に入社した大卒者の離職率の平均が約3割(32.0%)だからです。
5割、6割など平均を上回って離職率が高い場合は、仕事のストレスが大きい、労働時間が長いなどの問題がないか調べてみたほうが良いでしょう。
ちなみに同じ年の中卒者の3年後離職率は62.4%、高卒者の3年後離職率は39.2%となっています。
※参考→新規学卒者の離職状況|厚生労働省
コラム:定着率とは
離職率と併せて覚えておきたい言葉として「定着率」があります。定着率とは、離職率とは反対に、ある時点の在籍人数に対する一定期間後に残っている人の割合のこと。
以下のいずれかの式で求めることができます。
- 定着率=100%-離職率
- 定着率=残っている人数÷従業員数×100
離職率からみる企業の傾向
離職率が高い、低いという状態がどのような意味を持つのか、離職率が高い業種と低い業種はどこかについて解説いたします。
離職率が高い企業、低い企業の特徴とは?
離職率が高い企業、低い企業にはそれぞれプラス面とマイナス面があります。
離職率が高い企業は待遇に問題がありがち
離職率が高い企業は「休みが少ない」「業績が悪い」「給与が少ない」など待遇面の悪さが要因となっている確率が高いです。
また、問題点の改善が今後も見込めないということも離職率を高めます。
ただし、離職率が高い企業は雇用が流動的で、若手でも活躍しやすい、新しい知識が入ってきやすいと捉えることもできます。
いずれにせよ、離職率が高い企業に応募する前には、離職率が高い原因をしっかり探ることをおすすめします。
離職率が低い企業は雇用満足度が高い
離職率の低い企業は給与や人間関係、ワークライフバランスなどに問題が少ないと考えられます。
ただし、離職率が低いということは辞める人が少なく上に行けば行くほどポストに空きがないということでもあります。
年功序列ではなく、実力を正当に評価されたい方には離職率の低い企業は合わない可能性もあります。
さらに、人の出入りがないことで良くも悪くも風通しが悪く、業務や事業の革新が起こりにくい可能性もあります。
離職率が低いことで生じるデメリットの対策が施されているかどうかも転職・就職先選びの一つの基準となるでしょう。
離職率が高い業種・低い業種
厚生労働省が発表した2018年雇用動向調査の結果に基づき、離職率の高い業種、低い業種をグラフにまとめました。
離職率の高い業種は宿泊業、飲食サービス業
離職率の最も高い業種は宿泊業、飲食サービス業(26.9%)で、その後に生活関連サービス業、娯楽業(23.9%)が続きます。
生活関連サービス業とは、クリーニング店や美容室、家事サービスなど個人の生活に関わるサービスを行う業種を、娯楽業とは、映画館やスポーツ施設の運営を指します。
これら2つの業界はそもそも人材の流動性が高い傾向にあり、入職率(定められた期間内に新たに就業した労働者の割合)も高くなっています(宿泊業、飲食サービス業:29.3%、生活関連サービス業、娯楽業:28.1%)。
離職率の低い業種は複合サービス事業
離職率の最も低い業種は建設業(9.2%)で、その後に複合サービス事業(9.3%)、製造業(9.4%)が続きます。
複合サービス事業とは、郵便局や農林水産業の協同組合など複数の業種に関わる事業を指します。
これらの業種は規模が大きく労働環境が整備されている傾向にあること、設備投資や認可が必要なことが多いため、離職率が高くなりがちな中小・ベンチャー企業が少ないことがその理由として考えられます。
まとめ
離職率は企業の働きやすさや人材の流動性を確かめるために重要なバロメーターとなります。
就職・転職活動をしている人は、応募を考えている企業の離職率を計算できないか、調べてみてはいかがでしょうか。