平均昇給額からベアとの違いまで 定期昇給とは?平均いくら?

会社で働く上で、給料アップの見通しは誰しも気になるもの。

昇給制度のひとつである「定期昇給」について、昇給率の平均や、春闘で話題に上る「ベア」との違いなどについて解説します。

定期昇給とは?

まずは定期昇給に関する基本的な内容をおさらいしましょう。

定期昇給とは1年ペースで昇給する制度

定期昇給とは、毎年決まった時期に昇給する制度のことです。

一般的には年齢、勤続年数に応じて一律に昇給する自動昇給のことを指しますが、厳密には業績評価や個人の能力によって昇給額が決まるケースも含みます。

このうち自動昇給は、日本で長年続く「年功序列賃金制度」を支えてきました。

定期昇給率の平均は?企業規模別に紹介

厚生労働省の「賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、2019年の「1人平均賃金の改定率」は2.0%で、金額にして5,592円となっています。

また、従業員が多い大企業ほど定期昇給率が高い傾向にあります。例えば5000人以上の規模では2.1%(6,790円)1,000~4,999人の規模では2.0%(5,722円)となっています。

企業規模と定期昇給率・定期昇給額の一覧表。以下、企業規模(従業員数):定期昇給率|昇給額。5,000人以上:2.1%|6,790円。1,000~4,999人:2.0%|5,722円。300~999人:1.9%|5,204円。100~299人:1.9%|4,997円。

※参考:厚生労働省「平成30年賃金引上げ等の実態に関する調査」

また、改定率は1.9%と同じでも、実際の昇給額は企業規模が小さい方が少なくなっています。これは企業規模が小さい企業は、元々の基本給が低い傾向にあるためだと考えられます。

具体的な給与額を計算すると、改定前の基本給が20万円の場合、改定率が2.2%であれば20万4,400円、1.9%であれば20万3,800円が改定後の給与となります。

定期昇給とベアの違いって?

よく春闘で企業に要求されるベア(ベースアップ)とは、社員全員の給与水準を底上げすることです。

社員ひとりひとりの昇給を個別に行う定期昇給と違い、賃金水準全体の引き上げとなるため、企業にとっては負担になります。

毎年年長社員の定年退職もあるため、定期昇給による人件費の総額は大きく増えませんが、ベアは全年代の給与水準が上昇するため、企業にとっては大きな負担になります。

2014年からは政府が賃上げを要求する「官製春闘」によりベアが続いていますが、経団連は2020年の労使交渉(春闘)では前年に引き続き数値目標を盛り込まないこととし、画一的なベアではなく各企業の状況に応じた交渉が展開される可能性があります。

自動昇給以外の定期昇給

昨今では、以下のような自動昇給以外の昇給制度がメジャーになりつつあります。

査定昇給

本人の能力や業績評価に基づいて査定が行われ、考課査定結果によって個人ごとに昇給率・額が決定されます。

自動昇給と違って努力や成果を実感しやすい反面、企業の評価基準があいまいな場合、社員間の不公平感につながってしまうこともあります。

昇格昇給

企業内で定める人事考課制度の中で、上位の等級に昇格した場合、その等級に応じた給与額に昇給します。あらかじめ昇給に関わる到達目標が決まっているため、社員にとってはモチベーションを保ちやすくなります。

いずれも、本人の能力や実績、等級などの基準が満たされていないと昇給されないというところが、自動昇給との違いになります。

【コラム】定期昇給「なし」の企業は違法?

企業によっては定期昇給がない場合もありますが、それ自体は違法ではありません。

定期昇給は終身雇用制度が前提となっていることが多いため、終身雇用制度がなくなりつつある現在では、定期昇給がない企業も珍しくないようです。

ただし、労働基準法では労働契約書や就業規則で昇給について定めなければならないとされています。

もし就業規則で定期昇給があると明記しているにもかかわらず、昇給がない場合は違法の可能性もありますので、まずは就業規則を確認してみましょう。

定期昇給の問題点

定期昇給のうち、毎年安定して昇給できる自動昇給ですが、「一律」ならではの問題点もあります。

競争意識がなくなりモチベーション低下

定期昇給は能力に関係なく給与が上がっていくため、社員の競争意識が下がり、スキルアップがうまく実現できないことがあります。

また、実力ある若手が「勤続年数は長いが成果を出していない」社員より低い待遇となることで、モチベーション低下を招くこともあります。

能力に関わらず昇給率が一定であることに不満を感じる人は、成績が給与に影響しやすい営業の仕事や、評価が直接給与やボーナスに反映される査定昇給の企業への転職を考えてみても良いでしょう。

成果昇給の企業が増えている

いわゆる「日本型雇用」では、かつての経済成長期に大量採用した社員に対して、年功序列制(自動昇給)によって能力に見合わないような高い給料を支払わなければならなくなりました。そうした背景から、人件費削減のために年功序列制は見直されつつあり、成果昇給の企業が増えています

スキルが高い社員や成果を出した社員を評価し給与に反映するため、若手でも大きく昇給する可能性があります。

まとめ

定期昇給とは一般的に勤続年数や年齢によって毎年一律で昇給する自動昇給のことを指します。自動昇給は日本型雇用における代表的な昇給方法でしたが、スキルや実績があっても昇給しにくいという点や、能力に見合わない給料を支払わなければならないなどの問題から、徐々に見直されています。

転職活動をする際は、その企業がどのような評価基準や昇給方法を取り入れているか、チェックするようにしましょう。

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