支給の条件や金額・注意点も解説! 【社労士監修】家族手当とは?
扶養家族がいる社員に支給される、家族手当。
この記事では、支給条件や、いくらもらえるのかといった相場の話、公務員における家族手当について紹介します。
家族手当とは?
扶養家族がいる社員に支給される手当
家族手当とは、配偶者や子どもなどの扶養家族がいる社員に対して、一定の金額を支給する手当のこと。
支給される金額は家族構成・人数によって異なりますが、平均で1家庭あたり約1万7,000円ほど支給されるようです。
※よりくわしい支給金額・相場は「家族手当の金額・相場は、企業規模で異なる」の章で解説します。
家族手当は、すべての企業にある?
家族手当は法律で義務付けられた手当ではないため、制度が無い企業もあります。
2020年の人事院の調査によると、家族手当が支給されている企業は全体のおよそ8割。地域や企業規模によっても差があり、東京都の中小企業を対象にした調査では、導入率が5割程度という結果も出ています。支給の有無が気になる方は勤務先の就業規則を確認しましょう。
扶養手当との違いは?
家族手当と似た手当に扶養手当がありますが、別種の手当であり、支給条件が異なります。
家族手当との違いは、扶養家族の収入が一定額以上あると支給されない点。扶養手当は、対象となる家族を実際に養っていることが条件の手当であるため、対象者の収入が一定額以上だと「養っている」とは判断されずに、支給対象から外されてしまうケースがあります。
なお、家族手当と扶養手当を厳密に区別していない会社もあります。
その場合、家族手当という名前でも「家族の収入によって支給の制限がある」場合があります。くわしくは「3)被扶養者の収入が一定以上だと、支給されない」をご覧ください。
家族手当の支給基準・条件は?
家族手当は、基本的には配偶者や子どもなどの扶養家族がいれば支給される手当です。しかし、企業によっては細かく支給基準・条件を定めている場合があります。
ここでは、よくある支給基準・条件を3つ紹介します。
1)支給対象は、扶養家族(配偶者・子ども)
家族手当の支給条件として一般的なのは、配偶者・子どもに対して一定額が支給されるパターンです。
求人票や就業規則などでは「配偶者:○○円/月、子1人につき○○円/月」といった形で、人数に応じて一律の金額を支給すると表現されます。
なお、同居か別居かの違いで支給されないケースや、両親にも支給するケースなどもあるので、くわしくは就業規則を確認しましょう。
2)扶養家族の年齢によっては、支給されない
子どもや両親の家族手当には、年齢制限があるのが一般的です。
子どもの場合は18歳以下や22歳以下、両親の場合は60歳以上が支給対象になる企業が多いとのこと。企業ごとに年齢が異なるので、就業規則で確認してください。
3)被扶養者の収入が一定以上だと、支給されない
家族手当でも扶養手当と同様に、被扶養者の収入が一定以上だと手当が支給されないケースがあります。特に配偶者が働いている場合、収入がいくら以上だと支給されないか、就業規則を確認しておきましょう。
人事院の民間給与の実態調査によると、配偶者の収入103万円・130万円・150万円を境に手当を制限する企業が多いようです。特に年収103万円をボーダーに設定している企業が多く、収入に制限をもうけている企業のうち45%がこの金額をボーダーにしています。
「所得税の控除対象になるか」「健康保険の被扶養者になれるか」を判断する金額が、家族手当のボーダーとしても使われているようです。
※出典:
人事院「民間給与の実態(2020年)」より
家族手当の金額・相場は、企業規模で異なる
2020年の就労条件総合調査(厚生労働省)によると、家族手当・扶養手当など家族に関する手当の平均支給額は1万7,600円でした。
従業員数が多い企業ほど多くもらえる傾向があり、従業員30~99人の企業と従業員1,000人以上の企業では、支給額に約1万円の差があります。
余談ですが、家族手当は給与所得とみなされるため、所得税の課税対象となります。
※出典:
厚生労働省「就労条件総合調査(2020年)」より
子どもの人数で、支給金額が変わる
同じく2020年の中小企業の賃金・退職金事情調査(東京都産業労働局)によると、配偶者に対する家族手当の平均支給額は1万589円、子どもの支給額は5,374円~5,919円でした。子どもへの支給額は、第一子が最も高くなる傾向があります。
※出典:東京都産業労働局
「中小企業の賃金・退職金事情(2020年版)」より
公務員にも、家族手当はある?
公務員にも家族手当があり、制度上では「扶養手当」と呼ばれています。対象者との続柄に応じて、月額6,500円~1万5,000円が支給されます。
※参考:
人事院「一般職の給与に関する法律」
扶養手当の金額は「一般職の給与に関する法律」で定められており、自治体によって給与体系が異なる地方公務員でも、国家公務員に準じた額が支給されます。
なお、扶養手当を受給するには、扶養対象者の年収が130万円未満であることが条件になっているので注意しましょう。
家族手当の廃止が進んでいるって、本当?
約30%の企業で、見直しを検討中
近年、家族手当を廃止・調整する動きがあるのは事実です。人事院の2018年の調査によると、見直しを検討中の企業が30%弱あることが明らかになっています。
見直しの理由としては、共働き夫婦の増加や、独身社員との不平等感の解消などが挙げられているようです。
廃止されても、収入が減るとは限らない
家族手当を廃止・調整する場合でも、賃金原資の総額が変わらないように調整するケースも多いとのこと。手当相当の金額を基本給に含めたり、別の手当を増額したりといった対策が行われています。
たとえばトヨタ自動車では、2017年に配偶者への手当を廃止した一方で、子どもへの手当を1人あたり5,000円から2万円に増額して話題となりました。
家族手当の廃止・調整例
- 家族手当相当額を、基本給に含める
- 配偶者への手当を廃止し、子どもや障がいを持つ家族への手当を増額する
- 配偶者への手当は、一定の年齢までの子どもがいる場合のみ支給する
- 配偶者・子ども問わず、手当の支給額を一律縮小する
「扶養」にまつわる関連記事
家族手当のほかにも、扶養家族の収入が関係する制度で知っておきたいのが、扶養控除・配偶者控除の話です。
下記の記事では、いわゆる103万円の壁の解説や、制度のポイントなどをイラストつきで解説しています。併せてご覧ください。
■扶養控除
■配偶者控除
ほかの手当について気になる場合は…
家族手当以外のメジャーな手当については、下記のページで解説しています。気になる手当はこちらのページから確認しておきましょう。
■住宅手当
■地域手当
■皆勤手当
■資格手当
■休業手当
■夜勤手当
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所